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2016年7月

無名の意味

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●渡辺京二著『無名の人生』<文春新書>(14)

http://www.honzuki.jp/book/239044/review/156809/

渡辺京二さんの本は初めて読んだ。飄々としたお顔と熊本在住である親しみから興味は抱いていた。もちろん、近代史を中心とした諸作のアカデミックかつ読み物的側面も気になってはいた。

  本書は「人生論」の範疇に入るのだが、自然体で、決して教訓的ではない。

  正しい自己愛とは自分を甘やかす事ではない。間違った福祉やケアが管理化に繋がっているなど、何となく多くの人が現代社会の問題として気付きつつ違和感に止まっている事柄を簡明に説明されている。

  最も重要なのは生きる姿勢だろう。「世界」には二種類ある。実際に存在する地理的社会と、自分が生きていく上での自分中心の世界だ。自分中心とはいえ、名を売ろうとか出世しようという考えを無くし、真摯に努力する。たとえ苦しい境遇でも努力する。そして、人間いずれ死ぬのだから、死の瞬間まで生き切る。

さまざまな「人生論」で語られてきた事かも知れないが渡辺さんの立ち位置から述べられると腑に落ちる。

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ブラックミュージック10選・最終回

http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg776.html

企画をお手伝いした『週刊ドリームライブラリ』さんの「ブラックミュージック10選」最終回は「地域的特性」に着目しました。本来ならばレーベルの特色や力関係も絡めて、代表的ミュージシャンを紹介していくパターンが理想的ではあるかと思います。ただ、黒人音楽を知らない人相手だと雑然としてしまい、文章量的にもまとまりが付かない感じです。

従って、ブルースはテキサスとミシシッピからメンフィスやアーカンソー経由でシカゴといったザッとした動き。ソウルはモータウン系と南部ソウルという大まかな説明を中心としました。まぁ色々なスタイルがあるというのが伝わればという思いです。

そして地域的特性と言えば他に比べて特異性の高いニューオーリンズを締めの一曲として取り上げました。ニューオーリンズ→セカンドラインでミーターズにするか、重鎮アラン・トゥーサンにするかとアレコレ考えたのですが、最後は楽しく終わろうかと思います。クラレンス・フロッグマン・ヘンリーにしました。

前にも書きましたが、本企画は今まで自分のブログ等で展開している文章とは違うタイプです。企画意図に沿い、黒人音楽に興味が無い人も楽しめるような文章を目指しました。その成果は不明ですが、自分としてはとりあえずはまとまったかなと自負しています。先を見ればキリはなく、まだまだ取り上げたいテーマもありました。女性シンガーの系譜や、現代R&Bに生きる過去の遺産の具体例を上げたかった面もありました。まぁ、何事も「これで全て完了」はありません。また、自分のフィールドに戻りあれこれちまちまと書いていきたいと思います。もちろん、今回のような企画や「異種格闘技」みたいなものにもチャレンジしたい気持ちも出てきました。そういう意味では良い刺激となった本企画でした。

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ブラックミュージック10選・第9回

http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg775.html

企画のお手伝いをした『週刊ドリームライブラリ』さんの「ブラックミュージック10選」第9回は「グルーヴ」を取り上げてみました。10回シリーズの中でもっとも難しかったのがこの回でした。

グルーヴという言葉、黒人音楽ファンなら感覚的には捉えていると思います。ただ、いざ説明しようとすると、特に黒人音楽を知らない人相手では難儀です。今回その説明を受ける側だった編集長さんも大変だったと思います。言葉の裏側に無数のクエスチョンマークが見える思いでした。

なぜマーヴィン・ゲイの「インナー・シティー・ブルース」を取り上げたかというと、私自身がこの曲で初めて「グルーヴ」の何たるかを感じたからです。それは、ソウル歌手マーヴィンをサウンド・クリエイターとして意識した瞬間でもあります。ステップの決まったダンスではなく自然と身体が揺れる感じ、その絶妙な感覚が伝わりました。

少しタイプが違うとは思いますが、フェラ・クティやボ・ディドリーが追求したグルーヴも取り上げてみました。シリーズを通してアフリカ音楽とロックンロールを紹介したかったという面もあります。

黒人音楽以外にもグルーヴは存在するかと思いますが、特に黒人音楽では骨格の一部を成すぐらいの重要な要素として存在していると思います。まだまだ不十分な理解度ですが、それだけに今後も考えていきたい大きなテーマではあります。

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ザ・ソウル・スターラーズと<サー>レーベル

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●ソウル・スターラーズ『ジョイ・イン・マイ・ソウル』<サー/Pヴァイン>(15)

http://diskunion.net/portal/ct/detail/1006528150

※ライナーノーツを大いに参考にしています。

<サー>レーベルのスペル“SAR”は、立ち上げた3人サム・クック、J.W.アレクサンダー、ロイ・クレインの頭文字を合わせたものだ。ロイはやがて退くが、この人がソウル・スターラーズの“創設者”とも言える人物である。

  信奉者から「君たちの歌声は魂を揺さぶる=ソウル・スターラー」と指摘され、スターラーズを名乗ったのが始まりだそうだ。一度グループは消滅し、ロイは別のグループから誘いを受けた。「ソウル・スターラーズ」と改名するならという条件が承諾され、後に大看板となる名前は残った。

ロイは、ダブル・リードヴォーカルの概念をいち早く取り入れてもいる(30年代)。日程的にも金銭的にもゴスペル・サーキットは過酷で、辞める者も多い中、J.J.ファーレイ、R.H.ハリスと言ったキーパーソンを引き入れ、活動拠点をテキサスからシカゴへ移した。シカゴでは、作曲家ケネス・モリスやトーマス・A・ドーシーの曲が使えたので、シーンに浸透し、ラジオでゴスペル番組を担当するまでになった。

46年ポール・フォスター加入、51年サム・クック加入。5年後“転向”したサムの後釜ジョニー・テイラーの加入までロイは関わっている。

サムがスターラーズを抜ける56年に、彼が推薦するギタリスト、リロイ・クルムが加入。リロイはその後演奏面だけでなく、スターラーズを長年支える人物となる。一方ロイは、自分の兄弟にギターを任せたかったが、サムの猛反対に合い断念した。スターラーズの転換点は、サムの脱退だけでなく、裏方のリーダーの変更もあったのだ。

ソウル・スターラーズからソロになったサム・クックは、ソフトだが渋く力強いスターラーズの感覚も踏まえ独自の音楽スタイルを創り上げたとも言える。そして、サムの<サー>レーベルにスターラーズが入り、サムの影響を受けた感じもする。イントロが流れるとサムの歌声が聴こえてきそうな曲もある。

ハード・シャウターが絶頂を呼ぶパターンでなく、正にサム的に優しく柔らかく歌い上げる中、決めどころは外さない熱唱の数々だ。サムとスターラーズの類似性は本盤でも十分感じる。後期は若干離れた感も強いけど。サムにとって自分のレーベルで広めたかった音楽の最高の体現者がスターラーズだったに違いない。

Stand By Me Father

https://www.youtube.com/watch?v=mlqY2y7ca2I

wade in the water

https://www.youtube.com/watch?v=XwSugJQDgRo

Oh Mary Don't You Weep

https://www.youtube.com/watch?v=vh4S7J4zgZA

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ブラックミュージック10選・第8回

http://www.w-dreamlibrary.com/blackmusic/pg773.html

企画をお手伝いした『週刊ドリームライブラリ』さんの「ブラックミュージック10選」第8回は、色気~エロ気について取り上げてみました。

ブルースのダブル・ミーニング、不倫・間男から男性のファルセット・ボイスなど、男女間のどうしようもない交わりをさまざまな方法で表現しています。他にもスライド・ギターやハスキーだったり潤いのある歌声が醸す艶っぽさも例に上げられます。

下世話な物を取り上げるのは、黒人音楽に限りませんが、ストレートだったり、音の感触として含ませたり多様だと思います。

全くの私見ですが、全ての感情は悲しみに支配されていると思います。時には怒りや喜びが底辺に悲しみを湛えている事があると思います。下世話なあれこれにもふと悲しみを感じる事が誰しもあると思います。しかし、そこに感じ取られる悲しみはマイナスにはなりません。人間の活力につながる感情だと思います。黒人音楽の表や裏に見て取れる悲しみも、そうです。ただ単にエッチなネタで場を盛り上げるだけでなく、どこか心に幸福感を残してくれる音楽だと思います。

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2016年6月の音楽メーター

6月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:5枚
聴いた時間:114分

ジャスト・アズ・ロング~ザ・コンプリート・ワンド・レコーディングズ 1972~74ジャスト・アズ・ロング~ザ・コンプリート・ワンド・レコーディングズ 1972~74
2016.6.12 タワーレコード渋谷店にて購入。
シカゴ・ソウルは通好みと聞く。華麗さや哀感を強調し過ぎず、しかし都会的なモダンさは持ち合わせている。本盤ではそんなシカゴ・ソウルの基本がたっぷり堪能できる。
聴いた日:06月21日 アーティスト:ジ・インディペンデンツ
トゥー・マッチ・ジーザス(ノット・イナフ・ウィスキー)トゥー・マッチ・ジーザス(ノット・イナフ・ウィスキー)
2016.6.12. タワーレコード渋谷店にて購入。ボビー・ブランドを思わせるコクのあるヴォーカルを駆使する。ファンキー路線にも無理なく乗っている。一曲だけアラン・トゥーサンとの共同作品があり、それが一番気に入った。
聴いた日:06月20日 アーティスト:マイティ・サム・マックレイン,Mighty Sam McCrain
ラヴ・イズ・ア・ハーティン・シング(LOVE IS A HURTIN' THING) (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)ラヴ・イズ・ア・ハーティン・シング(LOVE IS A HURTIN' THING) (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)
2016.6.12 タワーレコード渋谷店にて購入。
雑誌のレビューを読んだ時点では自分向きではないなと思いつつ、ジャケ買いしてしまう。ドープなディスコ・ブギーで説明つくのかな?個人的には音がゴチャゴチャしている印象。まぁ、そこが持ち味だろうけど。ライナーにある通り、王道ソウルも歌ってほしかった。
聴いた日:06月19日 アーティスト:グロリア・アン・テイラー,GLORIA ANN TAYLOR
トゥ・ユア・ハニー、ハニー・ウィズ・ラヴトゥ・ユア・ハニー、ハニー・ウィズ・ラヴ
2016.6.12 タワーレコード渋谷店にて購入。ハイテナー~ファルセット系ヴォーカルながら全体的にザラザラした感触があり、コブシをグッと聴かせる局面も。曲の水準も高い。ディスコ2曲あり。
聴いた日:06月15日 アーティスト:デイヴィッド・ハドソン
Born in Chicago: Best of - Elektra YearsBorn in Chicago: Best of - Elektra Years
2016.6.4. ブックオフ大牟田船津店にて購入。
「ブルースひと筋」の人かと思いきや、さまざまな表情。迫力のブルース・ロック、テクニックを競い合うサイケ・サウンド、そしてブラス隊を加えた総合的黒人音楽の世界へ。結局、ブルースの進化形を手に入れている。
聴いた日:06月08日 アーティスト:Paul Blues Band Butterfield

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