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ブルースを教えてやろう

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●マディ・ウォーターズ&ローリング・ストーンズ『ライブ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ1981』<ワード>(12)DVD+2CD

http://ongakumeter.com/m/B00865S3L4

音楽雑誌やネット上で、既に多くの人が絶賛している。確かに素晴らしい。80年代に入ってのマディ、しかも亡くなる2年前の状態だが、全く衰えなど感じさせない。本ライブの数ヶ月後に病気が判明したらしいので、体調も万全という訳にはいかなかったのではと思うのだが。

声の深みと艶、太くて勢いのあるスライド、余裕綽々ながらも誠実に務めるステージング。どんなウルサがたのブルースファンでも、予備知識無しに観たり聴いたりしたら、予想が良い方向に裏切られたと口を揃えるはず。

この2年前には来日公演が行われており、酷評だったらしい。何かがマディを変えたのか?データも検討せずに敢えて推察するなら、シカゴ黒人街のライブハウスという“場所”が少なからず影響しているように思う。

バンドメンバーに紹介され、客席の一番近い位置からのっそりと登場するマディ。コッチ(黒人街)で演奏するのは久しぶりだと言いつつ「本物のブルースを教えてやるぜ」と宣う。これは豪語ではない。決意表明ではなかろうか。マディ・ウォーターズは“伝説”じゃない。名前だけの男じゃない事を証明する為に登場したのさと、コアなブルースファンに訴え、自らをも奮い立たせる言葉だったのだ。

後半に登場するバディ・ガイ、ジュニア・ウェルズ、レフティ・デイズら猛者達も、皆一様に嬉しそうだ。テンションは高いが上ずったりせず(当たり前だ、誰だと思ってる!)、真っ黒いブルースを聴かせる。彼らの実力もさる事ながら、この夜のマディの素晴らしさにほだされた部分もあったのではなかろうか。

バンドのメンバーとストーンズのメンバーは、それに比べると表情がやや硬い。しかし、内容は聴き応えある。キースはどうしてもリフからの展開の妙味が私的には好きなのだが、ここでは曲の流れに合わせ、ぶつ切り気味だが流麗なフレーズも奏でる。頭でっかちではなく自在な感覚を持った人だから、見事にこなしている(当たり前だ、誰だと思ってる!)。ロン・ウッドのスライドも抑制が効いて味がある。つくづくロンのストーンズ加入は大正解。これを運命と言わずして。

ミックはマディに合わせにいってる部分が多く、あれこれ探りを入れてるのが面白い。マディ同様、太い声だがミックの方がベチャッとしているので、ミック表のマディ裏とかカッコイイ。

大体において、ミックはプロ根性を出そうとしているが、キースやロンは一生懸命かつ楽しく演奏している感じだ。バディ・ガイの速弾きを見つめるキースの眼は、ギター少年のそれだ。

最後に音創りに関わっているボブ・クリアマウンテンについて。例えばハープとかピアノとか、目立たない部分で味を出しているフレーズや音粒がよく「拾えている」。具体的な技術は解らないが、色んな音がクッキリ聴こえて、しかも自然だ。

さあ、何度でも教えてもらおうじゃないか。最も人間臭く、最もハイにさせてくれる音楽を。

♪Muddy Waters & The Rolling Stones "Baby Please Don't Go" - Live At Checkerboard Lounge

http://www.youtube.com/watch?v=z3Or7huOK7o

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