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変化論的進化論

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●椎名誠著『風景は記憶の順にできていく』<集英社新書>(13)

『小説すばる』連載時は『風景進化論』。カチッとしたタイトルだ。本書の場合、やや浪漫めいているか。どちらにしろ、椎名さんがこれまで関わってきた場所を訪ね、風景がどのように変わったのか、或いは変わっていないのか、もしくは廃れたのかを考察し、感慨と共に著されている。

旧タイトルの「進化」とは、発展したという意味合いではないようだ。「変化」に近い。ところが、「変化論」に、進行する時間が加わるので「進化論」ではないだろうか。要するに、ダーウィンの進化論的「進化論」ではないのだ。人生それ自体も、「自分の時間」上の変化論的進化論が成り立つのではなかろうか。だからこそ、記憶の順番に風景が存在するのだ。

理屈はともかく、椎名さんは今回の探訪も含め、自らの「記憶」を並べ、風景を通して、人々の生活や社会の変化を感じ取る作業をされたのだと思う。誰もが懐かしい風景には感慨を覚える。本書を読むと、懐旧の情の奥にある無意識の部分を優しく刺激される。

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