メアリー・Jはメアリー・J
『メアリー』という自分の名前だけのアルバムを創った後、2001年の作品。『メアリー』は自分の顔のキズを見えるようなジャケ写も話題となりました。
その後に出たこのアルバムは「ドラマはもういらない」とタイトルに謳い、シリアス路線の深化か?と思うもののジャケ写は一転して厚化粧。インナースリーヴもセミヌードのようなショットも有ったりして、ちょっとビックリ。但しこの人の場合あんまりエロチックにはならないです。眼が「真剣」なんですよね。
「化粧」を女性の「戦闘態勢」と解釈するなら、再び彼女は強い女性として立ち上がったと考えるべきなんでしょうか?・・・これは考えすぎでしょう。ひとつ気分を変えたかったんじゃないかな?
しかし、どんなスタイルを取ろうともメアリー・Jの「女らしさ」「力強さ」「生真面目さ」はデヴュー以来続いています。
①ラブ・・・じゃっかん、大仰な始まりだけどメアリーの貫禄が滲み出ています。L・O・V・Eとアクセントをつけ、一文字ずつ声を上げてますが心地よいリキの入り方。
②ファミリー・アフェア③スティール・アウェイ・・・有名な曲のタイトルと同名な曲が続くので、おっ?と思いますが良い意味で異質です。両方ともクッキリしたトラックでバックの音は太いんだけど、全然メアリーのヴォーカルの邪魔になっていない。彼女のヴォーカル力もあるでしょうけど。自在に漂っています。③はネプチューンズ絡み。
http://www.youtube.com/watch?v=bxCS-Pa2YyA
④クレイジー・ゲイムス・・・派手さはないが、メアリーのヴォーカルが堪能できます。
②③④と新し目の音が続いた後、
⑤PMS・・・冒頭のブルースギターはレニー・クラヴィッツ。適度に粘って格好良い。歌はじっくりと歌い上げます。底辺にアル・グリーンをサンプリングし、プロデューサーのチャッキー・トンプソン同様アルバムで毎回のように登場する、往年のソウルナンバーに関する「リスペクト」をストレートに出してる曲です。こういう時はメアリーはいたって静かに歌います。彼女自身が陶酔するかのように・・・。
⑥ノー・モア・ドラマ・・・タイトル曲でひとつの頂点に達している感じ。ジャム&ルイス。「ドラマはもうたくさん」と言いながらドラマチックな曲です。大仰ではないですけど。他の曲でもそうですが、メアリー自身の歌声が複数でバックコーラスを努める中、中心のメアリーがこぶしを利かせるのが何ともいえない魅力。この辺が「セルフ・プロデュース能力」に長けると私が思う所です。
http://www.youtube.com/watch?v=BZ9uCiPBIWc
⑦キープ・イット・ムーヴィング・・・ヘヴィーなヒップホップ曲をやってもソウル魂を感じる。結局、彼女の前ではどういうパターンで来ようと彼女のオリジナリティーが勝るという事でしょう。声を張り上げる部分でちょっと「アフリカ的」になったりして面白い。
⑧デスティニー・・・結局『ノー・モア・ドラマ』って前作の『メアリー』路線の延長とも言える。しかし、考えてみれば、どのアルバムにしろメアリーの「入魂ぶり」は共通しているようです。決して妥協しない精神は美しい。インタヴューとか観てもかなりこの人真面目な人なんだと思います。この比較的「小曲」でもメアリーが沁み込んでゆく。ニーナ・シモンがサンプリングされているそうですが、パラパラっと鳴ってるピアノかな。そういえばニーナ・シモンもメアリーの様な独特な「こぶし」を持った歌手ですね。
⑨ホウェア・アイヴ・ビーン・・・シンプルな中、アクセントはイヴのラップ。毎度の事ながらメアリーのラッパーの使い方も上手い。入り方・抜け方が決まってます。
⑩ビューティフル・デイ・・・メアリーの弟が創った曲だそうです。⑦⑧⑨と、この辺りの曲はずっとつながっている感じ。流し続けて心地よいものがあります。悪く言うと「中だるみ」?いやいや、私はメアリーの声を聴いているだけで満足です。ここではさりげないスキャット部とかリズムの乗り方が抜群で「ヒップホップソウルの女王」という称号を思い出します。
⑪ダンス・フォー・ミー・・・ポリスのサンプリング。しかし、エルトン・ジョンを使った時と同じで、総合的にメアリーJの音楽になっている。
http://www.youtube.com/watch?v=VnXdC2WTHFM
⑫フライング・アウェイ・・・しっとりと来ました。タイトルは「ゴー・トゥー・ヘヴン」というゴスペル的概念につながるらしいです(泉山真奈美さんのライナーより)。メアリー節絶好調。
⑬ネヴァー・ビーン・・・ミッシー・エリオット提供の曲ですが、メアリーに違和感無し。メアリーの歌声は強さと切なさを同時に感じる時がありますが、この曲は特にそんな感じがします。ミッシーほどの感覚の持ち主だけにその辺は分かるんでしょう。「メアリーの曲」として創ったんでしょう。
⑭2U・・・しっとり路線が続きます。泉山さんも書いておられるけど、多重録音のメアリーが一段と良い・・・ホント妥協しない人だ。
⑮イン・ザ・ミーン・タイム・・・少しリズムを取り戻したかと思いきや、静かな雰囲気は引き摺ってます。心地良いミディアム曲です。少おしスティーヴィーを思い出します。
⑯フォーエヴァー・ノー・モア・・・詩の朗読です。ちょっと早口だけどこれも計算か?いや、彼女に「計算」は無いはず。真摯な姿勢は伝わります。メアリー節を堪能した頭を冷却してくれる。
⑰テスティモニー・・・オリジナルアルバムでは最後の曲。彼女にしては淡々と歌い続けます。盛り上がらずに終わるのも味が有ります。私はこういう終わり方好きです。
⑱ガール・フロム・イエスタデイ・・・日本盤のみのボーナストラック。えらくジャズ調。これをもしオリジナルアルバムに入れるなら、タイトル曲の後ぐらいの、しっとり系のはじまり辺りに入ると良いかな?とも思ったけど、これはやっぱり入れない方が良いみたいです。
泉山さんが、タイトル曲の解説で「ジャム&ルイスもこんな感じでやれるんだ」と書かれてますが、メアリーの前では感覚が変わってしまうのかも知れません。メアリーは常にメアリーです。「メアリー・J・ブライジ」という自分を表現するために彼女は音楽に携わっているんでしょう。私生活で色々有るようです。彼女は哀しい眼をしているという人もいます。「ブルース」という言葉を私は敢えて使いません。「ブルース」では片付けられないものがあるのです。
彼女の音楽を言い表すのに最も適した言葉は「ああ、また彼女らしいアルバム創ったね」の一言に尽きます。
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コメント
愛
投稿: 愛ランダァー♪ | 2009年5月 7日 (木) 22時29分
改めて宜しくお願いします。(o^-^o)
投稿: k.m.joe | 2009年5月 9日 (土) 17時19分