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マイケル・ジャクソンは生きている

Mic
●西寺郷太著『マイケル・ジャクソン』<講談社現代新書>

私は、旧い黒人音楽を中心に聴いているからだろう、マイケル・ジャクソンはジャクソン5時代のパフォーマンスを好む。というかそこから先のマイケルは、積極的には聴いていない。

とはいえ、独立してからのスーパースター振りに批判的な訳でもなかった。むしろ一目置いていた。興味の範疇になかっただけだ。

それだけに、性的虐待疑惑やら顔面崩壊やらのスキャンダラスな話題が先行するのは苦々しかった。しかし、マイケルの容貌や行動が私を興醒めさせていった面もある。音楽の現場以外での“話題の提供”などどうでも良かったのだ。少年時代の、あの素晴らしいヴォーカル力こそがマイケルの真の魅力だという、保守的極まりないオッサンにとっては、他の面は受け入れ難かったのだ。意識の溝は埋まらなかった。突然の死に対しても、驚きはしたが、深い悲しみまでは覚えなかった。

私のようなスタンスを持つ者は、まあまあ多いのではないか。マイケルの実状が把握しにくかったのも一因かと思う。本書は、マイケルを深くリスペクトする著者が、決してマイケル贔屓に陥らず、真実を丁寧に積み重ねて、彼の実像を明らかにしたものだ。私とマイケルの距離も、読後は縮まった。彼の音楽に対するシビアな姿勢や、自分の敵にまで優しく振る舞う人間性、絶賛すべき点、哀し過ぎる事・・・ぼやけていたマイケル像の輪郭が、かなり明確化した。

本書を離れて(通低するものはあるが)連想されたのは、現代R&B界におけるマイケルの存在感だ。最近は、ニーヨ等主流のアーティストが、リスペクトする相手としてマイケルの名前をよく上げている。発言を確認してないが、クリス・ブラウン辺りも影響大ではないだろうか。

メロディーやグルーヴの優しさや、正統的ダンス感覚が、メリハリの強かったサウンドの次世代の嗜好として取り上げられた気がする。キーワード化すれば“ナチュラル”だ。正に、マイケルその人を言い表す言葉でもある。

「次世代」という事でいえば、マイケルが復活を志して集めたダンスチームのメンバーは、皆、YouTubeの動画等でマイケルの凄さに接し、マイケルに憧れて集まった若者ばかりだったという。ブラックミュージックのトレンディシーンのバックボーンとしてだけでなく、彼自身の音楽活動も、若い力の結集という新局面を迎えつつあったのだ。

つらつら想うにマイケルが亡くなったのは悲しい事実。残念至極。しかしながら、マイケル・ジャクソンは、まだまだ“生き続ける”のも確かな事実だ。

♪The Jackson 5 "I Want You Back"
http://www.youtube.com/watch?v=s3Q80mk7bxE

♪Michael Jackson "HUMAN NATURE"
http://www.youtube.com/watch?v=CpK2FAT6kJk

♪Michael Jackson "Black Or White"
http://www.youtube.com/watch?v=F2AitTPI5U0

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