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2009年5月

石を枕に 土をベッドに

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基本的に英語ができないせいか、日頃ブルースの歌詞はあまり注意して聴いてないです。しかし、中にはとても気に入るリリックに出会います。ロイ・ブラウン58年のヒット曲「ハード・ラック・ブルース」の冒頭に“Rocks is my pillow. Cold ground is my bed.”という一節があります。私の下手な訳で申し訳ないですが「石を枕に 土をベッドに」といったところでしょうか?

↓歌詞
http://www.carlinamerica.com/titles/titles.cgi?MODULE=LYRICS&ID=670&terms=1958

↓サンプル
http://www.vh1.com/artists/az/brown_roy/319712/album.jhtml
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色々調べる前に妄想してみました。これは放浪者の歌か?破産して家が無くなったのか?それとも彼自身既に死んでいるのか?・・・全て何となく合ってました。歌詞の続きを意訳すると「俺の家はハイウェイ。ママは死にダディーは俺を捨てた。俺は旅を続ける日々。友もなく祈りの術も知らず。靴は片っぽ、着替える服もなく、死に進む旅だった。とうとうママの墓にたどり着き、俺も息絶えたのさ」といった感じだと思います。この曲は多くのカバーを生んでいます。Buster Benton、Nappy Brown、Wynonie Harris、Amos Milburn、Sunnyland Slim、Roosevelt Sykes、Tommy Tucker(大体似たようなタイプが多い)などです。その他ハウリン・ウルフは「ハード・ラック」、チャンピオン・ジャック・デュプリーは「Cold is ground is my bed」、B.B.キングは「The road I travel」のタイトルでカバーしているようです。

↓カバーリスト
http://www.cduniverse.com/sresult.asp?HT_Search=SONG&HT_Search_Info=hard+;luck+blues&style=music&altsearch=yes

↓ウルフ
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1249904


↓チャンピオン・ジャック
http://www.emusic.com/album/11228/11228207.html
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もっと前からあった曲のような気がしたのですが、おそらく原型はブラインド・ウィリー・マクテル「デス・ルーム・ブルース」(31年)のようです。こちらはいきなり墓石の登場。「墓石を枕に 土をベッドに」の後に「青い空は毛布 月光はベッドカバー」と続き、「ある朝死が部屋にやってきてママを連れて行った」という感じに繋がります。ここでのママは母親ではなく恋人かも知れません。

↓サンプル
http://www.hmv.co.jp/product/detail/713813

と、曲についての調べはここまで。私が冒頭の一節を好きなのは、通常足を付けて立つ大地に寝転んで空を見上げるという行為が好きだからです。あまり感心しませんが酔っ払って道路に寝たことが有る人は何となく分かると思います。これが公園のベンチとかではいけません。本当は舗装道路より土の上が良いのですが、これは仕方ないでしょう。体を地面にぴったり付けて(石は枕にしなくても良いです)、青空でも星空でも構いませんが空を見る、というより空に向き合う行為はインモラルな雰囲気もありながら、空をより大きく深い存在に感じます。自分が地球、宇宙、世界、何でも良いけど、それらに比べ“粒”みたいな存在なのがよく解り、と同時に自分がしっかりと生きているのを実感できる行為だと思います。

私は大学時代ラグビーをやってましたが、試合中や練習中転んで仰向けになり、空と向き合うのが好きでした。体を動かす行為と連なって、なんだか楽しい気分になったものです。

自然は色んな事を教えてくれるものです。

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付加価値の価値

成功した若手企業家が、インタビューに答えていました。

「もう物欲はなくなりました。これからは心の豊かさを求めていきたいです」

一見殊勝な言葉のようですが、心の豊かさを考えずに儲けた商売というのもちょっと胡散臭いなあと思ってしまいました。

それと、物欲がなくなる人生も何だか寂しい感じがします。多分この人は高価な物がたやすく手に入るので、欲しい物はなくなったというニュアンスで言ったのでしょうが、そういうレベルの物欲なら確かに終わりが見えるかも知れません。おそらくこの人は“本当に欲しくて”物を買っていなかったのではないでしょうか?

例えばポルシェを買うとします。根っからポルシェが好きで、愛おしく乗り回しているのと、“象徴”として買うのではえらい違いです。これは金持ちでもそうじゃなくても一緒でしょう。欲しい車を手に入れる事、それこそ心が豊かになるはず。物欲には浅ましいものも有るかも知れませんが、幸せになりたいという気持ちの表れの一つだと思います。勿論金銭面の制約は有りますが、手に入らなくても好きな物を想うだけでも、心は豊かになるものです。

また、価値ある物欲とは、物そのものより、付随する「付加価値」を楽しもうという意識だと思います。もちろん、自分が物を買わなくても他人に施す事で幸せを感じる人はいるでしょうが・・・。

要は、物を買う行為や自分の周りにある物に対する接し方の向こうに、(自分に関する事でも他人に関する事でも)幸せが見えているかという事でしょう。この考えを持っていないと、「物」が利害関係の対象だけに終わったりします。

自分の職業が肉屋なら、自分が提供する肉で食卓が楽しいものになる(付加価値)という思いがないと、儲ける事だけ考え偽装したりする訳でしょう。

物欲に話を戻せば、物が溢れている現代社会では、物欲のレベルが低くなりやすいかも知れません。子供がスーパーで騒ぐからといってお菓子を買い与えていては、子供は付加価値を見い出す事が出来ません。「欲しがれば手に入る」としか頭にインプットされません。一方、限られたお小遣いで自分でお菓子を決める場合、その子供の頭の中は付加価値に溢れているに違いありません。

結局、物が持つ付加価値を味わう事やピュアな物欲を抱く事は、人間性を豊かにし、物を大切にする姿勢などにも繋がると思います。なにより気持ちが充実します。「何をやっても面白くない」なんてことには絶対ならないはずです。

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山口淑子 藤原作弥著『李香蘭 私の半生』

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社会で生活している以上、全く社会の存在を無視して日々暮らす事はできません。いくらガソリンの価格を半分にしろといっても、現状すぐに自分の思い通りの値段になるものではありません。しかし、意見を言う事はできるでしょう。

これがもし戦時中だったら、意見さえ言う事ができず、「国家」の思惑通りの生活を強いられる事になるのでしょう。山口淑子さんが共著の形でまとめられた本書も舞台は戦時中です(日中戦争~世界大戦)。山口さんは「李香蘭」の名で中国~日本で歌手・映画スターとして活躍されました。この本に描かれているものは華やかな経歴というより、戦争に翻弄された人々の苦悩の場面が多いです。スターでありながらスターとしてのアイデンティティー、更には彼女本人のアイデンティティーが醜い戦争の掌中に握られているのです。

山口さんは日本人の父母を持ちながら中国で生まれました。父親は中国への対立意識は持たず、理解の有る要人とも交流がありました。李際春将軍もその一人。彼とは家族同士が強い絆で結ばれ、娘(淑子さん)も李将軍の娘として扱われました(義兄弟ならぬ義家族でしょうか?)。その時将軍より授けられた名前が「李香蘭」です。従って彼女にとってはこの名前は取って付けた芸名ではなく、もう一人の「親」から授かった名前なのです。

中国語が完璧に話せた山口さんは北京の女学校に中国人として通います、学校は抗日運動が盛んで、山口さんも日本人である事は明かせず、中国人として友達にも本当の事が言えず生活します。ご本人は自分を「中国人」として意識していたのですが、それだけに仲間を裏切っているような感傷があったのでしょう。

歌の上手さも手伝い、「満映」にスカウトされます。「満映」とは日本が中国に侵略して建設した「国家」満州国の映画会社です。従って中国との友好を表向きには口にするものの、日本の優位性を強調する国策映画を主に作る組織でした。そのため終戦後、中国人だと思われていた李香蘭は戦時中に日本に協力した「裏切り者」「スパイ」として当局にマークされます。学生時代~女優時代、自分が日本人であることを名乗りたかった山口さんですが、時代情勢が許さなかったのですが、終戦になると今度は日本人である事を証明しなければならない事態になったのです。

山口さんは自伝を書くに当たって、完全には執筆には納得していなかったのですが、資料として満映時代の自分の作品を観て、あまりの「国策」ぶりに愕然とし、謝意の気持ちもあり、本著を書こうと思ったそうです。

本作を読んでいて、李香蘭本人より周囲の人々が時代に翻弄される姿がよく描かれている気がしました。正に李香蘭本人は国策という掌の中で踊らされていても自分の仕事に一生懸命だったという事かも知れません。

李香蘭というアイデンティティーを、自分としては発揮しようと必死だったのですが、結局自分も大きな力に翻弄されていた事実に気付く事・・・これは無常の悲しみだと思います。それでも山口さんは事実に基づき、他人が翻弄されているさまを見る李香蘭、本人は懸命な李香蘭、時代を置いて戦争と李香蘭を見つめ直す山口さん、という多数の相を提示して、日本だろうと世界だろうと人間が忘れてはならない、考えなくてはならない戦争記録を提示した形にもなっていると思います。その意味で懐の深い一冊だと思います。

この本は私の父親の本棚から持ってきました。父はギリギリ戦争経験者ですが、戦争関係の本をよく読んでいました。父親も他の戦争経験者のようにアイデンティティー探しをしていたのかも知れません。

http://jp.youtube.com/watch?v=TcMdJNC8OUo&feature=related

http://www9.wind.ne.jp/fujin/rekisi/china/karyu/kouran.htm

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生きる

●やなせたかしさんがアンパンマンを書き始めたのは54歳の時。現在89歳というご高齢にも驚いたが、サラリーマンなら「定年」がチラつき始める頃に、あれだけの傑作を生み出した創造力は素晴らしい。やなせさんは常に「叙情性」を大切にしているとの事。人間や自然に素直な気持ちで接したら、年齢や老化とかは別の次元に生きられるのだろうか・・・。

●世界遺産にも指定されているアンデス山脈に群生する植物。プヤ・ライモンディ。通常はこんもりと、低い位置で葉を茂らせているだけだが、100年に一度、死を迎える最後の一ヶ月に花を咲かせるらしい。花は密生した状態で、中央部から塔のように真っ直ぐ上に伸び6メートルの高さに及ぶ。花が咲いているものと咲いていないものでは存在感が全然違う。もし、この植物に意識があるとしたら、100年の間どんな気持ちで待っているのだろうか・・・。

http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program039.html

●『インディー・ジョーンズ』の中の台詞だったと思う。

「人は死ぬ事が分かっていて生きている」

いずれ死んでしまうからといって、生きる事を諦めないのはなぜだろう。生物学的には「種の保存の本能」という事で説明がつくのかも知れないが、それは人間の動物的側面に着目した論理。

「叙情的」に考えるなら、人間は生きる事が好きなんだと思う。苦しい事もあるけれど、人生は捨てるにはもったいない。

思い悩んで人生を捨てようとする人は確かにいる。生きるのが辛い状態の人もいるだろう。その人の気持ちが解るのかと言われれば否と言うしかない。ただ、世の中の物事を叙情的に捉えると、目の前の風景も気持ちの中も変われる気がする・・・どうせ死ぬんだから死ぬまで生きればいいのにと思うのはあまりに単純で理想論だろうか?でも今の世の中に最も必要なのは単純さや理想論ではないかとも思う。

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北風と太陽

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カーティス・メイフィールドの『There's No Place Like America Today』。昔から好きな一枚です。タイトルやジャケットにも表現されているように、社会的メッセージ性の高いアルバムといわれています。しかし、音世界は彼らしい温かさに充ちた穏やかなトーンのアルバムです。ファンキーな曲にはやや緊張感が感じられるものの、強い口調で責め立てるといった切迫感は有りません。

♪サンプル(DISC1が該当)
http://www.vh1.com/artists/az/mayfield_curtis/148059/album.jhtml

♪ユーチューブ
http://www.youtube.com/watch?v=0T6sHBMvEEc

しかしながら、決して「まったり」感に終始したアルバムではないです。メッセージ性というのが念頭にあるからかも知れませんが、本盤には強い意志の力が通底していると思います。それが分かりやすい形で表出せず、カーティスの人間性や“哲学”を通過する事で、平和主義者に温和に説得されているような感覚さえ抱きます。つまり、最初から激しく熱いのではなく、自然に暖まっていく感じなのです。

「ブラックパワー」という言葉があります。60年代の人種差別反対運動で、ストークリー・カーマイケルら“急進派”に主に使われていた言葉(スローガン)です。この言葉を知らなかった日本人にも印象的だった場面は、68年のメキシコ・オリンピックで表彰台に上がった黒人アスリート3名が、黒い手袋をはめ拳を握りしめ天に向かって高々と上げたものでしょう。私は当時小学生で、何をやってるんだろうと思ったものの、ここで初めて世の中に差別されている人たちがいるという事を知ったように思います。

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どちらかといえば「ブラックパワー」は、迫害する白人に黒人が一致団結して抵抗する「力対力」のイメージがあります。明確に私も説明できませんが、実際にそれに近いと思います。それでは“穏健派”と呼ばれたキング牧師はこの言葉を使わなかったかというと、違う解釈をしていたようです。つまり黒人だけに闘いを呼びかける形でなく、白人を説得して社会全体の「正常化」を目指す方向に「パワー」を結集すべきといった感じだと思います。著書を読むと、実に理路整然としていて、尚かつ理屈屋に終わらず訴求力も十分あります。黒人活動家というより、平和活動家だったんだと思います。ちょうどカーティス・メイフィールドのように、温かさを根底に持ち、淡々としながら芯のシッカリした人物だったんだと思います。また、相手(白人)を、差別する者として対応するのではなく、最初から同等の立場で語りかけている感じです。

悲しいことに、彼は結局暗殺されました。彼を失った事はアメリカ~世界の大きな損失だと思います。キング牧師の有名な「アイ・ハブ・ア・ドリーム」演説は63年、奴隷解放宣言が出されて約100年後。100年経っても人種差別に関しては殆ど何も改善されなかったといえます。

キング牧師の暗殺から40数年、アメリカに黒人の大統領が誕生しました。白人とのハーフだからとか、差別意識が残る南部ではマケインが強かったとか、暗殺計画もあったとか、逆に、今まで共和党の“聖地”だった州もオバマを支持したとか、投票なんか興味も無かったホームレスも投票したとか、20世紀初頭以来の投票率とか様々なエピソードが「黒人大統領」を考えるタームとして与えられています。しかし、最終的にはオバマ氏本人の力量が問題だし、力量を見極められる状況だけは作ってほしいし、マスコミもそのポイントだけは外さないでほしい。彼がアフリカン・アメリカンなのは歴史的な事だけど、もっと歴史的な事を彼には成し遂げてほしいし、つまらない偏見で彼を潰すのだけは最低限やめてほしいと思います。

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キング牧師の言葉に、身分や品性などで「差別」される事と、肌の色だけで差別する事には大きな開きがある、みたいなのがあります。偉大なるデューク・エリントンも人種差別を受けたそうですし、ダイナ・ワシントン、サム・クック、ジミ・ヘンドリックスらは黒人でなかったらあの時点で命を落とさなかったかも知れません。いわれのない差別に対して強い態度に出るのも解らないではないです。しかし、繰り返しになりますが、キング牧師は差別をしている人間自体を「差別」することなく差別を無くそうとしていたのです。それこそ強力なパワーと忍耐力を必要とすると思います。オバマ氏のスマートな物腰と説得力ある演説内容はキング牧師の理知的な人柄につながる感じもします。黒人も白人も関係ない、と演説しているように、真の平和主義精神で世界に影響力を与えて頂きたいと思います・・・彼のスローガン「イエス・ウィ・キャン」は「アイ・ハブ・ア・ドリーム」に対する答えのような気もします。

差別を無くすには、自分が相手を差別しないこと。人生「太陽」ばかりでは成り立ちませんが、基本的な心持ちはやはり「太陽」であるべきでしょう。

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『大衆音楽史』の視点

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●森正人著『大衆音楽史』(中公文庫)

著者は文化地理学の先生で、音楽が専門というわけではないです。宮廷音楽の対立項としての大衆音楽が「地理上」どのような移動をして影響を与えてきたか、という視点とその「場所」における特性や人種、階級、性差による違いという視点がぶれないため、読んでいて解りやすく理論が展開されています。

大英帝国と西アフリカ、アメリカ&カリブを結ぶ所謂「三角貿易」地帯は、コーヒーやタバコといった嗜好品の他、奴隷や移民という「人間の移動」も含んでいました。音楽もその過程で「移動」し、各地で「文化」として花開きました。その行程を丁寧に追いかけられた一作です。

中身に具体的に踏み込むと、さすがに面白みが半減しそうなのであらましだけご紹介。黒人音楽へのヨーロッパ音楽の影響。カントリーソングの英米間の往復。パンク誕生前夜とファッションとの絡み。ラップとレゲエのサウンドシステムの連関・・・といったエピソードを軸に、冒頭に書いた人種、階級、性差の違いを常に視点として語っておられるので読んでいて吸収しやすいです。ただ残念なのは、私が気付いただけでも三箇所間違いがあります。それをここで書いても仕方がないし、大元の内容にはさほど影響がないので書きません。

私が黒人音楽ファンなので、その他のジャンルに詳しくなく、非常に参考になりました。総花的ではありますが、何より再三強調しますが、「視点」がブレない点が良かったです。

♪ホームページ
http://www.human.mie-u.ac.jp/~mori/

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給料日前の収穫

ヨメさんと娘がデパートで買い物中に、近くの蔦屋書店で中古CD2枚買いました。

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●クリセット・ミッシェル『アイ・アム』<デフ・ジャム>(07年)

新作の試聴記を書いたばかりですが、先にこちらを手に入れる事となりました。試聴記ではウィル・アイ・アムの名前しか書かなかったですが、総合プロデュースはLA・リードで、ウィルの他ベイビーフェイスやジョン・レジェンド、サラーム・レミetc...といった制作陣です。ザッと聴いた感じでは新作より「素」な感じがしているような気がします。

http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=7434400

http://www.youtube.com/watch?v=Q48bYTywPq4

http://www.youtube.com/watch?v=BFS5ToY84_0

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●オーティス・ラッシュ『オール・ユア・ライブ~激情ライブ!1976』<デルマーク/Pヴァイン>(05年)

『コールド・デイ・イン・ヘル』(75年)のプロモーション用にメディア用に配られた音源。シカゴのラジオ局の番組用に「ワイズ・フールズ・パブ」というライブハウスで録音されたもの。「激情」というのはこの人のためにあるような言葉。ギターの多彩さ、魂の込め具合といったら中々味わえるレベルではないです。ヴォーカルも強靭。

http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/6976896/a/A...

http://www.youtube.com/watch?v=o2ewHnnq32c

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血縁家族ソウル

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Fatin DantzlerとAja Graydonの夫婦からなるキンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル。昨年3作目が出ています。『アライバル』。サンプルだけ聴きましたが、相変わらずの温かみのあるサウンドとグルーヴにAjaの透き通った声とFatinの塩辛声のコンビネーションは健在です。今回はネオ・ソウル路線というよりヒップホップにグッと近づいた曲調もあるし、ゴスペル臭プンプンの曲も有ったりと、これまでより幅が少し広がったかなという印象も受けます。それか、「ネオ・ソウル」という概念が変質しているのかも知れませんね。元々解釈の難しい部分はありましたが・・・。

「キンドレッド(Kindred)」というのは「血縁」という意味だそうです。つまりユニット名は「血縁家族ソウル」と直訳できます。自分たちの音世界は、夫婦・家族としての絆から生まれているんだよという何とも力強い意思表明とも取れます。二人とも出発点はソロ・アーティストでした。Fatinはフィラデルフィア生まれ、ペブルスやベル・ビヴ・ディヴォーに曲も書いています。Ajaはワシントン生まれですがフィラデルフィアで15歳から活動。出会って結婚した二人は共作で曲を書いたりしていたのですが、パフォーマーとしてはしばらく芽が出ませんでした。Black Lily clubでのライブをジル・スコットが評価し、ネオ・ソウルの牙城<ヒドゥン・ビーチ>レコードに連れて来たのがメジャーへのスタートラインとなります。1作目も2作目もグルーヴの心地好さと、微かな土臭さが特長的で、私の愛聴盤となっています。

考えてみれば、夫婦や家族というのは“感情の縮図”みたいなところがあります。どんなに激しくいがみ合っても最後には許せる部分が、通常はあります。おそらくスキンシップが根底にあるからではないでしょうか?・・・もっとも現代社会には当てはまらない感じもします。音楽も感情表現が重要ですから、彼らのように絆の強い夫婦ユニットが感動を生み出すのは当然かも知れませんね。

♪サンプル
https://www.amazon.com/dp/B001FES0A2?tag=soultracks-20&am...

♪「プレッシャー」
http://jp.youtube.com/watch?v=8qSBEq-H2m8

♪「ハウス・オブ・ラブ」
http://jp.youtube.com/watch?v=BHXDVJgEew8

♪サイト
http://www.kindredthefamilysoul.com/

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イニシエイション

岡本太郎著『美の呪力』を参考に・・・。

原始的社会において、イニシエイション(成人儀礼)は重要な意味を持ち、内容も苛酷なものとして知られています。身体の一部を傷付けたり、高い所から突き落としたりと、死に繋がる事もある厳しさです。

こういった成人儀礼は、受ける側からすれば恐怖におののき、さぞかし厭だろうと思いきや、実は積極的に取り組むそうです。大人として認められる栄誉が死の恐怖に勝るのです。

社会的に、「大人」と「子供」の差がハッキリしているというのも有るかと思います。「子供」は決して一人前扱いされず、儀礼を努めれば扱いがガラリと変わり、権利も得られ社会にも貢献出来る「大人」になるのでしょう。また、死を身近に感じた事で、本人も精神的に強くなり、一人前になったという自信と自覚が生まれるのでしょう。

日本の現代社会における「成人式」はセレモニーであり、「イニシエイション」とは言い難いと思います。現代社会では、「イニシエイション」は個人的に感じるものでしょう。就職した時とか、初めて仕事を任された時、結婚、自分の子供が生まれた時・・・等々、人によって違いが有るのではないでしょうか?

自分で自分が大人だと思う「自覚」、それは「責任感」に裏打ちされると思います。逆に考えると、今の世の中、責任感や自覚を持つ事があやふやになっているかも知れません。「他人のせい」にしやすい社会ともいえます。

別の角度から考えてみます。「大人っぽい子供」+「子供っぽい大人」と「子供らしい子供」+「大人らしい大人」は、比率的に前者の方が高いか、前者と後者の差がかなり開いている感じがします。

また、「大人っぽい子供」が成長(?)した姿が「子供っぽい大人」だと思います。「子供」の時代に自分を既に一人前と思っている為精神的に発達せず、大人になって「大人の常識」が判らなくなってるのでしょう。イニシエイションしない訳です。

現代社会ではイニシエイションは個人的に感じるものと書きましたが、大きく生活が変化したり、精神的苦痛を乗り越えた時などに当てはまると思いますが、「大人っぽい子供」はそれを無意識に避けちゃってるんでしょうね。原始的社会ならともかく、現代社会はそれが可能だから、中々イニシエイションできない場合が多いのでしょう。

精神的苦痛を避けるのは可能かも知れませんが、生活の変化は避けられそうな対象ではなさそうですが、結婚、出産、性体験、人の死といったものがライト感覚で捉えられている実情を考えると、やはりイニシエイションには繋がりにくいと思います。

『美の呪力』が書かれたのは71年。筆者は既にイニシエイションは無くなったと嘆いていますが、現代社会は更に「発展」した分、絶無に近い状態になっている気がします。

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【試聴記】クリセット・ミッシェル『エピファニイ』

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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3553054

JAY-ZやNASのアルバムに参加したのが評判を呼び、ソロデビューに繋がった女性歌手の2作目。1作目『アイ・アム』(07年)も評判を呼びました。ウィル・アイ・アムとかが音創りしており、持ってないので確実には評せませんが、無難なネオ系ながら実力を存分に発揮した一枚なようです。Sarah Vaughn, Jill Scott, Macy Gray, Erykah Badu, Ella Fitzgeraldといった所が影響を感じ取れる歌手の名前として上げられています。NASとのコラボ曲では「アンフォゲタッブル」をジャジーに歌い上げています。しかし、今回の盤は少し違った彼女の魅力が出ているのではないでしょうか?

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2622763

http://www.youtube.com/watch?v=7ZDd4LD3AM4

http://www.youtube.com/watch?v=5IaTaC1mrOg

アルバム・クレジットで気になったのは、やはりニーヨ(エグゼクティブ・プロデューサー名義)。音創りへの関与度は不明ですが、全体的に、いかにもニーヨらしいフレッシュなブラックネスを感じます。現代R&Bのトレンドであり、未来の形も垣間見えるような興味深いサウンド群です。タイトル曲は、よく名前を聞くチャック・ハーモニーも組んでます。

http://www.youtube.com/watch?v=y3pC0hRyBK4

http://www.myspace.com/chuckharmonyshouse

歌唱は、迫力で押すよりテンダーに攻めるタイプ。いかにも今風。ただ、歌い方に粘りが有るのでコクも感じます。

冒頭2曲はネオ・ソウル系。確かにジャズっぽさも感じますが、やはり王道R&Bの範疇じゃないかと思います。また、例えばビヨンセのように前へ前へと押しだす歌い方ではなく、一定の“枠内”を縦横無尽に駆け巡るイメージがあります。「歌い倒す」タイプではないのです。4曲目「ブレイム・イット・オン・ミー」もゴスペルライクなのですが、めくるめく高揚感には至っていません。

しかし、歌い倒さないというのは否定的意味合いではないです。アレサ・フランクリンやルーサー・ヴァンドロスの「寸止め唱法」が余韻という名の感動の広がりを生み出すように、クリセット嬢の「枠内唱法」も痒い所に手が届く“テクニシャン”ならではのシンギングだと思います。声が色っぽくなったりキュートになったりネバネバになったりするのも好刺激になり、有効です。

中盤は、「オートチューン」というのでしょうか(間違っていたらスミマセン)、最近よく聞く人工的なシンコぺーションに則った曲が続きます。本来ならあまり好きなタイプの音ではないのですが、彼女のヴォーカルワークが面白く絡み、十分乗れる納得の出来。

少し穿った見方をしてみます。「枠内」に収まったような歌い方に感じるのは、ニーヨの曲がカッチリとして完成度が高い為、歌も、演奏の一アイテムとして仕組まれているのではないだろうかという疑問。勿論コントロールされていてもレベルは高いです。しかしこの考えはおそらく杞憂でしょう・・・いずれにしても、当アルバムだけでなく、広い範囲で彼女の事をもっと知りたいと思った次第です。

バイオを少し書いておきますと82年ニューヨーク生まれ。やはり教会育ち。最新のグラミー賞「Best Urban/Alternative Performance 」を「ビー・オーケイ」という曲で受賞しています。

http://www.youtube.com/watch?v=Kn3xTWjJKik

http://en.wikipedia.org/wiki/Chrisette_Michele

http://www.myspace.com/chrisettemichele

http://www.thisischrisettemichele.com/

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蔵の中

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初めて戦前ブルースに出会った時、少し違和感を覚えました。曲全体に圧が加わったようなノイズの中、ギターの音はリリカルなのに、ヴォーカルは唸る、がなる、呻くという風に激しく歪んでいたり、陶酔するような声を出したり、嘲笑したり失笑したり・・・つまりそれまで聴いてきたヴォーカルスタイルと曲調とは余りにかけ離れていたのです。歌詞は聴き取り不能が多かったものの、タイトルもシュールです。黒い蛇が呻くだの、地獄の犬が従いてくるだのヴォーカルの“奇妙さ”を一層際立たせます。

私には色々教えてくれた喫茶店のマスターがいました。私にとっては黒人音楽の“マスター”でもあったわけです。その方が閉店時間の近づいた店で、ある日戦前ブルースを聴かせてくれました。もうそろそろ聴いても好いでしょうというニュアンスで、ターンテーブルに乗せたのはイシュマン・ブレイシー、ブラインド・ブレイク、トミー・ジョンソン辺りだったと思います。<スタックス><アトランティック><チェス><スペシャルティー>から各種ジャンプ・ブルース辺りを聴いていた私は、まだサン・ハウスもロバート・ジョンソンもジックリとは聴いていませんでした。その耳に戦前ブルースは強烈に響きました。 違和感はやがて深い興味となります。剥き出しの感情に隠れがちですが、戦前ブルースには深い哀愁と心の底から湧き起こる生きる力(喜び)が存在しています。喜怒哀楽の折衷状態ともいえます。結局ゴスペルと同じなのだという事がよく解ります。ブルースとゴスペルをルーツとして、常にその存在を忘れない限り、どんなに時代が進み色んな黒人音楽が生まれても深みは失わないと思います。

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エリック・クラプトンが、ロバート・ジョンソンのカバー・アルバムを創った時、試聴して「これを聴くならロバート・ジョンソンを聴いた方が好い(こんな身も蓋もない書き方はしませんでしたが)」と記事にしたかコメントに書いた事があります。クラプトンファンの若い方からコメントを頂き、オリジナルは素晴らしいのでしょうが、クラプトンの魅力も出ているといった内容でした。冷静に考えればこの方の意見は正しいです。なぜならあくまでクラプトンの作品なのだから。私の戦前ブルースにかける思いが勇み足となり、クラプトンが、触れてはいけないものに触れたような気がしたのです。このアルバムをもってロバート・ジョンソンを“解釈”して欲しくなかったのです。コメントをくれたクラプトン・ファンの方にも他の方にも“違和感”を感じてほしかったのです。

CD時代に甦ったロバート・ジョンソンはやたらとリアルでした。LP時代には少し自信なさげな歌い方に聴こえた部分にもドスが効いて、酒臭い息を耳元で吐かれたような気さえしました。これはこれで“違和感”でした。音盤を超えた部分での理解を必要とするのも、戦前ブルースの妙味です。

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同級生

●通勤時、某施設の駐車場脇を通る。朝方、車の出入りが多い時が有り、その際は施設の職員が交通誘導のため立っている。知らない歩行者でも丁寧に挨拶される。その一人に、今朝「○○くん!」と声を掛けられた。しばらく判らなかったが中学の同級生だった。立ち話をするも、ハッキリとは当時の顔が思い出せない。会社に着く頃になって、当時の記憶がよみがえった。少し伸びている事が多かった坊主頭。シャイなヤツだったので、頬っぺたもよく赤らんでいた気がする。長く会っていなかった同級生にふいに会うというのは何だか嬉しい。天気の悪い一日だったが気分は好かった。

●同じ同級生に、間を置いて会うというケースが2件(2人)あった。高校時代の同級生(男)には卒業してから5年ぐらい経ってからと、そのまた5年後ぐらい。「5年に1回ぐらい会ってるね。じゃあまた次5年後に」と言って別れたけど、その後は会っていない。世の中そううまくはいかない。

ある女性とは同じシチュエーションで二度。繁華街のアーケードを右側と左側を逆方向に歩いていて、お互いに気がつき挨拶したもの。挨拶した後、彼女は中学の時一緒だったか高校の時だったか、かなり考えたけど、結局中学高校と一緒だったのを思い出した。

●娘が中学生の頃、吹奏楽部に入っていて、時々大会に出ていた。その日は小中学校のクラブが多数参加していた。パンフレットの指揮者(各学校の担当教諭)に同級生の名前を見つけた。珍しい名前なので間違いない。そういえば音楽の成績が良かった。変声期が遅かったのか、元々の声なのかきれいなボーイソプラノで、学校内では有名だった。しかし、色が白く目が切れ長で、女形のようにも見え、小走りの時ちょっと内股気味だったりしたので、悪ゴロどもにからかわれる事も多かった。

ステージの指揮は、そのイメージを払拭し子供たちの気分を乗せるためか、半分踊っているようなダイナミックな指揮だった。ちょうど会館の入り口で会えたので話ができた。えらく男っぽく生き生きと喋っていた。教師になるまで結構道のりが長かったらしい。それにしても人間変われば変わるもの。彼の教え子たちに昔の写真を見せて上げたかった。

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イン・マイ・ルーム

●幸福は、関心を自己の内ではなく外に向けることにあり、その関心を敵意的なものではなく、好意的なものにしていくことが、幸福の秘訣である・・・ラッセル『幸福論』

●携帯電話の普及によって(そればかりが原因ではないだろうが)、公共の場なのに私的空間と同様に振る舞う人たちが増えたという話を聞いた。他人の邪魔になるような場所に座り込んだり、大声で騒いだりしているのも、「自分の部屋」に居るのと気持ち的に変わらないという事だろう。

周囲の目を気にしない人たちにとって、世の中の全ての場所が自分の部屋になり得るのだろう。

●音楽評論家の中村とうよう氏は、昔からクルマ嫌いを公言していた。閉ざされた空間から車を操作する事で、自分が偉くなったように錯覚する輩が多いというような理由からだったと思う。

私は、車を運転する仕事にここ暫く就いているが、自分の運転も含めて、つくづく、とうよう氏は正しいと思う。しかも、年々とんでもないドライバーに出くわす回数が増えている。交通ルールが“自分の都合”になっている。自分が右折するんだから直進車は待たなければならない、ぶつかったら相手が悪いといったような考えだ。

私は、努めて車や周囲と“呼吸を合わせて”ハンドルを握っているつもりだが、それでも感情的になる事がある。そもそも感情の塊である人間には無理のある行為なのかもしれない。せめて、車を運転するのは難しいという意識ぐらいは常に持っていたい。

●「一人カラオケ」や「一人焼肉」が流行っているらしい。カラオケは、歌の練習を集中して行うという目的以外に、楽器の練習をしたり、職場でタバコが吸えないので、思う存分喫煙しながら仕事をしたりと、カラオケとは無縁の目的で利用する人もいるとの事。大手カラオケ店では、ニーズの変化に合わせ、カラオケ設備を外した“レンタルルーム”も提供する動きにあるらしい。

「一人焼肉」の方は、好きなものを好きなだけ食べられるという考えや、グレードの高い肉を自分へのご褒美として食べるといった発想があるらしい。

つくづく現代社会は「選択肢」が多いと思う。一人焼肉も上の理由を考えれば有りなのかなと思う。でもそれとは別に、大人数でワイワイ騒ぎながら食事をする楽しみも味わって欲しい。別に好きなものが思う存分食べられなくても、十分有意義な時間だと思うのだ。

また、「選択肢」という事で言えば、何事においても順調に選択出来ていくと、いざ選択肢を掴み損ねた時の落胆が大きいような気がする。それに、思い通りに行かなくても、別の角度から見たら得られるものが有ったりする。それに気付く事は、人間の幅を広げると思う。

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キャディラック・レコーズ

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去年暮れから、アメリカでは公開が始まった音楽映画『キャデラック・レコーズ』。ブルースの老舗レーベル<チェス>をモデルにした作品だそうです。創設者のレナード・チェスをはじめ、マディ・ウォーターズ、リトル・ウォルター、チャック・ベリー、ハウリン・ウルフらが登場人物として挙がっています。それと話題を呼んでいるのがビヨンセ扮するエッタ・ジェイムス。

♪サイト
http://www.sonypictures.com/movies/cadillacrecords/

♪登場人物
http://www.imdb.com/title/tt1042877/

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自分が聴いてきた音楽をレーベルで分けたら、たぶん<チェス>が一番多いと思います。他にも好きなブルース・レーベルはありますが、気持ちの中では<チェス>が最高に輝いています。 <チェス>のレディー・ソウル陣も好きです。エッタ・ジェイムス、ミッティー・コリア、フォンテラ・バス、ローラ・リー、シュガー・パイ・デサント(私の中ではブルース・レディー)・・・時代性も有りますが、ノーザン系ともサザン系とも微妙に違う感覚が私好みです。エッタとかローラ・リーとかマッスル・ショールズ詣でをしているのでジャンプ曲は確かにサザンの香りがします。しかし、バラードに南部女とは違う種類の艶っぽさが有ります。それはリズム&ブルースからの流れを繋いだ感覚ではないでしょうか?ルース・ブラウンやリトル・エスター、ビッグ・メイベルなどの次に並べられる女性たちのような気がします。あと、ゴスペル度の強さも特長だと思います。

今回、ビヨンセの歌唱をYouTubeで見つけました。凄く雰囲気を出してます。『ドリームガールズ』の時のダイアナ・ロスをモデルにした主人公も笑っちゃうほど似てましたが、これもよく似せています。ただ、元々パワーの有る歌手なのでダイアナよりはやりやすかったかも知れません。持てるパワーを一気に出さずに溜めてる感じがなんともいえません。私は、日頃のビヨンセの元気一杯のサウンドが苦手です。個人的には、こういう風にネットリと色っぽくやってくれると彼女の魅力も映えるような気がします。ただトレンドにはならんでしょうね・・・。前のアルバム?の『B・デイ』にブルース調の曲が一つ有りましたが、あの感覚は好きです。それにしても改めて大した歌手だと思います。 ひさしぶりに一刻も早く観たいと思う映画ができました。

♪ビヨンセ版「アット・ラスト」
http://jp.youtube.com/watch?v=Q8FHwsATN0E&feature=related

♪エッタ・ジェイムスの「アット・ラスト」。但し最近の映像です。
http://jp.youtube.com/watch?v=ADDigK8LwyE&feature=related

♪こちらの方がビヨンセと比較しやすい。「All I Could Do Was Cry」。
http://jp.youtube.com/watch?v=gBU1iH1IAQs

♪トレイラー
http://jp.youtube.com/watch?v=7QJyAXfG8NM

♪<チェス>レコードについて
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89
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ネット仲間の方から「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」も涙モノだよと教えて頂きました。NHKFMのピーター・バラカンさんの番組で、これは誰が歌っているでしょうとビヨンセの「アット・ラスト」と「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」が掛かったのですが、最初「ブラインド」の方はエッタ版じゃないかと思ったぐらいです。YouTubeで探してみました。いや、ホント凄いですね。唸りに入る時にちょっと声が割れて少しだけソックリ返るとこまで似せています。むしろエッタの方が唸りが直線的な所もあるなあと思った次第。ただ、全体的な声の太さはエッタの方があります。ビヨンセはその辺は自分なりの声量で上手く合わせている感じ。声で演技できる数少ない歌手だと思います。これもネット仲間の方からのコメントで交わしたんですが、次回は是非、最も似てると思われる(ハスキーじゃないけど)ティナ・ターナーにハマッてもらい、アイク&ティナ物語を創ってほしいものです。

http://jp.youtube.com/watch?v=IRrBihMJbZo


サザン風味という事でいえばエッタに分が有りかな?

「I'd rather go blind」っていうのも好いタイトルですよね。英語下手を承知で意訳しますと「あなたしか見えなくなっていく」みたいなものでしょうか?・・・と思いましたら、調べて歌詞を読んでみると違ってました。愛し合った男性が、新しい彼女と歩いているのを見て、二人でいるのを見るぐらいなら「見えなくなってしまいたい」といった感じのようです。

http://www.stlyrics.com/lyrics/martinscorsesebestoftheblues/idrathergoblind.htm

とにもかくにもビヨンセの歌唱に女性の切なさ、悶々とした気持ちが込められているのに思い至ります。一方エッタのは声量があるだけに、恋情の奔流みたいなものを感じます。いずれにしても心の籠った歌唱です。

ところで、また改めて書こうかと思っていたんですが、とりあえず一筆。『キャディラック・ブルース』に関して調べる過程で、エッタ・ジェイムスのことを「伝説の歌手」で片付けているブログ等が多かったです。ファンとしては大変悔しいです。彼女は今も現役で活躍している歌手です。確かに往年の迫力は薄れ、貫禄で歌っているのが昨今かと思います。しかし、貫禄で歌えるだけでも大したもの。十分感動は伝わります。ソウルのみならず、ブルース、ゴスペル、ジャズ、ポップス、ロックと幅広く歌えてどれも最高水準の出来です。私も同じかも知れませんが、「ビヨンセ凄い凄い」で終わらず、今回の映画がエッタ・ジェイムスの再評価に繋がってほしいものです。ビヨンセも演じた甲斐が有ったというもの。

http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewProfile&friendID=128015578

http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewProfile&friendID=345753857

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ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ

●国際情勢には(も)疎いが、オバマ大統領を見ていると、極めて冷静に真正面から事に当たっている印象がある。超大国のプライドという何の役にも立たない意識は捨て(元々持たずか)、尚かつ厳正な態度で、事案や人々に歩み寄っている姿勢を感じる。

●被災地でボランティアに携わっていた人の話だったと思う。ボランティアをやるには、上から目線でも下から目線でもダメ。被災者と同じ目線に立たなければ、相手が欲している事に的確に対応できないと言われていた。

●齋藤孝著『座右のニーチェ』より。ニーチェは、キリスト自身は敬っていたが、キリスト教の考えの一部は否定していた。所謂「絶対神」的扱いをする部分に疑義を挟む。人間と神を対等に捉えようというのだ。能力が対等という訳ではない。神の偉大さを崇めるのは構わないが、盲従や神頼み(オンリー)は愚かな所業という訳だろう。この両者の関係だけでなく、自然や動物も含め、あらゆるものに「上下」はないと思ってみると、確かに物の見方が少し変わる。

●茂木健一郎著『欲望する脳』より。著者は孔子を「中庸の人」と表現する。「中庸」という言葉からは「凡庸」という言葉が連想される。つまり、どっち付かずの印象。しかし、どっち付かずではなく、「どっちにも付ける」という意味での「中庸」なのだろう。

●オバマ大統領が影響を受けたといわれるキング牧師。師もまた「中庸の人」ではないかと思う。黒人の地位向上の為に闘う、という前に、アメリカを向上させるという意識が先んじている。「アメリカの発展」の為に黒人への社会的権利の付与が“必要”なのである。人道的意味合いはもちろんの事、人種で差別する行為はアメリカ人全体の為にならないのである。

●「性格の不一致」「価値観の違い」って否定すべきことだろうか・・・他の人とのズレこそが財産になるような気がする。

http://www.youtube.com/watch?v=LaczdU5U5cs

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帝王の饗宴

世の中に「大物」はたくさんいますが、音楽界にも「帝王」と呼ばれる人がたくさんいます。中でもここでご紹介する3人は、強烈なカリスマ性を持つアーティストです。

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◎マイルス・デイヴィス・・・ジャズの帝王。マイルスが電気楽器を使用するようになった時、多くのファンが批判した、という話があります。ボブ・ディランもステージで初めてエレキを弾いた時、ブーイングの嵐だったといいます。今の視点から見れば何という事はないんだけど、騒がれ方が凄いという事はそれだけ「カリスマ性が高い」証明でしょう。
マイルスの場合、問題となった作品『アガルタ』を境に「アガルタ以後」というんですが(tagosakuさんよりご指摘有り。マイルスの音楽的変化は『ビッチェズ・ブリュー』からです)、今だにそういう区別をしている人はいるみたいですね。コテコテのジャズ・ファンからすれば、マイケル・ジャクソンやシンディー・ローパーの曲を演奏したり、ラッパーを参加させたりするのはたまらなかったんでしょう。素直な気持ちで聴けば「名演」ですよ。私はジャズをたくさん聴いてないだけに、抵抗有りません。多分今の若い世代の方々も同様かと思います。
とはいえ、私が一番好きなのは『カインド・オブ・ブルー』。59年作です。冒頭の「ソー・ホワット」はしばらく頭の中で鳴り続けた曲です。ちょっと話は反れますが、ピアノのビル・エヴァンスが特に好き。白人で優男風なんですが、これがかゆい所に手が届くピアノ。ジャズ・ピアノといえばモンクぐらいしか知りませんでしたが、ある意味モンクを聴いてたからこそビル・エヴァンスが理解できたともいえます。
話をマイルスへ戻します。白人だろうが黒人だろうが、マイルスの世界を表現できるヤツ、マイルスと闘えるヤツを選ぶのが彼らしい帝王学です。次にご紹介するジェイムス・ブラウンもそういう所があります。

http://www.youtube.com/watch?v=P4TbrgIdm0E

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◎ジェイムス・ブラウン・・・ファンクの帝王。アレサ・フランクリンが彼を評して「ハッとウッ」だけで曲を創ってるといったらしいですが、これはもちろん尊敬の思いから出た言葉でしょう。とにかく慣れない内は、皆同じように聴こえるでしょう。しかし、一度JBのサウンドに惚れこむと、次から次に聴いて見たくなります。フィーチュアされている女性シンガーや相方・ボビー・バード、JB’Sと称されるバックバンドにも興味が湧いてきます。ライブ盤・スタジオ盤とも傑作揃いです。初期のソウルシンガー(R&Bシンガー)振りもなかなかです。ここでの推薦盤は『パリ・オランピアライブ71』です。ブーツィーがベースをぶいぶい言わせてます。
JBは自分の考える音が出せない者は、切り捨てます。その代わりこのバンドから卒業して大物アーティストになった人もたくさんいます。女性シンガーもですね。ボビー・バードもバツグンのノリを持つ一流歌手なんですが、JBに義理立てしている所が何ともドラマを感じます。

http://www.youtube.com/watch?v=SzlpTRNIAvc

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◎マディ・ウォーターズ・・・ブルースの帝王。このオッサンがまた凄い。マイルスに比べれば知名度は落ちますが、ブルース界での位置はマイルス以上に帝王でしょう。ここはひとつ『ベスト・オブ・マディー・ウォーターズ』から聴いて下さい。彼のバックバンドから巣立った有名アーティストも多数。バックの演奏を聴くためにマディを聴くという人もいるぐらいの充実度です。シカゴ・ブルースの美味しい所は、ジャズ・ミュージシャンのインタープレイにも匹敵します。ブルースは、入り口は単純、奥はやたらと深いです。
まだブルースなんて聴いた事もないという方、とりあえず『ベスト・オブ・マディ』から始めましょう。
マディもセックス・シンボルみたいな言われ方をしておりそういう面は確かにありますけど、初期のギター・プレイとかも聴いてみると、いたって真っ当な本格派のブルース・アーティストであり、先ずはそこから話を始めて欲しいと常々思っています。

http://www.youtube.com/watch?v=ez5izCf2DLI

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サム・クック

※2005年の記事です。

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◎『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』86年発売のベスト盤・・・最近、紙ジャケ仕様でサム・クックのアルバムが発売され、ベスト盤も含まれていますが未聴ですので、私が持っているものを・・・。これなら先ず間違い無しです。サム・クックを聴いた事がないけど興味はあるという方は、これから聴きましょう。特に歌い回しに注意して下さい。現代の歌手にもつながる所があるかと思います。

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◎『ハーレム・スクエア・ライブ』63年のライブを85年に発表(なんてこった)・・・サム・クックの諸作を聴くと、スムーズな歌い口が印象に残ります。ところがこのライブ盤は、発売当初から「荒々しいサム・クック」に話題が集中した熱い1枚です。それまでのライブ盤といえば、『ライブ・アット・ザ・コパ』という、白人を観客に、スタンダードも交えて歌うといったタイプのものだっただけに、黒人街での活き活きとしたサムの歌唱に、聴く者たちは圧倒されたのです。
是非ベストを聴いてから、ライブ盤へ。私はLPでしか聴いた事がないけど、CDならより一層凄いと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=sM6_ZDvB70o&feature=related

サム・クックのレコーディング経歴をレーベル別に見ていきます。まず、ソロ活動をする前にソウル・スターラーズという人気ゴスペル・グループにおり、ソロになった=ポップ・ミュージックの世界に入ったという事で、非難を浴びたような側面もあったそうです。この時期は黒人音楽の名門レーベル<スペシャルティ>に所属していて(1951~57)、所謂順風満帆だったのに、あえて無名の<キーン>レーベルからソロデビューを果たすという「英断」を彼は下したわけです。

●<キーン>(KEEN)時代・・・57~60年

乱暴な書き方かも知れませんが、サム・クックといえばやはり、最も成熟しているのは<RCA>時代で、今<キーン>時代を改めて調べてみましたけど、曲目を見てもあまり食指は動きませんでした。数年前にオリジナルの体裁でCDが出たような気もしますが、はっきりと分かりません。ビリー・ホリデイのカバー集等もあるようです。熱心なファンでなければ不要と思います。色んな解説を読むと年長者向けのポピュラー・ソングが中心で、「黒人音楽」の範疇には入れにくいもののようです。

●<サー>(SAR)時代・・・59~65年(ご紹介している編集盤の録音年であり、サムは64年には亡くなっています)

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時期が<キーン>と<RCA>の両方と重なりますが、このレーベルはサムが共同オーナーとなり、自分のレコーディングをするというより、新人発掘人またはライターとしての実力を発揮した舞台です。2枚組みのCDでまとめられており、私持っています。ソウル・スターラーズ、サムの後にスターラーズ入りしたジョニー・テイラー(マイ・フェイバリット!)、ボビー・ウーマックの兄弟グループ・ヴァレンティノス(ストーンズがカヴァーした「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」も有り)、サムの実弟L.C・クック等のラインナップで、ゴスペル、ソウル、ブルースと黒人物のコアな部分がフューチャーされています。黒人音楽に興味の有る方はお薦めしますが、「必携の1枚」というほどでは無いです。それにしても、この編集盤は、つくづくサム・クックのブラックネスを感じるんですけど、じゃあ<キーン>時代は何だったのと訊きたい気もします。しかし、実は今こうやって調べてみて感じた事は、ゴスペル→ポピュラー・ソング→黒人音楽の原点を経て完成されたサム・クックの音楽が<RCA>時代であり、もっと重要な「ソウルの誕生」につながっているのかも知れません。

●<RCA>時代・・・60~64年

データによると12枚、先にご紹介した『ハーレム・スクエア・ライヴ』を加えるとオリジナルは13枚となります。実際に購入するのに、コレ!とは決められません。やはりベスト盤がお薦めです。第一回でご紹介したベスト盤で充分ですが、この際ドカーンと手に入れたい方には、全96曲・・・<キーン>から<RCA>から『ハーレム・スクエア・ライヴ』まで入っている『ザ・マン・フー・インヴェンティッド・ソウル』というBOXが有ります。

http://www.youtube.com/watch?v=oqzv1ZS6uZs

●その他編集盤など・・・昔から定評が有るのは<スペシャルティ>から出ている『トゥー・サイズ・オブ・サム・クック』。ゴスペル期のサムが楽しめます。
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DVDでは2003年に出ている『サム・クック-レジェンド』がお楽しみ映像満載のようで、本人の物はどうだったか分かりませんが、色んなミュージシャンのインタヴューも収録されています。私まだ観てません。もし、知ってる人がいたら教えて下さい。

●サム・クックは31年生まれ。生きていたらまだ70ちょっとです。きっと今だに甘い声を聴かせてくれていたと思います。しかし、哀しい話ですが、64年・33歳の若さでモーテルの女主人に射殺されています。女性関係のもつれ説と、人種差別説のふたつがあります。ああ、そうか。撃ち殺した女も生きてるかも知れない。自分が黒人音楽の財産をひねりつぶした事がわかってるんだろうか。

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私は、サム・クックとチャーリー・パーカーとロバート・ジョンソンをいつも並べて考えます。それぞれのジャンルでイノヴェイターであった3人、死ぬのは運命だったんでしょうけど、「もし生きていたら」とどうしても考えてしまいます。

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オーティス・レディング

※2005年に書いた記事です。

http://www.otisredding.com/

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日本のソウル・ファンでオーティス・レディングから入る人は多いような気がします。私の場合は『ライヴ・イン・ヨーロッパ』でしたが、人によっては「ドック・オブ・ザ・ベイ」だったり「モンタレー・ポップ・フェスティバル」の映像だったりします。

私個人の意見ですが、オーティスは「思い入れ」を加えて聴くシンガーだと思います。

歌は上手いですけど、歌唱力のレベルがかなり高いというほどでは有りません。特に後年「ドック・オブ・ザ・ベイ」の頃は喉を痛めて、冷静に聴くとかなりきついです。しかし、そもそも冷静に聴けないのがオーティスです。これは何でかなあと思うのですが、ひとつは、一生懸命、ひたすら一生懸命に歌うその姿から来るのではないかと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=UCmUhYSr-e4

ちょっと例は悪いかも知れませんが、セールスマンがふたり居て、ひとりは実に上手く商品を説明し、買う気にさせる。もうひとりはちょっと商品説明能力に劣るんだけど、とにかく一生懸命汗を流しながら説明する。どちらからも買いたくなるんじゃないでしょうか。そして、どちらもきちんと仕事をしている事になると思います。何となく前者がサム・クック、後者がオーティス・レディングのような気もします。一概的にはいえませんけどね。シンガーとしてはオーティスは完璧ではないんです。多分声の質とかもあるかも知れませんが・・・。しかし、アーティストとしては、ふたりとも素晴らしい!そこにランク付けはできません。

オーティスは1941年、ジョージア州メイコン生まれ。残念な事に、1967年26歳の若さで飛行機事故で亡くなっています。この事故ではバーケイズという優れたファンクグループのメンバーも亡くなっています。いつか写真週刊誌だったと思いますが、オーティスの遺体が海から引き揚げられている写真を見た事があります。眠っているような感じでした。声の衰えは有ったものの、自分のレーベルも創ったりして、まだまだ、これからという時の悲劇でした。

所属レーベルは当初<スタックス>ですが、後に<スタックス>は、<アトランティック>に吸収されますので、ほとんど<アトランティック>から出ている感覚ですね。<アトランティック>がまだロックに手を出してない頃の話です。

1964年の『ペイン・イン・マイ・ハート』を皮切りに亡くなった後に発表された『ドック・オブ・ザ・ベイ』を入れるとオリジナルは8枚です。その内1枚が<スタックス>の看板女性歌手、カーラ・トーマスとのコラボレーション。1枚は最初に上げたヨーロッパライヴです。私が

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特に好きなのは『オーティス・ブルー』。「マイ・ガール」「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」「ロック・ミー・ベイビー」等好きな曲が有るのが理由で、アルバムの出来としては、どれも間違いないでしょう。詳細は添付したHPを見て下さい。好曲がバラバラに収められているような感覚です。

http://www.youtube.com/watch?v=HWlIsvzT__M

そして、それらの曲をひとつに集めた形なのが、『ライヴ・イン・ヨーロッパ』です。ガンガン飛ばすオーティス。切々と歌い上げるオーティス。生身のオーティスを感じられる、歴代黒人音楽のライヴ盤の中でも、かなり高得点のレコードといえます。
http://www.youtube.com/watch?v=2fL1NTSga78&feature=related

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●編集盤・・・92年発売の『リメンバー・ミー』は是非聴いて頂きたい。ほとんど未発表曲で構成されており、本人も音も状態の良いお薦め盤です。バックは通常通りブッカー・T&MG’ズですが、バックの音の聴こえも良くてオーティスの歌唱を盛り立てています。
変わった所では、「ドック・オブ・ザ・ベイ」のカモメの鳴き声のSEをオーティス本人が声でやっているというのもあります。これがズッコケじゃなくて決まってる所がニクイ。
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あと、私は持っていませんが、98年に出されている『オーティス・レディング・アンソロジー』。ソロになる前のパイントッパーズ名義の「シャウト・バマラマ」という曲が入っています。これが結構評判だったような・・・。ただ2枚組で、ちょっとジャケットがかっこ悪い。

共に68年に発売されている、『イモータル・オーティス・レディング』とライヴ盤『ウイスキー・ア・ゴーゴー』も昔から評判の良いアルバムです。

尚、オーティス・レディングが設立したレーベルは<JOTIS>ですが、内容は分かりません。

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コンテンポラリー・ディープ・ソウルの世界

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以前、「好きな音楽ライター」としてご紹介した高沢仁さん編集のアルバムがレコード棚から見つかりましたので、ご紹介します。『ラフ・エッジ・・・ベスト・オブ・コンテンポラリー・ディープ・ソウル』と題された、日本の<Pヴァイン>から出ているアルバムです。
80年代後半、元<スタックス>のアル・ベルが創ったレーベル<エッジ>のコンピです。
全体的にバックの演奏がやや弱かったりするんですが、グッとくる曲もあります。都会的サウンドと田舎っぽいソウル(サザン・ソウル)の狭間を行く音群です。
今回は聴きながらレヴューして見ました。

①カール・シムズ「17デイズ・オブ・ラヴィング」・・・大丈夫か、このCD。回転数がおかしくないかと思うほどゆったりとした出だし。「この世界」の入り口としては適しています。ややかすれ気味の甘い声。J・ブラックフットが看板のレーベルだったので皆ブラックフットに似るのか?後半入るギター・ソロもいかにも昔風。
http://www.youtube.com/watch?v=eyB88hVlX-M

②ランディ・ブラウン「アット・クリスマス・タイム」・・・クリスマス・ソングのせいか馴染みやすいフレーズ。ホーマー・バンクスが曲に絡んでますね。歌唱としては中庸ですが、レベルの高い所での中庸です。

③ボビー・マックルーア「ユー・ネヴァー・ミス・ユア・ウォーター」・・・ゴスペルライクな、太く豊かな声がここではしっかりしたバックの間を漂います。サザン・ソウルの殿堂<ハイ>レーベルにも録音が有ります。この曲じゃなくこの人がです。

④同上「イット・フィールス・ソー・グッド」・・・90年代以降のソウルにもつながりそうな都会度が強い曲ですね。もうちょっと音を硬めにすれば今年の新譜といっても通用しそう・・・。女性コーラスにもうちょっと力感が欲しい。
http://www.youtube.com/watch?v=XxkjPx-7FNw

⑤同上「アイ・ウォント・トゥー・ビー・ウィズ・ユー・トゥナイト」・・・このアルバムで一番良い曲じゃないかなあ。ヴォーカルの突き抜け具合が微妙に抑制が効き、ほどよくとどまっている。だから余韻が残り、胸を衝つんです。ソウル・シンガーはお手本にしなさい。余計なお世話か。

⑥マーシャル&バッブ「レット・イット・ビー・ミー」・・・ここのレーベルの女性コーラス鍛え方が足らんなあ。気にしなきゃ良いんですけどね。ちょっと曲長すぎですね。余り世界に浸れません。

⑦メイン・イングリーディエント「イフ・アイ・ワー・ユア・ウーマン」・・・ソウル界では名を成しているグループ。グラディス・ナイトのカバーです。んー、グラディスの方が良いなあ。ヴォーカルは、高音が震え気味になる所はまあまあ好きです。いやいや聴き進むと結構終わりの方良かったです。

⑧ジミー・ボー・ホーン「ショウ・ミー・ハウ・マッチ」・・・アップ・テンポですね。ロックに似たようなフレーズが有る。ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」?いや、まだ似てるのが有ります。思い出せない。

⑨ボビー・マーチャン「ゼアーズ・サムシング・オン・ユア・マインド」・・・ジャンプ・ブルースの雄、ビッグ・J・マクニーリーの曲。そうだったのか。ちょっとこのアルバムでは異色となる。
http://www.youtube.com/watch?v=nE7jEjTcX-4

⑩デイヴィッド・ディー「ドント・リーヴ・ミー・」・・・この人もブルースとソウル両方を股にかけている。歌はなかなかのものです。<Pヴァイン>から出ているアルバムも結構いけますよ。

⑪J・ブラックフット「レット・ミー・プット・ユー・アップ」・・・御大登場。⑤の曲とこの曲あたりが当アルバムのメインです。ブラックフットは名門グループ、ソウル・チルドレンを支えた(というかメンバー4人同レベル。異常にレベルの高いグループです)歌手。独特のかすれ声は、発するだけで涙を誘うようなパンチ力。ああー、曲も良いなあ・・・ホーマー・バンクスとラスター・スネル。鳥肌立ちまくりでした。彼の曲の中ではまだ普通の方なんですけどね。

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R・ケリーの存在証明

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R・ケリーの『ハッピー・ピープル/ユー・セイブド・ミー』。2枚組で、1枚目がダンス曲、2枚目がゴスペル曲という構成。聴きながらのレヴューです。ちょっととりとめが無くなるかも知れませんがご容赦下さい。本来ならこれを改めてまとめるのがスジでしょうが、あえて考え進んでいる過程をお見せします。考える方としては楽してますけど・・・。1枚目と2枚目を分けてブログします。

【DISC 1】ハッピー・ピープル

①ウェザー・マン・・・ラジオのジングルとDJ的語りで、時代を戻します。ほとんどステ
ィーヴィー・ワンダー風の曲調でスタートします。2曲目に自然とつながります。

②レッド・カーペット(ポーズ、フラッシュ)・・・マーヴィン・ゲイ風の「フゥー」という掛け声もかかり、①同様ダンサブルな曲。試聴コーナーにDISC 1は「ダンサブル・サイド」とも書いてあったので、ほとんどこの感じかな?性急な所の無いゆとりのリズムは我々オールドスクーラー向きです。

③ラヴ・シグナルズ・・・曲は切れ間なく続きます。ベースの微かなチョッパーと、ドラムの奇をてらわないリズムが心地よい。ここまでヴォーカルも良い感じ。歌が少し上手くなったか(失礼な)?もっとも、声を張り上げる部分がここまでは無し。ふと、思ったけどこの人プリンスと組んだらどうかな?・・・プリンスがちょっと黒くなるだけの話か。ジングルのような「L・O・V・E」で次の曲へ。

④ラヴ・ストリート・・・やっぱり、あんまり歌は上手くないか。ちょっと声がひしゃげたような感じになる、そのひしゃげ具合が気にかかります。それはともかく、ダンサブルは曲は続きます。バック・コーラスも昔風のフレーズを披露。

⑤レディーズ・ナイト(トリート・ハー・ライク・ヘヴン)・・・ギターのフレーズが微妙なアクセントになっています。しかし、ずっとここまでノン・ストップでダンス曲続いています。

⑥イフ・・・のりのりだったDJが静かに語り始めます。やや落ち着いた感じ。まさか続けて歌ってないだろうけど、一部ヴォーカルが苦しそうになる感じもある。またしても、ふと思いましたが、スティーヴィー・ワンダーをゲストに読んだら面白かったかも・・・あまりにおなじような感じで駄目か。曲の盛り上がり部分で声を重ねて、終わるとまたDJ風になります。「無事着地した」印象。

⑦ザ・グレイテスト・ショウ・オン・アース・・・ラヴ・バラードです。あー、マーヴィンに歌わせたい。いやいや、もう言いますまい。ちょっとクサいけど良い曲です。再び「L・O・V・E」のジングル。

⑧イッツ・ユア・バースデイ・・・これもやや落ち着いた感じ。「トゥ・トゥ・トゥ、トゥ・トゥ・トゥ・トゥ」とややディスコ風合いの手。

⑨ステッピン・イントゥー・ヘヴン・・・雰囲気をちょっと変えるタイトなダンス曲。やっぱりベースとドラムが軸です。このアルバムをここまで聴いてきて、R・ケリー的メロディーより、古臭い基本的リズム隊が印象に残ります。盛り上がった所で再びDJ登場。

⑩イフ・アイ・クッド・メイク・ザ・ワールド・ダンス・・・これとかはメロディアスですね。しかし、リズムは変わりません。元々ベイビー・フェイスとかと比べると、リズムは強調している人では有ったか・・・。しかし、ただ踊るための曲というわけでなく、全体に漂う温かい雰囲気は最初からずーっと続いてます。この辺はスティーヴィーの影響か?

⑪ハッピー・ピープル・・・マーヴィン度大。「マーシー・マーシー」とか歌いそうな出だしだった。いやホント、何度も言いますが、リズムを基礎にしたメロディー創りという、R・ケリーらしさをまた表明したアルバムといえるでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=ZbKFoUhBRPs

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【DISC 2】ユー・セイブド・ミー

①3ウェイ・フォーン・コール・・・今回楽しみだったケリー・プライスとの共演。出だしから来ました。DISC 1とはガラッと趣が変わり、解説に有った様に、ゴスペル風です。R・ケリーのこれまでの作品でも「ゴスペル」は重要な位置を占めています。もうひとつの重要な要素「官能」と「ゴスペル」は表裏一体です。気持ちを高ぶらせて、自分は孤独では無い事を知らしめ、愛を感じ心を豊かにするものです。スケベとかHのレベルではないものです。
ケリーの他にキム・バレルとモーリス・メイホーンも参加(不勉強で知りません)。

②ユー・セイヴド・ミー・・・タイトル曲が静かに歌われます。今回のアルバムに関しては、曲を整理して1枚にするという考えも有りますが、あえて彼はかつてのLPの感覚でA面とB面を創りたかったのではないでしょうか?聴く側にも雰囲気を変えさせ、R・ケリーの音楽に有るものをくっきりと浮かび上がらせ、より彼の存在が解りやすい作品にしたかったのかも、という気もします。
http://www.youtube.com/watch?v=CoT_7_nRgLY&feature=channel

③プレイヤー(Prayer)・チェンジズ・・・いかにもR・ケリー風バラード。DISC 1のようにリズムを強調するのも良いけど、こういうしっとり路線も泣けます。ゴスペル的コーラスがすかさず入れて、至上の時へ連れて行きやすい曲調です。R・ケリーの歌も一生懸命さが伝わります。

④ハウ・ディド・ユー・マネイジ・・・良い曲です。これはDISC 2の方が完成度が高いような感じです。1枚目での「ダンス曲集」というポリシーは理解しますけど・・・。そうかあ、そう考えるとこれはやっぱり2枚組で雰囲気を変えたのは成功かも知れません。

⑤アイ・サレンダー・・・バラードは続きます。ゴスペル・サイドというより、ゴスペルに影響を受けたバラード・サイドというのが正確な説明になるのかな。

⑥ホウェン・アイ・シンク・アバウト・ユー・・・R・ケリーの世界満喫ですね。結構歌も上手く聴こえます。こういう、バックが落ち着いた感じの方が彼に合ってるんだと思います。声を張り上げる部分も「聴ける」。

⑦ダイアリー・オブ・ミー・・・しっとり系。スティーヴィーぽさが出てます。やー、良い曲だわ。じわっと鳥肌立ってきます。この辺りの曲は甲乙付けがたく良い曲続いてます。

⑧スピリット・・・これはそうでもない。ちょっと盛り上げ方が急すぎる。タイトルからして気張りすぎたか・・・そんな単純な事はないでしょうけど。

⑨リープ(Leap)・オブ・フェイス(Faith)・・・また落ち着きました。いやあ、考えが二転三転して申し訳ないけど、やっぱり曲を絞って1枚にした方が良かったかも・・・本来ならそうすべき所だけど、どうしても分けたかったんでしょうね。どちらにしろ支持します。大団円的ゴスペル。クワイヤーと絡んだ時のヴォーカルワーク、なかなか自在な感じで良いです。

⑩ピース・・・さあ、最後の曲。平和を歌って終わりか。深い音のパーカッションをお供に歌い出します。後ろのコーラスも低く始まり、どこかアフリカ的、というか「民族的」といった方が近いか。終焉にふさわしい落ち着き方です。最後の最後は予想通り、アフリカのジャイブ・コーラスをちょっと匂わせ、すっと終わりました。しつこくなくお見事!

後、今回のはジャケットも昔のソウル風で、インナースリーブには、マーヴィンの『アイ・ウォント・ユー』のようなイラストも描かれています。彼に限らず、先人へのリスペクトを忘れず、しかも音で表現できる人は、今後も生き残り、素晴らしい作品を残してくれるはずです。

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アレサ・フランクリン

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●<コロムビア>期

アレサは1942年、ソウルの聖地メンフィス生まれ。とはいえ、彼女が生まれた時点では、「ソウル・ミュージック」はまだ存在していません。彼女が「ソウル」を創ったひとりですから当たり前ですが・・・。父親は著名な牧師のC.L.フランクリン。実は親子での録音が最初です。56年~60年、<チェス>の傍系<チェッカー>に吹き込んでいます。しかし、レコードとして登場するのは、61年からの<コロムビア>となります。この頃のはLPの2枚組で持ってましたが、実は余り面白くなかったです。ポピュラー・ソングで、歌の上手さは伝わりますが、いわゆる「ソウル」ではありません。いなたい所が無く、バックも伴奏しているだけで、アレサと絡みません。この時代しか知らないのならともかく<アトランティック>の傑作群を前にしたら物足りないです。しかし、<コロムビア>のソースで気になる2枚組アルバムも出ています。2002年のリリース『ザ・クイーン・イズ・ウェイティング』・・・これが結構評判が良いようです。あまり黒人臭くなく、ポピュラー・ソングの方が好きな方は、こういうのが良いかも。

●<チェッカー>期

<チェッカー>の親子録音は、LPでリイシュー物を持ってましたが、真っ当なゴスペルでした。アレサの最初に、これを聴く必要はないでしょう。

http://www.aretha.jp/Discography/A56.htm

●<アトランティック>期

67年~79年までとなっています。私が持っているのは『貴方だけを愛して』『レイディ・ソウル』『フィルモア・ウェスト・ライブ』です。せっかくですからひとつずつ取り上げましょう。

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『貴方だけを愛して』は67年。アレサの歌声だけでなく、バックの演奏の渋さも特筆もの。「コール&レスポンス」の手本がここに有ります。演奏とコーラスとアレサがヴィヴィッドに絡み合い、至高の時へ誘います。私はこの中から一曲選ぶ事はとてもできませんが、「ドクター・フィールグッド」とか非常に好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=Cz__DQY2abo

『貴方だけを愛して』と『レイディー・ソウル』はほとんど似たような感じですが、若干『貴方だけを・・・』の方が渋いかも知れません。女レイ・チャールズのような感じですよね。レーベルが同じ<アトランティック>というのも有りますが、<アトランティック>自体が「黒人音楽の新しい形」を模索していたような気もします。「ソウルの誕生」に一役買う、というかかなり重要な位置を占めていたといえます。

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さて、『レイディー・ソウル』は68年。私はこのアルバムとオーティスの『ヨーロッパ・ライヴ』を一緒に買って、しばらくはこの2枚ばかり聴いてました。当然LPですから、一曲目から聴く事になるので(器用に針を落とせば途中から聴けるけど)、最初の「チェイン・オブ・フールズ」は今だに耳から離れない感じです。この曲、一見何気ないけど、何度も何度も聴く内に「ああ、黒っぽいフィーリングってこういう事かなあ」と「意識」として把握できた様な思いがします。一種の「刷り込み」みたいなもんでしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=8Lx52sBLtKI

名作「エイント・ノー・ウェイ」や「シンス・ユー・ビー・ゴーン」、カバーの「グルーヴィン」「ナチュラル・ウーマン」(キャロル・キング大したもんだわ)等さんざん聴いていても色褪せません。
やはり、こちらの方が少し『貴方だけを・・・』よりバリエーションが多いみたいです。

いずれにしても、この2枚は、黒人音楽アレルギーでもない限り絶対買って損はしません。<アリスタ>のアレサしか知らない方は、特に聴いて頂きたいです。

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71年ライブの名盤『ライブ・アット・フィルモア・ウェスト』。最高の充実度を誇る<アトランティック>時代の、ある意味集大成の歌唱がここに有ります。
ゴスペルというライブ性の高い音楽がルーツのアレサ。ここでも、演奏陣だけでなく観客とも一体となってキリッとしながらも温かみの有る音楽空間を創り上げています。

因みにこの時のバックは、サックス奏者のキング・カーティスのバンドで、彼ら自身もワンステージ努め上げ『フィルモア・ライブ』を残しています(好盤)。

話を戻します。私がアレサの『フィルモア』で、特に印象に残っているのは「明日に架ける橋」です。ここに「シャウト」のお手本が有ります。原曲のイメージが殆ど無く、「アレサ流」に自由自在に曲が進んで行き、聴き終わるのが惜しいぐらいです。下の動画はフィルモアとは無関係ですが、感覚は掴めるでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=m_rtPIFdY0A

アレサの特長として「浮遊感」を上げましたが、正にここでの歌唱は聴いていてフワッと翔んでいく様な気持ち良さがあります。もちろん力強さも兼ね備えています。今のアレサにこの時の勢いを取り戻せというのは、やはり無理なんでしょうか・・・。

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本格的ゴスペルライブをご所望なら、『アメイジング・グレイス』でしょう。最近コンプリート盤も出ています。これは私持ってないんですが、内容は間違いないでしょう。実は何故これを買わないかというと、私個人の意見ですけど、ゴスペルソングを真っ当に歌うアレサより、『フィルモア』の様に、ソウル・ミュージックの中にゴスペル・フィーリングを吹き込む(ゴスペル・フィーリングを吹き込む事でソウルが誕生したんでしょうけど)アレサの方が好きなんです。これは完全に私の好みという事でご了解願います。
http://www.youtube.com/watch?v=Uyi1bW19Cm8

さて、その他のアトランティック盤ですが、特に評判の良いものだけ列挙しておきます。
68年の『アレサ・ナウ』、69年の『アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー(小さな願い)』、70年の『スピリット・イン・ザ・ダーク』、72年の『ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック』、76年の『スパークル』辺りでしょうか・・・実は私買いそびれたものばかりです。なあんか買いたくなってきたなあ・・・もし、手に入れたらレヴューさせて頂きます。
この後、79年まで<アトランティック>に所属します。

●<アリスタ>期・・・1980~現在

実は<アリスタ>というレーベル自体は好きです。名前を知らないアーティストでも面構えが良いか、プロデューサーを知っていて<アリスタ>だったら買う可能性高いです。
無難な作りなんですよね。バリバリ今風でもなく、かと言って時代遅れでもない・・・アレサにとっては居心地が良いかも知れません。

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私が持っているのはLPで『ジャンプ・トゥー・イット』、98年ローリン・ヒル参加の『ローズ・イズ・スティル・ア・ローズ』、それとベスト盤です。この中でどれが一番良いかというと、ベスト盤になってしまいます。不満は有りますが、ぎりぎり許せるラインですね。よく編集されてます。

いつの頃からかアレサは、貫禄だけで歌っている感じがします。迫力あるんだけど、それだけなんです。昔の余裕は、浮遊感はどうしたんだって言いたいんです。『ジャンプ・トゥー・イット』を初めて聴いた時、実に虚しかった。気が抜けてしまいました。『ローズ・イズ・スティル・ア・ローズ』も一番良かったのはナラダ・マイケル・ウォルデンプロデュースのバラード。彼のように昔のアレサを知っていて、バラードだったらどうにかって事ですね。

しかし、ソウルアルバムとしては、85年の『フーズ・ズーミン・フー?』、91年の『ホワット・ユー・シー・イズ・ホワット・ユー・スウェット』とかは評判が良かったようです。最新の2003年『ソー・ダム・ハッピー』は声も元気が無く、試聴を途中で止めました。そして、入院・・・とにかくまず元気になって欲しいです。そして、<アトランティック>が忘れられないファンを吃驚させて欲しいのです。

彼女が、黒人音楽の女性歌手では、初めてポピュラー寄りに立った人かなと思います。それまでは、黒人はジャズシンガーの範囲で留まっていたような気がします。アレサが活躍した頃はソウル・ミュージックの確立期で、<アトランティック>、<スタックス>の他<モータウン>等も、ソウルを全世界に広める役割を果たしました。そのムーウ゜メントの中で世界に向けて、黒人音楽の素晴らしさをエネルギッシュに伝えてくれた偉大な人です。
あれだけ自分をしっかり持っているメアリー・J・ブライジでさえ、アレサの前では緊張し、心から崇拝するのです。

また、かつてブルースが<チェス>レーベルだけでなく、各都市に存在したレーベル・アーティストが有象無象に居た為に発展したのと同様、その頃のソウルも各都市に乱立した状態が背景に有ったので、多くの人に受け入れられ、「ポピュラリティを持った黒人音楽」として誕生したんだと思います。

アレサが凄いのは、その重要な時期に「頂点」に立っていた事です。各地方にいる腕の立つ女性シンガーは大抵、「シカゴのアレサ」とか「テキサスのアレサ」とかいう表現をされてしまいます。それも可哀想だし、評する方も芸が無いなあとも思いますが、影響力の大きな存在であった事は確かです。

アレサが何故「女王」になり得たか?

私が思うに、どんなジャンルでも消化するヴァーサタイルな面が有ったからではないかと思います。たとえぱビリー・ホリデイ、チャカ・カーン、アニタ・ベイカーなと゜はアレサより個性が強いような気がします。「個性が強い」とは「クセやアクが有る」という意味ではありません。しっかりした「スタイル」が見えるという意味に近いです。もちろんアレサにも「アレサ節」みたいなのは有りますが、その「アレサ節」がどんなジャンルとも上手く調和しているんです。これを批判的に見るなら「節操がない」といえるかも知れません。この辺が微妙では有りますが、総合的に見て「歴史に名を残す素晴らしいアーティスト」である事は間違いありません。

別の言い方をすると、私は「セルフ・プロデュース能力」という言葉をよく使いますが、アレサの場合自分をプロデュースする事はできなくても、提示された音楽の材料を見事に料理する、超一級の調理人的歌手なんだろうなあと思います。

※2005年現在の原稿です。その後様々なアルパムか゜出されています。

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レイ・チャールズは神に試されたのか?

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http://www.youtube.com/watch?v=1Ejtea-WtmU

映画『レイ』。黒人音楽好きとしては、たまらない描写の連続に感激しました。そして何よりも、レイ・チャールズという音楽家の「生身の物語」に触れ、感動しました。この2点に分けて思いを綴ってみたいと思います。

●音楽背景など

日頃、マニアックな話は避けている所ですが、どうしても我慢ができません。あの<アトランティック>のスタジオの壁に貼ってあるチャック・ウィリスやルース・ブラウンのポスターを見た時点でまず感激・・・ちらちらしか見えなかったけど、その辺が又良い。

他にも映画全体の設定・・・田舎や街の風景、酒場の喧騒、演奏シーンの生々しさ、体験した訳じゃないけど実にリアルで感心しきりです。そもそも・・・考えすぎかもしれないけど、昔風の顔形の人・・・男は角ばって鼻が広がり気味、女性は目が丸っこくてどちらかといえばふくよかタイプが多く、男女共、顔の色が黒に近いチョコレート色の人が多かったような気がします。回りの雰囲気創りも関係有るとは思いますけど・・・。

音楽関連では、「メス・アラウンド」が<アトランティック>社主アーメットの作品で、彼が歌って聴かせたのには笑っちゃった。曲といえば、私が黒人物の聴き始めに買ったレイ・チャールズの<アトランティック>盤に「ナイト・タイム・イズ・ライト・タイム」が入っていて、後半レイレッツのマージーがド迫力かつ抜群の「間」で切り込んでくる部分が大好きで何度も聴いてたんだけど、ウラにああいう事情が有ったとは・・・「旅立てジャック!」もあんな時に出来るとは・・・。面白いというか切ないです。

ガールズ・グループの原型がレイレッツというのも、そうだったかという感じ・・・話は変わりますが、女性コーラスって妙に背の高さが合ってなくて、高い人が低い人に合わせてあるマイクに向かうのに「猫背」になるのが私ミョーに好きです。「猫背フェチ」か?

あと一点。レイがまだ目が見えた頃、田舎の酒屋(或いは昔で言うドラッグストア)でピアノを弾く老人から、初めてピアノの弾き方を教わるシーン。「いいか、最初の音はこれだ。次はこうだ」と鳴らしていく基本的な音の進行が、「ドレミ」などでは勿論なく、ブルースの基本「ウォーキン・ベース」(ブルーノート)なのがさすがあ、と思わず感心しました。そうでなくっちゃね。

●レイ・チャールズと音楽の神様

レイ・チャールズが盲目だというのを忘れてはいけません。

レイ・チャールズが闇の中で生活していたという事実に先ず気付かなければ、この映画の感動も15パーセントほど足りません。

いくら家族のために生きるといっても、いくら仲間を大事にするといっても、彼は孤独なのです。その上、彼には「弟の死」というトラウマという言葉では説明できないような「ブルース」がそれに重ね合わさっています。

もっとも、目が見える人間も、突き詰めていけば孤独なんでしょうけど・・・レイが偉かったのは結局それに気付いた事です。妻の本質を突いた言葉が有りました(コレはばらさずにおきましょう)。ドラッグ回復センターの、医師の医療上のアドバイスも自らの為に拒否し、母と弟に心の内で向き合い、最後には「自分の力で」復活したのです。

それにしても、この映画「運命」のようなものを感じます。貴方が「音楽の神様」になったつもりで読んで頂くと少し雰囲気出るかも・・・。

レイは、弟の死の九ヶ月後に全盲となり(黒人の栄養状態が悪く盲目となる人が多かった事は確かにあります。但し、もうちょっと旧い時代かな?)、「音」ひいては「音楽」が彼を支える全てとなり、神様としては彼に天才的才能を授ける事で「音楽」の世界に大きな変化を起こしたかったのかも知れません。

音楽を進化させるために、神の音楽「ゴスペル」さえも利用させ、修行としてのセックスと不倫という名の「悩める愛」を経験させ、スターと大富豪の地位を与え、ドラッグに苦しませました。

「音楽」が自分にとって何なのか、自分は「音楽」を使って何をしなければならないのか
自分で気付かせるために「音楽の神様」が仕向けたような気がしてなりません。

ジョージア州が、人種差別に反対したレイを締め出していた愚行に気付き、公式に謝罪し、帰郷を歓迎した席で、スピーチの主は言いました。

「多くの人々が、人種差別を是正するため政治活動を行っています。もちろんそれも意義ある事です。しかし、ただひとりレイ・チャールズ氏は音楽の力だけで、それを成し遂げたのです」

この言葉を噛みしめると、彼がゴスペル、ジャズ、ブルース、カントリー、クラシックとあらゆるジャンルを自分の感覚で組み合わせ、あらゆる人種・国々の人々を平和な気持ちにさせた事実が認識できます。

ああ、そうか。あのスピーチの主が最後に現れた神様の使いかあ。

混乱させて申し訳有りませんでした。必見の一作である事は間違い有りません。

http://www.youtube.com/watch?v=Q8Tiz6INF7I

http://www.youtube.com/watch?v=jYnnJjR9Dr4

http://www.youtube.com/watch?v=3oYQKjtLWl0

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アーメット・アーティガンの決断

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http://www.youtube.com/watch?v=jYnnJjR9Dr4

レイ・チャールズが最初に所属した<アトランティック>は、映画『レイ』の中でも重要な役どころだったアーメット・アーティガンが共同経営の形で立ち上げました。映画の中で相棒役だったジェリー・ウェクスラーは元ビルボードの記者で、後から入ってきた人です。

映画を観た方はお分かりでしょうが、とても手作り感のあるレコード会社で、いかにもマニア達が自分の感性をフルに発揮して創り上げたという感じがします。

映画の中で、ジェリーが若いスタッフを「トム!」と呼び付けていましたが(トムとジェリー!)、彼はおそらく後に有名プロデューサーとなるトム・ダウドと思われます。

ソウルの名レーベル<スタックス>が<アトランティック>の傘下になった時、トム・ダウドが派遣されたのですが、<スタックス>のスタジオが余りにオンボロだった為、先方のスタッフが「何か必要な物は?」と尋ねた時、「先ず工具が必要だね」と言ったそうです。

全然関係ない話でした。

さて、当初レイ・チャールズは、家庭的雰囲気があり、自分を育ててくれた<アトランティック>を去る気は無かったようですが、多額の契約金もさる事ながら、<アトランティック>にレイ・チャールズの作品を出し続ける権利を取得させた事と、自分の好きなようにやらせるという条件をのんでくれた事が大きかったようです。特に資金力のある<ABC>なら、ストレートな黒人音楽止まりの<アトランティック>に比べ色んな挑戦が出来ると考えたのが大きかったのではないでしょうか?

興奮して大反対するジェリーとは反対にアーメットは沈思黙考し、結局レイの移籍を了承しました。その時アーメットにはレイの考えが読めたんだと思います。

彼の決断はレイの人生に留まらず、音楽界にとって重要な決断だったと今となって思います。彼は目先の「金づる」に捉われず、自分が愛するレイ・チャールズが、自分の好きな黒人音楽をどう変えるのか見たかったんだと思います。

場面はレイ・チャールズの<ABC>での初録音の光景に変わります。私は最初うへーっと思ってしまいました。「ジョージア・オン・マイ・マインド」を歌うバックで白人のオーケストラが曲を盛り上げています。黒人の合唱団が後ろにいますが、ゴスペル唱法(声をバーンと前に出す)ではなく、西洋的なもったいぶった歌い回し(黒人音楽からすると)です。

しかし、良いんです。真っ黒のリズム&ブルースにさんざん浸かった後に聴くと、何だかじわーっと染みるものがありました。

その後、大劇場で白い顔が八割方を占める中で、「カントリーを聴いてくれ」と言って歌い出した時もレイレッツが最初変な感じだったんだけど、やっぱり良いんです。

レイ・チャールズ本人が体に染み付いた音楽を採り上げているのでギクシャクしてないんだと思います。

レイは「してやったり」の気持ちでいっぱいだったでしょう。

そしてアーメットも同様に喜んだのではないでしょうか。

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映画『永遠のモータウン』

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http://www.youtube.com/watch?v=1I5uvqjOVOo

60年代に数々のヒット曲を生み出し、全世界的に黒人音楽の魅力を広めた<モータウン>。

その<モータウン>を、バックバンドの形で陰で支えていた、職人集団ファンク・ブラザーズの物語です。

映画の中でも言ってましたが、アーティストのすげ替えはできても、彼らの代理は有り得ない、というぐらいモータウン・サウンドに欠かせない存在です。

確かにモータウン・サウンドはパターン化され過ぎという見方もあります。しかし、そのパターン自体が強力で、まさに「ヤング・サウンド・オブ・アメリカ」のキャッチフレーズに相応しい、ビートが効いて覚えやすい曲群です。

創る側はマンネリ化せず、新しいサウンド(ある時はアフロ・キューバン、ある時はサイケデリック等々)を取り入れ、各人も、音の出し方やリズム、フレーズを工夫し、演奏に臨んでいます。

誰だったか、有名歌手の伴奏しか経験が無かったメンバーが最初に合流した時、別録りで演奏だけやっていて戸惑ったと言ってました。映画『Ray』にも出てきてましたが、歌との別録りが可能になった時代は、ファンク・ブラザーズにとっても演奏に集中できた一因になったかも知れませんね。

映画のゲスト出演者も楽しめました。一番印象に残ったのはミッシェル・ンデゲオチェロ。「ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」を歌うんですが、ゆったりとしながらも魂がこもっており、静かな熱唱です。

ジェラルド・リヴァートはやはり生まれてくる時代を間違えている。あの頃のモータウン歌手そのもののノリでした。親譲りのダミ声がダンス曲だけでなく、バラードでも切ない感じで出せればもっと良いんだけど、まだまだやれる人だからここはこれで良しとしましょう。

いずれにしても、メンバーの人間的エピソードや世代を隔てたゲストとの会話から、音楽好きって良いなあとつくづく思いました。また、彼らは名前も覚えられていない存在かも知れませんが、皆、誇りとヒューマニティを持っている素晴らしい人達だと思いました。

ジェイムス・ジェマーソンという天才的ベーシストの後釜に白人ベーシストが入ってるんですが、ミッシェルが彼に人種絡みの質問をするんだけど、それに対する彼の返答、彼とミッシェルの所作に感動しました。これはさすがに書くのは止します。

音楽の好きな人、特に自分も演奏してるって人は是非観て下さい。

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ホンモノ

Fi1258735_0e G・C・キャメロンの『ラブ・ソングス・アンド・トラジディーズ』。マストな一枚なので全曲レヴューさせて頂きます。作品は74年、<モータウン>から発売されたものです。
恥ずかしながら70年代ソウルは数多く聴いてませんが、この作品などは70年代前半を代表する一枚でしょう。特に彼の歌唱力とウィリー・ハッチのサウンド創りの素晴らしさが印象に残ります。G・C・キャメロンはテンプテイションズの最新作に参加しており、どうも正式に加入したようです。いやはや、テンプスはホント不死鳥です。スケールが違います。

①イフ・ユー・ドント・ラブ・ミー・・・軽快な出だしですが、声は熱い。スティーヴィー・ワンダー作ですが、スティーヴィーは間違ってもこんな風には歌わない(良い意味で)。途中でファルセットに転換する所はゾクゾクします。まずは挨拶代わり。

②カム・ゲット・ディス・サング・・・冒頭から吠えます。74年の作品なのに、60年代の荒削りなソウルの世界です。シャウトに「悲痛な感じ」が混じる所はJ・ブラックフット的。ウィリー・ハッチ作。私はアルバムの2、3曲目と後ろから2、3曲目というのがよく気にかかるんですが、このアルバムではウィリー・ハッチがしっかり押さえてます。

③アイム・ゴナ・ギヴ・ユー・リスペクト・・・はい、70年代になりました。コーラスグループ仕立てで、「ショウ・ミー、ショウ・ミー・ナウ」「シュガー、シュガー、ナウ」のバックの掛け声が耳に心地よい。楽曲が良いです。ウィリー・ハッチ。
http://www.youtube.com/watch?v=EhHwiW5nhY0

④イフ・ユア・エヴァー・ゴナ・ラブ・ミー・・・また、ソウル・チルドレン辺りの感覚が底に流れています。低い部分以外の声のハスキー度が強いため、都会的なフレーズもディープに包まれています。ドクターでソウル評論家の高沢仁氏が「コンテンポラリー・ディープ・ソウル」と名付けたタイプのソウルの範疇に入ると思います。

⑤レット・ミー・ダウン・イージー・・・これもコーラスグループ仕立て。この曲はじゃっかんヒットしたそうです。ファルセットの多用で、とてもオシャレな感じもします。しかし、シャウトとファルセットと、どちらも使うタイミング、各々の味わいと抜群ですね。ヴァン・マッコイ絡みです。
http://www.youtube.com/watch?v=y6EgwGHMNKQ&feature=related

⑥オール・イン・ラブ・イズ・フェア・・・「ちょっと落ち着け」とばかりにシットリとしたバラードです。もしやと思いきや、やっぱりスティーヴィー。今更ながら凄いメロディメイカーだわ。もっと今の人にもたくさん曲を書いてくれんかなあ。リスペクトはされてますけどね。良い曲だけど、正直言ってこれはスティーヴィーが自分で歌った方が良さそう・・・ああそうか、あまり「作曲者のイメージが強すぎる」というのも考え物か?

⑦リヴァーボート・・・バラードが続きます。鈴木啓志さんがライナーで書いてますが「映画音楽的」。凹凸が無いですね。こういうのもやりたかっんだろうか?

⑧ユア・ラブ・ウォント・ターン・ミー・ルーズ・・・三たびウィリー・ハッチで安心のソウル・サウンド。ギターのカッティングやしなやかに動き回るベース、控えめなストリングス、タイミングよく入るホーン陣・・・良い仕事してます。ウィリー・ハッチみたいな人は体に染み付いているんでしょうね。G・C・キャメロンも実に気持ち良さそう・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=wwZidhWj9Vc

⑨ユー・フォガット・トゥ・リメンバー・ミー・・・泣きのソウルバラードです。「ユー、フォガット」と冒頭切々と歌う所は言葉の壁を越えます。「君はボクの事を忘れたのかい」と心に聴こえます。もうそれ以上の歌詞が要りません。聴く人に感銘を与える、しかもホンのワンフレーズで・・・こういうのが真のソウルシンガーです。後ろのゴスペル風女性コーラスもじんわりしんみり路線です。

⑩ティッピン・・・おお、最後は本人の曲ですか・・・期待するほどのものではないです。ちょっと歌いながらモタモタしている感じ。かえってやりにくいのかな?・・・いや後半なかなか盛り上がってきました。リキが入ると締まります。しかし、9曲目で終わった方が良かったかも・・・。

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メアリー・Jはメアリー・J

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『メアリー』という自分の名前だけのアルバムを創った後、2001年の作品。『メアリー』は自分の顔のキズを見えるようなジャケ写も話題となりました。

その後に出たこのアルバムは「ドラマはもういらない」とタイトルに謳い、シリアス路線の深化か?と思うもののジャケ写は一転して厚化粧。インナースリーヴもセミヌードのようなショットも有ったりして、ちょっとビックリ。但しこの人の場合あんまりエロチックにはならないです。眼が「真剣」なんですよね。

「化粧」を女性の「戦闘態勢」と解釈するなら、再び彼女は強い女性として立ち上がったと考えるべきなんでしょうか?・・・これは考えすぎでしょう。ひとつ気分を変えたかったんじゃないかな?

しかし、どんなスタイルを取ろうともメアリー・Jの「女らしさ」「力強さ」「生真面目さ」はデヴュー以来続いています。

①ラブ・・・じゃっかん、大仰な始まりだけどメアリーの貫禄が滲み出ています。L・O・V・Eとアクセントをつけ、一文字ずつ声を上げてますが心地よいリキの入り方。

②ファミリー・アフェア③スティール・アウェイ・・・有名な曲のタイトルと同名な曲が続くので、おっ?と思いますが良い意味で異質です。両方ともクッキリしたトラックでバックの音は太いんだけど、全然メアリーのヴォーカルの邪魔になっていない。彼女のヴォーカル力もあるでしょうけど。自在に漂っています。③はネプチューンズ絡み。
http://www.youtube.com/watch?v=bxCS-Pa2YyA

④クレイジー・ゲイムス・・・派手さはないが、メアリーのヴォーカルが堪能できます。

②③④と新し目の音が続いた後、

⑤PMS・・・冒頭のブルースギターはレニー・クラヴィッツ。適度に粘って格好良い。歌はじっくりと歌い上げます。底辺にアル・グリーンをサンプリングし、プロデューサーのチャッキー・トンプソン同様アルバムで毎回のように登場する、往年のソウルナンバーに関する「リスペクト」をストレートに出してる曲です。こういう時はメアリーはいたって静かに歌います。彼女自身が陶酔するかのように・・・。

⑥ノー・モア・ドラマ・・・タイトル曲でひとつの頂点に達している感じ。ジャム&ルイス。「ドラマはもうたくさん」と言いながらドラマチックな曲です。大仰ではないですけど。他の曲でもそうですが、メアリー自身の歌声が複数でバックコーラスを努める中、中心のメアリーがこぶしを利かせるのが何ともいえない魅力。この辺が「セルフ・プロデュース能力」に長けると私が思う所です。
http://www.youtube.com/watch?v=BZ9uCiPBIWc

⑦キープ・イット・ムーヴィング・・・ヘヴィーなヒップホップ曲をやってもソウル魂を感じる。結局、彼女の前ではどういうパターンで来ようと彼女のオリジナリティーが勝るという事でしょう。声を張り上げる部分でちょっと「アフリカ的」になったりして面白い。

⑧デスティニー・・・結局『ノー・モア・ドラマ』って前作の『メアリー』路線の延長とも言える。しかし、考えてみれば、どのアルバムにしろメアリーの「入魂ぶり」は共通しているようです。決して妥協しない精神は美しい。インタヴューとか観てもかなりこの人真面目な人なんだと思います。この比較的「小曲」でもメアリーが沁み込んでゆく。ニーナ・シモンがサンプリングされているそうですが、パラパラっと鳴ってるピアノかな。そういえばニーナ・シモンもメアリーの様な独特な「こぶし」を持った歌手ですね。

⑨ホウェア・アイヴ・ビーン・・・シンプルな中、アクセントはイヴのラップ。毎度の事ながらメアリーのラッパーの使い方も上手い。入り方・抜け方が決まってます。

⑩ビューティフル・デイ・・・メアリーの弟が創った曲だそうです。⑦⑧⑨と、この辺りの曲はずっとつながっている感じ。流し続けて心地よいものがあります。悪く言うと「中だるみ」?いやいや、私はメアリーの声を聴いているだけで満足です。ここではさりげないスキャット部とかリズムの乗り方が抜群で「ヒップホップソウルの女王」という称号を思い出します。

⑪ダンス・フォー・ミー・・・ポリスのサンプリング。しかし、エルトン・ジョンを使った時と同じで、総合的にメアリーJの音楽になっている。
http://www.youtube.com/watch?v=VnXdC2WTHFM

⑫フライング・アウェイ・・・しっとりと来ました。タイトルは「ゴー・トゥー・ヘヴン」というゴスペル的概念につながるらしいです(泉山真奈美さんのライナーより)。メアリー節絶好調。

⑬ネヴァー・ビーン・・・ミッシー・エリオット提供の曲ですが、メアリーに違和感無し。メアリーの歌声は強さと切なさを同時に感じる時がありますが、この曲は特にそんな感じがします。ミッシーほどの感覚の持ち主だけにその辺は分かるんでしょう。「メアリーの曲」として創ったんでしょう。

⑭2U・・・しっとり路線が続きます。泉山さんも書いておられるけど、多重録音のメアリーが一段と良い・・・ホント妥協しない人だ。

⑮イン・ザ・ミーン・タイム・・・少しリズムを取り戻したかと思いきや、静かな雰囲気は引き摺ってます。心地良いミディアム曲です。少おしスティーヴィーを思い出します。

⑯フォーエヴァー・ノー・モア・・・詩の朗読です。ちょっと早口だけどこれも計算か?いや、彼女に「計算」は無いはず。真摯な姿勢は伝わります。メアリー節を堪能した頭を冷却してくれる。

⑰テスティモニー・・・オリジナルアルバムでは最後の曲。彼女にしては淡々と歌い続けます。盛り上がらずに終わるのも味が有ります。私はこういう終わり方好きです。

⑱ガール・フロム・イエスタデイ・・・日本盤のみのボーナストラック。えらくジャズ調。これをもしオリジナルアルバムに入れるなら、タイトル曲の後ぐらいの、しっとり系のはじまり辺りに入ると良いかな?とも思ったけど、これはやっぱり入れない方が良いみたいです。

泉山さんが、タイトル曲の解説で「ジャム&ルイスもこんな感じでやれるんだ」と書かれてますが、メアリーの前では感覚が変わってしまうのかも知れません。メアリーは常にメアリーです。「メアリー・J・ブライジ」という自分を表現するために彼女は音楽に携わっているんでしょう。私生活で色々有るようです。彼女は哀しい眼をしているという人もいます。「ブルース」という言葉を私は敢えて使いません。「ブルース」では片付けられないものがあるのです。

彼女の音楽を言い表すのに最も適した言葉は「ああ、また彼女らしいアルバム創ったね」の一言に尽きます。

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黒人音楽の歩み(2)・・・アフリカのDNA

●参考書籍・・・ロバート・パーマー著『ディープ・ブルース』(JICC出版)

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前回、黒人奴隷が連れてこられたアフリカの地域は、大きく分けて3箇所有ると書きました。実は地域的に音楽の特徴が微妙に違い、どれも現在の黒人音楽シーンに結び付けられそうな事が書いて有りますので、この辺りをまとめてみようかと思います。

①セネガンビア・・・最北端をサハラ砂漠に接するセネガル、ガンビア、ギニアの北部となります。ここで特徴的なのは砂漠に近いため森林の数が少なく、通常アフリカ音楽の重要な楽器・太鼓が他の地域ほど発達していません。代わりに見られるのは「弦楽器」。アラブ起源でヨーロッパに渡り、ギターの元になった「リュート」やリュートに「ハープ」が組み合わさった21弦の「ハープ=リュート」(コラはその一種)などが有るそうです。

「柔らかな金属音」と言ったら変に感じられるかも知れませんが、何ともいえない心地よさです。どことなく、カリブの音楽に通じる感じもします。

楽器の変遷も探り出したら面白そうですが、ここでは割愛させて下さい。あくまで「黒人音楽」に関わる部分だけ見てゆきます。

セネガンビアで他に特徴的なのは「グリオ」という「吟遊詩人」。ピーター・ゲイブリエルとも交流が有り、アルバムも多数出しているユッスー・ンドゥールは先祖がグリオとかいう話でした。グリオは特権階級に侍り、称える歌(叙事詩体になっている家系図など)を歌ったり、ストリート・ミュージシャン化したり、農家や労働者を励ます歌を歌ったりしていたらしいです。扱いは複雑で、富と名声、尊敬は得るのですが、悪霊と付き合いがあると考えられ、死ぬときは「野ざらし」状態という悲しい職位でもあるようです。

②奴隷海岸・・・セネガンビアを下り、コンゴ川の上までは打楽器類の複雑なリズム形式に、リードとコーラスの「コール&レスポンス」が加わり、アフリカ音楽に今も見られるようなシンクロした音空間が創られていたようです。更に複数のコーラスが折り重なりポリフォニー(複合音楽)化すると、より複雑になっていくという訳です。はるか昔から「リズム」を音階のように使い音楽を構成している民族のDNAが、アメリカ黒人に受け継がれているのは事実でしょう。

③コンゴ=アンゴラ地域・・・もう少し南下すると、コーラスのポリフォニー化は促進され、二組のセクションに分かれて展開する各々のコーラスの背景から、ソロ、デュエット、トリオというパターンが次々と現れ複雑さを増したりしたとの事です。この辺の合唱音楽のスペシャリストはバントゥー人という人達ですが、彼等より以前に住んでいたピグミー人の手法を受け継いでいるそうです。

さて、地域的に分けはしたものの共通の特長もあります。

●複数の人々で演奏する事が多い・・・しかも、演奏者と観客に分かれておらず、その場に居る人から、特定の楽器をより上手く演奏する者が演奏者となり、他の者は歌を歌ったり手拍子を叩いたりして「参加している」形です。演奏に対して合いの手を入れたり、拍手をしたりするんじゃなくて、「一緒に音楽を創っている」という事です。黒人音楽の「ライブ性」の高さと、各人の音楽に秀でた資質の高さが頷けます。

●音楽による会話・・・コール&レスポンスだけでなく、ピッチ・トーン言語というのが説明されています。この言語は「適当な音の高さで望んだ意味を表す」というもので、平たく言えば音の高低が言葉になっているという事でしょう。30代後半ぐらいから我々ぐらいの世代の方は、ジュジュ・ミュージックというのを覚えていらっしゃらないでしょうか?
ナイジェリアのキング・サニー・アデがトーキング・ドラムという「喋る太鼓」を駆使し『シンクロ・システム』というアルバムをヒットさせ来日公演も盛況でした。
彼のライブを私もNHKで観ましたが、トーキング・ドラムが曲のリズムに合わせて「ドウモ、アリガトウ」と「喋った」のを興味深く覚えています。思わずアルバムも買っちゃいました。

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話を戻しますと、トーキング・ドラムは商品の取り引きをしたり、他人とケンカしたり、訪問者の到着を告げたり、生活の中で使われる事も有ったようです。また、ドラムに限らず、歌いながらフルートを吹いたり(ローランド・カーク!)、ヒョウタンをメガホン代わりに使ったり、より「ホット」なやり方を志していたようです。ジャズのインタープレイとか、リズム&ブルースのドライブ感とか、結構こういう「喋る感覚」「ホットな表現」の名残と考えるのは浅墓でしょうか。

●音を濁らせる・・・ヨーロッパ人がどうしても理解できないアフリカ人の音楽感覚は、「わざわざ音を濁らせる」事らしいです。太鼓の皮や弦楽器のネックにブリキ板を貼り付け、うるさい音を出したり、マリンバや親指ピアノにヒョウタンで作った共鳴器を付け、しかも一部穴を開けて、そこにクモの巣を張り、ファズが掛かったような音を出したりするそうです。この辺もミュート・トランペットやブルースハープのベンディング(音をひん曲げて出す)、しゃがれ声のヴォーカルなどにつながっているようです。

さて、このシリーズ、当面の目標は1920年のブルース初録音なんですが、まだまだそこに至るまで相当かかりそうです。でも、どうせならジックリ取り組みたいので、このペースでやらせて頂きたいと思います。

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黒人音楽の歩み(1)・・・アフリカからアメリカへ・序説

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●参考書籍・・・ロバート・パーマー著『ディープ・ブルース』(JICC出版)
●参考サイト・・・白人による黒人奴隷貿易とアメリカの奴隷制度
※アフリカの国名は、参考書籍のままに書いています。現在と国名が違うかも知れませんがご了承下さい。きちんと調べがついたら訂正します。

アメリカにおける黒人音楽の歴史を辿るには、忌まわしい「奴隷制」の話から始めなければなりません。奴隷貿易は16世紀にスペインが始め、18世紀の産業革命で他のヨーロッパ諸国をリードしたイギリスがかなり進めたようです。変な角度から見ますと、後に黒人音楽の恩恵を強く受けた若者たちが、自分達の手で「ブリティッシュ・ロック」を創り上げる訳ですが、その大元は自分の祖先たちの非人間的な行為に端を発していた訳ですね。

アフリカから「貿易商品」として、アメリカに売買された黒人・・・その気持ちは計り知れないものですが、このとてつもない哀しみの歴史が、あれだけディープな音楽を創り上げたのもまた事実です。

アフリカ大陸の、どの辺りが貿易地であったかというと、主に西海岸となります。初期の頃は、北部をサハラ砂漠と接するセネガルとガンビア地方=通称「セネガンビア地方」が供給先でした。貿易量が増えてくると南に下り、通称「奴隷海岸」と呼ばれる地域=シエラレオネ、ガーナ、トーゴ、ナイジェリア、カメルーンが対象となり、更には第三の地域としてもっと南のコンゴ川河口が対象となったそうです。1807年には米英両国で奴隷貿易は公式に不法とされたのですが、「奴隷海岸」以南では密かに行われていたそうです。
南北戦争が勃発する1860年頃までは続けられていたそうです。

リンカーンの「奴隷解放宣言」は1863年。やっとアメリカ黒人は人間として形式上認められたのですが、たとえばそれから100年経った時点でも、人種差別闘争は行われていた訳です。根深いですね。今だに米国務長官に黒人女性が選ばれると、「黒人女性初の」という冠が付けられます。我々はそれをどう考えなきゃいけないの?ライスさんの事を知る事は必要だけど、彼女が黒人である事をどう処理しなきゃいけないの?何も必要ないでしょ。彼女の働きを期待すれば良いんです。

ちょっと話がずれちゃいましたけど、このままいきます。本当は「黒人音楽」というカテゴリーも問題があるのかも知れません。特に現代では全く分ける意味が無いなあと思う事もあります。しかし、今まで私が聴いてきた「黒人音楽」はやはり分かれてるんですよね。
別に私は差別主義者でも無いし、結局今までのペースで考えていきますけど、今回黒人音楽のルーツを探るために「奴隷制」というテーマに触れて、「黒人音楽」というモノサシでじっくりと、こういう社会的・歴史的問題も考えていきたいと思った次第です。

さて、今回はアフリカの「セネガンビア地方」と「奴隷海岸」辺りの音楽の違いと黒人音楽への影響まで書きたかったのですが、次回に回します。今回は「序説」という事でご勘弁を。

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コパを巡る想い

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マーヴィン・ゲイの『アット・ザ・コパ』<Hip-O>。ライブが収録された65年といえば、マーヴィンがスタンダードアルバムを出していた頃。62年に<モータウン>入りし、ソロで名を成した後、64年から女性とのデュエットアルバムを(彼の本意ではなく)立て続けに出すというか出さされます。それに対して「俺がやりたいのはこういうのだ」とばかりに自己主張した結果のスタンダード集だったんですが、リズム&ブルースファンも<モータウン>もその手の音楽は「想定の範囲外」で不評に終わっています。

私も持っていますが、最初聴いた時ガクッと来たのを覚えています。

後で紹介するサム・クックもそうですが、彼等のフェイバリットの中にはナット・キング・コール、フレッド・アステア、フランク・シナトラといった人達も入っているのは厳然たる事実です。

この『アット・ザ・コパ』でもマーヴィンのクルーナー的側面が強く表出し、実に気持ち良さそうに甘く小粋に歌っています。ソウルファンとしては、バックのオーケストラサウンドは閉口ですが、彼の気持ちを知っているだけに複雑です。

http://www.youtube.com/watch?v=xaAnZxFkgtg

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さて、マーヴィンの一年前64年、サム・クックも同じ場所でライブ盤を創っています。

サムの『アット・ザ・コパ』もソウルファンには評判が悪く、私も持っていません。彼のライブなら『ハーレム・スクエア』で十分というのが私も含めた大方の評価です。

しかし、今回サンプルを聴いたんですが、そんなに悪く無かったですね。

http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1972779

ツボにはまった所の「ゴスペル唱法」が『ハーレム・スクエア』を髣髴とさせる瞬間も有ります。総体的に見て『ハーレム』が上だとは思いますが、そんなに悪いアルバムではないなあと思いました。「風に吹かれて」が完全にサムの歌になっちゃってるよ。

コパ、コパと風水みたいに言ってますが正式名称は「コパカヴァーナ」。今は違うでしょうが当時は高級白人クラブ(NY)です。

両方のアルバムに通じる、微妙な違和感の原因は、多分そういった所にあると思います。マーヴィンやサムが歌いたかった音楽でも、果たして聴衆が聴きたかった音楽なのでしょうか?加えてこの頃は一番黒人暴動が頻発していた時期・・・そんな事まで考えなくてもと仰る向きも有るでしょうが、あえて考えながら聴くと、何だか歌声も切なく思えます。

しかし、ソウル・ミュージックのスタイルが確立され始めた頃でもあります。あらためて、サム・クック、マーヴィン・ゲイの偉大さを思い起こす一助にはなりそうです。

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ジョン・ダニング著『死の蔵書』

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本好きの方は『本の雑誌』という雑誌を御存知かと思いますが、私も25歳ぐらいまで読んでいました。黒人音楽道を歩み始める頃までです。

雑誌の中で活字中毒の人を「活中者」(かっちゅうもの)と言っていたのを思い出しました。私の姉とかは、チラシの文字でも読むと落ち着くらしいので「活中者」と言えるでしょう。

私はブツ次第ですね。音楽を聴くのと同じで、どんなに良い作品と言われても文章のリズムや題材・内容がシックリこないと頭に入りません。もっとも大抵の方はそうじゃないかと思いますけどね・・・。

今回ご紹介するジョン・ダニング著『死の蔵書』は私好みでした。更に、読書家・活中者の方にはより一層楽しめるかも知れません。

舞台が古書の世界で、金銭的値打ちから見た本の世界から、純粋に語られる本の魅力まで・・・本好きの方は「二度三度とおいしい」世界です。

私からすれば一番良かったのは登場人物の描き方・・・主人公は本好きの刑事で、腕は立つがはみだし気味。こういう時は予想通り相棒は淡々とフォローするタイプ。何年も追いかけている敵役は、社会的弱者を蔑みいたぶるサディストで実に憎たらしい。しかもこいつが実業家で金の力も使い、塀の中に入るのを免れている次第です。

被害者は、値打ちのある古書を自分で探し、安く仕入れて古書店等にさばく「掘り出し屋」。生活は苦しく、上に書いた「敵役」の餌食になるタイプだが、手口が違う・・・。

その他の登場人物も面白いです。各古書店の経営者の面々、憎みあう血のつながってない兄・妹、若いが理知的で怖いもの無しの娘、敵役につきまとわれる女性らしい反応をする女性、謎多き女性古書ブローカー、値段より本の内容・読書そのものを愛する老人・・・とにかく多彩な登場人物の魅力に参りました。

ストーリー展開も驚くべき変化ぶりで、単なる犯人探しで終わってません。特に最後の一行で、一挙に謎が氷解するのは小気味良いです。

作者の経歴も面白く、出版社とのトラブルで一旦は筆を折り、実際に古書店を経営していて、長いブランクの後の作品がこれです。

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年齢なんてただの数字

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http://www.youtube.com/watch?v=3twe0D3o5P4

アリーヤの94年作『エイジ・エイント・ナッシン・バット・ア・ナンバー』の邦訳から得たインスピレーションについて・・・。

年齢なんてただの数字

アリーヤはこのアルバム時点で15歳、プロデューサーのR・ケリーは25歳という若さ。二人とも確固たる地位を築いておらず、この作品を打ち出した時、自分達を興味本位で捉えて欲しくなくて、この言葉を前面に出したような気がします。

私生活でもこの二年後二人は結婚します。アリーヤはまだ17ですから、未成年でも結婚できる州に移って結ばれたそうです。

しかし、レコード会社の思惑などで二人は別れてしまいます。

その後アリーヤはティンバランドと組み、時代の寵児となり、女優としても成功します。

R・ケリーも今のR&B界に無くてはならない存在になっています。

ロマン的推測ですが、二人の愛は純粋だったような気がします。R・ケリーの性愛路線の奥にある、透徹したゴスペルの世界は、深く愛したアリーヤの事、そしてアリーヤの悲劇に大きく関わっている部分も有ると思います。

アリーヤの悲劇・・・彼女は更に大きく羽ばたこうとしている時、飛行機事故で死んでしまいます。享年22。

年齢なんてただの数字

彼女の活躍の支えになったかも知れないこの言葉は、結局彼女にとって辛い結果をもたらしました・・・たとえ「ただの数字」でもカウントされなくなった哀しみ・・・「伝説」という名の称号は得ても、彼女の存在自体が寂しく空回りしているようです。

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山田詠美著『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』

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山田詠美の『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』読みました。
ソウルの曲名をタイトルとした八編の恋愛模様が描かれています。

「恋愛」で括ると言葉足らずの部分が有ります。男性と女性の「交感」とでも言いますか、肉体的・精神的コール&レスポンスの様子が描写されています。

匂い、ぬくもり、肌ざわりといった、官能と人間らしさの混じり合った感覚の表現は、生々しく時には神々しいものが有ります。

「人を愛すること」をテキストに、常にストーリーはそこに向かい、様々な「交感」のスタイルを提示してくれます。

それにしても、山田詠美という作家・女性も人間が好きなんだなあと思いました。登場人物の恋愛・交感の結果がどう終わろうとも、皆愛おしく思えてきます。

作者自身のあとがきで、黒人好きの男好き、日本語を最も巧く操る「シスター」と自らの事を書いてます。

愛に対して純粋で貪欲な人種として、黒人と山田詠美が居ると解釈しときましょうか・・・。
村上龍も本書の解説で言ってました。山田詠美は「黒人になりたい」と憧れている人間では無く、普通に「シスター」として存在しているんだと。

その「シスター」としての「立ち位置」から書かれたのが『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』という訳です。愛小説として読んでも面白いけど、黒人の感覚=ソウルのツボが分かっていればもっと面白いよ、という意味のタイトルかと思います。

正直言って私は彼女と100%「交感」出来ませんでしたが(たぶんうろたえたんでしょう)、もうちょっと付き合ってみます。

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祭りのあと

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もうだいぶ前『ミュージック・フェア』で美空ひばり特集をやっていました。ほとんど他人の歌を歌ったものを流していました。

越路吹雪の「愛の讃歌」、吉田拓郎の「祭りのあと」、五輪真弓の「少女」、フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」(日本語)、安全地帯の「ワインレッドの心」・・・どちらかと言えば声の低さからか男性物がよく似合います。

中でも良かったのが「祭りのあと」・・・スタジオの壁に寄り掛からんばかりにスッと立ち尽くしたままやや上を見て淡々と、しかしディープに歌い上げます。ブルースでした。本家・拓郎のも雰囲気が有り好きな曲ですが、このひばりの歌唱は凄まじいほどの「場」を創り上げています。

http://www.youtube.com/watch?v=xdZ0q7rouyA

普通他人のカバーをすると、カバーした人の歌い方になってしまう事が多く、そこがカバー曲の魅力でも有るんですが、ひばりの場合半分ぐらい元歌の領域に踏み込んでいるような気がします。「この歌はこういう風に歌わなければならない」というポイントを正確に掴み、しかも「ひばり節」とシンクロさせて表現できる人なんだと思います。

サラッとやり遂げる所が天才です。根っ子には「好きな歌を心を込めて歌いたい」というシンプルな想いが有るんだと思います。通常のレコーディングもワンテイクで終わる事が多かったというから言わずもがなでしょう。

日本は素晴らしい財産を失っていたんですね。

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ラヒーム・ディヴォーン『ラブ・エクスペリエンス』

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ラヒーム・ディヴォーン『ラブ・エクスペリエンス』・・・聴きながらレヴューしますので、同じ事を何度も書くかも知れません。あえてそのままにします。

歌唱力はさることながら、この人の持ち味は、サウンド・プロデュースにも有ると思います。プリンス辺りにもつながりがあるそうで、現代R&Bの感覚というより人数が多かった頃のアイズリーズ辺りの、ロックを上手く取り入れた感覚が有ります。彼らほど際立ってはいませんけど。もちろんブラックネスは充分。レーベルは<ゾンバ/ジャイブ>。

①ザ・ヴォイス(イントロ)

②ザ・ラブ・エクスペリエンス・・・表題曲は70年代ソウル風出だしで、ヴォーカルを丁寧に重ねてしなやかなバックの演奏によく絡み付いてます。

③ゲス・フー・ラブズ・ユー・モア・・・特徴の有るベースをフィーチャーし、まだこの辺りまでは静かな立ち上がり。マーヴィン・ゲイの再来とか言われるけどマーヴィンのようにセクシーさを醸し出している感じでは無いです。しかし、聴き進むと「唸り」が軽く入ったりしてじわじわと盛り上がります。丁寧に創られている印象です。

④フー・・・このアルバムは「楽器の音」を上手く使っています。ここではディストーションが微かに掛かったギターのフレーズが印象的です。

⑤ホウェア・アイ・スタンド・・・今度はピアノ。Pファンクというか、ジョージ・クリントンのソロ初期の様な「スットン・スットン」というリズム(軽くやってますけど)にパラパラと「音を落とす」感じでしょうか?しかし、盛り上がってくると、重層的ヴォーカルや饒舌過ぎないストリングスがメインとなり曲は展開されます。ホント、ヴォーカルより音の組み立てが面白いです。そういう意味ではマーヴィン・ゲイが完成したかったことに近いかも知れません。

⑥ブレス・・・ストリングスと多層ヴォーカルの対決。充分歌は歌えるけど、もうちょっと上手かったら凄い事になってただろう。ゴスペル的になったかも知れません。私的にはあまり面白くない曲、多分ストリングス苦手のせいでしょう。

⑦ユー・・・ヴォーカルの重なりが相変わらず印象的。それにしても単語一つのタイトル多いですね。

⑧スウィート・トゥース・・・ちょっとシンコペーションが付きましたが、多層的ヴォーカルとバックの音を絡めるという基本は外れていません。

⑨アスク・ユアセルフ・・・これは又70年代ソウル的。語りから始まり、ディスの掛かったギターと、段階を追って熱っぽくなるヴォーカル。アーニー・アイズリーほどべとつかないけどギターが静かに泣いています。

http://www.youtube.com/watch?v=d0w1vW16zFI

⑩ビリーブ・・・クールだが熱いバラード。内ジャケットに正面を向いた彼の顔写真が有るんですが、真面目そうな顔立ちで、変な書き方かも知れませんが「信用できる」感じ。この曲辺りも、流行を追うとか創り出すとかそういうレベルでは無く、自分の内に溢れる感情を素直に音にして、素直に歌い組み合わせてみた結果のアルバムだと思います。

⑪イズ・イット・ポッシブル・・・やっぱり旧い感覚が有りますね。それに、この曲辺りはソウルはソウルなんだけど、黒人音楽に影響を受けた白人シンガー・ソングライターのような感じも無きにしも有らず・・・。

⑫キャッチ22・・・アルバム全体は確かに淡々とはしているんです。しかし、芯はブラックネスに満ち、オーガニック・ソウルの流れともちょっと違う感じです。新しい形のブラックネスの表出と言ってしまいたい。

⑬アンティル・・・印象的なフレーズを持ち、これはシングルでも行けそうと思っていたら、アイズリーズのサンプルでした(「フットステップス・イン・ザ・ダーク」)。やっぱり好きなんだな、アイズリーズ。最後から2、3曲手前に「力」の入った曲を置く人が多いという私の持論が証明された?ロナルド・アイズリー風猫撫で声もちょっと聴こえる。

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無・情の世界

深海の様に底知れぬ知性を感じる美輪明宏さんが、仰ってました・・・「キレる」のは、自分が言いたい事を表現する言葉を持たないからだ、言葉を増やすには読書が不可欠。

あるテレビ番組で、若い男女が別れ話をする場面が有ったんですが、全く会話が成り立っておらず、結局「訳分かんない」とか「私の気持ちはどうなるの」しか言ってない感じで、ただ喧嘩腰の姿勢が伝わるだけ・・・しかも妙に無機的な不気味さを感じました。

喧嘩腰と言っても、興奮して怒りをぶつけるといった展開も無く、ただ相手の事を「バカにしている」(しかも消極的に)感じが伝わるだけで、たとえ若い人が観たとしても「訳分かんない」話じゃないのかなと思いました。

ここまで書いて虚しくなった。彼等は今後社会で揉まれて口の聞き方、感情の伝え方を覚えるかも知れないし、所詮採り上げてもどうなるものでも無いような気がしました。

ただ、若い人に限らず「人の気持ちが分からない人」が増えてるのは悲しい現実です。社会全体に余裕が無いし、読書の比重が少なくなったのも一因では有るでしょう・・・。

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ナチュラル・ぼんくら・コレクター

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http://www.youtube.com/watch?v=TsEjXCJCHHU

かつて、とんでもない事をしでかしました。

ダイナミックスの『ホワット・ア・シェイム』。

未発表曲付きの一枚なんですが、その未発表曲に聴き覚えがありました。不覚にも既に購入済でした。

大体私のCD棚は目的を持って探すのに適していません。つまり「整理」が出来ていません。

手前と奥との二列並べをした上、ジャケットが見える形にして数枚更に手前に置いているので、一番奥の列を見るためには、手前二段階の作品群を押し退けて、ちょっとその辺に置くか手に持っておかなければなりません。

「ちょつとその辺に」とか「手に持っておく」というのは、ご推察通り安定感に乏しく、ガラガラガシャンとなる事も度々です。

日頃音楽に対する愛情を語っている人間が、こんな事ではいけないと思いつつも、天性の整理下手である自分に半ばあきらめています。

それでもLP時代は、自分なりに考えてやってましたよ。

カラーケースを何個も使ってましたが、一つの「ブロック」(仕切り)毎にブロックの中でジャンル分けして置いてました。

左から、ジャンルを越えた企画物→ゴスペル→戦前ブルース→シカゴ・ブルース→モダン・ブルース→ソウル→リズム&ブルース→ジャンプ→ジャズ→ファンク→レゲエやアフリカ他ワールド物→ロックといった感じだったと思います。

これだと、ジャンプとジャズの間の微妙な人とかは、そのまま微妙な位置に置けます。ソウルとファンクの間が難しいか・・・まあ、適当にやってたんでしょう。

勿論、同じ人のが並んでいる訳でなく、あっちこっちのブロックに分かれて置いている状態が多かったと思います。7、8ブロックぐらいですから、探すのも大変じゃ有りません。聴いた後も、どのブロックに置いてもOKという事です。

CDもせめてこれぐらいにはしておきたいんですが、今の所スペース自体が先ず足りません。

きちんと管理されてる方には怒られそうな話ですけど・・・ああ、それにしてもダイナミックス。内容が良いのがせめてもの救いか?

※亡くなった親父のエピソードを思い出しました。親父の第一の趣味はアマチュア無線で、次が読書でした。ある日「これ面白そうだから先に読んで良いよ」という感じで、買って来た一冊を見ると、既に親父が買っていた物でした。表紙が記憶に有ったのです。
この時ばかりは、いつも泰然自若としている親父も軽くズッコケたような覚えが有ります・・・なあんだ、DNAかあ、で納得して終わろっ。

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シックに関する覚え書き

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「おしゃれ」について考えていたら、おしゃれフリーク→シックと発想が行き着きました。

グループのシックも好きですけど、「シック」という概念自体も好きです。

どういう状態を指して「シック」というのか自分なりに箇条書きにしてみます。

●落ち着きが有る
●地味過ぎず派手過ぎず
●知性を感じるが、ユーモアは理解できる(知性が有るから理解できるという側面も有りますけど)
●マッチョ過ぎず痩せ過ぎず
●歩き方がスマート
●アクセサリーが本人より目立たない
●セクシーでは無い
●ほどよい活発さも感じる
●化粧は濃くないが、薄化粧ではない
●若い頃ポップな格好をしていた人が年齢を重ねるとシックになるかも知れない
●フォトジェニック

・・・何しろお洒落とは無縁の私。好き勝手な事を書き連ねましたが、またもう少し頭の中がまとまれば、書いてみようかと思います。

そういえばシックというグループ自体が「シック」ですよね。抑制の効いたおしゃれなサウンド・・・正にコンセプト通りに創り上げたって事でしょう。

http://www.youtube.com/watch?v=HGBLoK310pg&feature=related

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原尞著『私が殺した少女』

Boo
最初にタイトルが気に掛かった。

『私が殺した少女』とは、①本当に殺した②殺した事にされてしまう③結果的に殺したも同然(私の所為で死んだ)のどれに当てはまるのだろうかと気になりながら読み進めた。もしかしたら「私」は主人公では無いかも知れないという思いも浮かんだ。

さて、実際はどうなのか、私が考えたどれかに当てはまるのか、それともどれも違うのか・・・答えを上げるのは愚の骨頂だ。ただ、私はこの作品のタイトルは、作品の内容を表しているというより、筆者独特の「文章表現」の一つ(或いはその代表)として看板代わりに掲げられているという気がする。

ハードボイルドには「臭い」がつきまとう。汗、血、煙草、酒、硝煙、タイヤの焦げる臭い、嘔吐物・・・。

ハードボイルドには「痛み」がつきまとう。拳で殴られる痛み、心無い言葉に対する痛み、犠牲者への追悼の痛み、哀しい運命・人生に対する痛み・・・。

ハードボイルドには「微苦笑」がつきまとう。読み手のリズムを崩さず、作品のトーンを崩さず、甘すぎずロマンテイックに、乾ききった人間の営みや都会の冷たい風景にサッと降りかける「打ち水」のように・・・。

『私が殺した少女』も私が勝手に上げた条件を過不足無く満たしている。「もうちょっと早い段階で分かるはず」という場面も確かに有る。但し、それは作品世界のボロにはならない。実際の格闘シーンは少なくとも、格闘しているような緊張感は静かに漂い、真実を暴こうとする主人公の探偵は、苦境の乗り越え方も怒りの表現も「ハードボイルド・タッチ」で、時々口にする皮肉な台詞は、作者の文章表現と共に「微苦笑」を誘う。

じっくりと時間を掛けて紡ぎ出された作品で有る事が納得できる。

さて、この書評のようなもの、私としては思い切りハードボイルド調に書いたつもりだが如何なものか?最後に貴方の「微苦笑」を誘いたいのだが、私の性格からしてどうしても軌道を外れてしまう。取り返しの付かない事になると分かっていながら、書いてしまう暴挙をどうか「冷笑」して頂きたい。

「微苦笑さゆり」

ううっ・・・私が殺した書評。

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そしてめぐりあい

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http://www.youtube.com/watch?v=DEy05Cde0ss

リトル・ウォルターは、ブルースファンの間では有名なんですが、ブルースハープをアンプリファイド化した人物で、マディのバックでも存在感が有りましたが、自己名義の作品も名作揃いです。

かなり研究熱心な人だったようで、南部のハープ・ブルースのスターだったサニーボーイ・ウィリアムソンⅡのダウンホーム感と、ジャンプ・ブルース界のスター、ルイ・ジョーダンのサックスのような音を目指し(彼に憧れる人多いですけど)、誰よりもでかい音で、誰よりも斬新な音を出そうと執心した人です。

マディも、一緒にやっていたギターのジミー・ロジャースも練習熱心・研究熱心で、ややもすればフィーリングで演奏されているイメージの有るブルース界も、やはりハイレベルな音楽で有る以上、血のにじむ努力と創造性が必要だという事でしょう。

リトル・ウォルターがマディのバンドを離れて最初に組んだのが、エイシズというバンド。ルイスとデイヴィッド・マイヤーズの抜群のリズム感を持つ兄弟に、フレッド・ビロウというシカゴ・ブルースファンなら感慨を込めて想い出す名ドラマーが居ました。エイシズに居たジュニア・ウェルズという後にバディ・ガイと名コンビを組むハーピストがリトル・ウォルターの代わりにマディ・バンド入りします。

フレッド・ビロウは元ジャズ・ドラマーで、当時シカゴではブルース・バンドで叩いた方が金になるので叩いていたのが、やがて抜け出せなくなり、押しも押されぬ最高のシカゴ・ブルース・ドラマーになった人です。彼の感覚とリトル・ウォルターの感覚が合わさったのが、リトル・ウォルターの為になっただけでなく、「シカゴ・ブルース」を新しい地点へ推し進める原因となったようです。

やがて、リトル・ウォルターのバンドは当時ジャンプ界のスター、アイボリー・ジョー・ハンターの大編成バンドを食ってしまったり、ニューヨーク・ハーレムのアポロ劇場でも大絶賛を浴びる人気者になりました。

リトル・ウォルターがアポロに出た翌年、マディのバンドも出演したのですが、既にダウンホームな感覚しか無く、新味に欠け不評を買ったそうです。

人と人の出会いはどういう結びつきがどういう結果をもたらすか分からず、そういうのが時代を変えていくんだなあと思った次第です。

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アーサー・ビッグボーイ・クルーダップ

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http://www.youtube.com/watch?v=74vRiqYPCx4

●アーサー・ビッグボーイ・クルーダップ・・・エルヴィス・プレスリーのデビュー曲「ザッツ・オールライト・ママ」のオリジナルブルースマン。1905年、ミシシッピ州・クラークスデイル生まれ。39年からシカゴで活動。41年に有名プロデューサー、レスター・メルローズに見出されています。72年の活動記録まで書いてあり、74年没。

オーソドックスな土の臭いのするブルースですが、エルヴィスが採り上げた「ザッツ・オールライト・ママ」とかは軽快(洒脱)な感じもしており、エルヴィスはほぼ忠実にコピーしてます。結果論かも知れませんが、自分に合う曲をよく選んだとも言えます。この「自己プロデュース」が続けられなかったのが彼の悲劇かも知れません。偉大に成り過ぎても、ジョン・レノンみたいにふわっと生きられなかったんでしょうか・・・彼を思う時、いつもいっぱいいっぱいだなあと感じるのです。そこが魅力では有るんですけど。

破綻しない所が特徴でも有り、弱点でも有る様な気がしました。かえって「ザッツ・オールライト・ママ」風に攻めていった方が面白かったかも・・・しかし、それでは結局エルヴィスのオリジナルってだけで終わったかなあ。というか逆に恩恵をもらうような形になったかも。

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ブルースマンについて考えると、いつも寂しくなります。活躍したアーティストでもデッドロックにぶち当たる事が多いのです。「ブルース」という音楽自体が「ロック」の親父ってだけで片付けられがちだからかも知れません。

せっかく、アーサー・“ビッグボーイ”・クルーダップという人をご紹介できたので、ああ、エルヴィスの曲の元の人ね、で終わらず他の曲もじっくり聴いて頂きたいものです。そして、ほんの2、3人でも、短期間でも「ブルース」にずぶずぶずぶと嵌って頂いても、貴方の人生の損にはなりませんよ。

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テレル『テレル』

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一言でいえばしなやかなヴォーカル。ジョニー・ギルやグレン・ジョーンズの並びに上げられるような本格派です。今回このアルバムのライナーを書いて居られるのは、私がいつも頼りにしている石島春美さんで、冒頭に現代R&B界における「歌えるシンガー」について書かれています(次の段落の「」部分は石島さんの文章をそのまま載せたものです)。

曰く、「時流はヒップホップのトラックに乗って歌えるシンガーが求められ」「ゴリゴリと歌い倒すことは必ずしも重要でなくなり」本格的ヴォーカリストはゴスペルに転向するか、巡業暮らしか、インディー・レーベルで生きながらえる形になってしまってます。「今歌えるシンガーを聴きたいのなら、ビルボードのチャートを眺めている場合ではない。探す手間さえ惜しまなければ、素晴らしいシンガーの作品に出会えることはそう難しくはないのだから」・・・。

このテレルのアルバムも<スロウ・ダウン>というインディー・レーベルが元で、本人がプロデュースもこなしています。今風の音創りの前に、自らの「ヴォーカル力」を正直に見せ付けた一作と思います。たとえ、ダンサブルな曲が無くても(クラブで使えなくても)、美メロ曲が無くても、彼の存在感は証明されています。今回日本盤として出され、多くの人の耳に掛かるのは他人事とは言え嬉しくなります(私も手に入れやすかった訳だし)。

それでも、最近は、タワーで試聴なんぞしていると、「歌えるシンガー」は増えてきたような気もします。流行プロデューサーも「黒人音楽の伝統の部分」を大切にしており、本格派が第一線に浮かび上がってきそうな感じもします。しかし、まだまだシーンの水面下に本格派は潜んでいそうです。石島さんの様な優れたナビゲーターをしっかり追いかけて行こうと思います。あ、「手間」かけなきゃダメか・・・頑張ろうっと。

①イントロ・・・グラミー授賞式を模したものだそうです。

②メイクス・ノー・センス・・・挨拶代わりの一曲。声が林立する感じで、一発で強烈な印象を聴く者に与えます。出だしだけ聴くと、デスチャとかの曲みたい。一応彼なりの最近の流行に対するアプローチかな?しかし、彼の声を聴くのに夢中で曲のフレーズは少々どうでも良くなります。

③アイ・チーティッド・・・R・ケリーの曲みたいな出だしで、ヴォーカルの強烈さよりコーラスの美しさが印象に残ります。

④オンリー・ワン・・・これもコーラスがきれい。

⑤シンキング・アバウト・ユー・・・アルバム全体の中で、やや盛り上げかけるが頂点までは持っていかない感じ。基本フレーズを歌う声にかぶせて熱く搾り出すように歌うヴォーカルが聴き所。

⑥ベイビー・ユー・ドント・ラブ・ミー・・・新しいリズムは取り入れてもリズムに埋没せずに歌声が際立ちます。派手に盛り上がらない曲でも内に秘めた力強さが伝わる感じです。メアリー・J・ブライジの男版みたい・・・歌の上手さは勝ってますが。

⑦ザ・ワン・ラブ・・・ヴォイス・モジュレーターを随所に使いますが、その使い方が上手い。歌声とモジュレーターの境目が何とも言えない心地良さでつながります。「ヴォーカル・アレンジメント」も本人がやってます。相当「声を扱うセンス」が有りますね。曲を創るセンス、トラックを創るセンス、楽器と絡むセンス等より先ず「声」に対するセンスを感じます。

⑧マター・オブ・タイム・・・静かめなミディアムのバラードですが、曲より「声」をどうしても追っかけちゃいますねえ。サビの部分でコーラスの中を自由自在に声が舞います。モジュレーター使いも決まってる。

⑨ハード・フォー・ミー・・・バラードが続きます。K-Ci&JoJo辺りを思い出しますが、ハードに盛り上げず、じわじわと盛り上げていきます。もうちょっと長いと良かったんじゃなかろうか。

⑩ネヴァー・ステイ(インタールード)・・・ベース音の強調が面白い。その中をコーラス中心に声が漂います。

⑪ウィズ・ミー・・・リズムが面白いけど、時代の先端の物よりちょっと旧めな感じです。ここでは女性コーラスが初めて入ります。

⑫エヴリシング・・・③辺りで使った「水溜りに滴が落ちるような効果音」を控えめに、しかし効果的に使い、モジュレーターも見事な使い方です。後半、アカペラになってのコーラスの着地は美しい。

⑬アウア・ラブ・トゥナイト(インタールード)・・・⑫に続き、アカペラ・コーラスで続きます。女性も入ってます。元々ゴスペルの経験が有る人だけに、ゴスペル的な部分は大いに感じますが、ここではサラッと披露してます。

⑭ラブ・・・アルバムも大団円を迎えつつあり、やや懐がもう一つ深くなったような(しかし大仰ではない)盛り上がりを見せます。

⑮カム・インサイド・・・前の曲に比べ落ち着きました。それにしてもスムーズさ、シャウト、こぶし回し、囁き、何でも来いって感じです、この人。

⑯ゴスペル・インタールード:(フイーチャリング・ヴァネッサ・ベル・アームストロング)・・・お懐かしや、ヴァネッサ・ベルが受話器の向こうからゴスペルを一くさり。

⑰アイ・シャル・・・⑯に呼応してか、ゴスペルのアカペラ。最後にコーラスをまぶして静かに終了です。

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リスペクトする事でリスペクトされる

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99年の作品『メアリー』です。それまでサングラスなどで顔のキズを隠していたメアリーが、はっきりとアルバム・ジャケットにそのキズを見せています。「メアリー・Jという人間を有りのままに見せる」という決意にも見てとれます。

自分自身を見つめ直すからといって、自分一人でアルバムを創り上げた訳ではなく、むしろ今までよりも多くのゲストの手を借りているようです。しかし、その素晴らしいアーティスト達との関わりの中で、メアリー独特の感覚は健在で、むしろゲスト達のエキスを吸収して一回り大きくなったような気さえします。「自己を確立するには他人の存在が重要」という証明か?・・・いやいや、そんな簡単な理屈ではないでしょうが、いずれにしても色々なアーティストをリスペクトしている、彼女の姿勢自体とその姿勢が音楽に現れている事に、そして彼女のオリジナリティーとして開花している事実に、多くのアーティストや聴き手がリスペクトを捧げているんだと思います。

①オール・ザット・キャン・アイ・セイ・・・柔らかいベースにきれいな音をちりばめて、やがてメアリーのかすれ声が低く聴こえてくる・・・ローリン・ヒルが創った曲での立ち上がり。サビの部分で複数のメアリーが唸りあうけど頂点に達する前に2曲目へ。

②セクシー(フィーチャリング・Jadakiss)・・・淡々とした曲。しかし、決して印象は薄くないメアリーらしい曲創り。

③ディープ・インサイド(フィーチャリング・エルトン・ジョン)・・・冒頭我々の世代には懐かしいエルトンの「ベニー&ジェッツ」のイントロのピアノをサンプリング、と思いきや本人を呼んで弾かせる徹底振り。以前テレビで観たライブでこの曲を一曲目に持ってきて、ステージ後方の階段を下りて登場してくる時、ややよたり気味で、しかし、リズムに乗りながら下りてくるのを観て思わずにんまり。何とも言えず「素直さ」みたいなのを感じました。
http://www.youtube.com/watch?v=lHdB8UPRnHM

④ビューティフル・ワンズ・・・エルトンどころか今度はアール・クルーの手を借ります。サンプリングと本人の演奏。更にセシル・ワードという人がデュエット。しかし、メアリー節は健在。サビでコブシがころころ回ります。

⑤アイム・イン・ラブ・・・何やらポップスとジャズの中間の様な曲。彼女の世界には有るんですが、彼女が本領を発揮するタイプの曲ではないような気もします。でも一生懸命丁寧に歌っています。はっきり言ってこのアルバム辺りまではそんなに歌が上手くなく、「熱の込もる部分」だけを私も気に入って聴いていたんですが、現段階での最新作『ラブ&ライフ』ではかなり上手くなってます。この曲辺りはその芽が見てとれなくもないです。

⑥アズ(デュエット・ウィズ・ジョージ・マイケル)・・・このアルバム、実に多彩なゲストが居るんですが、ここではジョージ・マイケル登場。熱唱がスティーヴィー・ワンダー作のこの曲を盛り上げます。メアリーは遠慮がちに絡んでいますが、時々アレサみたいな声を出す部分も有り、「歌が上手くない」という私の暴論を軽くいなしてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=k6Za7zdUHOY

⑦タイム・・・スティーヴィーの「パスタイム・パラダイス」とアル・グリーンの2曲を使い、プロデュースは盟友チャッキー・トンプソン。「パスタイム・パラダイス」は「ギャングスタ・パラダイス」のヒントにもなっており、この曲もじゃっかん「ギャングスタ・・・」ぽい所が有ります。しかし、彼女独特のクールな感覚で仕上げられています。

⑧メモリーズ・・・ソウルショック&カーリンという名前は聞き覚えが有りますが、私は勉強不足でよく知らないチームがプロデュース。メアリーとも初絡みです。解説によると今までのプロデュース曲の感じでは無いとの事。メアリー・Jの音楽を把握した上での好プロデュースなんでしょう。

⑨オールモスト・ゴーン(インタールード)・・・レイラ・ハザウェイの作曲・プロデュース。

⑩ドント・ウエスト・ユア・タイム(デュエット・ウィズ・アレサ・フランクリン)・・・大物アレサとのデュエットという豪華版。実は最近のアレサに私はさほど期待しておらず、往時の声のふくよかさ、シャウトのしなやかさは戻るまいと思ってました。確かに以前の余裕は無いです。しかし、面白い事にメアリー風な歌い方になっておりサビのやりとりは大盛り上がりでは有りませんが、聴き物です。つられてしまったか?ベイビーフェイスのプロデュース。

⑪ノット・ルッキン(デュエット・ウィズ・K-Ci・ヘイリー)ゴスペル風な最初の一声に始まり、ひたすら熱を込め歌い続けるK-Ci。メアリーの一声はいつもに増してクール。しかし、進むにつれて「メアリー節」炸裂。K-Ciも日頃二人組みで歌っているせいか、フォローする部分、絡む部分のやり繰りが上手い。曲の前半をK-Ciが盛り上げ、後半はメアリー主で、彼が後方に回ったという感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=8sSJnkRFbx4

⑫ユア・チャイルド・・・ジェラルド・アイザックという若手がプロデュース。現代R&Bにありがちなバラードだけど、メアリーは実に楽しそうに歌っている感じがします。唸らぬままかと思ったが、後半軽く唸っちゃいました。

⑬ノー・ハッピー・ホリデイズ・・・これも味の有るバラード。ドラマティックス風効果音もチラッと登場。
http://www.youtube.com/watch?v=9lkc5NCkzOk

⑭ラブ・アイ・ネヴァー・ハッド・・・ジャム&ルイスのプロデュース。ややダイナミックな曲。女王は負けていません。

⑮ギヴ・ミー・ユー(フィーチャリング・エリック・クラプトン)・・・ストリングスでまったりと明ける曲。クラプトンのギターがどこで入るかと待っていた所、曲自体がクラプトンがやりそうな枯れた感じ。作曲はバラードに定評のあるダイアン・ウォーレンです。ギターはあくまで遠慮勝ちに盛り立てます。クラプトンの他にポール・パスコという人も入っています。曲自体はアルバムの終焉にふさわしい。

⑯レット・ノー・マン・プット・アサンダー・・・やや旧い感じのファンク・ビートというかディスコに近い。ファースト・チョイスという女性グループのものがオリジナルだそうです。こういう曲でのメアリーの歌いっぷりも好き。こういう曲をもっと取り入れても面白いと思いつつ、ぐいぐいと「メアリー節」に引き込まれて行くのでした。

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アイク・ターナーという音楽家、そして男

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http://www.youtube.com/watch?v=4KkMSkmx7sM&feature=related

アイク・ターナーは、後にアイク&ティナとして活躍した際はギタリストとして有名ですが、キングス・オブ・リズムではキーボード担当でした。

ボーカルは、彼と、サックス奏者のジャッキー・ブレンストンがやってましたが、サム・フィリップスの耳は満足出来なかったようです。

「ロケット88」は、ジャッキー・ブレンストン名義の物も有り、かつて<Pヴァイン>でLPが出され、私も持っていました。恥ずかしながらこのLPにキングス・オブ・リズムがフィーチャーされているかどうかは記憶に有りません。

アイク・ターナーに話を戻します。彼の場合何といってもアイク&ティナが有名です。

そこでの彼はティナの引き立て役に撤し、エネルギッシュに歌うティナの後ろで、痒い所に手が届くギターをキュンキュンと弾いている姿が印象的です。

アイク・ターナーは、プロデューサー的手腕に長けた人物と言えるでしょう・・・若くして大所帯バンドを引っ張っていた実力もさる事ながら、ティナ・ターナーの生かし方にも現われていると思います。

ティナ・ターナーは、朗々と歌う様なタイプではなく、ハスキー・ボイスを振り絞って歌います。
女性の方には申し訳ないですが、この手の声はどうしても「あえぎ声」「悶え声」を連想してしまいます。

ティナは顔の作りも派手で、スタイルも肉感的だったので、自ずと「エロ路線」に向かう事になります。レコードでは分かりませんが、ライブ映像を観て頂くと、納得行かれるかと思います。

黒人音楽には「ボーディー感覚」(卑猥感)を開放的に表現する伝統も有り、アイク&ティナもその伝統に則ったエンターテイナーだったと思います。

しかし、ティナ・ターナーはそれが嫌だったようですね。加えて私生活でも、アイク・ターナーの暴力癖に耐えかねて、夫婦生活に亀裂が走りました。

ティナ・ターナーはソロ活動で名を成しましたが、アイクは片翼を失った鳥の様に、凋落の一途を辿りました。

私はソロのティナも嫌いじゃ無いですが、アイク&ティナでの、汗をしどろにかきながら、リズムに合わせて腰を振り、マイクにしがみ付いて、アクメ的ボーカルを(アイクのギターに合わせながら)聴かせる彼女が好きでした。

それは性的リビドーを高めるというより、黒人音楽の素晴らしさ・大衆性を伝えるパフォーマンスでした。

それにしても、アイク・ターナーという男、自分自身のプロデュースは出来なかったようです。

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男のための男

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先日、ソウル・ジェネレイションというグループを引っ張り出して聴きました。

ファルセット・ヴォーカルを中心とした、甘く切なく「めくるめく」男どもです。

イラストレーターの湯村輝彦さんは「フラミンゴ・シンジケート」というユニットを組み、この手の「甘茶ソウル」を数多く紹介されています。

ファルセット・ヴォーカルって結構「女々しい」と捉われがちなんですが、湯村さん達はそれを大いに利用?し、おかまチックに表現したりしながらも、「甘茶ソウル」の真実を日本中に広めました。

オーティス・レディングからソウルの道へと入った私は最初の頃は、ファルセット・ボーカル・甘茶ソウルを敬遠していました。

しかし、色々聴いてみると、これは中々凄い「表現」だと思うようになりました。たしかに、声を裏返すと色艶が出ます。声も細くなりますので「女性のマネ」をしていると思われがちですが、「切なさ」を表現するために女性っぽく歌っている側面もあるかと思います。

しかもそれだけでなく、ファルセットには凛とした「芯」が有ります。涙を我慢しているような「力強さ」を感じます。これは、大人になり、涙を流す事がほとんど無くなった男達に代わって、剛さを保ちながら泣いてくれている様な気もするんです。

話は変わりますが、「男性を愛する男性」をそうでない男性が敬遠気味なのは、男性の中の「女性性」に気付かされるのが嫌なんだと思います。

「切なさに涙を流す」のは男女共通の感情なんだろうけど、やっぱり男としてはねえ・・・甘茶ソウルに浸る程度に留めておきたいものです。

※人間は(他の動物もかな?)、生命体としては最初は全て「女性」だそうです。一部が突起していくとはじめて「男」になるそうです。男に乳頭が有るのも女性の名残だそうです・・・これは科学的事実なのか、何かの例え話なのか失念しました。

http://www.youtube.com/watch?v=lYKc1emuKFM&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=jAWjWsq9I20

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彼女の声をなぞるように・・・

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94年作『マイ・ライフ』。「ヒップホップ・ソウル・クイーン」の称号の通り、新しい音と旧い音をうまくつないでいる感じ。彼女の前に旧いタイプの歌手がいて、彼女の後に新しいタイプの歌手がいるとも言えるかも知れません。そういう意味では黒人音楽の歴史上重要アルバムでしょう。チャッキー・トンプソンの功績も大。私が持っているのは輸入盤です。

①イントロの後、

②メアリー・ジェーン(オール・ナイト・ロング)・・・ボトムがしっかりしていながら柔らかなサウンドの中、実に気持ちよく漂うメアリー。スキャットの後ろでサビを歌うところなんぞグッときます。不朽の名作。
http://www.youtube.com/watch?v=XWP9LWeE0-I

③ユー・ブリング・ミー・ジョイ・・・昔ながらのファンキーサウンド。こうして聴いてみると、このアルバム最近の物に比べれば旧いですね。それだけ我々世代には聴き易いサウンドと言えるかも・・・。

④マーヴィン・インタールード・・・40秒で次曲につながります。

⑤アイム・ジ・オンリー・ウーマン・・・今に比べれば歌唱が大人しめなのも、旧いサウンドに合っているような気がします。ドラマチックな側面を持つこの曲とか今だったらもっと入れ込んで歌いそうです。

⑥K・マレー・インタールード・・・24秒。キース・マレイです。

⑦マイ・ライフ・・・アルバムタイトル曲も落ち着いた感じ。このアルバム全体にジャジーな感覚も有りますね。彼女のかすれ声がソウル歌手というよりジャズ歌手のように聴こえる「瞬間」も有ります。

⑧ユー・ガッタ・ビリーヴ・・・フェイス・エヴァンスとK-Ci&JoJoが参加。しかし、ガンガンに絡むという感じではないです。サビの部分など得意の「入れ込み唱法」が聴けますが、それでも後年よりは大人しめ。

⑨アイ・ネヴァー・ウォナ・リヴ・ウィズ・ユー・・・基本的に丁寧に歌う人では有るんですよね。歌唱力としてはランクは下がるかも知れないけど、「フレーズや一音に込める力」は引き付けるものが有ります。この曲でもユッタリした中、音を縁取りしていくような丁寧さを感じます。

⑩アイム・ゴーイン・ダウン・・・気持ちを切り替えるようなイントロ。ちょっとサザンソウル系の感覚さえ感じます。それでいて新しい。興味深い曲です。ギターの入り方、ストリングスの使い方とかも過去へのリスペクトを感じます。メアリーの「こぶし」も一層リキが入ります。メロディアスな曲では無いけど、彼女の歌唱を楽しめます。この曲地味だけど好きだなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=OrW-x6LVThs

⑪マイ・ライフ・インタールード・・・1分15秒。

⑫ビー・ウィズ・ユー・・・また、ジャジーな感じかと思いきや、引き締まったドラムが入り、ヒップホップ感も漂います。このアルバムはほとんどチャッキー・トンプソンのプロデュースですが、この人の感覚にもオールドスクーラーとして注目すべきものがあります。

⑬メアリーズ・ジョイント・・・バックグラウンド・ヴォーカルにラトーニャ・J・ブライジと有るのは身内でしょうか?

⑭ドント・ゴー・・・重た目のドラムの後、心地よくたゆたう感覚といえば良いでしょうか?・・・このアルバム全体にそれは有るんですが。

⑮アイ・ラブ・ユー・・・軽やかなピアノの中、ベースの弾みも心地良くアルバムの中ではダンサブル。しかし、つくづくメアリー・J・ブライジという歌手は惚れ込まないと聴きづらいんじゃないだろうか。逆に惚れ込んだら溜め息さえ聴き込んでしまう魅力が有ります。

⑯ノー・ワン・エルス・・・終盤にふさわしい盛り上がりを見せる曲。メアリーのヴォーカルも一段と心地良く広がります。

⑰ビー・ハッピー・・・チョッパーもまぶしいオールドファンク仕上げ。ショーン・“パフィー”・コムズのプロデュースです。

後のアルバムでは、自分の声を重ねたり、ゲストを招いたりしているのを考えるとこのアルバムは自分の基本的ヴォーカル力だけで成り立たせており、メアリー・Jの基本を聴かせてくれたといえるかも知れません。『ノー・モア・ドラマ』や『メアリー』が料理なら、『マイ・ライフ』は食材そのものと言えば良いでしょうか?但し、料理も食材の味がそのまま色濃く残る物ですけどね。

もう一点。本ブログの途中に、彼女のヴォーカルが音を縁取るように丁寧であるみたいな事を書きましたが、聴く側としては彼女のヴォーカルの細かい所まで(溜め息や唸りのレベルまで)なぞりながら聴いてるんだよなあ、と思った次第です。これだけのめり込める歌手はそうは居ません。

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最近の収穫

最近買ったCDと本をドドドッと紹介しておきます。

Fa
●ジェラルド・リヴァート&エディー・リヴァート・シニア『ファーザー&サン』<イーストウェスト/トレヴェル>(95年)

オヤジの声の方が微妙に塩辛なのでバランスは取れてますね。バラードは絶品だわ。

http://www.amazon.co.jp/Father-Son-Gerald-Levert-Eddie/dp/B000002HKO
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●ジーン・チャンドラー『デューク・オブ・アール ザ・ベリー・ベスト・オブ・ザ・ヴィージェイ・イヤーズ』<チャーリー>(05年編集)

http://www.bk1.jp/product/81512076

http://www.youtube.com/watch?v=j9PoUsRibtE&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=zV9qf29BEWc&feature=related
Mal
●マルコム・X著・アレックス・ヘイリー執筆協力・浜本武雄訳『マルコムX自伝』<河出書房新社>(93年)

キング牧師に比べ「急進派」ということで誤解を生みやすいマルコム。あまりジックリ調べたことがないのでこの際に・・・。

http://booxbox.cocolog-nifty.com/tahara/1998/11/19981110x__7958.html


●福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』<講談社現代新書>(07年)

文章が読みやすいとの評判ですね。

http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1498916

●海野弘著『陰謀の世界史』<文春文庫>(06年・単行本02年)

http://www.edagawakoichi.com/LIBRARY/l-inbosekaishi.html

●桶谷秀昭著『昭和精神史』<文春文庫>(96年・単行本92年)

「昭和」と「戦争」は最近のテーマです。

http://www.todai-hikaku.org/recommends/2007/01/post_2.html

●丸谷才一著『文章読本』<中公文庫>(06年改訂版・オリジナル77年)

文章の書き方とか論文のまとめ方とかは読むのがキライなんですが、この人なら読み物として面白そう。

http://ore.to/~gekka/syohyou/bunsyoudokuhon.htm

●河合隼雄・谷川俊太郎著『魂にメスはいらない』<講談社+α文庫>(06年版・オリジナル79年)

ユングという人がどういう人かよく知らない・・・。

http://www.amazon.co.jp/%E9%AD%82%E3%81%AB%E3%83%A1%E3%82%B9%E3%81%AF%E3%81%84%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E2%80%95%E3%83%A6%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6%E8%AC%9B%E7%BE%A9-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%B2%B3%E5%90%88-%E9%9A%BC%E9%9B%84/dp/4062560070

●姜尚中・宮台真司著『挑発する知』<ちくま文庫>(07年・オリジナル03年)

http://www.amazon.co.jp/%E6%8C%91%E7%99%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E7%9F%A5-%E5%A7%9C-%E5%B0%9A%E4%B8%AD/dp/4902465000

●東野圭吾著『容疑者Xの献身』<文春文庫>(08年・単行本05年)

たまには小説も読みましょう。まだこの人も読んだことないです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B9%E7%96%91%E8%80%85X%E3%81%AE%E7%8C%AE%E8%BA%AB

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【追悼】忌野清志郎・・・人生詩人としてのロックスター

Imawan
初めて彼の名前を知った時から、「忌」という文字を使っている“意味”が気になっていました。ブラックユーモアの一種なのか、名前を強く印象付けるためか、黒人社会で「グッドニュース」を「バッドニュース」というように一捻りしたものなのか・・・。

この記事を書く段になり「忌」という字を改めて見たら、「己」と「心」で出来ているのに気付きました。「心」が「己」の基盤になっている・・・これは勿論たまたまの事でしょうが、この文字が清志郎さんの人と成りを表している気がするのです。

ロックスターにはカリスマ性と大衆性のバランスが必要だと思います。憧れの対象であると同時に、優れたエンターテインメント精神、更に気軽に声をかけられそうな親しみ安さを感じられる存在の人が結局リスペクトされていると思います(清志郎さんとも呼べるしキヨシローとも呼べるのです)・・・清志郎さんは今更言うまでもなく、とても心根の優しい人で紡ぎ出される詞の世界にも、温かい人間性を感じます。それに、基本的に何をやってもユーモアを感じます。コテコテの化粧をして髪をツンツン立てて、ステージで吼えて跳び回っても、どこか隣のお兄ちゃん的な気安さを感じます。歌い方もカッコ好さと面白みを感じます。明るいんですよね。切ない歌でも暗くならずに、聴いていて力が湧いてくるようなものがあります。私はかねがね「切なさ」は人間に必要な感情だと思っています。生きていく上での推進力の一つと認識しています。清志郎さんは歌の世界、詞の世界、自分自身の存在で、それをサラッと証明しています。正に稀有なロックスターでしょう。

私の好きなRCサクセションの歌に「トランジスタ・ラジオ」があります。ここに歌われている“イメージ”がとても好きなのです。特に我々のようにラジオから流れてくる音楽をとても楽しみに聴いていた世代には“解る”部分があります。また、授業をサボってタバコふかしながら屋上に寝転びトランジスタラジオを聴いている、主人公の自由な精神はどんな世代にも通じると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=jCZSmXSD2OQ

「ぼくの好きな先生」に登場する先生も、自由人(というか人間本来の姿)です。「オジサン」という呼び名も不自然ではありません。

http://www.youtube.com/watch?v=yqOJu059y1k

「先生」も固定観念に捉われそうな、というか周りが(社会が)固定観念を持ちたがる存在ですが「サラリーマン」という言葉のイメージも大衆に埋没した印象があります。清志郎さんはサラリーマンの悲哀、というこれも固定観念になっている“イメージ”なんぞは軽く飛び越し、ストレートな言葉で人間の生き様を歌っています。これは是非サビの部分まで聴いて下さい。サラリーマンだけでなく人間全体に呼びかけているというのがよく解ります。

http://www.youtube.com/watch?v=KKPSmuw3ZKo

ストレートな言葉といえば、タイマーズでの過激な活動も、歌詞をよく聴くと極めて真っ当な言葉で綴られています。表現をオブラートに包まない清志郎さんのスタイルがここでも貫かれています。

http://www.youtube.com/watch?v=q0cmuaNgf8s&feature=related

RCサクセション後の音楽活動について私は多くを知りません。最後のアルバムは2006年、療養に向かう前にナッシュヴィルで録音されたそうです。彼の音楽的ルーツの一つであるスタックスサウンドの要、スティーヴ・クロッパーがプロデュース、盟友チャボや細野晴臣さんが参加しています。行き着くべき所に行き着いたのでしょうか・・・いや、これからの清志郎さかの歩む道がほの見えていた布陣のような気もします。

最後に私の特に好きな歌をもう一曲。恋人と別れた男性の歌ですが、この切ないシチュエーションでは並みのアーティストなら悲恋の哀しみを表すに止まるでしょうが、明るく力強い音楽になっています。登場人物の人格化が成されているのもありますが、リアルな切なさ、リアルな言葉、リアルな人生が歌に自然に表われているからだと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=LZycXT1iCRA&feature=related

Ddd
愛し合ってるかい?のメッセージを切なく受け止めましょう・・・。

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ナチュラル・ソウル

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http://www.youtube.com/watch?v=08p_c4NGor0

http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1104017&style=music&cart=286134309&BAB=E

97年作の『シェア・マイ・ワールド』をご紹介します。ここで一旦彼女のアルバムを年代順に書いておきましょう。リミックス物や編集盤は割愛します。

92年『ホワッツ・ザ・411?』。94年『マイ・ライフ』。97年本作。98年『トゥアー』。99年『メアリー』。01年『ノー・モア・ドラマ』。03年『ラブ&ライフ』となります。本作は前作からの時間の開きや前作のヒットを考えると注目の一枚だったと思います。そこに繰り出してきたのは、至って落ち着いた感じの彼女らしいアルバムでした。

このアルバム割りと目立たない方ですが、私好きです。ヴォーカルも入れ込む場面は少な目ですが、全体的に落ち着いた感じがしてジックリ創ったんだろうなあという気がします。ジャケは、オープンカーの座席に座り、目の表情が読み取れないフェンディのサングラスを掛け無表情で鎮座しているメアリー。大体において彼女のアルバムのトーンは静かで、人肌がそのまま発火するような「盛り上がり」を感じますが、そのムードを表している様な派手さのないジャケ写です。『メアリー』のジャケも好きだけどこれも好き。「フェンディ」がブランド名じゃなくて、何か重要な「暗示」の言葉にでも思える厳かともいえる雰囲気が有ります。

①イントロ

②アイ・キャン・ラブ・ユー・・・ソウル・バラードで立ち上がります。リル・キムがラップで参加。聴く側が暖まってきた所に抜群の間で切り込みます。ロドニー・ジャーキンスのプロデュース。アレサ的ともいえる高音部を中心に高まりを見せます。

③ラブ・イズ・オール・ウィー・ニード・・・ジャム&ルイス作のキャッチーな曲。後ろで控えめに漂うようなラップを聴かせるのはナズ。切り込み方も自然。メアリーのアルバムに絡むラップはどれもカッコイイ。プロデューサーは別に居ても、メアリー天性のリズム感を元に自らサウンドを構成しているような所も見受けられます。プロデューサーの操り人形ではなく、「彼女ならではのサウンド」をプロデューサーも大事にしている感じがします。後ろでドラマティックス風の効果音を気付くか気付かないぐらいに流すのも良いです。この辺はジャム&ルイスかな?

④ラウンド&ラウンド・・・前曲に続いてクリアな縁取りを持った曲。トラックマスターズです。ひとつのパターンがずっと続くのが心地良い仕掛けです。

⑤シェア・マイ・ワールド(インタールード)

⑥シェア・マイ・ワールド・・・タイトル曲は、静か目のメロディアスな立ち上がり。ロドニー・ジャーキンスはホント落ち着いた感じの音創りをします。オールドファン向けの一人でしょうか?

⑦セブン・デイズ・・・これも又静かな「ブルース調」とも言える曲。しかし、私はこのアルバムの中でこの曲が一番好きです。淡々とした調子で歌うメアリーの哀しみが深く伝わり、聴く者も感情が高ぶります。終わりの方で流麗なギターを奏でるのはジョージ・ベンソン。

⑧イッツ・オン・・・R・ケリーをフィーチャー。彼のしなやかなヴォーカルで曲は始まります。メアリーも実に丁寧に歌い始めます。

⑨サンキュー・ロード(インタールード)・・・とうとうゴスペル来ちゃったか?

⑩ミッシング・ユー・・・サザンソウル的な立ち上がり。誰かと思いきやベイビーフェイス作でした。バックにシャニース(元気か?)が参加。ベースにネイザン・イースト。後半じんわりとゴスペル的になります。

⑪エヴリシング・・・来ました!彼女の代表曲といえる「入魂」の一曲。スタイリスティックスの名曲に想を得たというか両方交じり合ったような曲です。いっそ彼らにバックを歌わせたら良かったのに、とも思いますが、この曲スタイリスティックスの甘さと違い、ビターな味わいがあります。ジャム&ルイス良い仕事してます。

⑫キープ・ユア・ハンド・・・間を置かずに続けます。流している曲のようでアルバム全体を考えるとこれと次の曲辺りの「位置関係」が肯けます。

⑬キャント・ゲット・ユー・オフ・マイ・マインド・・・ラップにザ・ロックスが参加。ロドニーもイントロでラップ&歌で絡んでいるそうです。ゆったりとしたリズム・パターンが麻薬的。

⑭ゲット・トゥー・ノウ・ユー・ベター・・・・メアリー自身のヴォーカルを重ね、厚みを創っています。70年代ソウルのバックサウンドの感覚も有るなあ、と思い始めたところでスティーヴィー・ワンダーのフレーズを入れる所もニクイ。

⑮サーチング・・・不勉強で知りませんでしたがロイ・エアーズの「サーチング」と言う曲をサンプリングし、彼自身も演奏に参加しています。

⑯アワ・ラブ・・・ロイ・エアーズの後はジェイムス・エムトゥーメイですかい。何か白人ぽい歌い出しでメロディーも爽やか路線にやや傾いてます。しかし、丁寧に歌っており、何ともいえない感触が有ります。高音部の歌い方もいつもとちょっと違う。でもこれも良いです。アルバムの終わりかけにふさわしい曲です。

⑰ノット・ゴーイン・クライ・・・再びベイビーフェイス登場。タイトル部分を歌うメロディーがいかにも彼らしい。前後の曲とのつながりも良いですね。この歌も中々滋味が有ります。後半明るく開けていく感じも泣けてきます。このアルバム全体を振り返ってみると、前半にクッキリとしたリズムや緩めのラップとの絡み等でダウナーな感覚が有り、後半涙腺刺激路線に向かったとも言えるかな?メアリーの心理の流れを直に手で触れたような、生々しさが有ります。聴き終えてジャケ写をもう一度眺めると、魅力的な彼女が浮かび上がってきます。

⑱(ユー・メイク・フィール・ライク・ア)ナチュラル・ウーマン・・・大名曲ですが、不必要に盛り上げず、アレサのヴァージョンのようなふわっとした感覚を出しているようです。「ナチュラル・ウーマン」というタイトル。これがこのアルバムの答えかも知れません。

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OTIS RUSH 『MOURNING IN THE MORNING』

Rush

http://www.youtube.com/watch?v=1Rj17Vfs7rs

原盤<Cotillion>69年発表。<Atrantic>傘下。私が持っているのは<east west japan>が<Atrantic & Atco Selies>として再発した物。発売年は不明です。ライナーは75年LPで発売された時のライナーを転載。中村とうよう。歌詞対訳は水木まり。オリジナル英文ライナーはNICK GRAVENITES。その日本語訳も載っています。Produced by Mike Bloomfield and Nick Gravenites。

1.ME (By Mike Bloomfield & Nick Gravenites)
2.WORKING MAN (By Mike Bloomfield & Nick Gravenites)
3.YOU'RE KILLING MY LOVE (By Mike Bloomfield & Nick Gravenites)
4.FEEL SO BAD (By Chuck Willis)
5.GAMBLER'S BLUES (By King Taub)
6.BABY,I LOVE YOU (By Ronnie Shannon)
7.MY OLD LADY (By Mike Bloomfield & Nick Gravenites)
8.MY LOVE WILL NEVER DIE (By Otis Rush)
9.REAP WHAT YOU SOW (By Butterfield , Bloomfield & Gravenites)
10.IT TAKES TIME (By Otis Rush)
11.CAN'T WAIT NO LONGER (By Mike Bloomfield & Nick Gravenites)

Otis Rush-guitar and vocals ; Aaron Varnell and Joe Arnold-tenor sax ; Ronald Eades-baliton sax ; Gene “Bowlegs”Miller-trumpet ; Jimmy Johnson and Duane Allman-guitars ; Jerry Jemott-bass ; Barry Beckett and Mark Naftalin-keyboards ; Roger Hawkins-drums

Recorded at Fame Recording Studios , Muscle Shoals , Alabama , early 1969.

●既に<コブラ>レーベルで実績のあるオーティス・ラッシュですが、フルアルバムとしては、これが初。周りが白人ばかりとは言え、彼らしいキレの良いブルースが展開されます。所々ロック的な所も感じない事はないです(特にラスト)。しかし、ロック寄りとはいえけなすような出来ではないです。特にギターはやはりカッコイイ。自作の曲は<コブラ>ぽくてちょっと微笑ましい感じもします。

彼の魅力は、胸が詰まるような緊張感とドライブ感の中を彼の甘めのヴォーカルがコーティングしていく所です。このアルバムでも味わえますが是非<コブラ>時代も聴いて下さい。

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GUESSS "GUESSS"

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http://www.youtube.com/watch?v=lqEjlHoTQmw&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=RRA84POoa9w&feature=response_watch

93年<Warner Bros>。Executive Producers : Leonard Richardson , Alfonzo Everett and Carlos Hatter。メンバーはDarryl “D.G.” Gerdine and Deron “Cheezy” Irons

1. Shu-B
2. My Reason (For Loving Someone Else)
3. Tell Me Where it Hurts
4. Give Me One More Chance
5. Same Ole Story
6. It's You That I Need
7. WakDatPaddi
8. Tonight
9. Mystery Love Affair
10. Don't Tell Me
11. He Say , She Say
12. Make Up Your Mind

1.8.12. Produced by Michael J. Powell and Carlas “Ceci” Closson 2.7.9.10.11. Produced by Carlas “Ceci” Closson 3.4.6. Produced by Michael J. Powell 5. Produced by Paul D. Allen 6. Co-Produced by Leonard Richardson 7. Co- Produced by Paul D. Allen

1. Additional Keyboards : Michael J. Powell 3.4.6.8.12. Guitar : Michael J. Powell 6. (Michael Stokes / Verdell Lanier) 6. Keyboards and Percussion : Michael J. Powell 6. Guest Vocal Appearance by Emanuel “E.J.” Johnson of Enchantment

●中古屋でもし見かけたら、「通」の中古屋でなければ高値では無いでしょうから、是非ゲットして下さい。ヴォーカルが抜群。澄み切って力強いファルセットとバリトンにも変化するテナー・・・各々の実力もさることながら、組み合わさることで5倍にも10倍にも感動が広がります。これほどの実力者がこの後、全く音沙汰を聞かないのが不思議でなりません。<ワーナー>本体から出てますんで順当なデヴューのような気もするんですが・・・。6曲目には名グループ、エンチャントメントのエマニュエル・ジョンソンが参加。この曲と1~3辺りは凄い出来です。リズムはニュー・ジャック・スウィングなので、そのテの音が好きな人は絶対気に入ります。

私の記憶が正しければ、これを私が知ったのは『ミュージック・マガジン』の「輸入盤紹介」のコーナーで鈴木啓志さんが絶賛されていたのがキッカケのようです。国内盤は出ていないはずです(後に出ました)。そもそも、ジャケットが中途半端なラップグループみたいで今ひとつ冴えません。冴えないジャケットに好盤が有ったりする一例ですね。

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2005年に出会ったアルバム

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①テレル『テレル』・・・現代のR&Bの様相が変わりつつ有るのを私自身に意識させてくれたアーティスト。「インディー・ソウル」がもしかしたら主流になるかも知れない現在、このアルバムは重要な意味を持つかも知れません。

②スペシャル『タイアード・オブ・ビーイング・ユー』・・・テレルと悩みました。最終的に決め手になったのは、スペシャルの場合余りに昔の音過ぎたって所です。私の個人的趣味から言えば、スペシャルの方がよりシックリ来そうです。2位だけど、今後テレルより数多く聴くんじゃないかという予感はします。

③G.C.キャメロン『ラブ・ソングズ・アンド・トラジディーズ』(74年)・・・オリー・ナイチンゲールの名作を抑えて3位にしました。理由は、オリーの素晴らしさは「予想通り」だったんですが、G.C.はここまで凄いとは思いませんでした。バリトンからファルセットまで使いこなし、リズム感、入れ込みのタイミング、切々と歌う部分、いずれも高レベル。アルバム全編たるみ無し。ソウル・ヴォーカルが好きな人は迷わず買って下さい。

http://www.youtube.com/watch?v=y6EgwGHMNKQ

④オリー・ナイチンゲール『スウィート・サレンダー』(73年)・・・帰ればいいつも温かく迎えてくれる故郷のようなもの。財産が増えました。

⑤ベイビーフェイス『グロウン&セクシー』・・・これも素晴らしかったですね。ベイビーフェイスの最高傑作といっても良いぐらいの完璧な出来。独特の「泣き」の部分でググッと来ます。今年の「カムバック賞」ですね。

⑥デシ『パブリック・イメージ#1』・・・中古屋で見つけた時は感動しました。私的「中古レコード大賞」です。今年前半よく聴きました。ヴォーカルの吹っ切れ具合が気持ち良い限り。

⑦ブライアン・マックナイト『ジェミニ』(スペシャルと同記事内でレヴュー)・・・ソウル・ヴォーカルの王道を歩んでますね。この人も忘れてはならない人です。

⑧オーティス&シュグ『ウィー・キャン・ドゥー・ホワットエヴァー』・・・忘れてはいけない好アルバム。メンバーのО・クーパーの一枚も買いましたが、こちらが完成度高いです。現代R&B界のキーパーソン、ラファエル・サディークの仕事。

⑨ブランディー『アフロデジィアック』(04年)・・・私的「中古レコード大賞」第2位か?元々実力のある人だけに、こういう好アルバムが出ると嬉しくなりますが、セールス的には弱かったんでしょうか?最近の女性R&B界は、オーガニック系ででもない限り、歌も歌って腰も振らなきゃダメなのかと言いたくもなりますが、その流れにはとても乗れず、かと言ってベテランと呼ぶにはちょっと早い微妙な位置にいる彼女。男性は歌えるシンガーがどんどん出て来たけど、女性の場合、彼女を含め少ないというか目立たない感じです。デスチャが解散して単品になったのは正解かも知れません。是非ブランディー等と共に「歌える女性シンガー」として盛り上げて欲しいです。

⑩ラヒーム・ディヴォーン『ラブ・エクスペリエンス』ジョン・レジェンド登場以来注目されている「シンガー・ソングライター系」の一人と考えて良いでしょうが、ちょっと捨てがたい雰囲気を持っています。次回作に期待してます。
http://www.youtube.com/watch?v=iDEle7fAmq0

〔番外編〕
印象に残った映像作品をふたつ。

●映画『レイ』・・・レンタル屋さんでも見掛けてますのでまだの方は是非どうぞ。ジェイミー・フォックス始め出演者の「ソックリ振り」も面白かったです。レイの人生自体も印象的でしたが、「リズム&ブルース」の魅力を伝えた点でも評価されるべき。

●映画『永遠のモータウン』(02年)・・・メンバーの回顧談に涙。ゲスト・アーティストの熱演に感激。軽い気持ちで観たんですが、かなり感動しました。
http://www.youtube.com/watch?v=1I5uvqjOVOo

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Artie "Blues Boy" White

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1937年、ミシシッピ州のヴィックスバーグ生まれ。11歳頃からゴスペルを歌い、56年、シカゴでゴスペル歌手としてスタートしたようです。70年代に入ると<PM>や<ガンマ>といったレーベルからシングルを連発し、R&Bチャートにも顔を出していたようです。アルバム・デビューは、85年<ロン>からアーティー・ホワイト名義で出しています。87年に<イチバン>、94年から<ウォルドクシー>(<マラコ>の傍系)と、何れもブルースとソウルを融合した音楽を得意とするレーベルで精力的にアルバムを出します。同じタイプのリトル・ミルトン辺りと交流が有ったようです。97年にミシシッピ州・クラークスデイルに居を移し、02年に<ゴールド・サークル>というあまり聞かないレーベルからアルバムを出し、04年<ブルース・ボーイ・プロダクション>(自分の?)の作品がリスト上最新作のようです。 せっかくですから、年代順に追ってみましょう。

http://www.discogs.com/label/Ichiban+Records

♪ディスコグラフィー一覧。
http://shopping.yahoo.com/p:Artie%20%22Blues%20Boy%22%20White:1927000445:page=discography:subpage=albums;_ylt=AosCHG11P1MPg9_K_MN.uaFUvQcF;_ylu=X3oDMTBudjZmdTkzBF9zAzg0MzkzMzAwBHNlYwNhcnR0b29s   

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●85年『ブルース・ボーイ』・・・LPで持っています。当時、日本のレコード会社かレコード店が輸入販売したのをゲットしたものです。まだ黒人音楽を聴き始めの頃だったので、独特のブルースとソウルが溶け合った感じはすっかり気に入りました。サンプルが無かったのが残念!
●87年『ナッシング・テイクス・ザ・プレイス・オブ・ユー』・・・<イチバン>カセットだそうです。
●89年に2枚『サングス・ガット・トゥー・チェンジ』『ホウェア・イッツ・アット』・・・<イチバン>
●90年『タイアード・オブ・スニーキン・アラウンド』・・・<イチバン>
●91年『ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート』とベスト盤・・・<イチバン>
●92年『ヒット&ラン』・・・<イチバン>

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●94年『ディファレント・シェイズ・オブ・ブルース』・・・<ウォルドクシー>。マッスル・ショールズ録音のせいかソウル度がやや強め。
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/1183249/a/Different+Shades+Of+Blue.htm

●97年『ホーム・トゥナイト』・・・<ウォルドクシー>。じゃっかんヴォーカルにリキが入り気味かなとも思うがさほど気にならず。ブルースが多いがソウルバラードも有り。
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1183267&style=music&cart=313323518&BAB=E

●99年『キャン・ウィー・ゲット・トゥギャザー』・・・<ウォルドクシー>。腰の強いソウルとキレの有るブルースが組み合わさっている。気合十分。
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1183281&style=music&cart=313323518&BAB=E

●02年『キャント・ゲット・イナフ』・・・<Achilltown Records>。3曲目辺りはおしゃれでモダンな感じもするが、全体的にはブルースが多いです。

●02年『アメリカン・ルーツ:ブルース』・・・<イチバン>。タイトル通り濃い目のブルース。
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=4938573&style=music&cart=313323518&BAB=E

●03年『アーティー・ウィリアムス&リー・ショット・ウィリアムス』・・・<Pヴァイン>。似たような歌手、リー・ショット・ウィリアムスとのカップリング?
●04年『ファースト・シング・チューズデイ・モーニング』・・・<ブルースボーイ・プロダクションズ>

私が気づかないだけか分かりませんが、あまりカバー曲とかない人のようですね。デビュー以来感覚的には全く変わらず、ブルースとソウルの美味しい部分を我々に教え続けてくれています。どれか一枚って言われても決めきれないですね。ボビー・ブランドやリトル・ミルトン、ジョニー・テイラー、デニス・ラセールのようにあくまで古式ゆかしい歌手です。

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役者としての歌手、物語としての昭和歌謡

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何年か前、ちあきなおみのドキュメンタリーを放送してました。

「朝日楼」も聴けたし、デビュー以来の、歌で綴る経歴も楽しめました。演劇と歌を組み合わせたような、新しい試みに取り組んだ事も知り、つくづく「歌に対する姿勢」が情熱的で斬新な人だなあと認識を新たにしました。

細川たかしで有名な「矢切の渡し」も、彼女が或る曲のB面で歌っていたもの。大衆演劇で有名な梅沢富美夫が、演目のバックで流したそうです。

彼曰く「ちあきなおみの歌はいやらしいんだ。こういう歌はいやらしくなくちゃ駄目なんだ」

面白い表現ですが、言わんとする事は十分分かります。

ただならぬ関係の男女の物語である以上、身も心も捧げ合うニュアンスが出せるかどうかという事でしょう。歌手や役者は「異世界」を如何にリアルに感動的に表現するかが、真価を問われる所です。

ちあきなおみは、許されざる関係の男女の悲恋を、濃厚に切なく歌い上げ、聴く者を酔わせるのです。

ある意味「役者的歌手」かも知れません。その卓抜な表現力が、多くの人の記憶に残っている所以だと思います。

そういえば、「昭和歌謡」自体が物語性の高いものが多かったような気がします(懐かしさが先に立っている所為もあるでしょう)。

日本語中心の印象的な歌詞と、他人と同じ様な歌い方をしない、個性派揃いの歌手たち・・・これらが「昭和歌謡」の「物語性=異世界」を支えた要素だと思います。

http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/yagirinowatashi.html

http://www.youtube.com/watch?v=XEntqjfq2PU

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kindred the family soul 『In This Life Together』

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http://www.youtube.com/watch?v=QRHfyd7oGT8

2005年<HIDDEN BEACH>。Executive Producers: Aja Graydon, Faith Dantzler, and Steve McKeever. Management: Calvin Hubbard and Derrick Mays for The Allen Lawrence Management Group.

1. It's Kindred (Intro)
2. Thru Love
3. Turn It Up feat.Archie Eversoul
4. Do You Remember
5. Where Would I Be (The Question)
6. Woman First
7. Let It All Go
8. Sneak A Freak
9. Message To Marvin feat. The Last Donna
10. The Quote (Interlude)
11. As Of Yet
12. Aja's Mom (Interlude)
13. Struggle No More feat. India.Arie
14. Who's Gonna Comfort You (Definition)
15. My Time
16. In This Life Together
17. Husband My Daddy (Interlude)
18. Bed Time Story

1. (F. Dantzler, A. Graydon, J. Nix) 2. (F. Dantzler, A. Graydon, A. Godfrey, T. Carter) 3. (F. Dantzler, A. Graydon, O. Bingham) 4. (M. John, F. Hamilton) 5. (F. Dantzler, A. Graydon, K. Price, G. Benson) 6. (A. Graydon, F. Dantzler, R. Tucker, J. Tacuma, J. Brown) 7. (F. Dantzler, A. Graydon, C. Treece) 8. (F. Dantzler, A. Graydon, C. Whitfield Jr., S. Mckie) 9. (F. Dantzler, A. Graydon, A. Mack, M. Lewis) 10. (Ossie Davis, Ruby Dee) 11. (F. Dantzler, A. Graydon, O. Harvey, D. Wanzel, C. Biggs) 12. (S. Graydon) 13. (F. Dantzler, A. Graydon, O. Bingham, B. Rogers, I.. Simpson) 14. (F. Dantzler, A. Graydon, O. Harvey) 15. (F. Dantzler, A. Graydon, E. Perry) 16. (F. Dantzler, A. Graydon, A. Bell) 17. (F. Dantzler, A. Graydon, D. Dantzler) 18. (F. Dantzler, A. Graydon, R. Tyson)

【PRODUCED BY】1. VAMEEN 2. KINDRED THE FAMILY SOUL, AHMAD GODFREY AND TRACY CARTER 3. DINKY BINGHAM 4. KINDRED THE FAMILY SOUL AND BOY GENIUS 5. KINDRED THE FAMILY SOUL AND KRISTIN PRICE 6. DINKY BINGHAM AND KINDRED THE FAMILY SOUL 7. CHUCK TREECE 8. CONLEY WHITFIELD & STEVE MCKIE 9. NOIZETRIP 11.14. EASY MO BE 12. BINNY DA KID, DINKY BINGHAM AND KINDRED THE FAMILY SOUL 13. BINNY DA KID 15. ELISE PERRY 16. ANTHONY BELL 18. KINDRED THE FAMILY SOUL AND R. TYSON

5. SAMPLED GUITAR: GEORGE BENSON 10. Taken from "With Ossie & Ruby: In This Life Together" 14. ALL INSTRUMENTS: EASY MO BE AKA OSTEN HARVEY JR.

● ちょっとチャカ・カーン似のかすれ気味の女性の声とバリトン系の男性。ふたりとも歌が上手く、絡んでも声質から合うので落ち着いて聴けます。派手さはなく「たゆたう」感じですが、骨っぽさは感じます。ポカポカした春の陽気に似合う曲多し。7はR・ケリー、8はスライ的だがオリジナリティーの領域までは踏み込まず。続く9ではスライを使う(クレジットなし)が処理が自然、違和感なし。11、16あたりはオールドソウルの匂いぷんぷん。曲はふたりを中心に色んな仲間の組み合わせで創っており、この辺も「ファミリー」意識か。アルバムが進行していくにつれ曲も微妙に変化していき面白いです。

http://www.kindredthefamilysoul.com/

http://www.hiddenbeach.com/

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語るべきもの

話題の書『国家の品格』を書かれた藤原正彦さんが、小学校から英語が必修になる動きに対して、無意味な事と一喝されていました。

小学校の間は「全ての学問の基本」である国語に重きを置くべきであり、現在の時間割を考えても、とても英語までやる「余裕」は無いとの事でした。

又、英語が流暢に喋れたからといって「国際人」とは言えず、あくまで喋る内容が重要であるというお話でした。

なるほど、読み書きを十分やっていなければ、理論は空疎なものになり、感情表現も乏しくなるでしょう。外国の方とコミュニケーションを取るどころではない筈です。


ところで、時々若者言葉が問題視される事が有ります。もはや「若者」に限られた言葉ではなく、広い範囲で使われている感が有りますけど。私も「ぽい」とか「みたく」とかつい使ってしまう事があります。

言葉が変容していくのは、今までも繰り返されている事なので理解できます。それよりも気になるのは、最近の言葉は、一つの言葉が多くの意味を持ちすぎる気がするのです。というか、逆に意味の有る言葉が無くなっていってるんでしょう。「ヤバイ」「カワイイ」「ウザイ」といった単語は、何かを表現しているんじゃなくて、ただ発しているとしか思えません。「乗りで喋りゃあイイじゃん」てなもんでしょう。

「乗り」志向は「笑い」でも感じる事があります。我が家にも成人前の娘が居ますが、家族3人でバラエティー番組を観ていたりすると、娘一人「笑うタイミング」が早かったり変だったりします。見た目で笑わせているならともかく、出演者が何を言ってるのか判らない内に笑うのはどうにも解せません。娘は多分「乗り」で笑ってるんだと思います。そもそも、娘の世代は喋る速度自体、凄い速さです。相手の言う事を理解するというより、自分の言いたい事を言うのが先に立っているのかなあとも思いますが、どうなんでしょう。


私はブログを始めてから、物を考える習慣が付きました。一時期本も(音楽雑誌以外)読まなかったんですが、読むようになりました。すると、仕事上も色々アイデアが出てくるようになりました。ベテランになったからというんじゃなくて、明らかに「見えるもの」が違っています。「自分の言いたいこと」が増えてくるんです。

こんな、脳細胞が日に日に欠けている状態でも持ち直すんですから、さぞかし若かったら集中力・表現力が高まるだろうと推測できます。

藤原さん、強調されていました。やっぱり「読み書き算盤」がすべての基本だと・・・ブログとか授業で取り上げられれば素敵な事だと思うんですが、どうでしょう。

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アメイジング・グレイス

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「アメイジング・グレイス」の成り立ちについてWikipediaで調べてみました。

まだ「音盤」が誕生する150年ほど前に出来た曲です。創ったのは1725年イギリス生まれのジョン・ニュートン。敬虔なクリスチャンの母親は、彼が7歳の時に亡くなります。小さい頃から船乗りの父親と乗船し、やがて「奴隷貿易船」と関わるようになります。1748年、22歳の時、船長として奴隷船に乗船していましたが、激しい嵐に遭い、必死に神に祈った結果か、一命を取り留めました。

彼は、改心し奴隷貿易の仕事は続けたものの、彼の船は黒人の待遇が人並みだったそうです。1755年彼は船を降り、後に神父となり1765年に「アメイジング・グレイス」を創りました。

黒人奴隷の歌う歌にヒントを得たという説も有りますが、定かではありません。

アメリカに移住したアイルランド人が広め、カントリー音楽の盛んなアパラチア山脈地方からニューオリンズや南部に伝わり、黒人が北部に移動するにつれ、全米に広がっていったようです。

白人・黒人を問わず愛唱し、日本でも(おそらくその他の国でも)多くの感動をもたらしている曲です。人種差別運動が盛んな時期、非公式デモ隊もよく歌っていたそうですが、この歌を歌い終わるまでは、権力側も手を出さなかったと言います。

ジョン・ニュートン、憶えておきたい人です。

Mah

♪歌唱はやはりこの人で

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