レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.6
[12枚目]●V.A.『ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム/モダン・ゴスペル・ジュウェリー』<ジュウェル/Pヴァイン>(89)
http://www.fanfan1.com/products/detail/719959
<ジュウェル>作品を音源とした70年代ゴスペル集。80年に2枚組LPでリリースされた時より、収録時間の関係で1曲少ない。編者は「サムズ・レコード・ショップ」の店主・佐藤修さんだ。
ラインナップを見て、先ずは、ロスコー・ロビンソンやクラレンス・ファウンテンに胸がときめく。もちろんそれ以外の組も、決して聴き劣りするものではない。
先ずは、ヴァイオリネアーズ(4曲)。バリトンとファルセット(或いはハイ・テナー)のスムーズな兼ね合いや、的確なシャウトは、ゴスペルの基本型を教えてくれているようだ。
ビル・モス&ザ・セレスシャルズ(2曲)。ふくよかなリードは、余裕と温かみを感じる。タイトな伴奏陣にも注目。「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ドゥ・ロング」などは、リー・ドーシーを思わせるような乗りだ。因みに、最近の<マラコ>リイシュー・シリーズで一枚出ている。その紹介文で知ったのだが、現代のゴスペル・シンガー、J・モスの親父さんだそうだ。
Can You Use Me (Just As I Am) - Bill Moss & the Celestials
https://www.youtube.com/watch?v=2J-RG9o_9cA
ブルックリン・オールスターズ(4曲)クラレンス・カーターばりの、低音で張りのある声が印象的。もう一人のテナー系リード・シンガーに比べ、こちらは説教師風にも聴こえる。コーラスの雰囲気が昔風で、このグループのサウンドが、本盤の中では最も保守的かも知れない。
The Brooklyn Allstars - Serving The Lord
https://www.youtube.com/watch?v=ZyYZkd9IKLs
アルバーティナ・ウォーカー&ザ・キャラバンズ(1曲)。凄い面子が行き来した名門中の名門。ここではアップ曲で、至福の時を創り上げる。流麗なギターも入ったりして、全体に古臭くない。長生きの秘訣か。
アーネスト・フランクリン(1曲)は男声と女声の掛け合いが印象的。
ソウル・スターラーズ(4曲)も、多くのスターを輩出した名門だ。ここでは、豪快バリトンのJ・J・ファーレイを2曲に、マーティン・ジェイコックスのしなやかなテナー2曲と、好配置。ゴスペル・シンガーには「雷様」が無数にいる。ファーレイのシャウトも凄い。その雷撃度は、本アルバム中最高ボルトだ。マーティンが地味に聴こえるが、こちらも中々の実力者。良い意味でクセがある。後にスターラーズは二つに分裂するが、どちらも実績を残したそうだ。
ザ・ホプソン・ファミリー(1曲)。シスター・ロゼッタ・サープを思わせる、弦楽器の音の連なりに、一瞬色めく。実はマンドリン。ゴスペルでは珍しいが、親しみやすい音色である。家族グループなので、男女のリードは夫婦かと。その丁々発止が絶妙。これだと、夫婦で口喧嘩しても歌になってしまうんじゃなかろうか。娘だったら親子喧嘩ね。
ロスコー・ロビンソン(3曲)。優しくもあり、激しくもあり、安定感も情熱も最高クラス。ただただ聴き惚れるのみ。魂が鷲掴みにされる。
Roscoe Robinson / I'm a soldier for the lord
https://www.youtube.com/watch?v=OL7-Kv9VqVQ
Roscoe Robinson / Life is like a mountain railroad
https://www.youtube.com/watch?v=joFRoj5vIKo
クラレンス・ファウンテン(1曲)。ロスコーより声の総出力は控え目だが、コクのある伸びやかな歌い口からの炎熱シャウトは、何度聴いても痺れる。硬軟裏表緩急自在縦横無尽の名唱。本盤の中ではこの曲が一番好きだ。
メディテイション・シンガーズ(2曲)。ローラ・リーの母親等が結成し、ローラ自身もある時期まで参加していた。最初の曲が彼女のリードのようだ。この2曲はかなりソウルっぽい。
※ゴスペル独特の厳粛な雰囲気が、ソウルとの目立った違いかと。ゴスペル聴かず嫌いの人には、古臭かったり、渋過ぎたり感じるのかも。そんな人たちには入りやすいアルバムだと思う。70年代というソウル全盛時代を生き抜いたゴスペル作品たち。そこを味わった上で、是非、さらに時代を遡って、ヴィンテージ期のゴスペルを体験して欲しい。黒人音楽に興味があるなら、旧いブルースとゴスペルは必修科目だと思うが、そこまで言うと押し付けがましいか。いずれにしても、何か話題性がなければ、この手のアルバムが作られにくいというのは、やはり淋しい。常備してほしいタイプのアルバムだ。
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