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2016年5月

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.33

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[41枚目]●ジョン・リー・フッカー『ブギー・オウハイル』<クレイジー・キャット>(90)

http://www.allmusic.com/album/boogie-awhile-mw0000063016

48年~53年の録音。原レーベルは<JVB><ダンスランド><プライズ>。かつて<クレイジー・キャット>より2枚組LPとして発売されていたものをCD1枚に編集し直したもの。

デトロイトのヘイスティングス・ストリートにあるレコード店奥のスタジオで、ジョン・リー・フッカーはブルース史に名を刻み始めた。これだけ強烈な刻印を残すとは、さすがに当時思っていなかっただろう。自信のほどは不明だが、ブルースに対する情熱は、若きジョン・リーからひしひしと伝わってくる。ギターの音も、後年より溌剌と聴こえる気がする。ちょっと縺れ気味にもなるが勢いが勝っている。声の方も、豊かだが、余裕より若い熱気をかなり感じる。

因みに、レコード店の店主で、ジョン・リーのレコードをプロデュースした人物は、ジョー・フォン・バトル。彼の名前から<JVB>と名付けたのだろう。

各曲を大まかに見てみよう。

トラディショナル・テイストな①③⑭⑮(ピアノ入り)
ブギウギ・ピアノをギターで煽るような⑯

得意のブギー攻め②④⑤⑦(ディストーションが効いている)⑬⑰

⑲⑳はホーンも加わりジャンプ・ブルースの体裁。

独特の間を発揮するスロー曲⑥⑫⑱

ライトニンぽい感覚もある⑧⑪

⑨⑩は延々とリフ攻撃。

もちろん、上記のようにきれいに区分けされる訳ではなく各々の要素が交錯する曲も多々ある。

不動の地位を確立し、他ミュージシャンとのコラボも難なくこなし、晩年になっても意欲作を発表し続けたジョン・リー・フッカー。本盤を聴いていると、彼が過去の遺産と向き合い、独特の表現法を生み出していく、その過程が透けて見える。出来れば2枚組LPの方がお薦めだ。

※『BSR』誌の熱心な読者なら、日暮泰文さんのプロフィール・ページで、「JLフッカー、ダウン・ソー・ロングとうめく頃、東京に生まれる」と書かれているのをご記憶かと思う。その「ダウン・ソー・ロング」も本盤と同じセッションだ。但し2枚組LPの方だけに収録されている。まぁ少なくとも日暮さんの年齢はこれで判る・・・だからどうしたという話ですが。

⑧I Love to Boogie  

https://www.youtube.com/watch?v=7u3IdP5v9_U

⑨Highway Blues

https://www.youtube.com/watch?v=DDv32Axh-6U

⑮Must I Wait Til Your Man Is Gone

https://www.youtube.com/watch?v=X_-LmZWiVvw

⑯Cotton Pickin' Boogie

https://www.youtube.com/watch?v=x95_3g7atIs

⑲Boogie Rambler

https://www.youtube.com/watch?v=imDqh8KcekU

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ブラックミュージック10選・第3回

『週刊ドリームライブラリ』の「ブラックミュージック10選」第3回は「変わりゆく変わらぬもの」をキーワードにしました。黒人音楽の転換点は数々ありますが、ゴスペルからソウルへ向かう動きを、サム・クック「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を提示して述べてみました。

この企画、第1回から順番に書き始め、回ごとに編集長さんとやり取りして、固まっていきました。この辺りまできて編集方針に合わせるには「どこまで書くべきか」が見えてきました。二人の間で少し議論になったのは、ゴスペル=黒人霊歌ではないのかという点でした。確かに一般的にはそう表現されているものもありますが、ゴスペルを黒人霊歌と説明しても余計わかりにくいと私は思いました。個人的にはゴスペル以前のスピリチュアルズを霊歌と思ってまして、ゴスペルと別物と考えています。ただ、自分の考えを押し付ける場ではないので私も再考しました。それでも、今の時代「霊歌」という言葉を出さなくても「ゴスペル」という言葉自体市民権を得ていると思うのです。ウーピー・ゴールドバーグの映画とか一般的なカルチャーセンターの活動とかにも「ゴスペ...ル教室」はあります。但し、そこから連想されるゴスペルはクワイヤー形式のもので、カルテット・スタイルではないですね。結局、ソウル・スターラーズの動画を観て頂いた事でゴスペルからソウルが生まれたという流れが編集長さんにもご理解頂けました。やはり、最終的には曲を聴くのが解決方法ですかね。じゃあ、カルテット・スタイルを説明する必要はなかったかと考えましたが、これこそ「深入り」し過ぎと思い自重しました。

男性ソウルシンガーの祖がサムなら、女性は誰なんだという思いも浮かびました。アレサか、とも思いましたが、どうも違和感がありサムのみにソウル・シンガーの祖を代表させました。

本当は「変わりゆく変わらぬもの」の例としてブルースだったり、ファンクだったり、ヒップホップだったりの例も挙げるべきかとも考えましたが、比較的有名なJBとレイ・チャールズに触れるに止めました。

私がこれまでブログなどで書いてきた文章とは違う感覚、それを一番楽しんでいるのはもちろん私です。求められるものを簡潔にしかもある程度の読み応えもあるように書く、その目論見が達成できているかは不明ですが、やりがいのある企画でありました。

結局は黒人音楽自体の魅力が救ってくれているんじゃないかと思います。

http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg767.html

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ネット人情

読売新聞に連載されている「時代の証言者」、現在は八代亜紀さんの話。クラブ歌手時代の苦労から、歌が評判になりレコードを出したものの全く売れない上にマネージャーに持ち逃げされるという悲劇。そこから「全日本歌謡選手権」で頭角を現していく訳だが、ふと考えると、こういったタイプの番組がない現代では、もしかしたら、八代亜紀級の歌手が涙を飲んでいるのかなぁとも思う。

YouTubeやSNSで話題性を呼ぶのが今の世の中だろうが、苦労人がネットツールを利用するのも何だか違和感がある。「昭和」=「人情」というのは単純な図式だが、八代亜紀的苦労話や「全日本歌謡選手権」的番組の背景には「人情」が潜んでいる気がする。ネットツールにはない感覚だ。

他者との繋がりの希薄さ、親子間のスキンシップの喪失をネット社会とリンクさせて良いものか不明だが、人情の有る無しは自分中心に考えるか、相手の立場で考えるかの違いではないだろうか。そういう意味では「ネット人情」も確かに存在するはず。問題はツールではなく、その使い方。これまでの常識が通用しないバケモノが出現している反面、昭和とは違う人情が、いや人情の中身は一緒か、とにかく人情も消えてなくなりはしないだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/stream/?id=04313

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アメイジング・アレサ

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ソウルのアルバムと言えば、オーティス・レディングやアレサ・フランクリンしか持っていなかった頃。フィルモア・ウェストのライブに収録されている「明日に架ける橋」を聴いていて、ずいぶん崩して歌っているなぁと最初は思った。しかし何度も聴いていると、いやこの人は技巧的に崩しているのではなく、自然に歌っているのだと気付く。もちろん、曲のアレンジはあるだろうが、そういう技術的な云々を超えている。曲調や演奏がアレサの歌声の下に存在する。ソウルやブルースが音楽である前に感情の発露であるという事を思い知らされた。「感情をむき出しにする」と言えば、それこそオーティスのような歌い方を連想するが、アレサのように崇高なまでに美しい感情の剥きだし方もあるのだな。私は一挙に黒人音楽の最も大事な部分に触れた気がした。歌声一つでど素人にも感じさせる、女王という言葉では表しきれないアメイジングな存在だ。

Aretha Franklin - Bridge Over Troubled Water - 3/5/1971 - Fillmore West (Official)

https://www.youtube.com/watch?v=7IExZv-mgrw

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ブラックミュージック10選・第2回

http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg742.html

企画に関わらせて頂いた『ブラックミュージック10選』の第二弾です。今回分はルイ・ジョーダンを取り上げました。「エンターテインメント精神」「ライブ性の高さ」が伝わればという思いでした。

黒人音楽のライブ盤には名盤が多いと言われるのもよく聞く所です。アルバムでは落ち着いた感じの、ベイビーフェイスやアレクサンダー・オニールの、エネルギッシュなライブをテレビで観た記憶もあります。

ミンストレル・ショウやブルースのダンス・ミュージック的側面に触れる事も考えましたが、掘り下げ過ぎで伝わりにくいかと思い避けました。むしろ、新しい方のエンターテインメント表現としてビヨンセを取り上げてみました。

ルイ・ジョーダンにしたのは、黒人音楽史の重要人物でありながら、名前が売れていない悔しさがあった為です。少しでも伝われば良いですけどね。

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ブラックミュージック10選・第1回

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http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg553.html

 

お世話になってます文章投稿サイト『週刊ドリームライブラリ』さんから、ブラックミュージックについて、素人でも分かるように10曲ぐらい選んで書いてみないかとお話を頂きました。

まず、ブラックミュージックがジャンルではなく「概念」であるという立ち位置で、色々なアプローチを考えた結果、「特色」を10点上げて全ての時代に共通するんだよという部分を強調しようと一応の目安を立てました。2月終盤からほぼ2か月、震災の数日前までかかり校了を迎えました。

私がもし、自分ひとりでこの企画を立て、書き進めたらもっと時間がかかり、或いは途中で止めたかも知れません。集中力が途切れなかったのは、ひとえに編集長さんの的を得た質問や見事な校正のおかげです。

そもそも、私がブログを始めたキッカケは、ブラックミュージックの魅力を、知らない人に伝えようという面があったのですが、やはり関わって下さるのは元々黒人音楽の知識を持っているか、音楽ファンの方でした。編集長さんは、ジャズは聴かれるようですが、ブルースやソウルに関する知識は皆無に近い状況でした、しかし、それだけにこちらの表現が甘いと「わからない」と正直に言われます。すると、こちらも違う表現を考える事になり、私としても大変勉強になりました。黒人音楽ファンの方が読まれると、そっちの方にまで行く必要はないんじゃないのと思われる部分があると思います。ある意味、黒人音楽以外の部分に近寄っている書き方かと思います。

前段として、もう少し書きたい事もありますが一応ここで止めます。第1回に選んだのはデューク・エリントンの「ピーナッツ・ヴェンダー」です。昔、中村とうようさんが編集した『ブラックミュージックの歴史』というアルバムの最初の方に収録されていたのをご記憶の方も多いかと思います。正直そこからのパクリなのですが、私自身が黒人音楽を聴く角度が変わった一曲でもあるのです。この企画のスタートに相応しいか考えましたが、やはりここから始めて意表を突いてみたいと結論しました。

宜しければ、読んでみて下さい!

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タイム・イズ・オン・マイ・サイド

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http://merurido.jp/item.php?ky=ODR6149

※本文を書くにあたり、中村太志さんのライナーノーツを大いに参考にしています。

「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」は、元々はインストゥルメンタルだった。アーマ・トーマスの為に歌詞が作られた経緯があるそうだ。思い入れも十分あっただろう。本盤の中でもこの曲はテンションが高いように感じる。エタ・ジェイムばりの豪唱だ。ストーンズがカバーしたくなる気持ちも解らないではない。ただ、オリジナルが注目されず、アーマの方がカバーと誤解された事もあったとか。相当な心痛だったろう。やがて、自ら“封印”してしまう。結局は、ボニー・レイットのフォローもあり、アーマ・トーマス自身も大御所になった事で、封印は解かれはした。

Irma Thomas - Time Is On My Side

https://www.youtube.com/watch?v=LXPeAcGhRNY

Rolling Stones Time Is On My Side

https://www.youtube.com/watch?v=wbMWdIjArg0

本盤のボーナス・トラックは<ミニット>時代の録音で、アラン・トゥーサンが深く関わっている。当時、<ミニット>には女性シンガーが居らず、アーマのおかげで、書き溜めていた女性用の曲が日の目を見たと言う。アランの、情緒的な世界観に彩られた、ドリーミーな感覚を含んだ好曲揃いだ。 実は、この時代にもいわく付きの曲がある。オーティス・レディングが「ペイン・イン・マイ・ハート」と改題した「ルーラー・オブ・マイ・ハート」だ。曲としては同じだが、当初、作曲者がオーティスになっていた。これは抗議の結果、アラン・トゥーサン(ナオミ・ネヴィル名義)の曲である事が認められた。先に、ドリーミーという言葉を使ったが、特にこの曲はモヤッとした独特の雰囲気を感じる。それは、オーティスにも若干伝染している。そう言えば、ストーンズは「ペイン・イン・マイ・ハート」もカバーしていた。さすがに、ミック・ジャガーまでは伝染していないようだ。

Irma Thomas Ruler Of My Heart

https://www.youtube.com/watch?v=_g2ZAsTIefc

Otis Redding-Pain in My Heart

https://www.youtube.com/watch?v=158fwCG27zE

The Rolling Stones-Pain In My Heart

https://www.youtube.com/watch?v=djGHvcTf7rQ

黒人音楽愛好家に「ニューオーリンズを代表する女性歌手」と聞くと9割方アーマ・トーマスと答えるだろう。カバー曲の話ばかりではなく、実生活でも数々の苦難を乗り越えてきた人物だ。そして、ストーンズ同様、良い意味で、いまだに転がり続けている。

※作品レビューというより、カバー話に終始したが、オマケを一つ付け加えておくと、最後の曲が、妙にヴァンデラスの「ヒートウェイブ」に聴こえる。

Irma Thomas ~ Moments To Remember

https://www.youtube.com/watch?v=9PfIUM9QMW0

Martha Reeves & TheVandellas - Heat Wave

https://www.youtube.com/watch?v=5k0GDQrK2jo

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これから先

●ゴールデンウィークも、今のところ30日、3日、4日と仕事である。大変な思いをされているお客さんの多さに改めて惑う。久しぶりに通った道沿いにもお客さんが一件あるが、一階部分が完全に潰れており、何とも暗澹たる気分になる。今日昼寝をして少し身体は楽になったが、あまり連休気分にはならない。もちろん、私の気持ちどころではない人はまだたくさん居る。人生に無駄なものが一つもないのなら、これもいつかは糧になるのか。

●数日前に風呂場のお湯が出なくなった。他の蛇口は大丈夫だ。天日を利用して給湯する蛇口が別にあるので、天候が良ければお湯は出る。明日から雨予想なので、忙しい中水道工事屋さんに来てもらう。地震の影響で砂泥が水管を詰まらせていたらしい。応急処置で何とか回復したが、いずれは本体を交換しなければならない。この程度では被害とも呼べないな。しかし、水道屋さんも忙しい仕事だろう。

●馴染みのショッピングセンターへ行く。テナントによってはオープンできていない状況だ。駐車場も閉鎖している。屋内の空調が動かないのか大きな扇風機を各所で回している。妙に涼しい。

Someday We'll Be Together - Diana Ross & The Supremes

https://www.youtube.com/watch?v=ixEOMB6jyEE

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偉くない「私」が一番自由

音楽もそうだが、文章もスイスイと頭に入るタイプの書き手がいる。米原万理さん、佐藤優さんもその範疇だ。このお二人が「盟友」とは知らなかった。ロシア繋がりではあるだろうが、今回佐藤さんが米原さんのエッセイ等を編纂した文庫本の「まえがき」を読むと、真剣で温かくユーモラスな文章そのものの付き合いであったのが判る。

http://hon.bunshun.jp/articles/-/4728

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偉くない「私」が一番自由  米原万里 佐藤 優編  文春文庫

http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167905989

しかし、読書メーターの評判は今ひとつか。

http://bookmeter.com/b/4167905981

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ジーン・チャンドラー

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R&Bチャート1位曲を集めた『BSR』増刊号。ジーン・チャンドラー「デューク・オブ・アール」の稿で、小出斉さんが「チャンドラーはライブでもあの装束で歌っていたのか?」と書かれていた。YouTubeで観た記憶があったので再チェックしてみた。この曲だけかも知れませんが・・・。

https://www.youtube.com/watch?v=pkU6E1v4bhw

チャンドラーのライブと言えば、<チャーリー>から出ていた<ヴィージェイ>時代のベスト・アルバムに凄いのがある。「デューク・オブ・アール」の余裕綽々の風情ではなく、振り絞るような歌声が新鮮な驚き。女性客の歓声も凄まじく、マーヴィン・ゲイのライブかと聴き紛う。人気の高さが窺える。

レインボー65

https://www.youtube.com/watch?v=V9fjAI0CdTY

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このアルバム全体もよくまとまっている。ドゥーワップからアーリー・ソウル期を生き抜いたシンガー魂が感じ取れる。サム・クック調も微笑ましい。

http://www.charly.co.uk/…/duke-of-earl-the-very-best-of-th…/

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