【創作】レスト・イン・ピース(2)
♪前回分
http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/story/index.html
...気持ちの悪い夢を見た・・・。
最初に組んだバンドの連中と演奏していた。ドラムはボウ。キース・ムーンがアイドルで、とにかく手数が多かった。でもそのおかげでパンクっぽい勢いがついてたな。ベースの次郎は合わせるのが大変そうで、よく喧嘩していた。でも、相性は最高だったな。絡み合った時のグルーヴは中々のものだった。俺も勉強になった。
ギターは・・・アイツ、名前何だっけ?すぐに辞めたんだよな。あ、星野だ。音楽のセンスはあったけど、ロックンロールのセンスが無かった。変な話だが、楽譜通り、あるいは聴いた曲通り、キッチリ弾き過ぎるんだ。味や臭いが薄いんだよな。あのバンドでは俺もギターをよく弾く格好になった。星野にしてみれば面白くなかったかもな。
夢の中では、星野のリフの揺れが抜群だった。俺もギターを手にしようとしたが手元にない。他のメンバーを見ると、3人固まって楽しそうに演奏している。俺の方を見もしない。星野が、過去最高の“間”で粋な音を響かせ始めた。
よし、それならハープだ。と思ったが、革ジャンの内ポケットは空。とにかく歌おうと、マイク・スタンドを引き寄せた時、突然吐き気がした。腹の中から何かが上がってくる。それがハープなのは夢だから分かっていた。俺は自分の両手を口の中に突っ込み、引っ張り出そうとした。ところが、逆に腹の中へ掃除機のように吸い込まれていった。両腕から腰、そして両脚・・・。
俺は、ブラック・ホールのような俺自身の身体に呑み込まれ、現在の、意識だけの姿になった。夢はそう語っていた。何の解決にもなりゃしないけどな。もっとも、何かが解決、あるいは好転するとも思えない。
夢を見たのはこんなになってから初めてだが、度々“眠って”は居た。きっとその内眠りから覚めなくなるに違いない。ただ、それだけ。納得はしてないが覚悟はしている。死んだも同然の人間が本当に死ぬだけの話だ。
「こんにちは、ジャックさん」
妄想の姫か。
「お見舞いの方がお見えです。こっちですよー」
「ジャック!」
「・・・リズ?」
罪な妄想だ。なんで、彼女が出てくるんだ。
(つづく)
| 固定リンク
「Story」カテゴリの記事
- 【創作】雑語矯正士の憂鬱(2023.01.14)
- 【創作】プレゼント(2022.01.15)
- 【創作】死なせてあげない(2021.07.09)
- ことわざ商店街(2021.01.17)
- 【創作】ボクのじいちゃん(2020.08.08)
コメント