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2014年8月

アメリカ

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●藤原新也著『アメリカ』<集英社文庫>(95)※<情報センター出版局>(90)に写真数点プラス

藤原さんの文章の面白味は、観察と考察にある。まぁ、大抵の文章はそうなのだが、藤原さんの場合、この2つのポイントがよりヒシヒシと伝わってくる。

  観察は、カメラマンらしく、シーンを切り取って展開されるパターンが多いような。その展開の仕方から面白い。普通なら見逃しそうなシーン、或いは違和感を感じても拘らないシーンにピントは合いズームアップされる。更にそこからの考察は、的確な批評や温もりのある感動を生む。クールだが血が通っている。

  日本国内も海外諸国も、自らの足で踏査してきた藤原さん。本書では、大国アメリカを7ヶ月間に渡り、モーターホーム(キャンピングカーの規模のデカいヤツ?)で巡った。

  大量消費社会の終点のようなアメリカ。陽気で明るいイメージの陰に潜む深い孤独。長い歴史を持たないが故、自然と共存出来ず、“文化的”コピペ状態となる街、街、街。マクドナルドの、アメリカならではの存在感。接客の意義の違い。国民的スターへの想い。ファンタジーへの執着・・・等々。

  自分の経験を基盤に考察する事で、本書に登場した数々のシーンは息づき、読者に迫ってくる。世間的に見れば“変わり者”で片付けられる人物も、自分の中の一部分と重ね合わせたりも出来る。アメリカは確かに外国だが、人間は同じだ。その人間が、自然を無視し、人間の快楽原則に基づいて造り上げた大量消費社会は、アメリカで飽和状態に達したのではなく、ほぼ全世界へ向け、スタートしたのだ。

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ロックンロールの常識

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●チャック・ベリー『ブルース』<チェス/MCA>(03)

http://ongakumeter.com/m/B0000ALFWT

オリジナル録音は55年~65年。

「チャック・ベリーといえばロックンロール」は常識である。しかし、その常識を額面だけで判断すると、彼の音楽の真の魅力に気付きにくい。同時に「ロックンロール」自体の解釈も、軽快な曲調の所為もあり、薄っぺらなものに終わる。

という趣旨で編集した訳ではなかろうが、本盤のチャック・ベリーはひと際ディープだ。ブルースをプレイしているからというより、ロックンロールのルーツの一つにブルースが厳然と存在する事を作品で証明しているからではないだろうか。

「ウィー・ウィー・アワーズ」「ウォリード・ライフ・ブルース」「コンフェッシン・ザ・ブルース」等のカバー曲のレベルは想像以上に高かった。加えてオリジナルの「ハウ・ユーヴ・チェンジド」等も素晴らしい出来。有名な「ルート66」もこの流れで聴くと一段と味わい深い。

演奏陣では、ピアノのジョニー・ジョーンズと、ギターのマット・マーフィーが印象的。彼らあってのブルース世界だ。

曲のリストを見た時から、どんな風にやるのか楽しみだったのが、ラストの「セントルイス・ブルース」。W・C・ハンディがもし聴いたら、苦笑から哄笑へと表情が変わるだろう。

「チャック・ベリーといえばロックンロール」という常識は正しい。後は、ロックンロールの正しい常識を感じ取る事だ。本盤はサブ教科書として最適である。

♪"How You've Changed"
https://www.youtube.com/watch?v=BzPeM3TEjsQ

♪"Confessin' the Blues"
https://www.youtube.com/watch?v=CDvOyDgEXfQ

♪"St. Louis Blues"
https://www.youtube.com/watch?v=SWmVeNSGTas

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メアリー流ブルースとゴスペルも

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●メアリー・J・ブライジ『シンク・ライク・ア・マン・トゥー』<エピック>(14)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/1006288466
...
メアリーの新作は映画のサントラ盤となった。ジャケットの表裏内部、何処にも彼女の写真がないのは淋しい限り。

  前作もクリスマス・アルバムだったので、『マイ・ライフ・パートⅡ』から考えると間が空いている印象は否めない。私の気持ちの間も完全には埋まっていない。あの力作と比べると、今作はメアリー基準ではフツーである。

キャッチーな1曲目はシャラマーのカバー。70年代ディスコ風のサウンドも匂わせ、ダンサブルだ。その後も、前半はお得意のリズム戦法が冴える。

♪ "A Night To Remember"
https://www.youtube.com/watch?v=hvopYAsIhCg

♪Shalamar "A Night To Remember"
https://www.youtube.com/watch?v=guB_jQkCzCo

「アイ・ウォント・ユー」が山場だ。メアリー流ブルースとでも名付けたい渋みが滲み出ている。この曲とラストの「プロポーズ」が対になっているかのよう。狂おしいほどの情念に対し、満ち足りた幸福感が聴く者を浄化する。効果音のクラッピングも優しい。メアリー流ゴスペルとも言えるだろう。

♪ "I Want You"
https://www.youtube.com/watch?v=bNJ8VkdCgug

♪ "Propose"
https://www.youtube.com/watch?v=8e4PT5kRIw0

次作への期待が高まるばかりだ。
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ウォーキン・ブルース

●音楽を聴きながら車を走らせていると、道行く人の歩くテンポに曲が重なる時がある。ウォーキン・テンポとはよく言ったものだ。同じ歩くなら、音楽を感じながら歩いた方が、気分も弾むかもね。

●ハイヒールを履いている女性で、たまに、歩きにくそうにしている人がいる。ヨメさんは「無理しなきゃいいのに」と呆れるが、何だか若い女性の“意地”みたいなものを感じないでもない。

●昔、アングラ系の演劇をやっておられる方の話を聞く機会があった。よく街角に立ち、人間観察をされるとか。歩く姿勢にも随分個性があるらしい。右や左に傾いている人、下を俯いたままの人、肩をいからせて歩く人、マリリン・モンローの三倍ぐらいお尻を振って歩く人・・・クセを強調して真似る事が演技のレッスンになるのだろうか。もっとも、それ以前に、その観察を楽しんでおられるんだと思う。

●話は、その方の生き方に。身体を前につんのめらせたまま、真っ直ぐ歩くのが理想との事。しんどい姿勢だが倒れずに、歩むべき道を前進する。考えてみたら、そうやっている人の方が多いんじゃないだろうか。少なくとも、胸を張ってにこやかに歩いている人物より共感が持てる。但し、どちらの例も逆説的に行っていたら、また別の話。わざとらしく苦しそうにしたり、悲しみを我慢して胸を張ったりとか・・・素直じゃないのもまた人間らしいけど。

♪Bonnie Raitt "Walkin' Blues"

https://www.youtube.com/watch?v=CifHf4ktv8A

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ニュー・フチ子

髪の毛を切ったのはアナタのせいじゃないわ・・・・・・作者のきまぐれよ、たぶん。

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スタンディング・イン・ザ・レイン

●局地的な豪雨は地球温暖化の所為だとか。自然の方で勝手におかしくなっている訳ではない。「異常気象」という言葉の「異常」の原因は何なのかは明確に意識しておくべきだ。

●雨のなか車で走っていると、突然、雨どころか路面自体も乾いている箇所に入ったりする。その極端さが昔より激しい気がする。「局地」の範囲が狭まったかのようなのだ。考えてみると、私ら世代が小学生の頃と、現代の小学生では「雨」に対する感じ方も違うのではないだろうか。天気の極端な変化は、デジタルでゲーム的な感覚に繋がりそうだ。願わくば、大雨の被害に苦しんでいる人達をも、ヴァーチャルに捉えないでほしい。

●先日は外の仕事で、レインコートを着てしばし雨に打たれた。ルーティンワークから外れるのは好きな方なので、却ってストレスを感じない。だが何か微妙に違う。大学時代、ラグビーをやっていて、雨中の試合も多々有った。大抵は土のグラウンド。悲惨な事になるが、案外プレイしている方は気持ちの好いものだ。敵味方関係なく、妙に連帯感も生まれる。あの頃の雨に比べ、現代の雨は随分汚れているんだろうなとふと思ったのだ。すると、雨脚が激しくなった。大きくなった雨水の粒を顔に受けていると、汚いなんて気持ちは消え去った。新鮮な水の勢いを感じた。気分が高揚し、かつての泥んこラグビーの、屈折した爽快感が呼び覚まされた。

♪Ann Peebles "I Can't Stand The Rain"

https://www.youtube.com/watch?v=RfivzUF9dp4

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哲学の道

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●池田晶子・陸田真志(むつだしんじ)著『死と生きる~獄中哲学対話』<新潮社>(99)

http://www.shinchosha.co.jp/book/400104/
...
陸田氏は殺人犯だ。しかも自分勝手な理由で引き起こしている。拘置中、哲学書等を読み耽り、さまざまな事を考えた。考え詰めた。生と死、イデア(真実在)、幸福、そして、人を殺した自分は今後どうすべきか・・・形而上的結論として「善く生きる」事を決断する。

  池田晶子さんのコラムにも啓発され、新潮社経由で手紙を出した所から交流が始まった。双方の書簡で本書は成り立っている。

  陸田氏は、哲学に関しては素人なだけに、思考の道筋が読み取りやすい。時には試行錯誤し、池田さんから厳しい指摘を受ける局面もある。但し、アドバイスを受け入れる部分も、あくまで自分の意思を貫こうとする部分もある。この辺りが一人の考えを納めた書物や、哲学問答とは違う、生々しい思考過程だ。一読して筋が通っているようでも、池田さんの指摘を読むと誤った部分や不足した部分が納得いく。

  具体的なやり取りを書くとネタばらしになるので割愛。一つだけ書いておく。「殺人犯」や「死刑囚」という陸田氏の立場が、彼が思考する上で重要なファクターであるべき・・・普遍的真理に到達する為に必要なのは「自分ならではの立ち位置」なのだ。つまり、誰でも、真摯に内省する事で哲学の道が開けるんだなあとの感慨を改めて持った。

  池田さんの著作は何冊か読んだが、本書のようなパターンは初めて。脇道や迷い道を含め、思考の道筋が見える稀有な一冊。

♪James Brown "Think"

https://www.youtube.com/watch?v=rUxBvojq5wE
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2014年7月の読書メーター

2014年7月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:302ページ
ナイス数:36ナイス

ブルース&ソウル・レコーズ 2014年 08月号 [雑誌]ブルース&ソウル・レコーズ 2014年 08月号 [雑誌]感想
映画『マッスル・ショールズ』関連の特集は複雑なミュージシャン事情を丁寧にまとめてある。アルバム・ガイドもグループ別に分けてあり面白い。連載物も魅力的。中河伸俊さんや日暮泰文さんは一人のミュージシャンの人間性に深く切り込む。妹尾みえさんの嘗ての日本ブルース状況の話も引き込まれる。好きこそものの何とやら。売上げや流行物への目線より、ファンジン的な視点を専門誌は失うな!
読了日:7月30日 著者:
十二人の手紙 (中公文庫)十二人の手紙 (中公文庫)感想
手紙や公的文書(各種届け出書類とか)をツールに紡ぎ上げた作品集。通常のストーリー展開と違う点(の一つ)は、手紙を書いている人物の“主観”しか読み得ない事。そこに悪意があっても精神的に破綻を来していても判別つけ難い。従って、それが判った時のカタストロフィーが、通常の小説とは違う味わいとなる。
読了日:7月4日 著者:井上ひさし

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2014年7月の音楽メーター

7月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:8枚
聴いた時間:81分

Think Like a Man Too - O.S.T.Think Like a Man Too - O.S.T.
2014.7.26 蔦屋書店嘉島店にて購入。映画のサントラなので、本人の写真が全くないのが違和感バリバリ。オールドな感触を失わずに毎回クリエイティブな世界を見せてくれる彼女だが、映画の縛りのせいか、いつも程ではない。とは言え、相変わらず丁寧かつテンポ良く創ってある。「アイ・ウォント・ユー」でのメアリー流ブルースにクラッ。
聴いた日:07月30日 アーティスト:Mary J Blige
BluesBlues
2014.7.26 蔦屋書店嘉島店にて購入。ブルース曲を集めたもの。この流れで「ルート66」とか聴くと一段と味わい深い。ジョニー・ジョーンズのブルース・ピアノもイイ!マット・マーフィーも聴かせる。チャックのスライドも楽しめる。ディープで粋なロックンロール・ブルースだ。映画『真夏の夜のジャズ』での彼のプレイを思い出した。
聴いた日:07月28日 アーティスト:Chuck Berry
Deja VuDeja Vu
2014.7.5 蔦屋書店植木店にてレンタル。
彼らの一枚のアルバムに向かうのは初めて。勝手にアコースティックなイメージを持っていたが、意外とロックぽかった。声を揃えた部分で感じる“厚み”がいいな。
聴いた日:07月09日 アーティスト:Crosby Stills Nash & Young
スタイリスティックス登場スタイリスティックス登場
2014.7.5 蔦屋書店植木店にてレンタル。
。「ユー・アー・エヴリシング」とか、さんざん聴いて、カバーやサンプリングも多数ある曲なのだが、やはり新鮮に聴こえる不思議。充実のデビュー盤。
聴いた日:07月08日 アーティスト:ザ・スタイリスティックス
A NIGHT TO REMEMBER + 5A NIGHT TO REMEMBER + 5
2014.7.5 蔦屋書店植木店にてレンタル。
一度音楽界を離れたり、決して順調ではなかった歌手人生。ノーマン・ハリスらの友情有りきで制作された一枚。顛末を知って聴くと、名盤を云々する前に血の通ったアルバムという感慨を持つ。勿論、実力は十分。決め所でのロング・ロング・ファルセット等は、思わず総毛立つ。
聴いた日:07月07日 アーティスト:EDDIE HOLMAN
Comin' on StrongComin' on Strong
愁いを帯びたザラついた声でガンガン迫ってくる、ジャンピン・ソウルのマエストロ。今の時代、こういう熱い曲・歌い手がほしい。
聴いた日:07月04日 アーティスト:Don Bryant
No DoubtNo Doubt
7月2日に聴いたのは偶然。声もキュートでコーラス・ワークも整然としている。だが、強くは惹き付けられない。アルバム全体類似した曲が多いのも一因では。ニュー・エディションの、というよりベル・ビヴ・デヴォーのマイケル・ビヴンスが首謀。
聴いた日:07月02日 アーティスト:702
Still Caught UpStill Caught Up
愛すべき大姐御は、「組曲志向」や「物語志向」が強いような。アルバム内を、グルーヴィーにリンクする曲の流れの中で、悲喜こもごもの人間模様が展開されているようだ。英語に明るくない自分が悔しい。
聴いた日:07月02日 アーティスト:Millie Jackson

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