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日本語で感じるブルース

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チャンピオン・ジャック・デュプリーの『ニューオーリンズ・バレルハウス・ブギー』。<ソニー>の<ルーツン・ブルース>シリーズで、93年にリリース。40~41年、彼の最初期の録音集だ。

「チャンピオン」の呼び名は伊達ではなく、ボクシングの腕も相当なものだったよう。力強いピアノの響きに、腕っぷしの強さを連想してしまう。

内容の良さに加え、編集盤として、ブルースの魅力を日本語で伝えようとする姿勢にも触れたい。こういう場合ギクシャクした訳もあったりするが、風情の伝わる良訳である(沼崎敦子さん)。タイトルも全て邦題で、私のように英語が不慣れな人間には歌世界がぐっと身近に感じられ嬉しい。

特に訳さなくても意味は通じるが、日本語にする事で味わいが増す例は、5曲目「黒人女のスウィング」"Black Woman Swing"、あるいは「だいじょうぶだよ」"That's All Right"あたりか。最も感心したのは、本盤唯一のトラディショナル曲"Oh, Red"を「ああ、レッド」と訳す感覚。なるほど、英語での「オー」は正確な日本語では「ああ」或いは「嗚呼」となるはず。ブルースならではの詠嘆調とも言える。

現代ではあまり使われない日本語を使った例では"Junker Blues"を「ぽんこつブルース」(憂歌団の曲名にありそう)、"Hurry Down Sunshine"が「早く沈め、おてんとさん」と訳されている。歌詞もきちんと訳してあるが、詩を感じる素養が私には無いので、読みが甘いかも知れないが、おてんとさんに向かって早く沈めと願うのは、「明日になれば何とかなる」というささやかだが切実な希望の表れではなかろうか。おてんとさんという太陽を人格化したような表現が、より距離を近づけ現実化させたい思いを感じさせる。

詩的な表現としては"New Low Down Dog"が「新・卑劣な犬」。なんとも面白い。

※リンクを貼っている曲名の中で「雑草あまたの女」となっているのは「雑草あたまの女」が正解。たぶんハッパまみれの女とかそんな感じでしょうか。次に原題の曲名を貼っておきます。

♪黒人女のスウィング

♪だいじょうぶだよ

♪ああ、レッド

♪ぽんこつブルース

♪早く沈め、おてんとさん

♪新・卑劣な犬

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