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2014年5月

大地と祈りの歌

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●メイヴィス・ステイプルズ『ウィール・ネヴァー・ターン・バック』<アンチ>(07)

http://en.wikipedia.org/wiki/We'll_Never_Turn_Back
...
全12曲中、“トラディショナル”をアレンジした曲が7曲。J・B・ルノアー作品を加えれば8曲だ。歌い継がれる曲・歴史的に生き残っている曲は、骨太だ。本アルバムで取り上げている曲もそうだが、アルバム全体に流れる音世界も骨太となっている。ネットで調べてみたらメイヴィス・ステイプルズは人権活動家としても頑張っている様子。本アルバムにおいても、訴求力の高いジャケットが物語るように人種問題・人権問題に深くコミットしているようだ。

全体のプロデュースを手掛けているライ・クーダーは、テーマに対して攻撃的にはならず、大地に逞しく根を張る人間の姿を描く事で、誰しも尊厳ある存在なのだ、と言い表しているかのよう。サウンドの落ち着き、深み、広がりから感じ取れる。

主役のメイヴィスは、しわがれ気味の声を、時には張り上げんとするが、例えばエタ・ジェイムスのような強烈な圧力は感じない。さりとて、悲痛な叫びとも違う。ドラマチックにはならず、自然体なのだ。ステイプル・シンガーズがゴスペル出身とはいえ、どこかクールなグルーヴを保っていた、その延長線としての姿に思える。

ライ・クーダーのギターも控えめだ。それでいて、曲の輪郭をなぞるような存在感を示す。1~3曲目にコーラスで参加しているレディースミス・ブラック・マンバーゾも良い。静かな地鳴りのような雰囲気を出ている。そういえば、特にこの3曲は低音が印象的。重厚なベース音ではなく、振動が静かに伝わる感じだ。音における表現センスはさすがである。

♪"Down In Mississippi"

http://www.youtube.com/watch?v=FeZmZ1Pt6C0

♪"99 & 1/2"

http://www.youtube.com/watch?v=UIa8pq8Pr6c

♪"My Own Eyes"

http://www.youtube.com/watch?v=wNcodFhw5js
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ディープな魔法使い

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●リトル・ミルトン『グリッツ・エイント・グロサリーズ』<チェッカー>(69)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/CHSSBC1130912028
...
冒頭の「ジャスト・ア・リトル・ビット」のファンキー具合に狂喜した。元々素晴らしい曲なのだが、新たな息吹きが吹き込まれたように、新鮮な躍動感に溢れている。リトル・ミルトン、こういう展開もこなすのだ。実に器用。器用なミュージシャンやシンガーは、焦点が定まらないという恐れもあるが、彼の場合その心配は要らない。器用かつディープなのだ。

オーティス・ラッシュの「アイ・キャン・クイット・ユー・ベイビー」のように評価の定まった曲にも果敢(本人が果敢と思っているかどうかは別として)に挑戦。見事にオリジナルを深化させている。しかも、長尺を飽きさせない。抑制が効いているのだ。

ファンキー・タッチの曲に話を戻すが、聴いているとジェイムズ・ブラウンを連想させる。グリッティかつクールなのだ。ここまで似通う人はあまりいない。

他にも、リズム&ブルース、ソウル、何を持って来ても、ディープ感覚を発揮する。こういうのは何なんでしょう。テクニックやセンスとは全く別物の“魔法”と呼びたくなるような才能だ。

♪"Just a Little Bit"

http://www.youtube.com/watch?v=zxfebuZe57g

♪"I Can't Quit You Baby"

http://www.youtube.com/watch?v=MFs1XuCyTrI

♪"Steal Away"

http://www.youtube.com/watch?v=PlpQW48tMZI

♪LITTLE MILTON - GRITS AIN'T GROCERIES - FULL ALBUM 1969

http://www.youtube.com/watch?v=gJp-qCJm9Cs
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【創作】レスト・イン・ピース(1)

【創作】レスト・イン・ピース(1)

自分が何処にいるのか判らない。病院のベッドの上だとは思う。

看護婦が時々来るからだ。でも、医者も見舞客も一切来ない。

最近は、看護婦は俺の想像の産物ではと思うようになった。

病院に居るんだと、自分自身に言い聞かせたいのかも知れない。

何も見えないし、触る事も出来ない。そもそも、

自分の身体自体を自覚出来ていない。

自分が物質的に存在しているのか疑わしいのだ。

聴覚と嗅覚だけはある。しかし、それも空想なのかも知れない。

当然だが声も出ないので、相手に思いが伝わらない。

意識だけは有り、こうやって、あれやこれやと考えてはいる。

既に俺は死んでいて、自分でそれに気付いていないのだろうか?

いやいや、死んだら意識も無くなるんじゃないか?それとも、

脳だけが活動してるってわけか?
所詮、

人間死んだらどうなるかなんて誰も分からないんだろうから、

俺も世間的には死んでるのかも知れない。

いくら考えても結論は出ない。俺はとにかく、

この状況で居るしかないんだろう・・・。

「こんにちは」
いつもと違う声だ。
「今日から担当になりました。黒石あさみと言います。

宜しくお願いします」
看護婦が変わったのか。ご丁寧な妄想だ。

「月村さん、ミュージシャンだそうですね。

紅白にも出た事があるんですってね」
一回きりさ。あれはドラマの主題歌に使われたからな。まぁ、

紅白なんかどうでも良い。俺の舞台はライヴ・ハウスだ。

客が手を伸ばせば届くような距離で、唾や汗が飛び交い、

お互いの臭いまでをも感じるような、

そんな世界で俺は演奏し歌ってきた。

「私の兄がロックを聴いてて、

ジャックは本物だって言ってましたよ。

ジャックさんて言うんですね、月村さん」

ジャックにさんを付けたらおかしいだろ、へへ。まぁ良いや、

知ってくれてるだけで嬉しいよ。ありがとさん。

「はーい!ありがとうございましたー!」

そりゃ何のお礼だ?

ライヴ・ハウスといえば、自分がこんな状態になる直前、

ギーちゃんの店で演奏していたのを思い出した。たぶん、

あの時だ!

「ジョニー・B・グッド」でダック・

ウォークに入るタイミングがずれたんだ。

そのまま強引にやってしまえば良かったけど、

もう一度立ち上がろうとして、バランスを崩したんだ・・・で、

そこから先の記憶が無い。

でもなぁ、それが生きていた最後の記憶とも思えないんだ。

存在は感じなくても、頭は働いてるって思ってたけど、

それだって怪しいもんだ。

まったく!どうしたんだ、俺。

(つづく)

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音の質と音楽の質

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各所で話題を呼んだ、マジック・サムの秘蔵ライブ盤『アヴァン・ギャルド』はやはり凄い。クリアなギター音は、サムの手指の動きまで見えるかのようなリアルさだ。それまでに戦前ブルース盤を連続して聴いていたので、いくら鈍感な私でも音質の違いは目が覚めるかのようだった。

しかし、考えてみると音質が悪い=音がしょぼい訳ではない。音量の大きさが迫力を形作る訳ではない。戦前の音世界からも、確かな迫力で胸に迫るものがある。音質は技術で高められるが、音楽は音楽家自身の気持ちがこもっているかどうかだろう。じゃなきゃ、あんな音質の悪い物に感動はしないし、マジック・サムにしろ、音質が今回の物より悪いライブ盤『ロウ・ブルース』と『アヴァン・ギャルド』各々に魅力を感じないだろう。

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変わらぬ魅力・新しい魅力

昨夜は藤井康一さんのライブへ。

実は、朝から頭痛がして藤井さんのパワーに立ち向かう気力が今ひとつだったが、いざとなるとやはり乗せられる。今回は熊本在住の住職ベーシスト中山さんとのユニットもあり、ジャズ~ジャンプ系のパフォーマンスもより充実していた。

半年前と変わらぬ魅力、新しい魅力両方を味わえ、充実した一夜となった。頭痛なんて忘れたよ。帰り道は夜空を眺める余裕ができました。
...
半年前の過去記事を添付します。

http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/koichi_fujii/index.html

https://www.facebook.com/jumpin.jive.fujii?fref=ts

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カリカリ梅準備中!

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青フチ子の嘆き

アンタは生まれつき楽な姿勢で良いわね!

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春の陽だまりのような

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●フランク・ストークス『ザ・コンプリート・レコーディングス』<Pヴァイン>(11)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/53CS120719005

...

戦前のブルースマンの中でも旧い世代の人である。メンフィスを拠点に、メディシン・ショウの一座で演奏したりしていた。

本作には、彼の全録音42曲が収められている。スタイルは、相棒のギタリスト、ダン・セインと二人連れのもの、ソロ、ヴァイオリンのウィル・バッツとの録音等である。

Disc1が@シカゴで<パラマウント>(27+29)、Disc2が@メンフィスで<ヴィクター>(28+29)、両方の微妙な違いは小出斉さんのライナーに詳しい。

あくまで淡々と展開するギターのフレイズ、相方ミュージシャンとの心地好い絡み。時に激しいノイズを越えて聴こえてくる、重厚な声。歌唱も演奏も決して激する事もなく、物足りない印象も持たない。

音楽の他に鍛冶屋という本業を持ち、レコードを出さなくなってからも50年代初頭まで音楽活動は続けていた由。控えめでも、好きな音楽で自分の実力を発揮し、一生を捧げた、記憶に残すべきブルース・マンである。

春の陽だまりのようなと書けば、ディープさに欠けると思われそうだが、音楽交差点都市メンフィスらしく、ブルース、フォーク、エンターテインメント、様々な要素が無理なく同居し、結実している。歌唱も演奏も腰が座っているのだ。少し高いキーになると、ちょっと、スリーピー・ジョン・エスティスみたいな声になるのも何だか微笑ましい。

♪"Chicken You Can Roost Behind the Moon"

https://www.youtube.com/watch?v=zUpJ3ljFIho

♪"Bedtime Blues"

https://www.youtube.com/watch?v=Pwp9WvFGkzQ

♪"Old Sometime Blues"

https://www.youtube.com/watch?v=nml87s9_oyA

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憂鬱の効用

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ほんと、そうだと思うね。楽な気持ちでやってる仕事は「作業」なんだろう。憂鬱って決して重苦しいものじゃなく人間のパワーに必要なものだと思う。人生が辛く苦しいのも同様だ。

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ネット社会

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たくきよしみつさん著・講談社現代新書の『デジタル・ワビサビのすすめ 「大人の文化」を取り戻せ』を立ち読み。

http://takuki.com/wabisabi.html

数年前に、連続的に発生した、自分のバイト先等で商品の入った冷蔵ケースに寝転がり、ネットで発信するという事案。ネットで流せば大問題になると解るはずなのに何故やったのかという素朴な疑問は誰しも感じたはず。
...
本書に「解答」があった。以下、文章どおりではないが・・・。

インターネットが普及する以前の世代は、ネットを新しいツールとして経験した為、世界に向けた公共性のあるものだという事は、概略として頭にある。ところが最初から身近にネット社会がある世代は、仲間内のツールとして大いに活用している。それで逆に、公共性の高さに気がつかないのだという説明。

じゃあ、事件が騒がれ始めて追随するヤツはどうなのだとも思うが、ネット社会に関する基本的な認識の違いは、確かに本書で述べられている通りなんだろうなぁ。

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2014年4月の音楽メーター

4月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:8枚
聴いた時間:80分

RememberRemember
2014.4.2. タワーレコード福岡店にて購入。
80年代特有のズンドコ・サウンドも、彼らのようなテンポで展開されると、腰に直接伝わってくる。それもさることながら、やはり彼らの第一の魅力は歌ぢからかと。
聴いた日:04月28日 アーティスト:Tease
Love You to TearsLove You to Tears
2014.4.2. ブックオフノース天神にて購入。
オージェイズやアイズレー・ブラザーズやチャーリー・ウィルソンに共通するのは、新しいサウンドに無理なく溶け込んでいること。というか、自分たちのスタイルに新しい音を溶け込ませているのだろう。後半の泣きのバラードに70年代、90年代の区別は無意味。
聴いた日:04月28日 アーティスト:O'Jays
Full Time Woman-the Lost Cotillion AlbumFull Time Woman-the Lost Cotillion Album
2014.4.2. タワーレコード福岡店にて購入。
ニューオーリンズのソウル・クイーンというのは確かなんだけど、どうかするとイメージを固定してしまう。本盤を聴くと、熱血サザンから甘いポップ調までこなしているのはサスガ。特に低い声のふくよかさは聴き惚れる。
聴いた日:04月27日 アーティスト:Irma Thomas
Always in the MoodAlways in the Mood
2014.4.2 ボーダーライン・レコーズ福岡店にて購入。
テンダーという言葉が似合うソウル歌手。人肌の温もり。とてもモダンなのにほのかな土臭さも感じる。
聴いた日:04月25日 アーティスト:Gerald Alston
ウォンテッド~ザ・フェイム・レコーディングスウォンテッド~ザ・フェイム・レコーディングス
2014.4.18 蔦屋書店熊本三年坂店にて購入。
オーティス・レディングに比される隠れた好シンガー。声の“突き抜け度”はビッグ・オーを凌ぐかも。ただ、周りが生かせなかったか、シングル化された作品とお蔵入り作品の間には、差が生じている。
聴いた日:04月24日 アーティスト:ジェイムズ・ゴヴァン
Good NewsGood News
2014.4.2 グルーヴィン福岡店にて購入。
ローラ・リーの母親、アーネスティン・ランドレスのハード・シャウトがリードする。が、もちろん、他メンバーは付け足しではない。氏名不詳のオルガニストもやたらグルーヴィーだ。
聴いた日:04月23日 アーティスト:Meditation Singers
I'm the One Who Loves You: Complete VoltI'm the One Who Loves You: Complete Volt
とにかく肉厚なヴォーカル!バラードでも強烈な圧力が迫り来る。全曲最高!という訳にはいかないが、かなりの完成度。買って損はありません。
2014.4.2 福岡ジュークレコーズにて購入。
聴いた日:04月18日 アーティスト:Darrell Banks
スティール・アウェイ(紙ジャケット仕様)スティール・アウェイ(紙ジャケット仕様)
2014.4.2 グルーヴィン福岡店にて購入。
私自身が、つくづくジャンプ・ブルース~リズム&ブルース~アーリー・ソウル期の音が気持ちにフィットすると再認識。それだけにも最近<エイス>からリリースされた編集盤を購入した方が正解でしょう。
聴いた日:04月07日 アーティスト:ジミー・ヒューズ

わたしの音楽メーター
音楽メーター

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