カントリーとソウルの出会い
「カントリー・ソウル」という呼び名があるように、白人主体のカントリー曲と黒人主体のソウル曲の間には、必ずしも埋められない溝があるわけでもない。そもそも、米国黒人音楽は「混血音楽」であるというのは重要なポイントでもある。
<エイス>が2012年にリリースした『ビハインド・クローズド・ドアーズ~ホウェア・カントリー・ミーツ・ソウル』は、カントリー曲をカバーしたソウル曲を集めている。この逆パターンのコンピ盤もあるとの事だ。全23曲収録されているので各々カントリー風味の強弱が感じられ、そこが面白味の一つではある。
何曲か上げてみよう。まずアーロン・ネヴィルの「グランド・トゥアー」(93)。ヨーデル的唱法がカントリー・ソングによく似合い、本盤の象徴みたいな一曲である。
オリジナルはジョージ・ジョーンズ(74)。いかにも頑固一徹な「アメリカの親父」的風貌だが、声量豊かで温かみ溢れる歌唱である。ただ、黒人音楽ファンとしては、アーロンの切なげな歌い方が、聴き慣れている部分もあり気持ちは安らぐ。
続いてソロモン・バークの「ヒール・ハヴ・トゥ・ゴー」(64)。ソロモン王らしい落ち着きと深みのある歌い口。女性コーラスも入り、ゴスペルライクな部分もある。
元曲だからか、曲の良さがストレートに伝わる。エルヴィスを思わせるコクのある歌唱。
モーゼス&ジョシュア・ディラード「My Elusive Dreams」(67)は痛快なノーザン曲で、とてもカントリー・ソングを採り上げたものとは思えない。
同じ67年に発表されているオリジナルはカーリー・パットナム。うって変わって穏やかな曲である。ただ、この調子でアルバム一枚だと私は飽きるだろう。
アン・ピーブルズの「ハンギン・オン」(74)も、カントリー・ソングがオリジナルとは信じがたいソウルフルな佳曲だ。とは言え、サビの部分には共通項を感じる。
オリジナルは女性ではなく、ゴスディン・ブラザーズ(67)。カントリー・ソングが全てそうではないのだろうが、この曲に限らず今回数曲聴いてみて、広大な風景みたいなのを凄く感じる。ソウル・ミュージックは落ち着いた曲でも心の琴線を刺激してくるような深い情感を感じる。
叙事的と叙情的というのとも少し違う感じがするが、多分違いがあるからこそ、お互いに取り上げたくなる音世界なのかも知れない。
さて、アルバムはまだまだ続くが、一旦ここで締めるとして残りはまた後日。
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