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リック・ジェイムス『ザ・ディフィニティヴ・コレクション』

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●<モータウン>(06)録音年は78~88。SHM-CD

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1391543

むかし通い詰めていた喫茶店のマスターが聞かせてくれた話は、面白いが、ちょっと悲しいものだった。チャック・ベリーを店で流していたら、或る客が「あ、ビートルズの曲やってる」と。

カバー曲がオリジナルより有名になった時、オリジナルを創ったミュージシャンはどんな気持ちだろう。チャック・ベリーならまだ名前は知られている方だろうけれど・・・。

リック・ジェイムス「スーパー・フリーク」の、あのお馴染みのフレーズも、残念ながらMCハマーの曲中でのものが有名だろう。リックの事が、MCハマーよりは知識がある私でも「スーパー・フリーク」を聴くと、違和感に包まれる。MCハマーの曲がどういうものだったか思い出せないのに、あのガニ股の残像が浮かび上がってくるのだ。

更に、<モータウン>の鬼っ子と呼ばれていた内はまだしも、麻薬中毒や暴行事件といった暗い話題に、早逝を重ね合わせると、往々にしてリック・ジェイムスには負のイメージを持ってしまいがちだ。しかし、音楽性の高さについては以前から評価が高く、今回このベスト盤を聴いてみて、改めて納得した。但し、「スーパー・フリーク」を含む『ストリート・ソングス』の各曲までだ。

特に素晴らしいのは、デビュー曲(しかも長尺)にしてR&Bチャート1位を獲った「ユー・アンド・アイ」。グルーヴは決して濃厚とは言えないが、スライほどサラッとはしておらず、十分腰に来る。ちょっと気取ったブーツィー・コリンズみたいな感じだろうか。冒頭のこの曲から「ギブ・イット・トゥー・ミー」まで怒涛のファンク攻撃なのだが、聴き疲れない。しなやかで聴きやすいのだ。

「スーパー・フリーク」で少し距離が空いた後に、超絶バラードの「ファイアー・アンド・ディザイアー」。もうここで終わっても良いぐらいの盛り上がりだ。

その後。テンプテイションズ名義の曲は、テンプスファンの私でも気持ちが入らない。スモーキー・ロビンソン名義の曲は好い。しかし、スモーキーの歌唱力に負う所が大きい。

他の曲は、私の苦手な打ち込みサウンドなのも原因だろうが、「ユー・アンド・アイ」に代表されるリック・ジェイムスならではのファンク世界の表面だけをなぞっているように平板的な印象だ。

「ユー・アンド・アイ」が78年で『ストリート・ソングス』が81年である。時代的にも黒っぽさが変質しつつある頃だった。それにしても、オリジナリティーを上手く活かせれば、彼の実力だったら生き残れたはず。もっと色んなタイプの曲で愉しませて欲しかった。心残りなアーティストの一人である。

♪"You and I"
http://www.youtube.com/watch?v=dWZkxYamLUs

♪"Fire & Desire"
http://www.youtube.com/watch?v=Gm1ibHUyJjA

♪"Give It To Me Baby"
http://www.youtube.com/watch?v=poMCoUR2gh0

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