コルシア書店の仲間たち
●須賀敦子著『コルシア書店の仲間たち』<文春文庫>(95)
一人の人間には必ず一つの人生がある。
イタリア・ミラノに在住していた筆者は、周囲からは「キリスト教左派の集まり」とみなされている「コルシア書店」を中心として様々な人物に出会った。書店を立ち上げたカリスマ的神父から書店で働く人々や出入りする人々。貴族の末裔、移民、農家育ち、ユダヤ人、 各々立場や思想、生活様式は違っても「人生」の変遷は等しく訪れている。
端正な文章で風景や人物の描写が成されていく為、各章毎にスポットの当たる人物に人生に於けるターニング・ポイントが来ても大袈裟にならず深みが増す。
筆者自身も夫を亡くしているのだが、大きく取り上げず、夫の居る自分も夫の居ない自分も、ある種淡々と表現されているのが妙にリアリティーがある。
ヨーロッパならではの民族間の葛藤なども、一市民としての視点から理解させてくれる。
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