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『大衆音楽史』の視点

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●森正人著『大衆音楽史』(中公文庫)

著者は文化地理学の先生で、音楽が専門というわけではないです。宮廷音楽の対立項としての大衆音楽が「地理上」どのような移動をして影響を与えてきたか、という視点とその「場所」における特性や人種、階級、性差による違いという視点がぶれないため、読んでいて解りやすく理論が展開されています。

大英帝国と西アフリカ、アメリカ&カリブを結ぶ所謂「三角貿易」地帯は、コーヒーやタバコといった嗜好品の他、奴隷や移民という「人間の移動」も含んでいました。音楽もその過程で「移動」し、各地で「文化」として花開きました。その行程を丁寧に追いかけられた一作です。

中身に具体的に踏み込むと、さすがに面白みが半減しそうなのであらましだけご紹介。黒人音楽へのヨーロッパ音楽の影響。カントリーソングの英米間の往復。パンク誕生前夜とファッションとの絡み。ラップとレゲエのサウンドシステムの連関・・・といったエピソードを軸に、冒頭に書いた人種、階級、性差の違いを常に視点として語っておられるので読んでいて吸収しやすいです。ただ残念なのは、私が気付いただけでも三箇所間違いがあります。それをここで書いても仕方がないし、大元の内容にはさほど影響がないので書きません。

私が黒人音楽ファンなので、その他のジャンルに詳しくなく、非常に参考になりました。総花的ではありますが、何より再三強調しますが、「視点」がブレない点が良かったです。

♪ホームページ
http://www.human.mie-u.ac.jp/~mori/

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コメント

こんにちは。

なんか面白そうな本ですね。
音楽の本って、雑誌くらいしか読んだことないので
今度本屋さんで探してみようと思います。

それと、ようやく重い腰あげて引っ越しすることにしました。
お知らせいただいてからずいぶん経ってしまいましたが
これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿: nadja | 2009年5月25日 (月) 16時04分

nadjaさん、どうもお久し振りです。是非読んでみてください。音楽史というか文化史的側面の方が強い感じです。

引越しおめでとうございます。今後とも宜しくお願いします。

投稿: k.m.joe | 2009年5月25日 (月) 16時22分

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