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人間らしい人間同士の関わりの物語

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●高瀬正仁著『とぼとぼ亭日記抄』<萬書房>(16)

小説だが、著者の“思い出”が下敷きとなっている。大学生時代の著者は極端な人嫌いで、友達もいなかった。個性的な、屋台のラーメン店店主・村澤との出会いが、彼の毎日を充実したものに変えた。

  鮮明な記憶を元に綴られる日々は、読む者を温かく包み込む。しかし、単なる人情話に終始しない。著者の仕送りを当てにして、借金を返さないといった、非常識な人物像も浮かんでくる。

  著者はそれでも店主に惹かれ続けている。とんだお人好しではあるのだが、「惚れた弱み」みたいな感覚なのだろうか。村澤の、非常識を常識として貫き通す破天荒な部分に強がりや照れも感じている。また、非常識は非日常にも繋がり、目立たず生きてきた著者にとっては世界が広がり、それも堪らぬ魅力だったのだろうか。

だが、村澤の悪行三昧がエスカレートし、結婚生活の危機を迎える。村澤の為にもなり、彼のせいで悲しい思いをしている人の為にもなりたいと奮闘する著者は、人間的に成長していく。互いの立場から頼られる存在となる。

  終始飾り気のない文章もこの辺りから佳境に入り、飾り気のない分抑制が効き、文字を追う速度も速くなる。終盤は、福岡の大学院に進む事で、手紙と電話のやり取りが主となり、読者としては、相手の様子が判りにくくなる分、展開が謎に包まれた感じもあり面白い。

  思い出語りと微かな光明でラストを迎えるが、結局は人情話・・・人間らしい人間同士の関わりの物語である事に気付く。人生、それに尽きる。

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