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2019年8月

たな上げ

恥ずかしい記憶は消え去らない。

 

小学校のホームルームの時間か、何らかの話し合いの場だった。私がある発言をしたら、ひとりの女子が「〇〇くんは自分の事を棚に上げていると思います」と指摘された。聡明な女子だったので説得力があり、わたしはとにかく恥ずかしかった。

 

しかし、本人としては、そんな気はなかったと思う。自分自身の自分勝手さには意外と気づかないものだ。自己弁護ではないが、小学生なら尚更だ。

 

この経験は、ある種"教訓"にはなった。意見を思い付いても、果たして自分にその意見を言えるだけの"資格"があるのかというためらいの気持ちが少なからず出るようにはなった。それでも、勢いで言ってしまい、後で反省する事もある。

 

誰しも、意見を述べたり自己主張をしたりする時、うっかり自分の事を棚に上げてしまう可能性はある。要はそれに気付けば良い話だろう。

 

なんでこんな事を書いたかというと、国際問題でも社会問題でも、ニュースの主役になっている"過激"な人達を見ていると、自分勝手の極北にいるような、そんな感じがしたからだ。

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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.51

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[60枚目]●アンソニー・ハミルトン『エイント・ノーバディ・ウォリン』<ソー・ソー・デフ>(05)

 

アンソニー・ハミルトンも48歳。すっかりベテランの域だ。本盤は、レコード会社の消滅でお蔵入りした実質的ファーストアルバム『XTC(エクスタシー)』を含めると4枚目になるゴールドディスクだ。
オールドソウル感覚とヒップホップ感覚がほどよくブレンドされた、所謂"ネオ・ソウル"の代表格として名を成す彼は、ノースカロライナ州シャーロット生まれ。ご多聞にもれず6、7歳の時に聖歌隊の一員として歌い始める。しかし、9歳の時父親が家族の元を去り、兄と妹と共に母子家庭となる。アンソニーはそれでもめげる事なく、有名シンガーへの道を目指した。
レコードデビューを果たしてからもすんなりとは行かず、20年間で6か所ものレーベル変更を経験する。しかし、2011年<RCA>に落ち着くと、グラミー賞にも顔を出すようになる。本盤も、発表当時話題にはなり実績を上げたとは思う。しかし、それ以後さらに自らの音世界を発展させたというところだろう。
生活上や音楽界上で苦労した経験の表れという訳でもなかろうが、彼の音楽にはアーシーな感覚が漂っている。声自体も、ハスキーというより棘のある感じで、心に引っ掛かる。しかし、ただ声の魅力だけにとどまらない。曲の中で自らの歌声を丹念に重ねたり絡めたり、ある意味楽器の一部のように配置している。全体のサウンドもよく練られている。シンガーというよりサウンド・プロデューサーとしての冴えが目立つ。全体的に落ち着いたノリで、繰り返し聴ける好盤だ。私はよく知らないが、ヒップホップ系の名プロデューサー、マーク・バットソンが中心的に関わっている。タイトル曲はラファエル・サディークのプロデュースだが、良い意味で突出せずアルバム全体のサウンドの流れに溶け込んでいる。「プリーチャーズ・ドーターズ」でデュエットしているターシャ・マクミランはアンソニーの奥方。中々ファナティックなヴォーカルを聴かせる。ソロ作もあるとの事でYouTubeで拾ってみたが正直ピンと来なかった。この辺の生かし方もアンソニーの手腕ではないか。

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『BSR』誌メッセージ・ソング特集号

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またしても旧い号になりますが、『BSR』誌146(4月号)。

「メッセージ・ソング」にスポットを当てた号。オーサカ=モノレールの中田亮さんによる「歌」を媒介とした黒人解放運動の歴史。時間軸に沿って未来の展望まで丁寧に描かれている。連載物では中河伸俊さんの「Food For Real Life」。「アイ・シャル・ノット・ビー・ムーヴド」=「ここから動かないぞ」を題材に。堅固な信仰心を表す歌が抗議運動のシットイン等に繋がる。歌に含まれる力強さに心打たれる。同時に人種問題の強固な壁も感じてしまう。日暮泰文さんの「リアル・ブルース方丈記」。メイミー・スミスの「クレイジー・ブルース」。ブルースやブラックミュージックの歴史を語る際、必ず登場するが一行で説明が終わるような曲。ところが、強烈な歌詞を含む曲だった真実に驚く。

付録CDはまた時間のある時にまとめてみます。

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ケーキの切れない非行少年たち

『ケーキの切れない非行少年たち』という妙なタイトルの新書本を立ち読みしてみた。精神科医の宮口幸治さんが医療少年院勤務時、重大犯罪や非行を繰り返す少年たちに接してきた記録だ。彼らは素行が悪かったり性格が歪んでいるというより、軽度の知的障害が原因であると。

「少しだけ勉強ができない」「少しだけ社会性に問題がある」という事で、まっすぐに各個人の問題点に向き合わないのがダメだと。筆者が少年たちにさまざまなテストを行ったが、彼らはみんな積極的に取り組む。通学している間も先生によっては、社会に馴染めていた子もいるとの事。

本書に登場する「非行少年たち」も受け入れる側が助けを必要とする者をどういう風に取り扱えば良いかが判っていないのでは。受け入れ側の「知的想像力の欠如」も問題なんだろう。本書の内容からは外れるが、ネグレクトとかいじめとか、ヘイト感情とか共通するような。

 

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アン・ピーブルズのファースト

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●アン・ピーブルズ『ディス・イズ・アン・ピーブルズ』<ハイ/ウルトラ・ヴァイヴ>(69/19)

https://www.discogs.com/Ann-Peebles-This-Is-Ann-Peebles/release/3226885

※本文を書くに当たり、鈴木啓志さんのライナーを参考にしています。

メンフィス・ソウルのレジェンド・レーベル<ハイ>を代表する歌姫、アン・ピーブルズのファースト・アルバム。オリジナルは69年。今回購入したのは、当初<ウルトラ・ヴァイヴ>が13年にリリースした<ハイ>のシリーズを基にして、19年の<名盤1000円シリーズ>として出された物。その為、2種類の帯が付けられているのが特徴。

私は、アン・ピーブルズと言えば「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」を一番に連想する。彼女の全体的イメージもその1曲に集約してしまっている感がある。曰く、しっとりとしながらもクールな、日本の歌手ならいしだあゆみと言った所だ(歌唱部分は別として)。もちろん、熱唱曲が無い訳ではなく、総合的にメンフィス・ソウル・シンガーらしい歌手である事に異論はない。

しっとりイメージを念頭に置くと、本盤はかなり戸惑う。ほとんど全編スピード感を持ったアップテンポなソウルなのだ。ひとつの要因は、ジーン・"ボウレッグス"・ミラーが主体的に関わっている点だろう(アンはミラーの楽団で歌った縁でミラーの助力を得<ハイ>デビューした)。後の名参謀ウィリー・ミッチェルとプロデュースを分け合い、総合プロデューサーはミラーになっている。ところが、本盤のセールスは芳しくなく、ヒット曲「パート・タイム・ラブ」が生まれた後同一タイトルでリリースされた2枚目のアルバムに、本1stから非ミラー作品だけ再録されるという、いわくつきの作品である。いみじくも、鈴木さんがライナーで、ミラー作品に比べミッチェル作品は、「ファンキーより端正さ」「ゆったり感」という表現をされており、そのまま後のアン・ピーブルズのしっとりイメージに繋がるなぁと思った次第。

「スピード感」という言葉を使ったように、「チェイン・オブ・フールズ」「レスキュー・ミー」「リスペクト」といったカバー曲もオリジナルよりテンポアップした印象。ハスキーな歌声で、決めどころでは押しの強さも目立つアンの歌唱は、ティナ・ターナーを連想する瞬間もある。ただ、歌唱全体が青いというか硬い為、余裕や豊かさより、ヒリヒリした感触を受ける。

演奏陣は流石である。タメの効いたドラムに饒舌なベースが基礎となり、ギター、ホーン、女性コーラスなどが過不足なく絡む。贅沢な言い方をすると、型が決まり過ぎていて変化に乏しいと言えば乏しい。なので、アン・ピーブルズの魅力を知る者が聴けば愉しめるが、初めて聴く人が愉しめるアルバムとは言い難いのも事実である。

Crazy About You Baby

 

Make Me Yours

 

Chain Of Fools

 

It's Your Thing

 

Walk Away

 

Rescue Me

 

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