●マディ・ウォーターズ『アット・ニューポート1960』<チェス/MCA>(01)
http://ongakumeter.com/m/B000059T1V
LP時代から定評のあるライブ盤に、同じメンバーでその一ヶ月前に収録されたスタジオライブ4曲をプラスしたもの。
ニューポート・ジャズ・フェスティバルは、野外フェスの草分け的存在で、マディにとっても名誉な舞台であっただろう。演奏・歌唱とも安定した内容で、観客の盛り上がりも十分伝わってくる。成功裡に終わったライブといえる。
ところが、ボーナス・テイクのスタジオ・ライブを聴くと、ニューポートより溌剌とした印象を受ける。特に3曲がカブるので比較しやすい。音響の関係もあるかも知れないが、熱の帯び方はスタジオの方が強い(因みに個人的ベストワンはニューポートでは演ってない「ミーネスト・ウーマン」)。
しかし、ニューポートがつまらない訳ではない。それぞれに魅力的なのだ。尚、ニューポートの方は映像もあるので、それを観たら感想も変わるかも。
とりあえず、CDだけで判断。メンバー一人ずつ見てみよう。
マディの声は、太いが、甘くて円やかなので、迫力を表に出せるのはもちろん、味わい深く歌い上げる事も出来る。ニューポートに於ける余裕綽々のパフォーマンスが実証している。スタジオの方は、前述した通り迫力が凄い。あのデカい顔が眼前に迫ってくるような痛快さだ。思わず笑いがこみ上げてくる。
ニューポートでは、ブルースに馴染みの薄い観客に基本枠を伝えたかったのでは。スタジオ物は、セッション感覚で、自分たちが先ずブルースを愉しんでいる様子が伝わってくる。
ギターのパット・ヘアも、ニューポートでは余り目立たず、スタジオの方がフレーズも光っている。ライブでは御大がギターを抱えていたのも原因かも。
ハープのジェイムズ・コットン。ニューポートでは“通奏低音”のように、分厚くゆったりと吹いている。スタジオの方が、やはり縦横無尽にブロウしている。
ほとんど変化がないのは、ピアノのオーティス・スパン。音粒の転がりが、曲に表情を与えている。いつものスパンだ。
スパンと言えば、咄嗟に作詩作曲されて、ヴォーカルを取った「グッバイ・ニューポート・ブルース」は出色の出来。
経緯が面白いので、この曲についてもう少し。54年に、アメリカで初めて行われた野外音楽フェスティバルだったニューポート・ジャズ・フェスティバル。だが、この年は大学生や観光客が暴徒化し、警察当局から中止を求められた。協議の結果、最終日の「ブルース」のみ許可されたのだ。そして、マディが最終アクトだった。
当日、MCを務めていた黒人詩人のラングストン・ヒューズは、フェスティバル中止の報(それから2年間開催されなかった)を受け、即興で作詩し、スパンに渡したのだ。マディがすぐに曲を付け、曰く付きのフェスティバルの、幕を閉じる曲となったのだ。
最後に、アルバムの内容とは関係ないが苦言をひとつ。原文ライナーの訳がおかしい。英語の発音に忠実に書かれてるのかも知れないが、ニナ・シモーネとかゲリー・ムリガンとかちょっとムリガン・・・失礼、違和感あり過ぎ。極めつけはラングストン・ヒュー。最初は脱字かと思ったら、あんまり何度もヒューヒュー言うので、気持ちにすきま風が入り込み、哀しい気分になった。こういうの、結構大事です。ちゃんと専門家にチェックしてもらいましょうよ。
♪ "I got my brand on you"
http://www.youtube.com/watch?v=5TlB7yBMLRQ
♪"Tiger In Your Tank"
http://www.youtube.com/watch?v=kn28bBxXtNU
♪"Meanest Woman"
http://www.youtube.com/watch?v=UFhrqA1JPAA
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