« 2016年1月 | トップページ | 2016年3月 »

2016年2月

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.27

Xatw00124443

[35枚目]●エタ・ジェイムス『ザ・ドリーマー』<ヴァーヴ>(11)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/XATW-00124443

  私にとって、エタ・ジェイムスは、黒人音楽の魅力に気付かせてくれた恩人の一人だ。ずっと活動を追いかけていた訳ではないが、名前を聞くと、離れている友人の近況に触れるような感じだった。そんな私にとっては思い入れが先行する一枚。同じ気持ちの方も多いだろう。病魔と闘いながらリリースし、結局遺作となってしまった。ジャケット写真のうつむき顔も生気が足りないように見え、妙に胸が痛む。

全体的にゆったり目の曲を歌っているのも、体調と結びつけて考えてしまう。実際所々で、彼女の持ち味であるパワーが十分に発揮出来ていない。それでも静かな感動が伝わるのは、当方の思い入ればかりではなく、彼女の、歌に対する思い入れの深さによるものだろう。

①エディー・フロイド曲「グルーヴ・ミー」は、オリジナルに比べズシンと重たい。第一声の「フゥッ」が呻きにも似て軽く衝撃を受ける。

②⑦のオーティス・レディング曲も、バラード系を選んでいる。⑦は最初の方声嗄れが目立つ。

タイトル曲で、ボビー・ブランド曲③やラストのリトル・ミルトン曲のような“ブルーズン・ソウル”はしっくり来る。

ロック調④⑥やアップ・テンポのブルース⑨は、バンド・サウンドの中のヴォーカリストを意識した感じも。演奏陣がよく守り立てている。

名曲「ミスティー・ブルー」⑤。実にしっとりと歌い上げている。しかし、今まで聴いた「ミスティー・ブルー」の中でもっとも悲しくやるせなくなる。

ジャケット写真は悲壮感が漂うが、インナーでは笑顔を見せている。満ち足りた表情のようで、少し淋しげにも見える。

2016022702250000

Groove Me

https://www.youtube.com/watch?v=IDUwa6dixII

Dreamer

https://www.youtube.com/watch?v=XDGslRy2lPI

Misty Blue

https://www.youtube.com/watch?v=aplWMBC5HRo

Too Tired

https://www.youtube.com/watch?v=QEjaCVBVetM

Let Me Down Easy

https://www.youtube.com/watch?v=puX8n67s5xg

| | コメント (0) | トラックバック (0)

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.26

2016021009110000

[34枚目]●V.A.『テキサス・ブルース』<アーフーリー/Pヴァイン>(89)

http://artist.cdjournal.com/d/-/1120007860

※鈴木啓志さんの解説を、かなり参考にさせて頂きました。

<アーフーリー>発の<ゴールド・スター>録音を集めたVol.1と、“ブルース再発見”期の作品を集めたVol.2を<Pヴァイン>が再編集した物。テキサスとは言え、ヒューストン・ジャンプ系ではなく、「カントリー・ブルース」に焦点を当てたもの。ライトニン・ホプキンス、リル・サン・ジャクソン、マンス・リプスカム等を収録。ライトニンは<ゴールド・スター>への初録音作も。まだ、声にドスが効いてないのが何とも。

①②リル・サン・ジャクソンは、完成度の高さは本盤随一とも言えそう。哀感が滲むギターに、落ち着いたヴォーカル。耳に馴染みやすいが深みもある。 ③リー・ハンターはピアニストで、アイヴォリー・ジョー・ハンターの兄弟。時代を遡ったようなピアノがお見事。スクラッチ・ノイズさえ、曲の彩りに思える。

④⑧⑫⑭と登場のL.C.ウィリアムスは、“ライトニン・ジュニア”と名乗るほどライトニンに似ている。とは言え、もう一歩届いていない感じが“ジュニア”か。しかし、④以外はそんなにライトニンを感じない。本盤では、ライトニン→L.C.の配列が3回ある。彼はドラマーで、ギターはライトニンが弾いている模様(全てかどうかは?)。普段のライトニンより手数が多い気がしないでもない。

⑤⑥はピアノのリロイ・アーヴィン。テキサスはピアノ・ブルースでも有名だ。この人は豊かな声も魅力だ。 ⑦でライトニン登場。<ゴールド・スター>最後の一枚だそうだ。 ⑨⑩は、ライトニンの“相棒”サンダー・スミス(ピアノ)。丁寧さより乗りが目立つ。因みにライトニンはサンダーに合わせて付けた名前だそう。⑪がライトニン最初の録音。ギター技がポイント。⑫のL.C.はライトニンから離れる。⑬⑭もライトニン→L.C.。⑭はピアノでエルモア・ニクソン参加。

⑮かすれ声のマニー・ニコルス。⑯マンス・リプスカムは、やや“フォーク・ブルース”調。私はこの人、風貌も含め好き。

⑰は、ギターを膝の上に乗せスライドするブラック・エイス。マンスやこの人、続く⑱ラトルスネイク・クーパーのテンポの取り方やフレーズの跳ね具合、和みます。

⑲マーシー・ディー(ピアノ)。少し引き摺るような歌い方も味がある。ピアノのフレーズも引き摺り気味 ⑳はハープのビリー・バイザー。<Pヴァイン>から発売されたライトニンのビデオに登場しているとの事。 21時々ジャズっぽく感じるピアニスト、アレックス・ムーア。22スモーキー・ホッグ登場。忙しなくも聴こえるピアノやズンズン来るベースをバックにルーラル感たっぷりだ。 23ピアノのロバート・ショウ。24いつもながらのライトニン。リル・サン・ジャクソンの2曲に対抗するならこれだろう。そしてラストは再び登場のマーシー・ディー。ギターにK.C.ダグラス。リズム&ブルース~ロックンロールも感じる。“カントリー・ブルース”ではない。“テキサス・カントリーブルース”の重要アイコンであるライトニンの典型的な曲の後に配置されるのが相応しいのかも知れない。

Lil Son Jackson- Gamblin Blues

https://www.youtube.com/watch?v=kxfaTJkrFV0

Lee Hunter Back To Santa Fe

https://www.youtube.com/watch?v=F7PTmDNYC2A

LC. Williams, Strike blues

https://www.youtube.com/watch?v=mTdiuhTr3aA

Lightnin' Hopkins- hurricanes carla esther

https://www.youtube.com/watch?v=JwaF6fznZAY

2016021009120000

| | コメント (0) | トラックバック (0)

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.25

53cs130508009

[33枚目]●バディ・ガイ『スリッピン・イン』<シルヴァートーン>(94)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/53CS130508009

...

今なお現役で活躍するバディ・ガイ。“復活”のキッカケとも言える<シルヴァートーン>での3作目である。バックはダブル・トラブルが務めている。

①から落ち着いたスタート。ギターも、速弾きはするが抑制が効いている。コンビニみたいなタイトルの③はスロー。ピアノのソロ回しも良い味。④はジミー・リード曲。リズム&ブルース調から徐々にバディ・ガイ・ワールドへ。「フーチー・クーチー・マン」的なロウエル・フルソン曲⑤。ギターが鳴り出すと、紛れもなくバディ。ケレン味のない弾きまくり具合は実に爽快。オリジナルの⑥もオールド・シカゴ・ブルースのニオイがする。アルバム・タイトルを織り込んだ⑦はデニス・ラセール曲。ライブのコール&レスポンスみたいに、男どもの声をフィーチャー。⑨はロックっぽい。ドラムが良いね。⑩も彼らしいストレートなブルース。終盤のブルブル震えるようなソロは特に良いわぁ。最後の⑪はゆったりと展開。ベース音を効かせてスイング感が出ている。

しかし、どんな曲でもギター・ソロはぶれず。それをワンパターンと見るか、伝家の宝刀と見るか・・・ブルース・ファンにとっては愚問である。

I Smell Trouble

https://www.youtube.com/watch?v=lpGJQWdInfg

Shame, Shame, Shame

https://www.youtube.com/watch?v=D-XlpklFO-o

Love Her With A Feeling

https://www.youtube.com/watch?v=e4wN1FEevh4

Cities need help

https://www.youtube.com/watch?v=1zrfjiKiqVQ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

人間の土地

51v2136gp5l

●サン=テグジュペリ著・堀口大學訳『人間の土地』<新潮文庫>(39/55)

詩的な文章(訳者は適任)で綴られている一篇。飛行機乗り(郵便物の輸送)が主人公である。遭難状態から奇跡的な生還を遂げた僚友や、自らの、死線をさまよった話などが軸となる。小さな存在としての人間や、それでも逞しく生きる本能を見つめた作品だと思う。

  作者自身も同業の経験があり、話に出てくるような苦難や歓びを体験し、最後は戦時中の飛行で消息を絶った人生である。

  自然の影響を受けやすい当時の飛行機を操縦する事は、常に死を意識する侍のような心境ではなかったろうか。主人公も、どこかニヒルな所がある。死にたくないと踏ん張る一方で、自分自身の行く末を冷静に見つめている部分がある。それが為に、人間て素晴らしい!と声高にならず(美しい部分ばかり強調せず)、誠実にリアルに、生と死について思いに浸れた。

  巻末に宮崎駿さんの一文。飛行機乗りの心理や、技術者達のロマンばかりでなく、人間の愚かさや醜さも書かれている。まるで、サン=テグジュペリの想いを端的に述べられているかのようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年1月の音楽メーター

聴いた音楽の枚数:12枚

Odr6109

■ザ・ワイルド・サウンド・オブ・ニューオーリンズ
アラン・トゥーサンの原点。高速連弾雨嵐。それでも“余裕”を感じるのは、ニューオーリンズ独特のビートが根底にあるからだろうか。よく晴れた日のカーニヴァルのさんざめきの中で聴いても似合いそうだ。ボーナス部分の翌年の録音は、ニューオーリンズR&Bとジャズの関係が何とはなしに見えてくる。...
聴いた日:01月28日 アーティスト:アラン・トゥーサン
http://ongakumeter.com/m/B012WUJO2U

41qjit2sv8l__sx230_

■天才ローランド・カークの復活
脳卒中からの復帰後の作品だが、録音自体は倒れる前。複数の管楽器を一度に吹いたりホイッスルを鳴らしたりといった演奏の面白味はなりをひそめているが、演奏面より曲構成の素晴らしさに惹き付けられた。最初から最後まで色褪せない。彼独特のもの悲しさやユーモアはもちろん健在だ。
聴いた日:01月27日 アーティスト:ローランド・カーク(ts、hca、stritchaphone、arr、fl)
http://ongakumeter.com/m/B009ZYAFC0

■Down to Earth
若い頃はマックスウェル・ストリートで腕を磨く。ジミー・リードの影響も。初のアルバムは、ジム・オニールを介して日本の<ミナ>レコードから。当時話題を呼んだ記憶あり。O.V.ライトのバックで弾いていたギター2名が参加。乾いたハープによく絡む。粘っこい歌い回しが気になる人はいるかも。
聴いた日:01月26日 アーティスト:Willie Cobbs
http://ongakumeter.com/m/B000000DOT

2016020209030000

■2016.1.23

感動を超え衝撃。轟唱に次ぐ轟唱。ナチュラルなコール&レスポンス。私は宗教は信仰していないが音楽は信仰している。この気持ち解る人なら必ず伝わる。 http://www.45worlds.com/cdalbum/cd/pcd2171

■2016.1.19 
コンテンポラリー・ディープ・ソウルかと思いきや、Pファンク+リック・ジェイムス風やオーティスの物まね調も。曲作りの腕も確か。 http://diskunion.net/black/ct/detail/54CS120711010

■神の糧
メンバー間の確執が激しかったと知って聴くと、どうも落ち着かない。試聴時は良い感じだなぁと思ったが・・・。ただ、統一感が無いようには思えず、結局メンバー内ライバルは功を奏したのでは?
聴いた日:01月18日 アーティスト:ブレッド
http://ongakumeter.com/m/B00P1J6BW6

■Feel the Love
豊かな声量から強烈なシャウトを聴かせるが、過剰にならず。バラード攻めの本盤で、ほとんどがカバー曲。AOR系歌手が似合いそうな曲からゴスペルライクな物まであるが、全て引っくるめて、ドロシー・ムーアの世界として成立している。録音はフェイム・スタジオ中心。ジミー・ジョンソン、デイヴィッド・フッド、ロジャー・ホーキンスらの演奏は、解説で鈴木啓志さんが延べられているように、時折、オールド南部ソウルの趣を見せる。
聴いた日:01月15日 アーティスト:Dorothy Moore
http://ongakumeter.com/m/B000001L0S

■Fantasy
マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドに通じるファンキーなグルーヴ。デイヴィッド・T・ウォーカーやハーヴェイ・メイソンの存在も大きいだろうが、何より、キャロルの音楽センスの輝きが感じ取れる。冬の陽だまりのような歌声が、黒人音楽的下地に、独特のコントラストを見せる。
聴いた日:01月14日 アーティスト:Carole King
http://ongakumeter.com/m/B0012GN0MQ

■アット・ニューポート’58[+2](完全版)~真夏の夜のジャズ
キュートでディープ、オシャレでアーシー、多面的な魅力が集約する、これぞ不世出の歌手。ブルース・ファンとしてはベッシー・スミス作品が一層沁みる。ダイナ抜きの演奏も長々と有り。
聴いた日:01月09日 アーティスト:ダイナ・ワシントン
http://ongakumeter.com/m/B000UUOKA6

61gq151mbal__sx230_

■DARK WAS THE NIGHT
一度刺さったら死ぬまで抜けない、強烈な棘のような声。それは勿論、異物ではなく、感動の棘だ。ナチュラル・スライドと呼びたくなる細かく変化するギターが棘の縁をなぞらえる。自己の苦難にめげず、信仰の道を歩み続けた、心根の強さ、誠実さが彼の音楽に表れている。テクニックがどうのこうのとか、激烈な歌声とか言う前に、そこでしょう。
聴いた日:01月08日 アーティスト:ブラインド・ウィリー・ジョンソン
http://ongakumeter.com/m/B00002DGUN

■Still Trapped
馴染みの店を久しぶりに訪れたような、気恥ずかしさと安心感。落ち着かなかった腰も直ぐに根を張る。それにしても、ここのママさんは昔から少しも変わらないね。
聴いた日:01月07日 アーティスト:DENISE LASALLE
http://ongakumeter.com/m/B000001L0P

512zxnkpmrl__sx230_

■ライブ
腹の底から絞り出されるヴォーカルに、バディ・ガイ、ルーサー・アリソン系のビリビリ来るギター。そんな豪放さだけでなく、バンド内の音の融合が素晴らしい。スライド起用の緩い曲もあり。いやぁ、「ナイトライフ」は歴史に残る名演だね。
聴いた日:01月06日 アーティスト:ブレイク・ダウン
http://ongakumeter.com/m/B0014D6BNM

■More Blues on the Southside
声が「イケメン」なので、どんな顔だったかなと調べたら、やはりイケメンだった。マイティー・ジョー・ヤングやラファイエット・リークの助けを借りたサウンド自体も都会的である。サニーボーイⅡに教えを請うたハープは斬新ではないが、キレとコクがある。
聴いた日:01月04日 アーティスト:Billy Boy Arnold
http://ongakumeter.com/m/B000000XZ2

51aaxmbmdxl__sx230_

■We Can Make You Dance: The Zapp & Roger Anthology
ファンクはJBとPファンクを基準にしている。ザップ/ロジャーは彼らよりポップな印象を持って居たが、通年的にまとめて聴くと、肉体的ファンクを良くこなしているのが解る。その上で音の遊びが奔放に成されている。
聴いた日:01月01日 アーティスト:Zapp
http://ongakumeter.com/m/B00005UPFC

▼わたしの音楽メーター
http://ongakumeter.com/u/3231?invite_id=3231
▼音楽メーター
http://ongakumeter.com/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年1月 | トップページ | 2016年3月 »