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メアリー・J・ブライジ『ストロンガー・ウィズ・イーチ・ティアー』

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随分前の話ですが、R・ケリーの試聴記で一点書き忘れていました。全体的に男らしく逞しいブラックネスを感じる旨書きましたが、オートチューンの取り入れ方にも激しい勢いを感じました。通常ヴォーカルを“補正”するような形で用いられる事が多いオートチューンを、主体となるヴォーカルのアクセントとして“活用”している印象でした。とてもカッコ好かったです。

実はメアリーの新作にも同じような印象を持ちました。彼女の場合、これまでの作品もトレンドな音を“吸収”し、メアリーらしさの一部として活用する姿勢が目立っていました。勿論どんなアーティストもオリジナリティーは持っていますが、彼女の場合はその個性が際立っており、その為に、人気のオートチューンを使ってもひと味違う感じを受けるのではないかと思います。

アルバムの序盤にオートチューン使いは目立ち、一挙に音世界に引き摺り込まれる感じです。

1stシングルの「アイ・アム」(6曲目)まで来るとお馴染みの曲調になり、浮き気味だった腰が落ち着きます。

ラップの使い方も相変わらず私好み。メアリーならではのサウンドに心地好く絡みます。

それにしても、今回驚いたのはラストの「カラー」。この1曲をR&Bファンに限らず是非ともゆっくり聴いて頂きたいと思います。話題の映画『プレシャス』にフィーチャーされているそうです。曲調はストレートなブルース。彼女がここまで濃いブルースを歌うのは記憶がありません。R&Bのバラードでも「入魂唱法」を駆使する彼女ですが、感情を絞り出すように歌う為には優れたバランス感覚が無ければ暑苦しくなって聴く者の心に届きません。ウザくなります。バランス感覚はリズム感に繋がると思います。メアリーが「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」と呼ばれているのは卓越したリズム感有ってのものだと思います(もちろんそれだけではない)。

ブルースというのは曲調がシンプルなだけに、力が入りすぎてもダメだし弱くても冴えないものになります。メアリーのリズム感、バランス感覚が「カラー」を傑出したブルース曲に仕上げています。この辺のヒップホップとブルース両方に通じる魅力をメアリーを通して感じてもらえたらと思うのです。彼女には豊かな声量はないですが、このバランス感覚がある限り、どんなジャンルでも感動させ得るシンガーで居続ける事ができると思います。

♪内容
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3707804

♪サイト
http://www.mjblige.com/

♪「ザ・ワン」
http://www.youtube.com/watch?v=mPGoO1GewtM

♪「アイ・アム」
http://www.youtube.com/watch?v=HOGmtnChKec

♪「アイ・ラブ・ユー(イエス・アイ・ドゥ)」このシンコペーションが堪りません
http://www.youtube.com/watch?v=Qd_2jisLfE8

♪「カラー」ラファエル・サディークのプロデュース
http://www.youtube.com/watch?v=U_77oYJRIBs

♪映画『プレシャス』のサイト
http://www.weareallprecious.com/

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コメント

おおお、新鮮ですねメアリーJのブルース!
私の世代かも知れないけど、こういう生声の叫びの染みいり具合を思うと、今の音楽の聴き方(ミュージックマガジンの記事は読んでいませんが)と合わせて考えてしまいますね。

投稿: himehikage | 2010年2月 8日 (月) 23時50分

そういう意味ではメアリーの歌唱は加工しても生声主体で響くということでしょうね。

投稿: k.m.joe | 2010年2月 9日 (火) 19時50分

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