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原尞著『私が殺した少女』

Boo
最初にタイトルが気に掛かった。

『私が殺した少女』とは、①本当に殺した②殺した事にされてしまう③結果的に殺したも同然(私の所為で死んだ)のどれに当てはまるのだろうかと気になりながら読み進めた。もしかしたら「私」は主人公では無いかも知れないという思いも浮かんだ。

さて、実際はどうなのか、私が考えたどれかに当てはまるのか、それともどれも違うのか・・・答えを上げるのは愚の骨頂だ。ただ、私はこの作品のタイトルは、作品の内容を表しているというより、筆者独特の「文章表現」の一つ(或いはその代表)として看板代わりに掲げられているという気がする。

ハードボイルドには「臭い」がつきまとう。汗、血、煙草、酒、硝煙、タイヤの焦げる臭い、嘔吐物・・・。

ハードボイルドには「痛み」がつきまとう。拳で殴られる痛み、心無い言葉に対する痛み、犠牲者への追悼の痛み、哀しい運命・人生に対する痛み・・・。

ハードボイルドには「微苦笑」がつきまとう。読み手のリズムを崩さず、作品のトーンを崩さず、甘すぎずロマンテイックに、乾ききった人間の営みや都会の冷たい風景にサッと降りかける「打ち水」のように・・・。

『私が殺した少女』も私が勝手に上げた条件を過不足無く満たしている。「もうちょっと早い段階で分かるはず」という場面も確かに有る。但し、それは作品世界のボロにはならない。実際の格闘シーンは少なくとも、格闘しているような緊張感は静かに漂い、真実を暴こうとする主人公の探偵は、苦境の乗り越え方も怒りの表現も「ハードボイルド・タッチ」で、時々口にする皮肉な台詞は、作者の文章表現と共に「微苦笑」を誘う。

じっくりと時間を掛けて紡ぎ出された作品で有る事が納得できる。

さて、この書評のようなもの、私としては思い切りハードボイルド調に書いたつもりだが如何なものか?最後に貴方の「微苦笑」を誘いたいのだが、私の性格からしてどうしても軌道を外れてしまう。取り返しの付かない事になると分かっていながら、書いてしまう暴挙をどうか「冷笑」して頂きたい。

「微苦笑さゆり」

ううっ・・・私が殺した書評。

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