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映画『それでも夜は明ける』

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重い。ひたすら重い。
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奴隷解放宣言の20年ほど前、ワシントン在住の“自由黒人”である主人公が、狡猾な奴隷商人の罠にかかり、奴隷として南部に売られてしまう。身分を保証されている黒人でも、“家畜”扱いされてしまう理不尽さと恐怖。当時の黒人がアメリカで生活するというのはどういう事なのかヒシヒシと伝わってくる。

ストーリー展開より、各登場人物のポジションから伝わってくる当時の白人・黒人の意識の描写が、この映画の重みだ。奴隷根性に染まる黒人、自分の身分を立て直そうとする黒人、奴隷商人、奴隷の売り買いの場に於ける各人、農園主(さまざまなタイプ)、その妻、奴隷の監督官・・・そして、ブラッド・ピット演じるカナダ出身の、アメリカ北部に住む流れ者。彼の姿勢は、南部に関わらない一般人の意識として興味深い。彼は、主人公から、奴隷状態の解放に必要な手立てを依頼される。彼は正直戸惑う。これが一般的な反応なのだろう。その揺らぐ心理状態から、一歩踏み出すかどうかだ。

しかも、踏み出せばハッピーエンドではない。その暗黒状態を真実として伝えたのが、この映画の最大の功績だ。邦題で勘違いしないように。これは希望を象徴する言葉だ。もちろん、意識や姿勢は夜明けを目指すべきだが、その前に暗黒を暗黒として捉えなければならない。

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