ナチュラル・ソウル
http://www.youtube.com/watch?v=08p_c4NGor0
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1104017&style=music&cart=286134309&BAB=E
97年作の『シェア・マイ・ワールド』をご紹介します。ここで一旦彼女のアルバムを年代順に書いておきましょう。リミックス物や編集盤は割愛します。
92年『ホワッツ・ザ・411?』。94年『マイ・ライフ』。97年本作。98年『トゥアー』。99年『メアリー』。01年『ノー・モア・ドラマ』。03年『ラブ&ライフ』となります。本作は前作からの時間の開きや前作のヒットを考えると注目の一枚だったと思います。そこに繰り出してきたのは、至って落ち着いた感じの彼女らしいアルバムでした。
このアルバム割りと目立たない方ですが、私好きです。ヴォーカルも入れ込む場面は少な目ですが、全体的に落ち着いた感じがしてジックリ創ったんだろうなあという気がします。ジャケは、オープンカーの座席に座り、目の表情が読み取れないフェンディのサングラスを掛け無表情で鎮座しているメアリー。大体において彼女のアルバムのトーンは静かで、人肌がそのまま発火するような「盛り上がり」を感じますが、そのムードを表している様な派手さのないジャケ写です。『メアリー』のジャケも好きだけどこれも好き。「フェンディ」がブランド名じゃなくて、何か重要な「暗示」の言葉にでも思える厳かともいえる雰囲気が有ります。
①イントロ
②アイ・キャン・ラブ・ユー・・・ソウル・バラードで立ち上がります。リル・キムがラップで参加。聴く側が暖まってきた所に抜群の間で切り込みます。ロドニー・ジャーキンスのプロデュース。アレサ的ともいえる高音部を中心に高まりを見せます。
③ラブ・イズ・オール・ウィー・ニード・・・ジャム&ルイス作のキャッチーな曲。後ろで控えめに漂うようなラップを聴かせるのはナズ。切り込み方も自然。メアリーのアルバムに絡むラップはどれもカッコイイ。プロデューサーは別に居ても、メアリー天性のリズム感を元に自らサウンドを構成しているような所も見受けられます。プロデューサーの操り人形ではなく、「彼女ならではのサウンド」をプロデューサーも大事にしている感じがします。後ろでドラマティックス風の効果音を気付くか気付かないぐらいに流すのも良いです。この辺はジャム&ルイスかな?
④ラウンド&ラウンド・・・前曲に続いてクリアな縁取りを持った曲。トラックマスターズです。ひとつのパターンがずっと続くのが心地良い仕掛けです。
⑤シェア・マイ・ワールド(インタールード)
⑥シェア・マイ・ワールド・・・タイトル曲は、静か目のメロディアスな立ち上がり。ロドニー・ジャーキンスはホント落ち着いた感じの音創りをします。オールドファン向けの一人でしょうか?
⑦セブン・デイズ・・・これも又静かな「ブルース調」とも言える曲。しかし、私はこのアルバムの中でこの曲が一番好きです。淡々とした調子で歌うメアリーの哀しみが深く伝わり、聴く者も感情が高ぶります。終わりの方で流麗なギターを奏でるのはジョージ・ベンソン。
⑧イッツ・オン・・・R・ケリーをフィーチャー。彼のしなやかなヴォーカルで曲は始まります。メアリーも実に丁寧に歌い始めます。
⑨サンキュー・ロード(インタールード)・・・とうとうゴスペル来ちゃったか?
⑩ミッシング・ユー・・・サザンソウル的な立ち上がり。誰かと思いきやベイビーフェイス作でした。バックにシャニース(元気か?)が参加。ベースにネイザン・イースト。後半じんわりとゴスペル的になります。
⑪エヴリシング・・・来ました!彼女の代表曲といえる「入魂」の一曲。スタイリスティックスの名曲に想を得たというか両方交じり合ったような曲です。いっそ彼らにバックを歌わせたら良かったのに、とも思いますが、この曲スタイリスティックスの甘さと違い、ビターな味わいがあります。ジャム&ルイス良い仕事してます。
⑫キープ・ユア・ハンド・・・間を置かずに続けます。流している曲のようでアルバム全体を考えるとこれと次の曲辺りの「位置関係」が肯けます。
⑬キャント・ゲット・ユー・オフ・マイ・マインド・・・ラップにザ・ロックスが参加。ロドニーもイントロでラップ&歌で絡んでいるそうです。ゆったりとしたリズム・パターンが麻薬的。
⑭ゲット・トゥー・ノウ・ユー・ベター・・・・メアリー自身のヴォーカルを重ね、厚みを創っています。70年代ソウルのバックサウンドの感覚も有るなあ、と思い始めたところでスティーヴィー・ワンダーのフレーズを入れる所もニクイ。
⑮サーチング・・・不勉強で知りませんでしたがロイ・エアーズの「サーチング」と言う曲をサンプリングし、彼自身も演奏に参加しています。
⑯アワ・ラブ・・・ロイ・エアーズの後はジェイムス・エムトゥーメイですかい。何か白人ぽい歌い出しでメロディーも爽やか路線にやや傾いてます。しかし、丁寧に歌っており、何ともいえない感触が有ります。高音部の歌い方もいつもとちょっと違う。でもこれも良いです。アルバムの終わりかけにふさわしい曲です。
⑰ノット・ゴーイン・クライ・・・再びベイビーフェイス登場。タイトル部分を歌うメロディーがいかにも彼らしい。前後の曲とのつながりも良いですね。この歌も中々滋味が有ります。後半明るく開けていく感じも泣けてきます。このアルバム全体を振り返ってみると、前半にクッキリとしたリズムや緩めのラップとの絡み等でダウナーな感覚が有り、後半涙腺刺激路線に向かったとも言えるかな?メアリーの心理の流れを直に手で触れたような、生々しさが有ります。聴き終えてジャケ写をもう一度眺めると、魅力的な彼女が浮かび上がってきます。
⑱(ユー・メイク・フィール・ライク・ア)ナチュラル・ウーマン・・・大名曲ですが、不必要に盛り上げず、アレサのヴァージョンのようなふわっとした感覚を出しているようです。「ナチュラル・ウーマン」というタイトル。これがこのアルバムの答えかも知れません。
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