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2012年3月

ドリーマー

●歳のせいだろうか、若い頃に比べて夢を抱かなくなった。その代わりと言っては何だが、自然の美しさや子供の笑顔等、実際に目にした日常の安らぎに感じ入るようになった。もちろん幸せだらけの世の中ではない。頭に来る事もあれば、悲しい気分になる事もある。でも、そういう感情も含めて、現実的に幸福感を感じる。夢を抱くのも現実あっての事なのだ。あるいは、もしかしたら人間は、生まれてからずっと夢の中にいるのかもしれない。

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●エッタ・ジェイムス『ドリーマー』<ヴァーヴ>(11)

http://www.hmv.co.jp/product/detail/4223647

エッタ・ジェイムスが亡くなった時、追悼記事を書きたかったが書けずじまいに終わった。時間的余裕もなかったけど、まずは、彼女が最後に収録したアルバムを聴いてみてからの話だと思っていたのだ。

アルバムは重い。だがストレスを感じるような重さではない。但し、エッタ・ジェイムスの魅力に惹き付けられていなければ、この重さは受け止められないだろう。と言うか、そもそも重さまでは感じ取れないだろう。

感心するのは、無理をしていない所だ。体力を消耗しているならしているなりに表現している。迫力はなくても、声が枯れ気味でも、お茶を濁すような事はしていないし、彼女の誠意と歌う喜びは伝わってくる。曲もスローテンポの物が多いが、安易にそれに乗っからず、メリハリを付けようとする姿勢も見える。

最近安売り気味の「歌姫」なんて言葉は彼女には似合わない。「ザ・シンガー」だ。生涯一歌手が、もがきながらも最後に見せた煌めき。歌を超えて、大きな何かが伝わってきた。

私にとっては、黒人音楽を聴き始めの頃に夢中になった一人。本盤は、コレクションとは異質の、彼女からのメッセージとしてありがたく受け取った。そして、こちらもやっとお別れの言葉が言い出せる。ありがとう。こんな素敵な世界を堪能できるようになったのは貴方のおかげです。

♪"Dreamer"
http://www.youtube.com/watch?v=1YymUTuvyno

♪"Cigarettes & Coffee"
http://www.youtube.com/watch?v=AveizbsC720

♪"MISTY BLUE"
http://www.youtube.com/watch?v=3HgE_HctLLo

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家内安全

●今週は、仕事のメンバーが一人休みなので忙しくなる。おまけに本社から視察に来るらしい。ある程度忙しい方が仕事のテンポは良くなるが、片付けられずに溜まっていく仕事も増える。いかに上手くやり繰りするかだね。

●そんな月曜の朝に腰を捻ってしまい、体勢次第では痛む。そういえば、娘は口内炎が治らず苦しそう。無類のお喋りがとんと無口になっている。元気なのはヨメさんだけだ。

●今日は午前中ヨメさんの実家。お昼をごちそうになる。その後母の病院に行ったら姉と遭遇。娘に小遣いをもらう。その後墓参り。佃煮屋さんの出店があったので姉から色々と買ってもらう。こんな一日があっても良いでしょう。

♪Junior Wells "Snatch It Back and Hold It"
http://www.youtube.com/watch?v=OSscKLEvlMg

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文系と理系のあいだ

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●福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』<講談社現代新書>

http://book.akahoshitakuya.com/b/4061498916

私の亡父は理系の人であった。電気工事関係の仕事に就き、アマチュア無線が趣味だった。私が小学生の頃、子供向けの科学雑誌を頼みもしないのに買って来て読ませようとした。

あいにく私は、怪盗ルパンや少年探偵団といった推理小説や、冒険譚の類が好きで、科学の世界には殆んど興味がなかった。せめて科学者の自伝を読むぐらいである。

中学生になり、生物の授業を受けるようになると、あ、これは何だか他の理系と違うと感じた。とりわけ、自分の身体の中に“生きた存在”が居るという事実に面白味を感じた。

本書は、その“生きた存在”の究極的到着点、分子生物学について語られている。

一読して、中学生の頃の気持ちを想い起こすだけでなく、より哲学的なロマンを感じた。DNAの働きと、その解明に携わった有名無名の科学者たち。分子の動きの論理的美しさ。或いは、生命の動きの雄大なロマンチシズム・・・自分が生きる為に身体の中で色々な変化が起きているという事実。

遺伝子や分子を“生物”としてリアルに感じるだけでなく、人生をも生物的に感じ取れるのだ。その辺りが多くの人の共感を呼び、話題本となったのだろう。是非ご一読を!

亡くなっているせいかも知れない。親父にとって科学って何だったんだろうと考える事がある。本書を通して思ったが、私が黒人音楽に対して抱いているロマンを、親父も自分の好きな物事に対して感じていたに違いない。親父がガキの私に教えたかったのは、そんなロマンの感慨だったのだろう。

今、伝わりました。これもDNAの一種か。

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黒のミルフィーユ・・・RockEdge&beetnick『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリーVol.2』(B面)

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♪A面及び1作目
http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/custom/index.html

B面は、A面に比べてアクティヴな感じがした。曲と曲の転換部分とか特に面白い。曲の終盤近くに次の曲の導入部が入り込み、スッと入れ替わる所とかね。

さて、A面は、人々のざわめきと遠くに聴こえるマーヴィン・ゲイの声で終わったが、B面の冒頭はそれを引き継ぐ。が、やがて“皮膜”のようなものを突き抜け、レイ、グッドマン&ブラウンの安定感のある歌声が現れる。まるで、これから展開する世界こそが“現実の世界”だと宣言しているかのようだ。

日頃、ブルースやサザン・ソウルを中心に聴いている私としては、26・ラティモア発28・エディケンや29・テディペンを経由して31・メイズに繋がるラインは非常に気になる。実際に堪能したが、必ずしも他の曲群とトーンを異にする訳ではない。おそらく、こういった人気のある曲の目立つ部分には、“普遍的なブラックネス”が含まれているからだろう。この辺を追究すると抜け出られなくなりそうなので、推測に止めておく。

と思ったけど、少しだけ考えてみる。大和田俊之著『アメリカ音楽史』に、ヒップホップDJの元祖、DJクール・ハークに関する一節がある。ジャマイカ出身の彼は、かの地特有の“サウンド・システム”をブロンクスに持ち込み、ひたすら踊れる音楽を提供していた。彼は楽曲の“ブレイク部分”を好んだ。「ブレイク」とは歌や演奏が休止する部分。リズムが重要である黒人音楽に於いては、「ブレイク」のキメ方が雌雄を決する場合もある。卑近な例はジェイムス・ブラウンだろう。ヒップホップ初期に、サンプリングソースとして多用されたのも頷ける所だ。

クール・ハークの斬新さは元ネタをそのまま使った事だ。他人の黒い感覚をストレートに生かし、そこに自分の黒い感覚を重ねていったのだ。考えより感覚を先行させて。しかも、スープみたいに混ぜ合わせるのではなく、ミルフィーユのように、各層の中身が判る状態で重ね、食すれば独特の味わいというスタイルだ。

クール・ハークのミックス精神は、恐らく現代まで基本的には続いているのだろう。本盤を聴いてもそう思った。ブレイクに限らず、歌い口やハーモニー、リズムパターンなど各曲のブラックネスを際立たせた上に、DJのブラックネスをコーティングしている構図が感じ取れたのだ。コンピレーションやメドレーとは異質の「作品」として完成している所以である。

本盤から離れついでにもう一つ。25・スティーヴィー・ワンダー「パスタイム・パラダイス」。ライナーで「カスタム」のオーナー、shunさんも触れられていたが、オリジナルよりカヴァー曲「ギャングスタ・パラダイス」の方が有名だ。私も同感だが、個人的にはこういった“陰影”のある彼の曲は好きだ。「ゴールデン・レディ」とかメアリー・J・ブライジ等にフルカヴァーされた「オーヴァージョイ」とか・・・。明るくて、小さな子供でも歌えそうな曲がどうしてもメジャーだが、深く内省した所から滲み出てくるようなこの手の曲も併せて彼の魅力ではないかと。人間の喜怒哀楽を、あまねく表現できるアーティストなのである。

32・ナタリー・コール→33・パティ・ラベル→34・ベティ・ライトの熟女3人衆(曲発表時は熟女じゃないだろうけど)。特に、パティとベティの存在感たるや。歌手が歌唱力にも増して必要なものが何かを、彼女たちは教えてくれている。

しかし、更に強烈なスウィートソウル責めが・・・。35・アトランティック・スターも佳曲だが此処では露払い状態みたい。36・エンチャントメント→37・ブルー・マジック→38・ニュー・バース→39・レニー・ウィリアムスと、ジックリ聴かせてくれる。端正な美しさに包まれる黒い情念が心を惹き付けて止まない。これぞモダンなソウルミュージック。アーシーとコンテンポラリーの中間点だ。レニーの曲になると、一緒になって「オ・オ・オ・オ・オ」と歌いたくなってくる。

これだけ盛り上がると、締めがどうなるかだが、粘着度の高い40へ任せる。リック・ジェイムスの歌唱がスムーズな分、ティーナ・マリーが熱唱。だが全くクドくない。心地好い余韻を残してアルバムは閉じられる。

※今回は脱線して、CDレビューとしては不十分に終わった。書き直そうかとも思ったが、これが私自身のミルフィーユかとも思い、敢えてそのままにした・・・ちょっと食えないかな?

♪Stevie Wonder "Pastime paradise"
http://www.youtube.com/watch?v=_H3Sv2zad6s

♪Betty Wright "No Pain No Gain"
http://www.youtube.com/watch?v=bzutgGxXIkk

♪Lenny Williams "Cause I Love You"
http://www.youtube.com/watch?v=QbzkwLWK-Ps

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本気の本

●珍しい事をすると雨が降る。昨日せっせと洗車したら、今朝から天気が悪い。おまけに鼻炎になったようだ。唐突なタイミングでクシャミが出る。本屋で立ち読み中に本が汚れそうで困った。帰宅後テレビを観たり、のんびりしているとどうにか落ち着いてきた。

●書店では2冊購入。図書カード1000円分、娘から譲り受けたので、気が大きくなった?『音楽の本の本』は、単なるガイドブックではなく、ライター諸氏等の音楽履歴に沿って、本や関連人物・事項を紹介しているコーナーもあり、音楽好きの熱意が伝わる一冊のようだ。

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http://book.akahoshitakuya.com/b/4862551181

Gu
http://book.akahoshitakuya.com/b/4122052300

●池田晶子著『知ることより考えること』読書中。善悪は自分で判断するべき。というか普遍的には誰もが善悪を知っている。知っているけど、欲をかいたり、言い訳を思い付いたりする事で、善→悪への転換が成される。それが法律では罪に問われないものでも、善的行動とは呼べないものが無数にある。「そんな事をして恥ずかしくないのか、自分の胸に聞いてみろ!」というのは正しい。

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http://book.akahoshitakuya.com/b/4104001082

♪George Jackson "Talking About The Love I Have For You"
http://www.youtube.com/watch?v=2QxfmCQC3sE

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2012年2月の読書メーター

2月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:594ページ
読んでた本の数:2冊
読みたい本の数:6冊

▼読んだ本
アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで (講談社選書メチエ)アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで (講談社選書メチエ)
「擬装」をキーワードにアメリカの音楽史を語る。人種、性別から地球と宇宙・・・取り入れるのではなく「成り変わる」という発想。考えてみればアメリカという国はネイティヴ・アメリカン以外は「よそ者」。それぞれに通低するものは元々無いのだ。基本、黒人音楽のリスナーとしては後は音で感じよう。
読了日:02月19日 著者:大和田 俊之
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
理科系にとんと弱い私なのに、こんなに読みやすいとは思わなかった。科学者から分子レベルの「生物」までイキイキと描かれている。生命のシステム?まで生々しく説明される。ロマンチストでリアリスト、しかもヒューマンな人。
読了日:02月15日 著者:福岡 伸一
▼読んでた本
知ることより考えること知ることより考えること
著者:池田 晶子
エレクトラ―中上健次の生涯 (文春文庫)エレクトラ―中上健次の生涯 (文春文庫)
著者:高山 文彦
▼読みたい本
アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)
著者:ウィリアム フォークナー
人種差別の世界史―白人性とは何か? (刀水歴史全書)人種差別の世界史―白人性とは何か? (刀水歴史全書)
著者:藤川 隆男
白人の歴史白人の歴史
著者:ネル・アーヴィン・ペインター,越智 道雄
音盤時代の音楽の本の本音盤時代の音楽の本の本
著者:
孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人
著者:高山 文彦
生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)
著者:シュレーディンガー

読書メーター

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2012年2月の音楽メーター

2月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:12枚
聴いた時間:0分

When the Smoke ClearsWhen the Smoke Clears
聴いた日:02月29日 アーティスト:Public Announcement
Blues to the BoneBlues to the Bone
聴いた日:02月28日 アーティスト:Etta James
The Way I See ItThe Way I See It
聴いた日:02月28日 アーティスト:Raphael Saadiq
Baby Makin MusicBaby Makin Music
聴いた日:02月27日 アーティスト:Isley Brothers
Keith Sweat LiveKeith Sweat Live
「ソウルシンガー」としての実力が堪能できる。最近のライブ盤も高評価。
聴いた日:02月24日 アーティスト:Keith Sweat
Dancing the BluesDancing the Blues
タイトル通りの踊れるブルース集。やや硬質な音がビンビン来ます!
聴いた日:02月23日 アーティスト:Taj Mahal
Growing PainsGrowing Pains
活気のある曲が多い。彼女のリズムに対する感性が十二分に味わえる。
聴いた日:02月21日 アーティスト:Mary J Blige
BrandedBranded
この人はたぶん、息を吐いても黒いに違いない。
聴いた日:02月17日 アーティスト:Isaac Hayes
Ghetto ClassicsGhetto Classics
サグなタイトルだけど結構涙腺に来る。スウィートネスの横溢。
聴いた日:02月16日 アーティスト:Jaheim
Makings of a ManMakings of a Man
素晴らしい完成度!彼のアルバムは今のところ全部買うべき!
聴いた日:02月15日 アーティスト:Jaheim
This Is Ryan ShawThis Is Ryan Shaw
レトロという名の新しい展開。
聴いた日:02月15日 アーティスト:Ryan Shaw
What's the 411What's the 411
まだメアリーらしさは完成されていないが、70年代ソウルとヒップホップとの融合が無理なく出来ているのはサスガ。
聴いた日:02月14日 アーティスト:Mary J. Blige

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