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歌の人

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●エッタ・ジェイムス『ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・エッタ・ジェイムス~チェス・イヤーズ』<スペクトラム/ユニバーサル>(05)

http://ongakumeter.com/m/B0009F2C3Y

3枚組CDだが、安価で求めやすい。

エッタの<チェス>在籍期間は60年~75年。リズム&ブルース、ブルース、ソウル、ファンク、ゴスペル、ロック、ジャズと、曲に含まれているフィーリングも考慮に入れれば、黒人音楽史的視点(曲の表情の変化)から見ても本盤は愉しめる。

ディスク1は60年~62年。リズム&ブルース期の初期と言えるだろうか。シュガーコーティングされたR&Bの世界が目立つ。ハーヴェイ・フークアとの共演曲「If I Can't Have You」などは思わずニンマリしてしまう。

ストリングスの調べに乗って、時にジャズっぽく展開されたりも。全体的にこの時期は、パンチ力より、バラードの切なげな歌い口にスポットが当たっている感じだ。もちろん、深みや渋みは十分感じ取れる。

ディスク2は62年~67年。個人的には最も好きな時代だ。強烈なドライブ感、感涙を誘うバラード、どす黒いブルース、と聴き所満載。今回YouTubeで動画を選ぶのに、各ディスクから一曲と決めたが、本ディスクは何を選んだら良いか迷うぐらいの充実度だ。ジャンル的には、ロッキン・リズム&ブルースと、正統派ブルース、初期ソウルの時代と言えるだろう。ストリングスからホーンズ中心に変わったのも特徴の一つ。ストリングス使用の曲が一曲だけあるが、キレ重視の使い方でディスク1とは異にする。

喉を締め付けるような唸り、圧力のあるシャウト、フッと引いた時の色っぽさ・・・これらがエッタの歌唱で際立つ魅力かと思うが、本ディスクではそれらを堪能出来る。また、全般的に丹念に歌いこなした結果、演奏陣との一体化を成している。「南部詣で」の成果も大きい。

ディスク3は67年~75年。60年代ソウルのピークと70年代ソウルの初めからニュー・ソウルやジャズ・ソウル的様相をも窺わせる。オーティス・レディングやウィルソン・ピケットといった、アップテンポの曲を持ち味とするシンガーの物は特に映える。また、シャウトの極みが味わえる「アイ・ファウンド・ア・ラブ」も、聴いていて、凄まじさに震える。

ディスク3でちょっと残念なのは、ジャズ・ソウル的展開を見せる曲。卓越した演奏でグルーヴを生み出す意図は解るが、曲が始まり2分近くもエッタが歌い出さないのは興醒め(あくまで個人的意見)だ。曲は悪くないが、形として“エッタ主導”でないのがシックリ来ないのだ。

エッタ・ジェイムスは、とかく「迫力の人」と取られがちだが、それだけでなく実に器用な人だ。「歌の人」という大まかだが奥深い表現が適切だと思う。或いは、亡くなる直前まで、声はかすれ、艶を失っても尚真摯に歌い続けた姿勢からは、「生涯一歌手」という表現も頷ける。そのベースにはブルースが在る。ブルース性を強く感じる場合の彼女に、個人的には特に魅力を感じる。

自分の好みや時代性といった物に囚われなくても、多彩な曲をこなす「歌の人」ぶりが愉しめるセットではある。

♪Etta James/ Harvey Fuqua "If I Can't Have You"
http://www.youtube.com/watch?v=BoX1OhZwjvQ

♪"TWO SIDES TO EVERY STORY"
http://www.youtube.com/watch?v=0z7mWb2Vdg4

♪"I found a love"
http://www.youtube.com/watch?v=TkRI_9WPEIg

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