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黒のミルフィーユ・・・RockEdge&beetnick『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリーVol.2』(B面)

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♪A面及び1作目
http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/custom/index.html

B面は、A面に比べてアクティヴな感じがした。曲と曲の転換部分とか特に面白い。曲の終盤近くに次の曲の導入部が入り込み、スッと入れ替わる所とかね。

さて、A面は、人々のざわめきと遠くに聴こえるマーヴィン・ゲイの声で終わったが、B面の冒頭はそれを引き継ぐ。が、やがて“皮膜”のようなものを突き抜け、レイ、グッドマン&ブラウンの安定感のある歌声が現れる。まるで、これから展開する世界こそが“現実の世界”だと宣言しているかのようだ。

日頃、ブルースやサザン・ソウルを中心に聴いている私としては、26・ラティモア発28・エディケンや29・テディペンを経由して31・メイズに繋がるラインは非常に気になる。実際に堪能したが、必ずしも他の曲群とトーンを異にする訳ではない。おそらく、こういった人気のある曲の目立つ部分には、“普遍的なブラックネス”が含まれているからだろう。この辺を追究すると抜け出られなくなりそうなので、推測に止めておく。

と思ったけど、少しだけ考えてみる。大和田俊之著『アメリカ音楽史』に、ヒップホップDJの元祖、DJクール・ハークに関する一節がある。ジャマイカ出身の彼は、かの地特有の“サウンド・システム”をブロンクスに持ち込み、ひたすら踊れる音楽を提供していた。彼は楽曲の“ブレイク部分”を好んだ。「ブレイク」とは歌や演奏が休止する部分。リズムが重要である黒人音楽に於いては、「ブレイク」のキメ方が雌雄を決する場合もある。卑近な例はジェイムス・ブラウンだろう。ヒップホップ初期に、サンプリングソースとして多用されたのも頷ける所だ。

クール・ハークの斬新さは元ネタをそのまま使った事だ。他人の黒い感覚をストレートに生かし、そこに自分の黒い感覚を重ねていったのだ。考えより感覚を先行させて。しかも、スープみたいに混ぜ合わせるのではなく、ミルフィーユのように、各層の中身が判る状態で重ね、食すれば独特の味わいというスタイルだ。

クール・ハークのミックス精神は、恐らく現代まで基本的には続いているのだろう。本盤を聴いてもそう思った。ブレイクに限らず、歌い口やハーモニー、リズムパターンなど各曲のブラックネスを際立たせた上に、DJのブラックネスをコーティングしている構図が感じ取れたのだ。コンピレーションやメドレーとは異質の「作品」として完成している所以である。

本盤から離れついでにもう一つ。25・スティーヴィー・ワンダー「パスタイム・パラダイス」。ライナーで「カスタム」のオーナー、shunさんも触れられていたが、オリジナルよりカヴァー曲「ギャングスタ・パラダイス」の方が有名だ。私も同感だが、個人的にはこういった“陰影”のある彼の曲は好きだ。「ゴールデン・レディ」とかメアリー・J・ブライジ等にフルカヴァーされた「オーヴァージョイ」とか・・・。明るくて、小さな子供でも歌えそうな曲がどうしてもメジャーだが、深く内省した所から滲み出てくるようなこの手の曲も併せて彼の魅力ではないかと。人間の喜怒哀楽を、あまねく表現できるアーティストなのである。

32・ナタリー・コール→33・パティ・ラベル→34・ベティ・ライトの熟女3人衆(曲発表時は熟女じゃないだろうけど)。特に、パティとベティの存在感たるや。歌手が歌唱力にも増して必要なものが何かを、彼女たちは教えてくれている。

しかし、更に強烈なスウィートソウル責めが・・・。35・アトランティック・スターも佳曲だが此処では露払い状態みたい。36・エンチャントメント→37・ブルー・マジック→38・ニュー・バース→39・レニー・ウィリアムスと、ジックリ聴かせてくれる。端正な美しさに包まれる黒い情念が心を惹き付けて止まない。これぞモダンなソウルミュージック。アーシーとコンテンポラリーの中間点だ。レニーの曲になると、一緒になって「オ・オ・オ・オ・オ」と歌いたくなってくる。

これだけ盛り上がると、締めがどうなるかだが、粘着度の高い40へ任せる。リック・ジェイムスの歌唱がスムーズな分、ティーナ・マリーが熱唱。だが全くクドくない。心地好い余韻を残してアルバムは閉じられる。

※今回は脱線して、CDレビューとしては不十分に終わった。書き直そうかとも思ったが、これが私自身のミルフィーユかとも思い、敢えてそのままにした・・・ちょっと食えないかな?

♪Stevie Wonder "Pastime paradise"
http://www.youtube.com/watch?v=_H3Sv2zad6s

♪Betty Wright "No Pain No Gain"
http://www.youtube.com/watch?v=bzutgGxXIkk

♪Lenny Williams "Cause I Love You"
http://www.youtube.com/watch?v=QbzkwLWK-Ps

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