●キャロル・キング『タペストリー』<オード>(71)
http://ongakumeter.com/m/B0001N1OUQ今回購入したのは99年<ソニー>が再発した物。日本盤。未発表曲ひとつと、既発曲の未発表ライブひとつを加えてのリリース。アメリカのロック/ポップス事情に詳しくない私でも知っている、名盤中の名盤だ。
黒人音楽ファンからすれば、キャロル・キングは、ライター・チーム、ゴフィン=キングの片割れ(主軸が正しいか)としての功績の方が印象に残ってるかも。しかし、キャロルはいまだに活躍しているアーティストで、彼女について語る場合、ゴフィン=キング時代はあくまで前史である。『タペストリー』も不朽の名作だが、普通、キャロルの功績を語る場合、ここでは終わらないだろう。
キャロル・キングの事をろくに把握しておらず、ゴフィン=キングに想いが傾いている私が、『タペストリー』をレビューするのには相応しくないような気もする。彼女を深く理解している人たちから見れば、トンチンカンな事になるかも知れない。しかし、何度も聴く内に、キャロル・キングの魅力を(『タペストリー』の範囲内で)私なりに書きたくなった。おそらく一面だけに触れたもので、それこそ“タペストリー”のような、さまざまな糸が織り成す綾は生み出し得ないだろうけれど。それでも、歴史に残るアルバムだけに『タペストリー』におけるキャロルの音楽性は、彼女にとってそれが全てではないにしろ、重要な一部を成しているはず。それだけ「剥き出し」の物を本アルバムには感じるのだ。
さて、人がキャロル・キングについて語る場合、曲のタイトルにもなっている「ナチュラル・ウーマン」は便利で強力なキーワードだ。ひねくれ者の私は、いささか大上段なタイトルを今回ひねり出したが、彼女の魅力を端的に言い表している言葉は、やはり「ナチュラル・ウーマン」だろう。
美しいがコクのあるメロディーライン。歌い口はそれこそ自然で、無駄な力が入っていない。美声でもなく個性的な声でもないが、メロディーが生きる声。総じて、ナチュラルな美しさに満ちている。
「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」や「ナチュラル・ウーマン」を、ダニー・ハサウェイ&ロバータ・フラックやアレサ・フランクリンの物と比べて見たらよい。いずれも熱を帯びた歌唱が持ち味だ。これに対し、本家のキャロルは淡々としているが、それはそれでソウルフルなのだ。
以前、70年代王道ソウルに詳しい方のブログに、よくキャロル・キングのような「シンガー・ソングライター」も取り上げられていた。SSWという略語もそこで初めて知った。最初は“個人の趣味”と解釈していたが、やがて繋がりが見えてきた。ニーヨの1stアルバムを受けてのニーヨ自身の発言が、靄の晴れる契機となった。影響を受けたアーティストとしてマイケル・ジャクソンの他にジェイムス・テイラーの名前を上げていたのだ。ニーヨ・サウンドの新しさの重要な要素の一つにSSW系の音楽があったのに気付かされた。
SSW系の優しい感じ(マイケルもそうだが)、飾り気のない素朴さは、ヒップホップ系とは違う角度から、黒人音楽のトレンドを創り上げた。ブラックネスにナチュラル感覚が溶け込んだのだ。しかし、これがいまだかつてない現象ではない事は、それこそキャロル・キング(ゴフィン=キング)が証明している。
ソウルフルとナチュラルはイコールではないけれど、ソウルフルの中に、ナチュラルは存在する。ダニーもロバータも、アレサも、ニーヨも、みんなナチュラルなのだ。
結局、黒人音楽の立ち位置からしか書き進められなかったが、私的には常に黒人側が気に入るとも限らない。「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」はキャロル・キングの方が、聴いていて力が湧く。大体、彼女の曲はサラッとしていながら力強い。「ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロウ?」もシュレルスに比べテンポを落とし、若い女の子らしい恋愛ソングが、深みを増し心を衝つ。だが、暗くない。そう、キャロル・キングには明るい深みがある。
恐らく、世界中で相当数の人間が、キャロル・キングの歌に救われたのではないだろうか。ふと思ったが、今の中学生辺りが彼女の曲を聴いたらどう思うだろう・・・ナチュラルもソウルフルも、もはや通じない時代だろうか?
♪"So
Far Away"
http://www.youtube.com/watch?v=8UM249-WfP4♪"You've Got
A Friend "
http://www.youtube.com/watch?v=XHlcW_lKPl4♪"will you
still love me tomorrow"
http://www.youtube.com/watch?v=m8KlYc0xG80
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