上玉のブツ
●奥泉光著『石の来歴』<文藝春秋社>(94)
http://book.akahoshitakuya.com/b/4163146202
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活字中毒」とは、よく考えられた言葉だ。「読書好き」とはニュアンスが違う。活字中毒者にとっては、作品のテーマやストーリー展開は二の次だ。まずは、言葉や文字の力そのものを堪能する。
例えは悪いが、麻薬中毒者が、ブツを体内に取り入れて洩らすため息と、活字中毒者がブツ?に書かれた文字を丹念に追いながら、思わず洩らすため息は多分同じだ。相当のカタルシスが両者をブツの虜にしている。
また、活字中毒者は、おそらく速読はしない。読むのが速い人はいるだろうが、視線はナメクジのように文字を這っているはず。
本書は活字中毒者にとって上玉のブツだ。綴られる言葉に強い力が宿っている為、かなりの快楽状態を生み出す。正に言霊。
加えて、文節にリズムがあり、一文が長めなので、トランス状態に陥るようなグルーヴが発生している。
二本の小説を収録。最初のタイトル作では、ある種奇妙な戦時体験が背景にはあるが、何気ない日常が瓦解していくさまが描かれる。二本目は、タイトル「三つ目の鯰」でも感じるように、最初に奇妙さを提示し、そこへと徐々に近付いていくさまが描かれている。もっと見る
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