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うたえやうたえ

Bi

●琵琶デュオ『琵琶デュオ』<江戸前>(13)

http://www.biwa-mizushimayuiko.com/cd%E8%B3%BC%E5%85%A5/

琵琶演奏家の後藤幸浩さんと水島結子さんのユニット。流派が違い、使われる琵琶も異なる。各々の特長がどう活かされているのか分析するのも面白いだろうが、私にはとても無理。また、琵琶演奏の歴史的背景や、演目に関する知識が有れば、本盤をより適切に“批評”する事は可能であるが、知識に拘るより前に、お二人の“意気”を感じ取り、創られた世界に浸った方が楽しさを満喫できる。

倍音効果による拡がりと、独特の“揺らぎ”を持つ琵琶の音色に、語り、歌、台詞が入れ替わり立ち替わり絡むと“和のグルーヴ”と名付けたくなるダイナミズムを生む。

“和のグルーヴ”とは、日本人に伝わりやすいグルーヴという意味で考えてみた。それは、七五調であったり、掛け声や合いの手のタイミングだったり、昔の日本語が持つリズムだったりする。日本の伝統芸能だから当たり前でしょという意見もあるだろう。確かに一理有り。ただ、琵琶デュオに関して言えば、現代の感覚がフィーチャーされた結果の“和のグルーヴ”だと思料する。だから現代人に伝わるのでは?・・・古典的な伝統芸能を知らない身としては、ここまでしか推測出来ない。

以下、各曲(演目?)毎の感想。

「信徳丸」は、継母に呪いをかけられ盲目となるが、愛の力で救われる話。ライナーを読めば筋は理解できる。しかし、いきなり、演奏・語りを聴き始めても、大方伝わる。あら筋が解るというより、物語の悲しさ、恐ろしさ、喜び、無常感が十分感じ取れるのだ。

間に「予告編」を挟み、大きく二段(2トラック)に分けてある。各々のクライマックスはやはり強く惹き付けられる。

前段の呪いの場面や、後段の、乙姫が愛しい信徳丸を探し回ったり、彼女の為に別れようとする信徳丸を、半ば強引に連れて行く場面等、琵琶の共演、語りや台詞のやり取りで、心がざわめく。

「信徳丸」以外の曲(演目?)は、ミキシングも含め「遊び」の部分を多くしたとの事。琵琶語り・演奏の伝統的な魅力を十分活用した上での革新だ。変わりゆく変わらぬもの。和のグルーヴ。

「うたえやうたえ」は、汎アジア的にも聴こえるし、「風流」を歌にしたようなイメージも湧く。ここで言う「うたえ」とは、詩情を抱けという意味ではなかろうか。

「うた」は歌とも詩とも書く。①「語り」と②「うた」はかなり近い位置にある。③文章(書き言葉)は、それから距離をおく。極端な話、文字がなくても①②は成り立つのだ。音楽や芸能の本質的ライブ性にも想いは至る。「語り」「うた」だからこそ、技巧以前のプリミティブな詩情が映える。幽玄的な琵琶の音も、詩情を掻き立てる一要素だ。

技巧の前に詩情あり。だから、ド素人にも伝わるのだ。もちろん、演奏家側から考えれば、詩情溢れるテクニシャンでなければ、通用しないだろう。

「平家蟹」や「月の舟」にも強い詩情を感じる。聴いていて、うたを愛でている自分を感じる。「五木の子守唄」は、よりフォークロア的で、しかもフリー・フォームだ。寝た子も起きる興奮度。

本盤の適切なレビューとはならなかったが、個人的に和のグルーヴや詩情について想いを巡らすキッカケを頂いた。

日本人なら誰しも、何かを感じるアルバムなのは確かだ。

♪"うたえやうたえ"

http://www.youtube.com/watch?v=gRVC4JYrVP0

♪"五木の子守唄"

http://www.youtube.com/watch?v=adVGlC27KxM

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