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2012年11月

クロスロード

●時間は平等に流れているが、実感覚として過ごす時間は人それぞれである。30数年ぶりの同窓会に出席。過去に戻ったり、現状を確認し合ったり、少し先の事を話したり・・・楽しく時は過ぎる。過去に共有した時間を持っているけど、当時も人それぞれの実感覚は違う訳だから、互いにズレは生じる。そのズレも含めて思い出を交差させる事で、愉快に和む。自分はどんな高校生だったか、ボンヤリ考えてみたが、あまり意味のない事に気付く。やっぱり大切なのは“今”なんだよな。思い出の交差も、“今”を歩んでいるから体験できた。過去の実経験と思い出の間にあるスウィートネスが味わえる。そしてまた歩いていける。当たり前の事だが、当たり前の事こそ、真実で奥深い。

●入院している母親を見舞う。母親の頭の中では、過去と現在が交錯している。話が噛み合わない。頭の中を整理せずに喋るからか。しかし、老人になったら、もう頭の中を整理しなくても良いように思う。脳の健康的には消極的な考えだろうが、思い出と現実を並立させるのは、老人の特権のような気もする。ペラペラ喋る母親は、とても楽しそうなのだ。

♪GLEN JONES "We´ve only just begun (The romance is not over)"
http://www.youtube.com/watch?v=LHSkKMB5LoQ&feature=fvst

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自然な一体感が生み出す黒い空間

●ハワード・テイト『ハワード・テイト』<アトランティック>(72)

http://diskunion.net/black/ct/detail/XAT-1245574816

http://diskunion.net/black/ct/news/article/4/32268

2期分も発売となった、<アトランティック>の再発シリーズ。初CD化の物も含め、1,000円という低価格が嬉しい。

私が品定めした蔦屋書店三年坂店のCDコーナーは、バーコード読み取り式の試聴器があるので、あれこれと愉しめた。中でも、本盤の、ハワードのハイトーン・ヴォイスには強く惹かれ、まずはこの一枚、と購入決定した。

魅力は歌唱だけではない。熟練の演奏陣にも注目!あらゆる楽器が丹念にプレイされ、和を乱す事がない。ヴォーカルも含め、各々が各々と過不足なく絡み、心地好い音世界を創り上げている。たまらなく黒い空間だ。

黒人音楽ファンは、個人的嗜好はあるものの、みんな、この黒い空間を愛している。いわゆる「この音、黒いね」というヤツ。

本盤の音世界に関わっている人物としては、<アトランティック>の名プロデューサーの一人、ジェリー・ラゴヴォイの名も上げておかなければならない。

ジェリーとハワードのタッグは、67年の<ヴァーヴ>デビュー当初から2003年の“再発見”まで連綿と続いている。ハワードをジェリーに紹介したのは、アーリー・ソウル期の重要人物の一人、ガーネット・ミムズ。ガーネットとハワードは同じゴスペルグループに所属していた。実力を十二分に把握していたのだろう。

さて、全体のサウンドだが、どちらかと言えば、ソウルというよりブルース感覚が強い。高地明さんのライナーによると、“ファンキー・ブルース”の元祖とも言えるとの事。フレディー・キングがこのアルバムから2曲カバーしているのも頷ける話だ。

ファンキー・タッチのブルースでハイトーン・ヴォイスと言えば、私の大好きなテッド・テイラーを思い出す。テッドは、キメ所でいっぱいいっぱい引っ張る感じだが、ハワードはもっと円やかだ。なので、演奏陣とも自然に融合する感覚が強いのかも知れない。

♪"8 Days On The Road"
http://www.youtube.com/watch?v=qfRkACy2GUM

♪"Girl From The North Country"
http://www.youtube.com/watch?v=CcbgIZ9C-DQ

♪"The Bitter End"
http://www.youtube.com/watch?v=K-l62pQSe2E

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劇的?ビフォーアフター

●今週の仕事はきつかった。ウチの会社は職種の性格上か、曖昧さを嫌う。決められた事が決められた通りに進んでなければ“修正”がかかるのだが、時々修正の規模がデカイ。また、修正したつもりでも、全面否定される事もある。これはどちらでも良いんじゃないかと思っても「どちらでもいい」が済まされない。それを繰り返すと小さな修正のはずが、殆ど修正の枠を超える事にもなる。こちらの甘い予測は上司の一言で吹き飛ばされる。テレビで住宅のリフォーム番組を観ていて、時として、これはリフォームではなく新築じゃないかと思う時があるが、あれと同じだ・・・とりあえず家は建てたが、依頼主は納得してくれるでしょうか??

●来週からは仕事のメンバー自体も変わるので、先が見えない部分もある。体制を調整しながら日常の仕事は進めていかなければならない。マンネリの打破にはなるが、今週と違う疲労感を感じるかも知れない。まあ、周囲に振り回されない事だね。

●来週は同窓会の忘年会もある。三十数年ぶりだ。これこそ劇的ビフォーアフターか・・・。

♪Howard Tate "She's A Burglar"
http://www.youtube.com/watch?v=_uj_Tanc3vw

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南部ソウルの根に触れて

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●V.A.『ロスト・ソウル・ジェムス・フロム・サウンズ・オブ・メンフィス』<エイス/ケント・ソウル>(12)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/54C120511705

このところの<エイス/ケント・ソウル>におけるサザン・ソウルの復刻作業は、多くのソウルファンの絶賛を浴びている。

当アルバムのオリジナル音源である<サウンズ・オブ・メンフィス>の作品も、傍系<XL>と併せて、コンピレーション盤も、アーティスト別の編集盤も、充実したラインナップを見せている。本盤は、3枚のコンピ盤でレーベル史を振り返った後に出された、追加盤のような感覚だ。しかし、もちろん、重箱の隅から無理やりかき集めてきた作品群という訳ではない。

<サウンズ・オブ・メンフィス>は、60年代の初頭に、酒類関連の実業家だったジーン・ルチェッシが設立。80年代に入ると娘のリンダが切り盛りするようになった。音楽制作面では、当初、スタン・ケスラーや、「ダンス天国」や「チェイン・オブ・フールズ」でサックスを担当していたチャールズ・チョーマースなる人物が関わっていた。

68年にスタジオをオープンし、<MGM>と関係を持つようになった頃、舵を取っていたのはダン・グリーアである。オヴェイションズ、ミニッツ、ジョージ・ジャクソン、バーバラ・ブラウン等をリリースしたこの頃から、名を残すレーベルとなったようだ。

歌手としてもコンポーザーとしても、地に足が着いて、優しい感じの歌を聴かせるダン。聴けば聴くほど味わいが広がるタイプだ。「滋味」という表現がピッタリ。彼の感覚こそ南部ソウルの感覚そのものであり、レーベル・カラーの根元的部分と通低しているようだ。

アルバムは、カール・シムズ「ピティ・ア・フール」からスタート。本盤の表紙といえそうな曲だ。ややモダンだが、典型的な南部ソウルは完成度が高く、期待に胸は膨らみ、次の曲を待つ。ここでダン・グリーアだ。軽快なテンポで明るい歌だが、聴き応えもある。

次からもアップテンポの曲が続く。思わず身体が自然に動く。しかし、それぞれに味わいが違う。ロックぽかったり、ブルースやリズム&ブルースの流れだったり、ニューオーリンズ系だったり(それもそのはずデイヴ・バーソロミュー作)、オーティス・レディング調だったり(なぜか名前もオーティス)、なかなか楽しめる展開だ。バーバラ&ザ・ブラウンズやルドルフ・テイラー辺りが特にお気に入りだ。

キャロル・ロイドの腰の座った一曲(ビッグ・メイベルやエッタ・ジェイムス辺りが似合いそう)の後、ゆったりバラードも加わってくる。ジョージ・ジャクソンがさほど目立たないぐらいの充実度だ。『フェイム・レコーズ・ストーリー』でアンノウン・シンガーとしてクレジットされていた女性の正体もここで明かされる。

冒頭に、本レーベルのコンピ盤が3枚出ていると書いた。私は1枚目しか持っていない。そこで「カリフォルニア・ドリーミン」を好解釈していたジャクソニアンズが本盤でも登場。派手さはないが心に染みる、正統派コーラスグループだ。マニア筋の方には周知の事なのかも知れないが、後のレニアー&カンパニーだと、ライナーを読んで初めて知った。かつては幻の名盤扱いされていた彼らのアルバムを、熊本県外で見つけて狂喜したのを憶えている。確かに、深みのある歌い口は共通しているようだ。甘茶ソウルならぬ渋茶ソウルだね。

ルイス・ウィリアムズがバラードを歌うと“大団円”といった雰囲気がある。まだ終わらないが、一息ついてしまう。

その後、80年代の作品が3曲並ぶ。この時代は正直言って違和感が先に立つ。確かに曲の出来も良く、歌も上手い。ただ、何度か聴くと飽きが来る。もはや南部ソウルではない。そう、アーシーさやローカルさとは違う次元で曲が創られている。時代の推移がクッキリと判る。あるいは、この3曲を聴く事で、南部ソウルの良さに気が付く仕組みかも。

ラストはリンダ・ルチェッシのピアノに合わせ、ジョージ・ジャクソンが歌うデモ録音。奇しくも同じ南部ソウル集『ホール・オブ・フェイム』もジョージのデモ録音で終わっていた。

ジョージ・ジャクソンも、ダン・グリーアと同じく、ジワジワと感動がわき起こるタイプだ。そのジョージの淡々としたデモ録音をピリオドにする事で、南部ソウルの奥深さや根の張りようを知らしめているのだろう。

♪Carl Sims "Pity a Fool"
http://www.youtube.com/watch?v=d_Z3ve14ps8

♪Billy Cee & The Freedom Express "Save My Love"
http://www.youtube.com/watch?v=uqBDJCBfgmo

♪George Jackson "Things Are Getting Better"
http://www.youtube.com/watch?v=VuFqYIUyPdc

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心優しく飾り気のないミューズ

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●キャロル・キング『タペストリー』<オード>(71)

http://ongakumeter.com/m/B0001N1OUQ

今回購入したのは99年<ソニー>が再発した物。日本盤。未発表曲ひとつと、既発曲の未発表ライブひとつを加えてのリリース。アメリカのロック/ポップス事情に詳しくない私でも知っている、名盤中の名盤だ。

黒人音楽ファンからすれば、キャロル・キングは、ライター・チーム、ゴフィン=キングの片割れ(主軸が正しいか)としての功績の方が印象に残ってるかも。しかし、キャロルはいまだに活躍しているアーティストで、彼女について語る場合、ゴフィン=キング時代はあくまで前史である。『タペストリー』も不朽の名作だが、普通、キャロルの功績を語る場合、ここでは終わらないだろう。

キャロル・キングの事をろくに把握しておらず、ゴフィン=キングに想いが傾いている私が、『タペストリー』をレビューするのには相応しくないような気もする。彼女を深く理解している人たちから見れば、トンチンカンな事になるかも知れない。しかし、何度も聴く内に、キャロル・キングの魅力を(『タペストリー』の範囲内で)私なりに書きたくなった。おそらく一面だけに触れたもので、それこそ“タペストリー”のような、さまざまな糸が織り成す綾は生み出し得ないだろうけれど。それでも、歴史に残るアルバムだけに『タペストリー』におけるキャロルの音楽性は、彼女にとってそれが全てではないにしろ、重要な一部を成しているはず。それだけ「剥き出し」の物を本アルバムには感じるのだ。

さて、人がキャロル・キングについて語る場合、曲のタイトルにもなっている「ナチュラル・ウーマン」は便利で強力なキーワードだ。ひねくれ者の私は、いささか大上段なタイトルを今回ひねり出したが、彼女の魅力を端的に言い表している言葉は、やはり「ナチュラル・ウーマン」だろう。

美しいがコクのあるメロディーライン。歌い口はそれこそ自然で、無駄な力が入っていない。美声でもなく個性的な声でもないが、メロディーが生きる声。総じて、ナチュラルな美しさに満ちている。

「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」や「ナチュラル・ウーマン」を、ダニー・ハサウェイ&ロバータ・フラックやアレサ・フランクリンの物と比べて見たらよい。いずれも熱を帯びた歌唱が持ち味だ。これに対し、本家のキャロルは淡々としているが、それはそれでソウルフルなのだ。

以前、70年代王道ソウルに詳しい方のブログに、よくキャロル・キングのような「シンガー・ソングライター」も取り上げられていた。SSWという略語もそこで初めて知った。最初は“個人の趣味”と解釈していたが、やがて繋がりが見えてきた。ニーヨの1stアルバムを受けてのニーヨ自身の発言が、靄の晴れる契機となった。影響を受けたアーティストとしてマイケル・ジャクソンの他にジェイムス・テイラーの名前を上げていたのだ。ニーヨ・サウンドの新しさの重要な要素の一つにSSW系の音楽があったのに気付かされた。

SSW系の優しい感じ(マイケルもそうだが)、飾り気のない素朴さは、ヒップホップ系とは違う角度から、黒人音楽のトレンドを創り上げた。ブラックネスにナチュラル感覚が溶け込んだのだ。しかし、これがいまだかつてない現象ではない事は、それこそキャロル・キング(ゴフィン=キング)が証明している。

ソウルフルとナチュラルはイコールではないけれど、ソウルフルの中に、ナチュラルは存在する。ダニーもロバータも、アレサも、ニーヨも、みんなナチュラルなのだ。

結局、黒人音楽の立ち位置からしか書き進められなかったが、私的には常に黒人側が気に入るとも限らない。「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」はキャロル・キングの方が、聴いていて力が湧く。大体、彼女の曲はサラッとしていながら力強い。「ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロウ?」もシュレルスに比べテンポを落とし、若い女の子らしい恋愛ソングが、深みを増し心を衝つ。だが、暗くない。そう、キャロル・キングには明るい深みがある。

恐らく、世界中で相当数の人間が、キャロル・キングの歌に救われたのではないだろうか。ふと思ったが、今の中学生辺りが彼女の曲を聴いたらどう思うだろう・・・ナチュラルもソウルフルも、もはや通じない時代だろうか?

♪"So Far Away"
http://www.youtube.com/watch?v=8UM249-WfP4

♪"You've Got A Friend "
http://www.youtube.com/watch?v=XHlcW_lKPl4

♪"will you still love me tomorrow"
http://www.youtube.com/watch?v=m8KlYc0xG80

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2012年10月の読書メーター

10月の読書メーター
読んでた本の数:1冊
積読本の数:3冊
読みたい本の数:3冊

▼読んでた本
人生について (中公文庫)人生について (中公文庫)
著者:小林 秀雄
▼積読本
日本語教室 (新潮新書)日本語教室 (新潮新書)
著者:井上 ひさし
生きるかなしみ (ちくま文庫)生きるかなしみ (ちくま文庫)
著者:
パンセ (中公文庫)パンセ (中公文庫)
著者:パスカル
▼読みたい本
ミシシッピ・ブルース・トレイル 〜ブルース街道をめぐる旅〜ミシシッピ・ブルース・トレイル 〜ブルース街道をめぐる旅〜
著者:桑田英彦
「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)「一九〇五年」の彼ら―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)
著者:関川 夏央
MUSIC MAGAZINE & レコード・コレクターズ present  定盤1000MUSIC MAGAZINE & レコード・コレクターズ present 定盤1000
著者:

読書メーター

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2012年10月の音楽メーター

10月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:6枚
聴いた時間:186分

つづれおりつづれおり
2012.10.27 ブックオフ琴平店にて購入。ボーナス曲付きです。こんなに聴きやすくてコクのある音楽も珍しい。こういうのが買わなければ損をする一枚。
聴いた日:10月29日 アーティスト:キャロル・キング
Odinary storyOdinary story
フォスター&マッケルロイ系のズンドコサウンドはあまり好みではないのだが、キッパーが手を加えると惹きつけられる。背後にJBやPファンクを感じるのよね。本盤のもう一つの魅力は陶酔のバラード。アイズリーズ「フットステップス・イン・ザ・ダーク」の解釈は特に見事!抜群のセンスが窺える。
聴いた日:10月24日 アーティスト:Kipper Jones
MASTERPIECES OF MODERN SOULMASTERPIECES OF MODERN SOUL
男も女もグループも最高だ!ソウルファンにはシングル盤コレクターが多いのも、こういうコンピ盤を聴けば理解できる。裾野が広いというか、もう空気みたいになってるんだろうな。
聴いた日:10月23日 アーティスト:V.A
Africa to AmericaAfrica to America
黒いグルーヴは十分感じ取れる。ただ音世界がキレイなのが、私好みではない。「ストレンジ・フルーツ」のようなヘヴィーな曲も通り一遍に聴こえる。
聴いた日:10月22日 アーティスト:Sounds of Blackness
ブルースブルース
ロックエリアで語られるジミヘンだが、実はルーツにブルースがあるのだよ、との思惑で編集されている。しかし、ブルースファンは最初からジミヘンをブルースギタリストの一人と捉えている。曲の構成やギターテクだけ注目せず、感情の発露としてのブルースに沿って考えれば自明の理。
2012.10.14 ブックオフ北部店で購入。
聴いた日:10月16日 アーティスト:ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
ザ・シングルズザ・シングルズ
クラッシュは音楽的パターンは変わっても、勢いは変わらなかった。パンクは確かに70年代に幕を引いた。この後「大人のロック」とか言い出したんだよな。そういうのって本盤を聴いてると、噴飯的キャッチに思える。クラッシュ爽快だよ。
2012.10.14 ブックオフ北部店で購入。
聴いた日:10月15日 アーティスト:ザ・クラッシュ

わたしの音楽メーター
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