黒人音楽から世界の民俗音楽、ひいてはポピュラー音楽全般の評論家、中村とうようさんが亡くなられた。つつしんでご冥福をお祈りします。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110721/crm110721180...私は黒人音楽のファンなので、その流れでのとうようさんが身近に感じている。私がロックから黒人音楽に興味を移し始めた頃、とうようさんが編集されていた『レコード・コレクターズ』が産声を上げた。既に『ミュージック・マガジン』は発行されていたが、自分の興味に近い『コレクターズ』の誕生はタイミングが良かった。ルイ・ジョーダンを始めとするジャンプ・ブルースやジャイヴ・ミュージックが丁寧に紹介されていた事で、ブルースからソウルに向かう前に、ジャンプ系やリズム&ブルースに暫くハマる事になった。
レコードも、その筋のものでとうようさんが編集されたものは信頼できたし、知識を増やせた。ジャイヴ・ボンバーズなどはとうようさんから教わった大好きなアーティストだ。とうようさんは、ちょうどその頃から「世界の大衆音楽」を紹介されるようになり、最初は私も興味を持ったものの、次第に離れていった。しかし、黒人音楽を「世界の大衆音楽」の一つとして考えるようになった。
とうようさんが編集された『黒人音楽の歴史』というアルバムがある。1曲目がデューク・エリントンの「南京豆売り」である。なぜ、このラテン風味の強い曲から始められたのか?このアルバムは単に歴史を時系列で追うものではなく、とうようさんが考える「黒人音楽」の特徴をピックアップしたものだったのだろう。その一つ、「黒人音楽の混血性」をまず訴えられたのかな、とも思っている。少なくとも私はこのアルバムでそれを教わり、常に頭の隅に置いている。
人間、何事も詳しくなっていくと、重箱の隅をつつくようになる。とうようさんは隅をつつきながらも重箱全体を示した方だと思う。重箱も考察の範囲によって、色々変わってくるが、もっとも大きな重箱は「ポピュラー音楽」という事になるのだと思う。その、もっと民俗性が強調されたものが「大衆音楽」かなとも思うし、同じ意味合いで考えても良いのかなとも思う。
もう一つ重要なことは、とうようさんの文章力だ。『ミュージック・マガジン』では社会問題にまで言及されている「とうようズトーク」という名コラムがあるが、これが非常に解りやすい。自分のスタンスを崩されないのも、理解を促進する一因だ。音楽の考え方にしろ、社会全般の事にしろ、全て、とうようさんの言う事に賛同する訳ではないが、とうようさんの考えというのはよく伝わった。文芸評論家などと比べたらマイナーなジャンルだけに、社会的に名前が売れてはいないだろうが、大した「評論家」「文筆家」だと思っている。
今考えてみると、とうようさんに教わった一番大事な事は、他の意見に惑わされず、自分のスタンスに合ったものを拾い上げ追究していく「姿勢」だったと思う。
どうも、ありがとうございました。
♪Jive Bombers "Bad Boy"
http://www.youtube.com/watch?v=dhcVx5Txk3Y
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