アメリカ
●藤原新也著『アメリカ』<集英社文庫>(95)※<情報センター出版局>(90)に写真数点プラス
藤原さんの文章の面白味は、観察と考察にある。まぁ、大抵の文章はそうなのだが、藤原さんの場合、この2つのポイントがよりヒシヒシと伝わってくる。
観察は、カメラマンらしく、シーンを切り取って展開されるパターンが多いような。その展開の仕方から面白い。普通なら見逃しそうなシーン、或いは違和感を感じても拘らないシーンにピントは合いズームアップされる。更にそこからの考察は、的確な批評や温もりのある感動を生む。クールだが血が通っている。
日本国内も海外諸国も、自らの足で踏査してきた藤原さん。本書では、大国アメリカを7ヶ月間に渡り、モーターホーム(キャンピングカーの規模のデカいヤツ?)で巡った。
大量消費社会の終点のようなアメリカ。陽気で明るいイメージの陰に潜む深い孤独。長い歴史を持たないが故、自然と共存出来ず、“文化的”コピペ状態となる街、街、街。マクドナルドの、アメリカならではの存在感。接客の意義の違い。国民的スターへの想い。ファンタジーへの執着・・・等々。
自分の経験を基盤に考察する事で、本書に登場した数々のシーンは息づき、読者に迫ってくる。世間的に見れば“変わり者”で片付けられる人物も、自分の中の一部分と重ね合わせたりも出来る。アメリカは確かに外国だが、人間は同じだ。その人間が、自然を無視し、人間の快楽原則に基づいて造り上げた大量消費社会は、アメリカで飽和状態に達したのではなく、ほぼ全世界へ向け、スタートしたのだ。
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