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『ソウルバー・カスタム 30thアニバーサリーMIXCD』・・・共有財産と共有空間

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横須賀に在る老舗ソウル・バー『カスタム』の、30周年を記念して創られたMIXCD。店内でリクエストの多かった定番曲を中心にリミックスしたもの。米軍基地に近い土地柄で、自ずと本場のブラザー&シスター達の好みを反映したものにもなっている。尚かつ、サンプリングの元ネタとしても有名なものが多いので、ソウルや現代R&B、ヒップホップ系を一通り聴いている人なら十分愉しめる。

http://locosoul.net/?pid=25857327

http://www.youtube.com/watch?v=5LGj5QkoEGI

内容をご紹介する前に、少々戯れ言を・・・そもそも、サンプリングという手法が、黒人音楽の世界を中心に発達したのは象徴的だと思う。常に過去のアーティストへのリスペクトを忘れずに、影響を受けながらも新しい音を創造する姿勢が到達した、一形態だと言えそうだ。

そこでは、元ネタを「利用する」というより、「共有する」という感覚の方が近い気がする。もちろん、音楽には著作権が有り、守られて然るべきものだ。私が言わんとする「共有」は、表面に現れるメロディーやフレーズだけではなく、下地となる「黒っぽさ=ブラックネス」の部分に関わるものだ。フレーズを借用しても、フレーズに練り込まれたブラックネスまで感覚的に把握していなければ、サンプリングやミックスが“決まらない”と思う。

20年代の音楽も、現代の音楽も、ブラックネスが有るからこそ、時代の中で息づき、人々を魅了してきたのだ。そして、共有の財産として光り輝いているのだと思う。

「共有」について、更に妄想を拡げると、アーティスト+アーティスト、アーティスト+リスナー、リスナー+リスナーの3通りが有るのではないだろうか。そして、『カスタム』のようなお店は、共有財産を愛でる、リスナー+リスナーを中心とした「共有空間」なのかも知れない。

いよいよ本盤の話。第一印象は、「とても真面目に創ってあるな」。当たり前だ、と怒られそうだが、日頃MIXCDとやらにまともに立ち向かった事のない“保守的な”私が、思わず襟を正して聴き入るような作品群だった。

定番曲の、馴染みのフレーズだからという部分も大いに有るだろうが、結構大担なミックスが為されている部分でも、戸惑いながらもブラックネスは感じる部分がある。“共有財産”を把握出来ているからこそ成せる業だろう。

冒頭に、私も知っているビギーと2パックが登場。オールドソウルに傾倒しながら、対立していた二人に思い至り、この黒々としたCD自体を彼らに捧げたくなった。

あまり内容について細々書くのも無粋だが、一曲目(1トラック目)、アイズリーズの「ビトゥイーン・ザ・シーツ」で気分が乗ったものの、ルーサー・ヴァンドロス熱愛派が聴いたら絶句しそうなミックスを始め、私の耳からしたらアヴァンギャルドに聴こえる序盤でした。やっとモーメンツで落ち着いた次第。

テディ・ペンダーグラスの男っぽさが強調されたミックス、パティ・ラベルやスモーキー・ロビンソンといった定番の流れ。ボビー・ブランドを突き破るようにして出てくるウィリー・ハッチ辺りまで聴き進むとMIXにも慣れてくる(遅い!)。この後のマーヴィン・ゲイ→スタイリスティックス→ダイアナ&マーヴィン→もう一回スタイリスティックス→メイン・イングリーディエント→マイケル・ジャクソンが、一番美しくポピュラリティーのある流れかと。特にメイン・イングリーディエントが好い抑えになって、マイケルのバラードが一段と光る。一瞬スモーキーかと思う瞬間も。彼がこういう路線に落ち着いていたら果たしてどうなっていただろうとボーッと考えていたら、フェイバリット・シンガーのボビー・ウォーマックに集中出来なかった。続けて、デブラ・ロウズで雰囲気が一新し、ここからEW&Fまでは、女性・中性ライン?プリンスとかはこの位置しか入りようがないでしょ、というハマリよう。この辺の流れも面白い。

さて、いよいよ『カスタム』も閉店間近。いつの間にか店内は常連さんばかりとなり(「メンバーズ・オンリー」)、ブラックフットのシャウトに合わせて「タクシー!」を呼ぶ者も現れ、ドゥーワップに先祖返りしたようなタヴァレスのドリーミーな曲が、お客さんを見送る。それぞれに、心に残る共有空間から、一人(時には二人)の空間へと戻っていくのでした・・・。

変な終わり方となったが、再度纏めると、オールドソウルファンが通常あまり馴染まない打ち込みやMIXの世界でも、創る側にソウルが財産だという意識があるため、十分楽しめる一枚になっているのは確か。かといってオールドに気を遣い過ぎず決めるべき所はバシバシ、ズンズン攻めているのも良い。

♪Luther VanDross "A House is not a Home"
http://www.youtube.com/watch?v=Gu2JBMNBbKo

♪Willie Hutch "Baby come home"
http://www.youtube.com/watch?v=RomJgCFUBbo

♪J.BLACKFOOT "TAXI"
http://www.youtube.com/watch?v=KGpv2Erf79Q

※『カスタム』のマスター、shunさんとはマイミク関係で、以前甥が横浜で結婚式を挙げた際にお邪魔しました。短い時間で、お腹も一杯で、「共有空間」を堪能しきれない部分もありましたが、雰囲気は楽しめました。今回当CDを聴き、shunさんの解説と『カスタム』の歴史を読む事で、30年間の“伝統”の磐石さを感じ取れました。これもブラックネスという共有財産と、それを愛でる人間性が有ればこそかと思います。

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コメント

まずはご購入感謝。
そしてじっくり聴いて頂いた上に丁寧な感想まで、誠にありがとうございます。
選曲に関しては私は一切関わっていませんが、さすが元スタッフだけあって中々的を射たセレクトと思います。
Mixも何回も手直ししたようで、仰る通り真摯な姿勢で造られているようです。
一度ご来店なさっている分、雰囲気もご理解頂けるかと。
末長く愛聴してやって下さい。

投稿: shunちゃん | 2011年4月 4日 (月) 15時31分

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