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2013年5月

涙の味

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●ジーン・ライス『ジャスト・フォー・ユー』<RCA>(91)

http://www.discogs.com/Gene-Rice-Just-For-You/release/1517403

ソウル/R&B関係のガイドブックには、必ず載っている(であろう)名盤。男の色気を感じさせる歌手だ。

曲調は、いわゆるアーヴァン系。スタイリッシュではあるが、人肌の温もりも十分伝わってくる。微かにざらついた歌声と丁寧な歌い口が、聴く者との距離を近くしている。

大人の恋の切なさは、恋をしていなくても、大人であれば分かる。涙の味の塩辛さを、自分の経験や知識から抽出できるのだ。ついつい、そんなロマンチックな事を考えたりする。

また、純粋な気持ちで泣く事で、..身内から沸々と生きる力が湧いてくる。人生が辛くなければ、妙味は味わえない。人間に彫りが生まれない。色気も出ないのだ。ビター・スウィート。

このアルバムが多くの人に愛されているのは、..涙の味に満ち溢れているからだ。しかも、過剰にならず等身大で。

♪"No One Can Love You Like I Love You"
http://www.youtube.com/watch?v=QEC0TgWMq24

♪"I Believe"
http://www.youtube.com/watch?v=EI0pOWEEKyg

♪"It's Too Late"
http://www.youtube.com/watch?v=yW2yjyqr3S8

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多彩な躍動感

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●リン・コリンズ『チェック・イット・アウト・』<ピープル/Pヴァイン>(75/95)

http://ongakumeter.com/m/B00004VN37

ジェイムス・ブラウンは、自己の音楽において完璧主義者だ。採用する女性シンガーも、実力十分な歌姫ばかり。彼女たちの側に立てば、ファンキー路線ばかりが持ち味じゃないわよと訴えたい気持ちではなかろうか。

本盤のリン・コリンズを聴いていても、幅広い魅力を感じ取れる。もちろん、バラードを歌うにしろ、しなやかなリズム感あってのものだから、JBファミリーに在籍していた事が、彼女の無二の財産になっていた事は否めないのではないか。

本アルバムの構成も、JB的だったり、他流のファンクだったり、豊かなバラードだったり、さまざまな表情を見せてくれるが、全て抜群のリズム感ありきで成り立っている。

個人的には、JBから距離を置いたファンキー・チューンが面白かった。他アーティストのカバーでも、オリジナリティー溢れる出来になっている。この路線を追求すればなぁと思ってもしょうがない。

今はただ、多彩な躍動感を愉しもう!

♪"If You Don't Know Me By Know"

http://www.youtube.com/watch?v=iCw9450B7MI

♪"mr big stuff"

http://www.youtube.com/watch?v=2WBiNQMsrmM

♪"Backstabbers"

http://www.youtube.com/watch?v=jOqicukYGA8

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生きた証

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●ヨメさんの姪が、難産の末、女の児を出産。新しい生命の誕生は、傍観者でも嬉しい。人生へようこそ、と歓迎したい。

●この赤ちゃんが15歳になる頃、私は71になるわけだ。とても想像出来ないし、想像してどうなるものでもない。ただ、年寄りになるのはさほど考えない(年寄りの基準も自分の中にはないが)が、死ぬ事は考えている。もちろん、死にたい訳ではない。死を意識する事が、生の自覚に繋がると思うのだ。我々が“体験”として得られるのは、全て過去の出来事。未来に目を輝かせても、絶望の嘆息をもらしても、結果は過去にならなければ分からないのだ。確実なのは、いつかは死ぬという事。その一点を見詰めれば、生きる事自体が愛おしくならないか。目標に向かって努力する事は素晴らしいが、それも、真っ当な人生を歩む姿勢有っての事だ。目指した職業に就いても、金持ちになっても、それと、日々粛々と充実した気持ちで生活していく事は、必ずしもイコールではない。自分の気持ちの中の生きる姿勢(人生観)と、他人の眼に映る姿とは微妙に違う。内宇宙に他人は入り込めないし、入り込む必要がない。

●今年は、ジミ・ヘンドリクス生誕70周年。彼が14、5歳の頃私は生まれている。そして、私が13ぐらいの時に彼は死んでいる。楽曲の権利関係が整理されてから、彼に近しい人たちの尽力で、次々と生前の未発表音源等がリリースされている。いずれも評判が良い。作品が魅力的だけに、多くの人がジミが生きていたらと考える。考えたくもなる。考えても良い。ただ、より彼の生きざまを感じたければ、彼の立場から考える事だ。たとえ、未発表作としてリリースされた作品でも、ジミ本人にとっては“未発表”ではないのだ。彼が生きた証だ。彼の短い生涯(生涯の長短も本来は云々すべきではないと思うが)の中で創り上げられた成果だ。70のジミを想像する面白さは否めないが、まずは、実在の人物としてのジミを感じる方が、私は好きだ。

Jimi Hendrix - Earth Blues

http://www.youtube.com/watch?v=Sao6m0guA-E

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小説の経験

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大江健三郎著『小説の経験』<朝日新聞社>(94)

若い頃に読んだ本を再読(&精読)する試みをテーマにした、NHKのテレビ講義録と、朝日新聞に連載した「文芸時評」を纏めた一冊。

最も印象に残った言葉は、小説で重要なのは、書かれているテーマより書き方だというもの。“表現力”と言えば簡単だが、言霊的な、言葉自体のパワーとか、登場人物の、どういう位置にいる人に、どういう台詞を言わせるか。或いは、自然や人の仕草等の描写を、無駄なく効果的に行えるか。

そして、それら小説的表現を破壊する“表現”もまた有り得るだろう。

文章とは、読む人に、解り易く内容を伝えるものだろうが、勿論それでは文学的小説は成り立たないのだ。考えてみれば、誰もが書ける“文章”で、内容より表現力で感動させるとは凄い話だ。

私も文章を書くのは好きで、だからこそブログを10年近く続けられたんだと思う。“表現力”に関する努力は、まだまだ超甘いが、小説や文章から得られる感動を噛みしめる事は出来る。いつか、自分なりの咀嚼が出来ればなぁと思うが、それが自分で判るものかどうかが判らない。たぶん、判らないまま書き続けるだろう。

話が本書の内容から外れた。今さら言うまでもなく、大江健三郎氏自身、日本を代表するクリエイティブな作家だ。彼の作品は、正直な所読んでいて眩惑される部分もある。読み難さを感じた事もままある。しかし、本書は解りやすかった。読み進む速度も速かった。

さて、大江氏の視線の拡がりは広く深い。本書の時点で、世界各国の文学界と比べた、日本の文学界の問題点に言及され、懸念もされている。

果たして、現在はどうなのだろうか?それを考察するほど、私はまだ小説を“経験”していない。

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2013年4月の音楽メーター

4月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:8枚
聴いた時間:204分

アイム・ジミー・リード/ジャスト・ジミー・リードアイム・ジミー・リード/ジャスト・ジミー・リード
2013.4.20 ブックオフ琴平店にて購入。2in1@Pヴァイン。1990編集。
『アイム・ジミー・リード』のテッパンぶりと『ジャスト・ジミー・リード』のワイルドさと素の魅力が両方味わえ愉しめる。
聴いた日:04月23日 アーティスト:ジミー・リード
Funk Beyond the Call of DutyFunk Beyond the Call of Duty
ファンカーってのは、伊達男が多いねえ。
聴いた日:04月15日 アーティスト:Johnny Guitar Watson
ターニング・アラウンドターニング・アラウンド
姉ディオンヌよりワイルド。ゴスペル、ブルース、リズム&ブルース、カントリーなどが無理なく混在している。好きな声質・歌い方だ。たまに声が裏返るのも色っぽい。お気に入りを1曲選べと言われても選べない充実度。
聴いた日:04月07日 アーティスト:ディー・ディー・ワーウィック
エンタイスト・エクスタシー (ENTICED ECSTACY)(直輸入盤・帯・ライナー付き)エンタイスト・エクスタシー (ENTICED ECSTACY)(直輸入盤・帯・ライナー付き)
シャウトはエディ・リヴァートの如く、ファルセットはロナルド・アイズリーの如く、現在に生きるソウルマンの素質十分。打ち込みも全く気にならず。すごい歌手たせし、セルフ・プロデュース能力もあるんだけどなあ。
聴いた日:04月05日 アーティスト:G.C.キャメロン (G.C. CAMERON)
世界は愛を求めてる世界は愛を求めてる
ステイプル・シンガーズを、もっと正統ゴスペルに近づけた感じ。と書くとより深そうだが、実は四角四面過ぎる危険性もある。玉石混交感が否めない。
聴いた日:04月04日 アーティスト:ザ・スウィート・インスピレーションズ
アイ・ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ラヴ・ミーアイ・ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ラヴ・ミー
マイアミ・ソウルといえばライトなファンキー・スタイル。正にそこの土俵で彼女の歌は光る。黒人歌手に関して「歌が上手い」というのは何も語ってないようなものだが、この人、本当に上手い。
聴いた日:04月03日 アーティスト:ベティ・ライト
メンフィス・ボーイズ-アメリカン・スタジオ物語メンフィス・ボーイズ-アメリカン・スタジオ物語
個人的に「洋楽って良いなあ」と思い始めた小学校高学年頃、確かに聴いた曲が入っていて嬉しかった。個人的懐メロと、カントリー寄り、ポップ寄り、そしてディープ系と幅広いし、CDの音質の良さで、磐石の演奏が一層輝いている。よく練られた編集盤。と同時にアメリカンスタジオのセンスと情熱!
聴いた日:04月02日 アーティスト:オムニバス
CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL:CHRONICLE THE 20 GREATESTHITSCREEDENCE CLEARWATER REVIVAL:CHRONICLE THE 20 GREATESTHITS
パンク/ニューウェイヴを体験する直前は、ストーンズとCCRばかり聴いてた。私にとっては「エヴァーグリーン・ミュージック」だ。
聴いた日:04月01日 アーティスト:Creedence Clearwater Revival

わたしの音楽メーター
音楽メーター

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2013年4月の読書メーター

2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:545ページ
ナイス数:12ナイス

小説の経験小説の経験感想
文章とは、読む人に、解り易く内容を伝えるものだろうが、勿論それでは文学的小説は成り立たないのだ。考えてみれば、誰もが書ける“文章”で、内容より表現力で感動させるとは凄い話だ。
読了日:4月29日 著者:大江 健三郎
みちのくの人形たち (中公文庫)みちのくの人形たち (中公文庫)感想
民話や伝説、あるいは祭りの風習など土俗的なものが持つ大らかさや、奇妙さ、明るさ、秘密性などが文章表現の中で生きている。リズム感のある文章が好きな私にとっては、リズムが悪いのだが、その独特のリズムが「訛り」のような温もりを持つ。稀有な作家だ。
読了日:4月16日 著者:深沢 七郎

読書メーター

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