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2012年8月

自分へ

●想いを表現で綴ろうとしてはいけない。まずは想いをぶつけてみる。その熱量に見合った表現が浮かぶ。あとは距離を置いて、熱で溶解した部分を丹念に形作っていく。

●努力すれば、知識はいくらでも得る事が出来る。でも、森羅万象に精通するのは不可能。それよりも、自分なりの思考スタイルを作る事だ。修正しながらでも、とりあえず作ってみる。

●他人の考えをよく知れ。それは真似る為ではなく、自分の考えを固める為である。理解力なくして創造力は生まれない。読めなきゃ書けない。また、著名な人ばかりを追いかける必要もない。小さな子供にだって考えはある。

●ジャンルは目安である。囚われてはいけない。黒人音楽の最大の魅力は、黒人が歌い演奏しているからではなく、その自由性である。マイルス・デイヴィスが「俺の音楽をジャズと呼ぶな」と言ったり、ゲイトマウス・ブラウンがブルースマンと呼ばれるのを嫌うのも一理ある。

♪Barbara and the Browns "I Don't Want to Have to Wait"
http://www.youtube.com/watch?v=3DVDmHdaQpc

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車は自分で動かない

●車の運転について考えてみる。毎日運転していて、車はつくづく人間の感情に左右されるものだと思う。皆が冷静さを保ち、ルールに則って運転すれば、まず事故は起きない。平常心や判断力を失えば事故の引き金となる。皆、解っているが完璧に実行できないのが生身の人間でもある。

●私が個人的に気を付けているのが、「脅威」と「死角」が事故に繋がらないよう、ひとつひとつクリアしていく事だ。右折しようとする対向車、同じレーンを走る自転車やバイク、いかにも道路を横断しそうな人等が「脅威」。「死角」はさまざまな理由で見えない部分。自車の死角や対向車の死角、曲がり角等見通しの悪い場所といったものだ。これらが「脅威」や「死角」ではなくなるまで確認していく訳である。

●上記のような確認行為は、冷静さを保ちながら集中して行わなければならない。でも、意識すればそんなに難しい事ではない。もちろん、「冷静さを保つ」という事が難しいといえば難しい。特に、いい加減なドライバーや、自転車、歩行者が多くて、ついカッカしてしまう事もある。何かで読んだが、そういう時には「あの人はきっと急ぐ理由があるんだ」と思い、無謀な行為についてしつこく考えないのが秘訣だそう。私は、哀れな人たちだと思うようにしている。常識的に生きられないのは、人間として中途半端だ。それで良いと思って行動している訳だから、自分で自分を貶めているようなものだ。人間らしい人間じゃない訳だから、一緒になってカッカしては同類になってしまう。怒るべき局面は他にある。それぐらいの気でいないと、落ち着いた精神状態は保てない。

●人間は、元来「中途半端」なものではある。物事全てを完璧には成し得ない。問題は、意図的に中途半端な事をしでかす輩だ。こやつらは、自覚しない限り、他人から指摘されても改善しない。同じ土俵に「下がる」必要はないのだ。

●私の悪友は、昔レゲエをよく聴いていた。車を運転しながら「レゲエは安全運転のリズムだ」と宣う。確かにクールさが保てるリズムだ。反対に、バイト先の社員の人の車に同乗した時、「最近はこれがお気に入りだ」といって掛けたのがエアロスミスの「ウォーク・ディス・ウェイ」。見事に演奏通りの運転!私はすっかり固まってしまった。やはり、車は人間の感情で運転するものだ。

♪Aerosmith "Walk This Way" 
http://www.youtube.com/watch?v=Oy3y5dxkUJs

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待ち受け

●携帯電話の「待受画面」という言葉が好きだ。「基本画面」や「操作画面」より人間味を感じる。親しい人からのメッセージを心待ちにしているイメージが湧く。実情は、生活ツール・ビジネスツールとして、忙しく活用されているが、たまには一日中、のんびりと待ち受けてみたい。

●ヨメさんが、自分が妊娠した夢を連続して見たという。正夢の可能性はまずない。ヨメさんは、これを明るい兆しに捉えている。就活娘の内定取得だ。はたして、待受画面に朗報は来るだろうか?

●「待ち受け」という言葉は「待つ」と「受ける」を組み合わせたものかな?いずれにしろ「待つ」も「受ける」も今の世の中に必要な姿勢だろう。待ってばっかり受けてばっかりでは駄目だろうが、結論を早く出し過ぎたり、他人の話を聞こうとしなかったりというシーンはよく目にする。政治、国際関係、学校、事件、事故・・・。自分の感情を絶対視し、自己保身に終始している。少しでも待ったり、相手の立場や意見を受け止めたりは出来ないのだろうか。

♪Clarence Carter "Tell Daddy"
http://www.youtube.com/watch?v=FgIRQd2MVw4

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【創作】今日子(1)

今日子は、高校2年の春先に転校してきた。重い病気を患っていて、背丈は小さく痩せていた。髪の毛には艶がなく、細かくちぢれ、いかにも櫛が通りにくそうだった。顔色も黄色みが強く、見るからに不健康そう。目の下には濃い隈があるらしく、大きな黒縁の眼鏡で隠していた。

それでも、彼女は明るかった。笑顔の印象しかないぐらいに、いつもニコニコしていた。誰にでも気さくに話しかけ、自然とクラスのムードメーカーになり、いつの間にかクラス全体も仲良くなっていった。

体育はいつも参加できなかったが、普段はちょこまかとよく動いていた。勢い余って呼吸が乱れ、整えるのに時間がかかる事もあった。そんな時も「病気なの忘れちゃったよ」と、皆を笑わせるので、こちらも、彼女の病気を意識し過ぎる事はなかった。

ある日、帰宅途中に今日子が追いかけてきた。不規則な足音と一緒に「永井く~ん」と呼ぶ声。振り向くと足音が止まり、2、3歩手前で俯いてハァハァ言っている。大丈夫かと声を掛けようとしたら「な~んてね」と身体を起こし、胸を反らして明るく笑った。

「何だよ、まったく」
「アハハ、ごめんごめん。ところで永井君、デビッド・ボウイのジギー・スターダスト持ってる?」
「あれは山倉が持ってるよ」
「おっ、それは良かった。今から買いに行くからおいでよ」

何が良かったのか考える間もなく、脇目も振らず歩いて行く今日子の後を、少し離れながら僕はついて行った。彼女は時々振り向いて楽しそうに笑った。別にデートではないのだが、今日子の真っ直ぐな明るさに、気恥ずかしさと浮き立つ気分の両方に包まれていた。

レコード店での買い物はすぐに終わり、今日子の家で聴こうという流れになった。緑が濃さを増してきた田んぼの間の農道を、彼女は元気良く歩いていた。「早く聴きたいね」と一度言ったきり、ほぼ無言で、家に帰ってCDを聴く事が、相当な重要事であるかのように力が籠っていた。

誰かが今日子の事を生き急いでいると言った。でも、僕は少し違うと思う。急いでなんかいない。むしろ、ひとつひとつの体験をゆっくりと愛でている。彼女は僕なんかより、とても濃密な時間を過ごしてるんだ。基は彼女の運命がそうさせるんだろうけど、運命に意地を張らず、自分の感性で素直に生きている。結果、他人との交わりが自然かつ緊密に結ばれているんだと思う。

(つづく)

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暗闇の中のリアリティー

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●谷崎潤一郎著『陰翳礼讚』から。『源氏物語』の光源氏が、ある女房の仲介で某女性と親しくなる話。仕切りだか簾だかを間にして歌のやり取りをして懇ろになる。この時代の夜間は微かな灯りしか使わない。褥を共にしても、相手の顔さえ見えない暗闇の中だ。何度か逢瀬を交わした後、昼間に初めて相手の顔を見て、あまりの醜女ぐあいに興醒めしたというオチ。

●谷崎によれば、この時代、女性はひとりひとりのパーソナリティーを持たず「女」という同一の存在であった(その後も長い間そうだったろうけど)。じゃあ逆に言うと、醜女だろうが関係ないのではと思うが、そこは男の勝手さなのだろう。

●もう一点。暗闇が身近に存在した意義。陰翳の礼讚につながる部分であるが、全てをあからさまにしたり、女性を一個人として接するより、暗闇の中での衣ずれや匂い、肌触り、声などを「女」の魅力として堪能していたという結論。そのまま現代に当てはめると女性蔑視になり兼ねない。必ず昼間の逢瀬を重ねた後、倫理的範囲内で、合意の上お確かめ下さい。

●目に見えているものを触る場合と、暗闇の中で何か判らないものを触る場合では、指先の感覚から脳の働きまで、随分違うような気がする。この「感覚差」を埋める為には、新鮮な気持ちで、見慣れた物でも見詰める事かな。ちょっと、ヨメさんを・・・いや、他のにしよう。

♪小柳ゆき "あなたのキスを数えましょう You were mine"
http://www.youtube.com/watch?v=r-pLrft9rOM

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賢明に、懸命に

●見田宗介著『現代社会の理論』<岩波新書>から。レイチェル・カーソン『沈黙の春』では農薬の散布量の異常さが訴えられていた。効果的な量を超えた「散布の為の散布」。政府は特定企業の言いなりで改善する気などサラサラなかったのだ。水俣病も、専門家の指摘を検討しようとせず、チッソが「高度経済成長」の流れから外れて初めて、重すぎる腰を上げた為、既に深刻な状況になってしまっていた。賢明さと懸命さは権力側に立つと忘れてしまうのか。

●ヨメさんが、朝からコオロギの鳴き声を聞いたそう。暑さも少しずつ和らいでいくらしい。オリンピックの終わりが、色んな始まりに繋がってゆくような。

●お盆の期間も普通通り仕事だ。しかし、車の数も少なく若干リラックスムードである。ただ、県外ナンバーが多いので、その点要注意だ。

●娘の大学では、希望者に面接の練習をしてくれる。娘も先日受けた。担当の先生によると、志望動機等の文章はシッカリ書けているとの事。ただ、話に抑揚が足りないし、笑顔も不足かなと。小さい頃から店の人とかにも積極的に尋ねたりはするし物怖じはしないタイプなのだが、確かに愛想はないかも知れない。本当に仲の良い人物とは楽しそうにはするんだけど。まあ、後は本人が自覚するだけだろう。

♪Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.- You Don't Have to Be a Star
http://www.youtube.com/watch?v=-nb9jJg_wIU

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輝く眼差し

●人は、ここまで眼差しが輝くものかと感嘆する。アスリートとは、人々が人間らしさを忘れない為に存在するものかも知れない。人間離れした技術を見せてくれる彼らこそ、最も人間らしい人々かも知れない。技術は精神力がなければ成立しない。あの強烈に真っ直ぐな眼差しは、精神力の露出だ。たとえアスリート達のような運動技術はなくても、あの眼差しなら誰もが持てるはず。

●仕事で重い物を持つ場合がよくある。持ち方が悪かったのか、先日右手首を捻った。どうかした拍子に痛い。今年は何だかちょっとしたケガが多い。

●娘の学資保険が満期を迎え、まとまったお金が入ってきた。そのおこぼれでアマゾン探検へ。<フェイム>熱冷めやらぬ勢いで『ホール・オブ・フェイム』。同様の発想から<サウンズ・オブ・メンフィス>関連の未発表曲集『ロスト・ソウル・ジェムス』。喉から手が出たまんまで、やっと掴んだマディとストーンズの共演DVD+2CD『ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ 1981』。最高の避暑となりそう。
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2012年7月の音楽メーター

7月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:6枚
聴いた時間:0分

Heart of a ManHeart of a Man
歌唱力は悪くない。声が裏返る所とかは中々。ただ、テクニック以前の「伝わるもの」が今ひとつ。曲も良いのは6割方。ジェシ・パウエルやボビー・ヴァレンティノに比べると物足りない。中古屋で安かったら買いましょうか。
聴いた日:07月27日 アーティスト:Tony Terry
Silky SoulSilky Soul
ピーター・バラカン氏曰く「メイズこそ米国黒人に好まれる音楽」。ひとえに、ソウル心を失わない演奏陣のテクニックに尽きると思う。フランキー・ビバリーの歌声も楽器の一つの様に演奏と一体化している。
聴いた日:07月16日 アーティスト:Maze & Frankie Beverly
Highway 61 Revisited (Reis)Highway 61 Revisited (Reis)
7/1購入。525円ワゴン。
歌詞の内容が解らなくても彼の歌う内容が伝わってくるような真摯さ。
聴いた日:07月05日 アーティスト:Bob Dylan
The Sky Is Crying : The History of Elmore JamesThe Sky Is Crying : The History of Elmore James
7/1購入。525円ワゴン。
ブルースの正体・・・ロックの父。感情の直截的表現。歌唱と演奏の絡まり。優れたダンス・ミュージック。スタイリッシュな音楽・・・エルモアを聴けば以上の要素を納得。
聴いた日:07月04日 アーティスト:Elmore James
Stronger Witheach TearStronger Witheach Tear
女王は若い頃の方が落ち着いてクールだったな。最近の物は火傷するほど熱い。でも、バカみたいに派手じゃなく抑制は相変わらず効いている。これってディープ?
聴いた日:07月03日 アーティスト:Mary J Blige
Transformation to the House of ZekkariyasTransformation to the House of Zekkariyas
グルーヴって心臓の鼓動のことだと気付く。
聴いた日:07月02日 アーティスト:Womack & Womack

わたしの音楽メーター
音楽メーター

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2012年7月の読書メーター

7月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:937ページ
読んでた本の数:5冊
積読本の数:1冊
読みたい本の数:12冊

▼読んだ本
陰翳礼讃 (中公文庫)陰翳礼讃 (中公文庫)
数篇のエッセイが収録されているが「陰翳礼讃」で述べられている、日本文化の背景にある暗がりの存在が他のエッセイでも生きている。昭和一桁の作品が殆どながら、西洋文化の明るさ・清潔さを何の疑問もなく取り込んでいる日本の姿勢を批判している。
読了日:07月25日 著者:谷崎 潤一郎
41歳からの哲学41歳からの哲学
情報はそれだけでは知識にはならない。知識はそれだけでは思想にならない。深く考えるのに情報は必ずしも必要ではない。
読了日:07月21日 著者:池田 晶子
マイケル・ジャクソン (講談社現代新書)マイケル・ジャクソン (講談社現代新書)
マイケルの実像を、単なる贔屓目でなく冷静に実証している。認識が変わった。と同時に、もっと何とかならなかったのかとマイケルの背中を叩きたい気分になった。ニーヨとか最近のブラック系アーティストがマイケルへのリスペクトを口にするのもよく解る。だからこそね~。
読了日:07月08日 著者:西寺 郷太
実録アヘン戦争 (中公文庫)実録アヘン戦争 (中公文庫)
中華思想の下では通常の貿易は成立せず。取引ではなく、朝貢。これに大英帝国意識が従うわけがない、というのが背景にある。個人としては素晴らしい人物が具体的に仕事を成しても、つまらない見栄をふりかざす側が体制となる。著者の丁寧な史実の積み重ね方は、大事なことを沢山教えてくれる。
読了日:07月06日 著者:陳 舜臣
▼読んでた本
日本の音を聴く 文庫オリジナル版 (岩波現代文庫)日本の音を聴く 文庫オリジナル版 (岩波現代文庫)
著者:柴田 南雄
民族の世界地図 (文春新書)民族の世界地図 (文春新書)
著者:
陰翳礼讃 (中公文庫)陰翳礼讃 (中公文庫)
著者:谷崎 潤一郎
現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書)現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書)
著者:見田 宗介
41歳からの哲学41歳からの哲学
著者:池田 晶子
▼積読本
人は成熟するにつれて若くなる人は成熟するにつれて若くなる
著者:ヘルマン ヘッセ
▼読みたい本
10月はたそがれの国 (創元SF文庫)10月はたそがれの国 (創元SF文庫)
著者:レイ・ブラッドベリ
根津権現裏 (新潮文庫)根津権現裏 (新潮文庫)
著者:藤澤 清造
暗渠の宿 (新潮文庫)暗渠の宿 (新潮文庫)
著者:西村 賢太
観念的生活 (文春文庫)観念的生活 (文春文庫)
著者:中島 義道
取り替え子 (講談社文庫)取り替え子 (講談社文庫)
著者:大江 健三郎
或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)
著者:松本 清張
三色の家―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)三色の家―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)
著者:陳 舜臣
孔雀の道 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)孔雀の道 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)
著者:陳 舜臣
青春の烙印―神田希望館史話 (徳間文庫)青春の烙印―神田希望館史話 (徳間文庫)
著者:陳 舜臣
男の性 (幻冬舎アウトロー文庫)男の性 (幻冬舎アウトロー文庫)
著者:梁 石日
パスカル パンセ抄パスカル パンセ抄
著者:ブレーズ・パスカル
「声」の資本主義 ーー電話・ラジオ・蓄音機の社会史 (河出文庫)「声」の資本主義 ーー電話・ラジオ・蓄音機の社会史 (河出文庫)
著者:吉見 俊哉

読書メーター

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なりゆき

●娘の就活が敗戦続きだ。私もヨメさんも、気にする事はないと繰り返す。だが、本人は「自分に欠点がある」と思うらしく、落ち込みようが以前より酷い。もっとも、立ち直った後のテンションの高さも凄い。ウチの娘の性格か、最近の若者の特徴か不明だが、悲しい事、怒りを覚える事、楽しい事への反応が早く、度合いも大きいように思う。成り行きを見極める前に躁状態になっている感じ。若い内はある程度そういうものかも知れないが、喋るのが早口なのと一緒で、感情を表に出すのが早すぎる気がするのだ。

●男女の産み分けをする人が、相当数居るらしい。日本では出来ないので、タイへ渡る。実は、タイでも許可されていないのだが、請け負う医師が居るとの事だ。不妊症の人が体外受精等行うのは生命倫理に反しないが、親が、生まれてくる子供の性別を決める産み分けは、生命倫理に反するという意見が多い。難しい問題だ。生命倫理を主張するなら、体外受精も、自然な出産形態ではない。しかし、ここは「生命」に重きを置くより「倫理」の解釈を優先すべきなのだろう。

●各々の理由から考えてみる。切実に子供が欲しい。でも子供が作れない身体である事は検査でハッキリしている。これに対して、男ばかり続いたので次は女の子が欲しい。これも親にとっては切実な願いではあるだろう。しかし、「普遍的な切実さ」を感じない。子供が欲しい、男だろうが女だろうが構わない、やはりこちらの気持ちの方が切実だ。しかし、本人たちにとっては「切実さ」を比べられても納得いかないだろう。実際に産み分けが可能なのだし。まず医師側が倫理を定め守らなければならないのだ。

●さらに、費用の問題もある。一番辛いのは不妊症の治療をしたくても出来ない人たちだ。そういう人たちを考えると「子供は授かり物」という考えに徹するのが、結果的に「平等」なのかも知れない。しかし、近代科学がそれを許してくれない。「便利さはより多くの不便さを生む」と言ったのは誰だったか。成り行きに任せ自然に行動し、必要以上に求めないのが、一番気持ちが「納得」すると思うのだが、今の世の中、シンプルに徹する事はかなり難しい。

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陰翳礼讃

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●谷崎潤一郎著『陰翳礼讃』<新潮文庫>

http://book.akahoshitakuya.com/b/4122024137?from=history_...

数篇のエッセイが収められている。全体のタイトルにもなっている「陰翳礼讃」は、日本人の、家屋や生活様式、芸術芸能等に、陰翳を生かしたものが多く、日本人の肌の色や精神構造との調和を成している実例を列挙している。日本の欧米化や欧米人との比較も理解を助けている。もっとも、一方的に日本文化を固持しなければならぬと息まいている訳でもない。欧米的な生活様式の中に日本らしさを生かす方法もあるだろうにと嘆いているのだ。

昭和一桁の作品が殆どなのだが、現代社会にも通じるものを感じる。もっとも松岡正剛さんがよく言われているように、今の日本社会には「和洋折衷」を生かしている面も確かにある。だが盲目的に西洋文化を追随する姿勢は多い。

言ってしまえば、全ては受け止める側の感性だ。感性といっても大層に捉えなくても良いと思う。私のような洋楽ファンなら、日本人が好む洋楽みたいなものが大体は判る。そこから発想を広げていく形もあるだろう。結局、日本人なら日本的なもの以外に“違和感”を感じるはず。そこを自ら考えを深める契機にすれば、おぼろげながらも日本文化が身近に感じるはず。そこで、谷崎の「陰翳ありきの日本」という指摘は、日本的感性を呼び覚ますのにかなりの助けとなる。

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