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2013年3月

ヘイ、ミスタ・DJ!

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●ピーター・バラカン著『ラジオのこちら側で』<岩波新書>(13)

http://book.akahoshitakuya.com/b/4004314119

バラカンさんが日本に来てからの活動歴&音楽の嗜好歴が綴られている。さらには、ラジオやテレビといったメディアの変遷史や日本と海外の違い及び問題点も、解りやすく述べられている。そして、何といっても、ラジオDJの魅力が熱く伝わってくる。

バラカンさんと私の音楽の好みには、重なる部分とずれる部分がある。微妙な開きだ。そういう人はとても刺激的である。

以前、彼のラジオ番組の中で、メイズ・フィーチャリング・フランキー・ビヴァリーを初めて聴いた時「こういうのが、黒人が好む黒人音楽です」みたいな事を言い添えられた。何気ない一言だったかも知れないが、グルーヴの何たるかを感じ取った瞬間でもあった。私はいまだに“グルーヴ”について考える時、マーヴィン・ゲイの『アイ・ウォント・ユー』と併せ、メイズのサウンドをテキストの一編として持っている。

DJとは、音楽を媒介とし、理知的なだけでなく、感覚的な“ヒント”を与える職業だろう。情報や知識は表面的なものだし、物事を整理するのには役立つ。DJの寸言(但し何気ないもの)は、もっと本質的で、音楽に対する姿勢を補助するような効果がある。アルバムの、好ライナーノーツ的親和性と深みを帯びている。

本書も、音楽とラジオに関する、素敵な“ライナーノーツ”だった。

※本書内で紹介されている、ボブ・ディランがDJを務めていた番組のセットリストを基に編集された、<エイス>発のアルバムを貼り付けておきます。

http://acerecords.co.uk/theme-time-radio-hour-with-your-host-bob-dylan-season-3

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博多ぶらぶら

※3月21日、家族連れで博多に行った。

●最初からケチがついた。夫婦共々出発時間を10分遅く勘違いしており、予定の列車に間に合わず。「特例です」と念を押され、次の列車の指定席を取ってもらう。しかも、又々勘違いして、自由席に座っていた。嗚呼。降りる段になって、ようやく気が付く始末。

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まずは天神へ行き、別行動を取る。だいぶ昔の話ではあるが、何回か行った事のある中古レコード屋を探すが、見つからない。後で知り合いに聞いたら、以前の場所の割りと近くに移転したとの事。こういうのも、事前に調べておけばなんて事はないのに、自分自身、詰めの甘さに呆れる。

●気を取り直して、タワーレコード福岡店へ。今は無き熊本店に比べたら、やはり規模が違う。主だったところは大体手に入る。しかし、今回の旅行には、博多駅管内でのみ使用できる一人当たり1500円の買い物券が付いている。妻娘の分も使っていい約束。駅ビルのアミュプラザにもタワーレコードがあり、そこ中心に買う頭があったので、福岡店はワゴン物と、もしかしたら向こうには無いかもと思えるものをセレクトした。これが大間違い。

●「無いかも」どころではない。規模が小さ過ぎた。もう一度戻る訳にもいかず、実質<アトランティック>1000円シリーズから選ぶような形となった。ネット社会を考えれば、レコード店で買う必要は、必ずしもない。実際私もよく利用している。しかし、レコード店に於ける音楽好きの醍醐味は、“出逢い”に尽きると思う。目的の物を手に入れる喜びと、一点一点眺めながら選んでいく喜びは同質である。いや、嬉しい悩みが付きまとう分、胸が躍る。

●娘は、『まんだらけ』のジャニーズ・グッズ・コーナーがお目当ての一つ。一階で待つ間、商品を見て回る。漫画等へ傾くオタク気質の全くない私だが、ショウケイスの中に、ロマンを感じる。高値の物には、高値になるだけのロマンが潜んでいるのだろう。

●丸善福岡店も良かった。新書や文庫の点数だけ比べても、熊本の各店舗より多い。熊本では見た事のない本を2冊購入。特に、安岡章太郎さんの『アメリカ感情日記』は嬉しかった。

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風格と情熱とエンターテインメント

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●マディ・ウォーターズ『アット・ニューポート1960』<チェス/MCA>(01)

http://ongakumeter.com/m/B000059T1V

LP時代から定評のあるライブ盤に、同じメンバーでその一ヶ月前に収録されたスタジオライブ4曲をプラスしたもの。

ニューポート・ジャズ・フェスティバルは、野外フェスの草分け的存在で、マディにとっても名誉な舞台であっただろう。演奏・歌唱とも安定した内容で、観客の盛り上がりも十分伝わってくる。成功裡に終わったライブといえる。

ところが、ボーナス・テイクのスタジオ・ライブを聴くと、ニューポートより溌剌とした印象を受ける。特に3曲がカブるので比較しやすい。音響の関係もあるかも知れないが、熱の帯び方はスタジオの方が強い(因みに個人的ベストワンはニューポートでは演ってない「ミーネスト・ウーマン」)。

しかし、ニューポートがつまらない訳ではない。それぞれに魅力的なのだ。尚、ニューポートの方は映像もあるので、それを観たら感想も変わるかも。

とりあえず、CDだけで判断。メンバー一人ずつ見てみよう。

マディの声は、太いが、甘くて円やかなので、迫力を表に出せるのはもちろん、味わい深く歌い上げる事も出来る。ニューポートに於ける余裕綽々のパフォーマンスが実証している。スタジオの方は、前述した通り迫力が凄い。あのデカい顔が眼前に迫ってくるような痛快さだ。思わず笑いがこみ上げてくる。

ニューポートでは、ブルースに馴染みの薄い観客に基本枠を伝えたかったのでは。スタジオ物は、セッション感覚で、自分たちが先ずブルースを愉しんでいる様子が伝わってくる。

ギターのパット・ヘアも、ニューポートでは余り目立たず、スタジオの方がフレーズも光っている。ライブでは御大がギターを抱えていたのも原因かも。

ハープのジェイムズ・コットン。ニューポートでは“通奏低音”のように、分厚くゆったりと吹いている。スタジオの方が、やはり縦横無尽にブロウしている。

ほとんど変化がないのは、ピアノのオーティス・スパン。音粒の転がりが、曲に表情を与えている。いつものスパンだ。

スパンと言えば、咄嗟に作詩作曲されて、ヴォーカルを取った「グッバイ・ニューポート・ブルース」は出色の出来。

経緯が面白いので、この曲についてもう少し。54年に、アメリカで初めて行われた野外音楽フェスティバルだったニューポート・ジャズ・フェスティバル。だが、この年は大学生や観光客が暴徒化し、警察当局から中止を求められた。協議の結果、最終日の「ブルース」のみ許可されたのだ。そして、マディが最終アクトだった。

当日、MCを務めていた黒人詩人のラングストン・ヒューズは、フェスティバル中止の報(それから2年間開催されなかった)を受け、即興で作詩し、スパンに渡したのだ。マディがすぐに曲を付け、曰く付きのフェスティバルの、幕を閉じる曲となったのだ。

最後に、アルバムの内容とは関係ないが苦言をひとつ。原文ライナーの訳がおかしい。英語の発音に忠実に書かれてるのかも知れないが、ニナ・シモーネとかゲリー・ムリガンとかちょっとムリガン・・・失礼、違和感あり過ぎ。極めつけはラングストン・ヒュー。最初は脱字かと思ったら、あんまり何度もヒューヒュー言うので、気持ちにすきま風が入り込み、哀しい気分になった。こういうの、結構大事です。ちゃんと専門家にチェックしてもらいましょうよ。

♪ "I got my brand on you"
http://www.youtube.com/watch?v=5TlB7yBMLRQ

♪"Tiger In Your Tank"
http://www.youtube.com/watch?v=kn28bBxXtNU

♪"Meanest Woman"
http://www.youtube.com/watch?v=UFhrqA1JPAA

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孤独をめざし、孤独に戸惑い、孤独を知り、孤独を力とする

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●ジェシカ・ワトソン著・田島巳起子訳『ジェシカ16歳 夢が私に勇気をくれた ―True Spirit』<書肆侃侃房>(13)

210日(約7ヶ月)という日数。私自身の過去7ヶ月間を考えると、おぼろげな記憶が漂うだけだ。しかし、ジェシカにとっては、鮮明に心に刻まれた日々だったろう。

誰もが経験出来ない、単独・無帰港・無支援の世界一周を成し遂げたからばかりではない。彼女の生き方自体に起因する。ジェシカは、日常に於ける一瞬一瞬のレベルから、人生を愉しみ、いろんな事を積極的に吸収している。しかも、10歳ぐらいから・・・単に、子供らしい活発さだけでなく、そこには、自身の至らなさを克服しようとする姿勢が感じられる。彼女の生き方に芯がある所以だ。

ジェシカの意欲的かつ冷静な行動の源泉は両親だろう。“常識”という名の固定観念に囚われず、子供達が各々の道を歩む前にと、オーストラリア一周のバス&航海の旅に出向く。ジェシカの世界一周の夢はその期間に芽吹き、両親の説得を始め、必要な準備を自分で調えた。他人の知識や技術は大いに借りるが、決して甘えはしない。最終的には自分が責任を取るんだという姿勢を持ち続けた。

ジェシカは幼い頃、引っ込み思案な子供だった。読み書き能力に劣る「失読症」でもあった。両親の支えもあったろうが、通常はマイナス要素と取られるこれらの事が、却って彼女自身を強くする要素となった面もあるだろう。

彼女の真剣な姿勢は、多くの協力者を惹き付ける。ヨット航海の心得やテクニックを教示する人、船の提供者、研修代わりに航海のクルーに採用してくれる人・・・運が良かったと言う者もいるだろう。しかし、どの協力者も、彼女が現実問題として世界一周を成し得ると判断した結果だ。人間的魅力だけでは、夢は実現しないのだ。

マス・メディアに発表した際には、既に体制は出来ていた。彼女自身や両親に対する批判もわいてきたが、批判する者ほど、内容を把握していない。「女子高生には無理だよ」という通り一遍の論理が先に立つ。理解不足(拒否)の批判など、ジェシカにとってはいかほどのものではない。彼女には現実が見えていた。

試運転中、大型船と接触し、ヨットが大きく破損した。批判する人たちが頭に浮かんだが、それよりも、トラブルに冷静に対処できた事実に自信を深めた。目標にとって、本当に必要なものは何か、彼女には判っているのだ。

夢は思い続ければ叶う、とよく言われる。本書にも同様の言葉がある。自分の行動が、多くの人が夢を目指すキッカケとなり、推進力になれば嬉しいとジェシカは言う。

夢を叶えるとは、夢を現実化する事だ。現実化する為には、具体的に何をしなければならないか考察し、実行しなければならない。つまり、夢を叶える、というより、夢を実行するのだ。ジェシカは壁を感じながらも実行した。そこに触発されるべきだろう。生身の人間の真摯な努力の跡だ。

彼女自身航海に出てからの日記は、ブログに掲載していた部分と、今回の本を書くに当たって加筆した部分が合わさっている。後者はかなり内省的だ。弱気も見せるし、苛立ちも感じ取れる。涙も流す。呆然となり、何も出来なくなるケースも。オブラートに包まず、正直に心情を吐露している。そんな自分自身に正対したからこそ、彼女は一段と強くなった。夢を実行出来たのだ。

孤独に関する思いは、哲学的とも言える。実際に自分の周りには誰もいない。しかし、メールや電話やブログのコメントで、他人の温かみは感じる。また、孤独は自分が求めたものであり、トラブルを一人きりで対処する事で、自分を高めたい思いもある。しかし、現実問題として、ふと淋しくなる・・・いったい、孤独とは何だろうか。

孤独は人生につきまとう。孤独に生きる事は、誇らしく、とても切ない。孤独を知る者は、他人の孤独を了解し、そっと寄り添う事が出来る。

ジェシカの一番の大仕事は、孤独の奥深さを感得し、情熱的かつ冷静に伝えた事だ。

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ライク・ア・ローリング・ストーン

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●電気シェーバーの外歯を買い替えたら、スムーズなヒゲ剃りが出来るようになった。剃り跡がヒリヒリしていたのも無くなり、思いの外快適だ。もっと早く替えれば良かった。自分が置かれた状況は、変わってみなけりゃ分からない事もある。

●「理屈」という言葉は、A「正しい筋道」とB「こじつけ」と、両面的な意味がある。Aである事に自信満々な場合ほど、Bだったりする。それに気付かせる為、ふたつの意味を抱えているのかも知れない。真理は、放っておいても、周囲の人が必ず光を感じる。語る側は寡黙だ。

●ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」に詩われている「ストーン」は、「道端に転がっている石」の意味らしい。何の飾りもなく、目立った特徴もないのだが、常に一定の存在感を保持している・・・という内容の歌ではないが、私は「道端の石」にそんな魅力を感じる。ディランは、ご承知のようにカリスマ的な音楽家だ。道端の石みたいな存在なんて表現は当たらないかも。ただ、彼の魂は、石のように無駄な飾りはなく、昔から変わらず在るのではないだろうか。ディランのアルバムを聴き続けている訳ではないが、音楽的な変化は、彼の魂が変化した結果ではないはず。正に「変わりゆく変わらぬもの」だ。そういえば、マイルスの「それがどうした」は、ボブ・ディランにも当てはまる。

♪Bob Dylan "Like A Rolling Stone"

http://www.youtube.com/watch?v=hk3mAX5xdxo

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2013年2月の読書メーター

2013年2月の読書メーター
読んだ本の数:1冊
読んだページ数:296ページ
ナイス数:19ナイス

日本語の年輪 (新潮文庫)日本語の年輪 (新潮文庫)感想
著者の日本語のこだわりたるや、アカデミックなだけでなく人間性に溢れる。中高生を対象にした文とはいえ、日本語の独自性、美しさ、日本文化との連関や外国文化との関わり・・・淀みなく心にしみる。著者の本をもっと読みたくなる。
読了日:2月23日 著者:大野 晋

読書メーター

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2013年2月の音楽メーター

2月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:2枚
聴いた時間:129分

テキサス・イーストサイド・キングス~テキサス・ゲットー・ブルース最前線テキサス・イーストサイド・キングス~テキサス・ゲットー・ブルース最前線
まだ最初の方だけ。2013.2.2. ぐるぐる倉庫荒尾店で購入。
ローカルのブルースシーンは、不必要に目立とうとはせず、基本をキッチリ展開している。観客を喜ばせなければ話にならんので甘えた部分がない。誠実さ・真剣さが伝わるのだ。
聴いた日:02月02日 アーティスト:テキサス・イーストサイド・キングス
ドミノドミノ
まだ最初の方だけ。2013.2.2. ぐるぐる倉庫荒尾店で購入。
カークは良いなあ。しめやかさ。切なさ。哀しみの情。ユーモア。可愛らしさ。肝っ玉の強さ。芸人性。リード楽器を何本も同時に吹奏するからってキワモノ的に捉えるのはアホの骨頂。楽器の使い方は音の素晴らしさに関係ない。
聴いた日:02月02日 アーティスト:ローランド・カーク

わたしの音楽メーター
音楽メーター

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