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2013年10月

同道二人

ある方の投稿をキッカケに、男女デュオというのを考えてみる。まず最初に質問。70年代ソウル界で、最高の男女デュオと言われた二人の名前がどうしても思い出せません。どちらかがWashington姓だったような気がしますが、違うかも知れません。ピンと来る方おられたらコメント下さい。ディスコが席巻する前かと思います。サザンソウル系ではないです。モダンかつディープという感じだったかな?

●シャーリー&リー・・・まずは50年代。Shirley Mae GoodmanとLeon...ard Lee のコンビ。夫婦ではない。女性のシャーリーの声がクセがあるが、何とも言えない心地好さ。頭からハチミツを浴びて歌ってるような蕩け具合だ。しかし、決してエロチックではない。時代性もあるだろうが、微笑ましく明るい。

♪Shirley & lee "Let The Good Times Roll"

http://www.youtube.com/watch?v=uM9yYL6BD-4

●ミッキー&シルヴィア・・・こちらは50年代後半から60年代初頭にかけてか。男女デュオとは言えないかも知れん。男性リスナーはついついミッキーのギターに耳がいきがち。しかし、二人の息はピッタリだ。ここでは目立たなかったシルヴィアも、後には「ピロウ・トーク」で一世を風靡。さらには<トミー・ボーイ>の創設など、黒人音楽史に於いて重要な役割を果たす。

♪Mickey & Sylvia "Love Is Strange"
http://www.youtube.com/watch?v=KpEA5QGYJFQ

●アイク&ティナ・・・ミッキー&シルヴィアを過激にするとこうなる。仲が良いのか悪いのかよく判らない。音楽上は、アイクは完全にティナの“裏地”になっている。ティナのシャウトは時に、歌唱というより相方への怒りに聴こえる。初期の曲群は、音楽というよりドキュメントを感じる時がある。

♪ike & tina turner "stop the wedding et please,please,please"

http://www.youtube.com/watch?v=_SgJ1jU5fxw

●マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル・・・この二人も面白い。通常の男女デュオは片方が表に出ている時は、片方は寄り添うが、この二人は競っている。しかし、競っていながら寄り添っている。これを男女デュオの理想形に上げる人は多いが、理想形というよりは唯一無二のものだと思う。どんなに真似ても追いつかないだろう。誰もチャーリー・パーカーのように吹けない様に、どんなデュエットも彼らのようには歌えない気がする。感覚的にはサム&デイヴの男女版でありながら、男女デュオとしての魅力も保持している感じか。

♪MARVIN GAYE & TAMMI TERRELL "Ain't no Mountain High Enough"

http://www.youtube.com/watch?v=Xz-UvQYAmbg

●ケニー・ラティモア&シャンテ・ムーア・・・最後は正統派。とても優しく、とても温かい。男女の機微を感じ取れる。二人は心身ともに夫婦なんだよな。そしてその愛の繋がりが歌を通して伝わってくるのが素晴らしい。男女デュオとは、ただ歌が上手い二人を揃えれば出来上がるものではない。

♪KENNY LATTIMORE & CHANTE' MOORE "MAKE IT LAST FOREVER"

http://www.youtube.com/watch?v=BIVnfunpWW8

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反戦の書

●火野葦平著『土と兵隊・麦と兵隊』

http://book.akahoshitakuya.com/b/4101008019

従軍記者及び一兵隊として日中戦争に関わった作家の書。「土と兵隊」は一兵士として、弟に宛てた手紙形式。「麦と兵隊」は従軍記者のルポルタージュ形式である。

ベストセラーでありながら、戦後は戦争礼賛の書として批判を浴びる。社会の流れとしてやむを得ない変化だが、本人の心中はいかばかりか。

とにかく描写が仔細にわたる。泥まみれ・埃まみれの兵士。死を恐れぬ心情(マインドコントロールなんて言葉は瓦解する)。飛び交う銃弾・砲弾の迫力。リアルな屍体描写。敵・中国兵への憎しみと民族的親近感。果てしない行軍。食欲や睡眠への思い。

確かに「皇軍」である前提はぶれていない。戦争に対して批判的な事は少しも書いてない。拡大解釈すれば批判に思える部分もあるが、素直な人間的な気持ちの発現に基づくからだろう。逆に戦争を少しも美化していない。褒め称えてなどいない。但し、兵士の行動や性根は賞賛している。それも素直な思いゆえだ。

戦争の愚かさを知るには、経験者の体験を知る事が一番だ。頭で考えても真実には至らない。グローバルな視点とか国の事情とか富国の為とかいう理論は、一人の屍体の前では口を噤む。戦争に巻き込まれた人間を、ありのままに描く事は、それだけで「反戦の書」だ。   

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【創作】悪い星の下に(1)

カクは、うたた寝の気持ち好さにとろけはじめていた。普段でも眠そうに見える顔が、一段と情けなく崩れている。思い出したように首が揺れると、安物の座椅子が短く音を立てた。

さし向かいに座っている鉄は、湯呑み茶碗に注いだ日本酒を、時々口元に持っていく。だが、味わっては飲んでいない。彼の気持ちは、折り畳んだ自分の携帯電話に向いていた。静まった部屋の中、座椅子が軋むたびに、胸の内に収めていた予感が意識に上った。

電話を待っているのは、ここ数日共通した事だが、今夜かかってくる可能性が高い。その電話は、彼の行く末を大きく変えるものだ。ただしそれは、恩人の死と引き換えにもたらされる。恩人は末期癌だった。しかし、強く生きた。力みもなければ、諦観の虜にもならず、積もった雪が徐々に融けていくように、最期の時を迎えていた。自然体で運命を受け入れる、彼らしい態度だった。

鉄はヤクザ者だ。しかし、恩人は一般人で、喫茶店のマスターだった。妙な取り合わせだが、チンピラだった鉄に、人間性を目ざめさせた人物だといえる。そのキッカケも妙だった。ふたりを繋いだのはブルースという音楽。鉄は、ほんの雨宿りのつもりで入った喫茶店で、心を騒がせる音楽に出逢い、少しずつ変わっていった。ヤクザの自分は否定されるが、運命に従う事に鉄は慣れていた。

「ジャスト・ア・リトル・ビット」のメロディーが唐突に鳴った。鉄の携帯電話だ。座椅子が一度大きく軋み、目を覚ましたカクが、不安そうに鉄を見やった。鉄は上げかけた茶碗をゆっくり下ろし、携帯を開いた。恩人の弟からだ。

「はい」
「あ、鉄さん。たった今兄が亡くなりました。穏やかな最期でした。色々お世話になりました。これから又、宜しくお願いします」

鉄は、淡々とした語り口を聞きながら、自分の頭の中が靄に包まれていくのを意識した。やがて涙が静かに頬を伝い始めた。

「ご愁傷さまです。最後のお別れに間に合うかな?」「はい、告別式は日曜のお昼になります。お迎えには行けませんが宜しく。実家は店の近くです。店に案内の貼り紙をしておきます。後の事はお会いしてから」

恩人の弟は、兄と鉄との約束が実現するよう、親身になって動いていた。鉄が恩人のマスターから頼まれていたのは、喫茶店を引き継ぐ事だった。遺言化もされている。しかし、鉄の素性は判らぬにせよ、いきなり赤の他人に店を任せるのは実家としては釈然としない。そこで、弟が経営を引き継ぎ、鉄に働いてもらう形を取った。兄と親身にしていた常連とだけ説明している。

ウィークリー・マンションも手配し、既に主な荷物は運び込んでいる。ここしばらく、身ひとつに近い状態で、子分のカクのマンションに居候していた状態だ。

「兄貴!」会話が終わったとみるや、カクは身を乗り出し、不安そうな表情を見せた。「いよいよですか」。

「ああ。明日親父さんに挨拶に行く。お前にも世話になったな」いつも余計な事ばかり喋り、鉄にたしなめられているカクが無言で俯いている。

ふたりが所属する組はやがて消滅する。組長の息子が営む不動産業が軌道に乗り始めているのだ。今、鉄が組を離れれば、“親父さん”の決断は早まるだろう。不器用なカクは真っ当な勤めに自信がない。鉄の運命を変える電話は、カクの人生にも及ぶ問題なのだ。

それ以前に、カクにとって鉄は任侠の手本である。田舎に帰って喫茶店を開くと聞いた時は、足元がすくんだ。次第に、鉄の人生を左右する男の大きさを感じるようになったが、それは自分を納得させようという意識からだった。日に日にカクの気持ちは萎んでゆく。鉄はそれが判っていながら、今後のカクの為に距離を置いた。同時にそれは自分の為でもあった。

(つづく)   

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書店にて

●書棚の脇に椅子が置いてある。私と同じ50代ぐらいの男性が、座って本を読んでいた。左手で左側方の髪を掻き上げている。それは、大学時代の悪友がよくやっていた仕草だ。彼とは、ストーンズの初来日ライブを観に行って以来会っていない(はず)。顔が下向きなので判別がつかない。似ている気もする。覗き込むわけにもいかないのでその場を離れる。

●彼は別の県に住んでいる。書店は郊外なので、旅行者が立ち寄るような場所ではない。もし、何らかの理由で熊本に住んでいるのなら、連絡してくるはずだ。別人だろうと結論付け、本を見て回る。それでも、もし、悪友であって、バッタリと遭遇し顔を見合せたら、どんな態度を取るべきだろうかなどと妄想する。さっき、あっち側で見たよと言うべきかとか、その時手にしていたライジング・サンズのアルバムを、アイツなら気に入りそうだと思ったりとか・・・。

●うろうろ回っていたら、当の男性が本を選んでいた。別人だった・・・それが、現実的な結末ではある。いや、結末ではなく局面か。友達を思い出したり、久々に会ったらどんな感じだろうと想像したりする事で心が温かくなる。そこが重要な気がする。もちろん、会うに越したことはない。でも、もし、これから先、彼に会う事がないとしても、心には残り続けている。現実は単なる事象ではない。だから人生は面白い。

♪The Rolling Stones "Waiting On A Friend"

http://www.youtube.com/watch?v=MKLVmBOOqVU

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バラード

●読売新聞のコラムに、中年男性が自分の事を「オッサン」と呼ぶのは言い訳に使う時だと書いてあった。解るなぁ。自分の都合で若くなったり老けてみたり。

●『あまちゃん』の次は『ごちそうさん』。第一週は子供時代で、目が離れて愛嬌のある顔立ちの主人公が、実に美味しそうに物を食べる様子が和んだ。独身時代だったら、演技過剰じゃないかと否定的に感じただろう。いや、そもそもこの手のドラマは観なかったはず。カドが取れるとはこういう事か。

●朝、車で通勤時。渋滞に遇い、後ろの車に何気なく目を遣る。女性が自車のバックミラーに向かって、微笑んだり話し掛けたりしている。後部座席に子供さんか赤ちゃんか居るのだろう。楽しげな表情はこちらにも伝染する。もしかしたら、私の前のドライバーも、私の表情を見て同じ様な気持ちになったかも。更に、その前の人はその人を見て、そして、その前も、その前も、その前も・・・。

♪Marvin Gaye "Mercy, Mercy Me"

http://www.youtube.com/watch?v=U9BA6fFGMjI

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2013年9月の読書メーター

2013年9月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:232ページ
ナイス数:17ナイス

ジャズの名盤入門 (講談社現代新書)ジャズの名盤入門 (講談社現代新書)感想
中山さんの人と成りを感じた本でもあった。今時はそうでもないが、ジャズについて語るとなると権威的だったり、マニア主義だったりになりがち。中山さんの、フランクで熱情を感じる論調はジャズに対する距離を縮める。
読了日:9月27日 著者:中山康樹
レコード・コレクターズ 2013年 09月号 [雑誌]レコード・コレクターズ 2013年 09月号 [雑誌]感想
ソウル・ファンクの名曲はやはり最大公約数的。スライが多すぎ。テディペンの「クローズ・ザ・ドア」などジックリ聴かせるソウル曲は選ばれにくいね。おまけにこれはシングル対象。アルバム主体で買う身としては若干違和感も。でも、解説は愉しめた。ボビー・ロビンソンとタブー・レーベルの記事もあり、ブラックファンはそこそこ満足の巻。
読了日:9月3日 著者:

読書メーター

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2013年9月の音楽メーター

月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:5枚
聴いた時間:88分

Natural BoogieNatural Boogie
ノイズがバンドサウンドに昇華している。パンクとはまた違う論理。極めて音楽的というか結構なテクニックかと。
聴いた日:09月29日 アーティスト:Hound Dog Taylor
チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブチューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ
2013.9.16 ぐるぐる倉庫荒尾店にて購入。安かったのでつい。ボーナス・ライブ5曲付き。
気の合う実力派ミュージシャンと火曜の夜に集まり、基盤を固めていった彼女。アラサーでのデビューとはいえ1stでこの完成度は凄い。グラミーも獲りいまだに第一線で活躍するのも肯ける。音楽の引き出しの数を沢山持ちながら、変わらぬポリシーもある。声は可愛いというより幼い感じだが甘くない。
聴いた日:09月19日 アーティスト:シェリル・クロウ
Paradise ValleyParadise Valley
2013.09.13 ご好意によりいただく。
フォーキーだったり、ダイアー・ストレイツみたいな感覚だったり、ソロ成り立てのクラプトンみたいな感じも。一言で言えば「まったり」。ただ、仕事帰りの深夜は聴くのが辛い。繋がらないともいえない、タジ・マハールで目を覚ましたぞい。
聴いた日:09月17日 アーティスト:John Mayer
パスト、プレゼント&フューチャーズ(紙ジャケット仕様)パスト、プレゼント&フューチャーズ(紙ジャケット仕様)
ファルセット、バリトン、バス、各々レベルが高いが強烈さはない。その代わり何とも言えない温かみを感じる。とてもチームワークの良いグループ。フィリー・インターに凱旋しながら、ギャンブル&ハフ作品もなくシグマ録音でもないのだが、そういうの無関係。買って損のない一枚。
聴いた日:09月10日 アーティスト:フューチャーズ
Right on TimeRight on Time
ソウル寄りのブルースマンだけに、カラッとした明るさが基本にある。今の季節にピッタンコ。
聴いた日:09月06日 アーティスト:Little Buster

わたしの音楽メーター
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