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余分な力の抜けた力作

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●ボブ・ディラン『タイム・アウト・オブ・マインド』<コロムビア>(97)

http://www.bobdylan.com/us/home#us/music/time-out-of-mind...

アルバム冒頭から、個性的なダミ声に引き込まれる。特に1曲目は、慣れさせようとするかのように響く。ダミ声とはいえ、ハウリン・ウルフみたいなハードさも、トム・ウェイツみたいなクドさもない。スイスイ気持ちの中に入り、そっと苦味を置いていくような味わいがある。

サウンドも、淡々としているようで、独特の雰囲気(音の風景)を持つ。プロデューサーは相性の良いダニエル・ラノワ。プランの段階から、二人で徹底して音創りを進めたようだ。ある時は、ベーシストのみ固定し、二つのバンドを同時に演奏させたりも。しかも、各自の得意楽器でない物に当たらせたとか。またある時は、ブルース・ギタリストにブルースを封印させる等。これらは決して“実験”ではなく、二人の頭の中には、効果のほどが想定内としてあったと思う。

楽器のプレイヤーでもなく、音楽関係の仕事をしている訳でもない、凡人の私にその意図は読めない。ただ、こういう事をやると、ミュージシャンの刺激になり、各自の才能の原点、テクニック以前の地点に立ち返るような気がする。

結果的に出て来た音の、何と自然な事。まるで、川の流れや風のそよぎのようだ。痒い所に手が届く音という表現はよく聞くが、本盤の演奏は身体中撫でられて、自分の気付かなかった痒みを見つけて貰っているような感覚だろうか。統一感と、自由なインプロヴィゼイションが共存している。

  一度は、新曲は書かないと表明していたディラン。ツアーを重ねる内、ファン層に若い世代が増えてきたので、また曲を書こうと決意したそう。そして、生まれたのが、傑作の誉れ高い本盤。普通は気合いが入りそうなシチュエイションだが、この自然体。しかも新しい試みも成されている・・・。

ボブ・ディランはどう在るべきか、時代の様相や人々の想いにどう関わるべきか。そこを解っていて作品を創り上げるところが一番凄い。

♪"Not Dark Yet"

http://www.youtube.com/watch?v=0Yavmjh1Luo

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