ブルー&ストーン
全国のブルース・ファン、ストーンズ・ファンは、この年末年始『ブルー&ロンサム』と『BSR』誌の付録CDを散々聴き比べていたのではないだろうか。
『BSR』誌付録CD史上最高傑作の呼び声高い?今号盤は、確かに面白い。ただ、繰り返し聴くと統一感の無さが気になる。コンセプトが『ブルー&ロンサム』のオリジナル曲を配列通りに並べるという点にあるのだから已むを得ない話だ。
そう考えると、ブルース度の濃さは共通していても、それぞれ特色のある曲群に統一感を齎したストーンズが凄いのだ。しかも、オリジナルに近づきつつも自分たちのバンド・サウンドを崩していないという平衡感覚のレベルの高さ。例えば、マジック・サムやオーティス・ラッシュのモダンでスマートな部分を控えて、内に潜む黒々とした「とぐろ」を引きずり出すような生々しい迫力はどうだ。アルバム全体で言えば、ミックの鬼気迫るヴォーカルと隅々まで魂の込もったハープ。キースとロンの抜群のタイム感。いつもと違うが聴き応えのあるチャーリーのドラム。ベースも指圧のようにツボを抑えている。ピアノもここぞという時にコロコロとよく転がっている。クラプトンは相変わらず丁寧に弾き始めるが、徐々に熱を帯びてくる。
2012年に発表された、かつてチェッカーボード・ラウンジで行われたマディ・ウォーターズのライブにストーンズが飛び入り参加した様子を収録したDVDは話題を呼んだ。印象的な場面の一つにバディ・ガイの速弾きに熱い視線を送るキースの姿があった。あれは完全にロック・スターではなくギター少年の眼差しだ。押しも押されぬ地位にいながらまだ学ぼうとしているのだ。いや、学ぶというか心底ブルースが好きなのだろう。恐らくワクワクしながらバディの指使いを見ていたに違いない。このDVDにおけるミック、キース、ロンの姿はストーンズで演奏している時と違う。ミックはどのタイミングで歌い出そうかと集中している。キースとロンは殆ど不動の姿勢で熱心に弾いている。
DVDで観られたように、彼らがブルースに対して抱く深い敬意と情熱が、このアルバムからひしひしと伝わる。その上で、若い世代に興味を持ってほしい為、音を分厚くしシャッフル・ビートを目立たせ、スロー曲ではより深みを持たせながらエキセントリックに攻める局面も持つ。ブルース・ファンの中には音の分厚さに引く人もいるかも。リトル・ウォルターやリトル・ジョニー・テイラー、エディ・テイラーやジミー・リードの艶っぽさには及ばないと言う人もいるかも知れない。しかし、ストーンズの思惑はそれをコピーする事ではない。「変わりゆく変わらぬもの」として、新しく創造し、次の世代に遺産を渡しているのだ。もちろん我々オールド・ファンも大いなる刺激を受けた一枚である。
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