レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.8の続編
●アレサ・フランクリン『レア&アンリリースド・レコーディングス』<アトランティック/ライノ>(07)
http://diskunion.net/portal/ct/detail/54C070906701
[ディスク1]
冒頭3曲はデモ録音。サポートはあるが、弾き語りに近い。アレサの「基本形」が見えてくる。細かい音処理がされていないせいか、ピアノの音がくすんで聴こえるのも味わいだ。「ドクター・フィールグッド」などは、古いピアノ・ブルースに聴こえる。 ジェリー・ウェクスラーはライナーの中で、アレサの「基本形」(こんな言葉は使ってないが)について述べている。伝統への深い理解と、ゴスペル、ブルース、ジャズの三つ揃いだと。簡潔明瞭。また、感傷性と感受性という2つの言葉を並べ、アレサは感受性のミュージシャンだと強調する。これも言い得て妙。歌唱表現が、ある意味発作的である。一気に高みに昇る感じ。テクニックより、鋭敏な感性こそが“アレサらしさ”の最たるものではなかろうか。
本盤は、67年~74年の作品。ディスク1が72年まで、ディスク2が72年をまたがりラストまでと、時代順に並べてある。従って、大まかには1が60年代ソウル、2が70年代ソウルを感じさせるものが多い。
⑤「ザ・レター」の女性コーラスなどは、リズム&ブルースの臭いもする。⑥「ソー・スーン」のホーン・セクションの切れ具合や曲のドライヴ感が60年代満開だ。 ⑦「ミスター・ビッグ」⑪「ユア・テイキング・アップ・アナザー・マンズ・プレイス」はサザン・ソウル=ブルースと言ったところ。⑧「トーク・トゥ・ミー、トーク・トゥ・ミー」はジャズ調、⑨「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」はラテン調と愉しませてくれる。
⑩ジョニー・エイスの名曲「プレッジング・マイ・ラブ/ザ・クロック」は淡々とした歌い口が、徐々に熱を帯びてくる様が美しい。
圧巻は⑭「マイ・ウェイ」。シナトラ版は、一生懸命生きてきた人生をゆったりと振り返るようなイメージだが、アレサのはハードだ。苦難の道に必死で立ち向かうような迫力を感じる。シナトラの「マイ・ウェイ」は何度でも繰り返し聴けるが、アレサのはダメだ。強烈過ぎて、涙腺の緩みと胸の鼓動を抑える時間が必要である。
⑮「マイ・カップ・ランネス・オーバー」からタッチが変わる。ただ、アレサの熱量は変わらない。72年『ヤング・ギフテッド・アンドブラック』からだ。⑯マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「ユアー・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」はゴスペルぽくもあり、モダンな演奏陣も光る。この感覚は、次の曲⑱「リーン・オン・ミー」で更に強大となる。ヴァン・マッコイの作品。
どうも要領良くまとめ切れず、話が長くなったのでディスク2はまた別の機会に。ディスク2のキーワードは「ファンキー」と「ゴスペル」である。
Dr Feelgood (demo version)
https://www.youtube.com/watch?v=qohH7kpnbIE
You're Taking Up Another Man's Place
https://www.youtube.com/watch?v=FXVIFZVAaJM
My Way
https://www.youtube.com/watch?v=pOGfwdGRFLo
My Cup Runneth Over
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