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生涯愛聴盤

851
●マーヴィン・ゲイ『ア・ミュージカル・テスタメント1964‐1984』

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3555851

「テスタメントTestament」とは、「神と人との誓約」「遺言」という意味。非業の死を遂げた無類のソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイに捧げるタイトルとしては、直接的とはいえ相応しいかも知れない。

聴く者を意識付けるタイトルともいえる。但し、捉われ過ぎず、背景に置きながら、まずは素直に向き合いたい。

ここには「ホワッツ・ゴーイン・オン」「レット・ゲット・イット・オン」「セクシャル・ヒーリング」といった超有名曲はない。

ベスト盤として企図されたものではなく、マーヴィン・ゲイとはどういったアーティストだったかを表現しているアルバムだからだと思う。超有名曲は耳を曇らせるのだ(編集の仕方によっては効果的に使えるかも知れないが)。

マーヴィンを深く理解するには、彼のヴォーカルが入ってない曲を聴けという話はよく聞く。彼が創った曲ばかりではないが、そこに流れるグルーヴ・・・大人しく優しい感覚を得やすい事が多いからだ。

本盤でも、マーヴィンらしさの象徴である独特のグルーヴは、ほぼ全編に流れている。インストは2曲目の「アフター・ザ・ダンス」だけだが、早くもこの時点で熱いものがこみ上げてくる。

もちろん、彼のヴォーカルが聴きどころ満載なのは言わずもがな。ソフトな歌い口にアクセントを付ける短いシャウト(時々イラついているようにさえ聞こえる)、色気を纏うファルセット・・・曲も、モータウンマナーに則ったドライブ感溢れるもの、アイドルだったと言われるナット・キング・コールを感じさせるもの、少しドゥーワップ調、味わいのあるゴスペル、そしてグルーヴに呼応し溶け込むタイプのもの、まるで観客とセックスしているかのような興奮度の高いもの、極め付けは半アカペラで歌い上げるアメリカ国家、と多彩だ。多彩だが、全てマーヴィン・ムードに統一されている。

優しくて、弱々しいんだけど男らしさを感じる。女性にとっては母性本能を擽るタイプ、男にとっては気の置けない悪友といったところか。ある意味それは大衆性だろう。それが正直に音楽に現れている。それでいながら高いアーティスト性を持つスター。いつまでも忘れられないはずだ。

♪"After The Dance (Instrumental)"
http://www.youtube.com/watch?v=PYMcyy6h8Wk

♪"Distant Lover (Live)"
http://www.youtube.com/watch?v=A4Jso29GvtI

♪"The Star Spangled Banner - Live From the 1983 NBA All Star Game "
http://www.youtube.com/watch?v=Aa4UTkWFb_8

♪"His eye is on the sparrow ( ALTERNATE VERSION )"
http://www.youtube.com/watch?v=qhmaIv9bR58

※私が持っているのは紙ジャケではないです。

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