すっぴんFAME
●V.A.『ホール・オブ・フェイム』<エイス/ケント・ソウル>(12)
http://diskunion.net/black/ct/detail/XATW-00125714
<フェイム>作品の未発表曲を集めたもの。
『フェイム・スタジオ・ストーリー』というアーカイブ的にも優れた3枚組CDが出た後だし、アーティスト別の編集盤も出ている。つまり、考えようによっては、かなり堀り尽くされた後の残滓とも取られかねない。
しかし、仮にも<エイス>仕事。しかも南部ソウル。悪かろうはずがない。事前の評判も良いものばかりだったので、疑う気持ちなど微塵もなく、楽しみな気持ちの方が大きかった。
結果、十分満足のいく出来だ。それだけではなく、改めて、南部ソウル、引いては南部サウンドについて、深く想いを致すキッカケになった。
『フェイム・スタジオ・ストーリー』は、時間軸に沿って、ヒット曲を中心に並べられていたので、フェイム・サウンド(マッスル・ショールズ・サウンド)の“歩み”を楽しめた。
一方本盤は、未発表作品や別ヴァージョンを集めてある。だからと言う訳でもないだろうが、フェイム・サウンドを云々する以前の(もちろんフェイム・サウンドなのだが)、各アーティストの魅力が素の状態で出ている感がある。
例えばクラレンス・カーター「テル・ダディ」「トゥー・ウィーク・トゥ・ファイト」。ちょうどカーターの<フェイム>音源集を購入していたので聴き比べてみた。
http://diskunion.net/black/ct/detail/XAT-1245572527
世に出た物の方が、どちらも演奏の密度が高い。「テル・ダディ」のベースやホーン等、迫力満点。カーターの歌い口も「乗らされた」というと聞こえが悪いが、テンションが高い。「トゥー・ウィーク・トゥ・ファイト」も声に張りがある。
しかし、本盤のカーターにも味がある。先述のように「素の魅力」を感じ取れるのだ。哀切感で言えばこちらの方が強い。
演奏陣と歌手の丁々発止の絡みが南部ソウル(南部サウンド)の肝ではあるが、その骨格と成っている音世界を、本盤は教えてくれているのではないだろうか。練り上げていなくても、南部のおおらかさ、切なさ、熱さは十分伝わるのだ。アルバムはジョージ・ジャクソンのデモ録音「フォー・ユー」で終わっているが、この曲など特に飾っていないので同様の気持ちを強くした。
若干の蛇足。リック・ホールの言では、ジミー・ヒューズの「スティール・アウェイ」がマッスル・ショールズ・サウンドの始まりだと言う。当然『フェイム・スタジオ・ストーリー』の最初の方に収録されている。本盤には、同曲の3年後の67年版がフィーチャー。これがストレートなブルースでかなりカッコイイ。逆に素に戻したパターンだろうか・・・。
本文は、同じ頃に買った<サウンズ・オブ・メンフィス>の編集盤『ロスト・ソウル・ジェム』と並べてレビューしようかと思っていたが、分ける事にした。今回の分を書き進める事で、もう一方の魅力も見えてきた思いがする。どちらも優れた<エイス>仕事である。
http://diskunion.net/black/ct/detail/54CV120601702
♪Ralph "Soul" Jackson "You Really Know How To Hurt A Guy"
http://www.youtube.com/watch?v=TIsQUDi37JI
♪unknown "love changes a man"
http://www.youtube.com/watch?v=Sev74skHsFI
♪O.B. McClinton "Two Big Legs and A Short Red Dress"
http://www.youtube.com/watch?v=DrNZO5kAf5U
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