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2019年11月

メンフィス・ミニー&カンサス・ジョー

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●メンフィス・ミニー&カンサス・ジョー『イン・クロノロジカル・オーダーVol.1』<ドキュメント>(91)

 

初録音となる<コロムビア>作品から、<ヴォキャリオン><ヴィクター>、録音場所もニューヨーク、メンフィス、シカゴの三か所に及ぶ。

 

メンフィス・ミニーは生まれはルイジアナ州のアルジェという街で、13人きょうだいの長女。口減らしか家出か13歳の時単身でメンフィスに赴き、先ずはサーカスなどを催しているテント・ショウで演奏を行っていた。カンサス・ジョー・マッコイは2人目の夫でビール・ストリートのバーバー・ショップでのパフォーマンス中に<コロムビア>からタレント・スカウトを受けニューヨークでの録音という運びとなった。

 

ただ、録音はしたものの中々発表はされなかったようで、「バンブル・ビー」の30年<ヴィクター>版「バンブル・ビー・ブルース」(メンフィス・ジャグ・バンドをフィーチャー)の方が先に好評を博してしまう事態となった。実は、その少し前には<ヴォキャリオン>からも同曲はリリースされていた。本盤には3作品とも収録されている。YouTubeでは<コロムビア>版が拾えなかったが、確かにジャグ・バンド入りの華やかさ?に比べ<コロムビア>版は地味かも知れない。悪くはないんだけど。個人的には<ヴォキャリオン>版が落ち着いた感じで好きだ。因みに「バンブル・ビー・ブルース」は、CDだとジャグの音がYouTubeよりファットでより痛快感を得られる。

 

メンフィス・ミニーの魅力のひとつに、力感十分かつ丁寧な歌唱がある。カンサス・ジョーが決してしょぼい訳ではないが、ミニーの歌には引き込まれてしまう。ジョーの裏に回っても妙にサラッとした感じで魅力がある。ギターのテクニックを比較する耳は私に無い。歌を担当していない側がフレーズを紡いでいるだろうという推測のもと聴くと、甲乙つけ難い味わいがある。彼らが手本としたのは、メンフィス・ブルース界の雄、フランク・ストークス&ダン・セインだとライナーに書いてある。時代的なニュアンスもあるだろうが、いなたさよりモダンな感覚が強いギター・ワークではある。ブラインド・ブレイクとかのラグ的なモードにも通じる。

 

先に書いたように、<コロムビア>期は地味目にも思えるのだが、両名の絡みが自然で絶妙なコンビぶりがじわじわと迫ってくるのも事実だ。

 

I Want That

 

That Will Be Alright

 

Frisco Town

 

When the Levee Breaks

 

Mister Tango Blues

 

She Wouldn't Give Me None

 

Bumble Bee

 

Can I Do It For You?

 

Bumble Bee Blues

 

I Never Told A Lie

 

Georgia Skin

 

I'm Wild About My Stuff

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力感のあるバラード集

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●V.A.『スロウ・ン・ムーディー・ブラック&ブルージー&モア』<ケント・ソウル>(09)

 

Z.Z.ヒルのサム・クック熱血カバー曲で幕開け。サム系のクレイ・ハモンドに続く。B.B.キングやジョニー・コープランド、ラリー・デイヴィスといったブルースから、リード突出型ながらコーラスグルースも。女性シンガーもゴスペル仕込みが臭う安定型。力感のあるバラードという共通項が見える。LP、CD共さまざまな選曲版あり。

 

Z Z Hill,Nothing can change this love

 

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平野啓一郎著『本の読み方』

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読書好きなら基本的にスローリーディングを実践している事だろう。読む速度が速い場合も、飛ばし読みなどではなく集中力の成せる業という事になるはず。

そういった、本を読む事が心底好きな人が抱く「速読」のイメージは、文章を味わうというより情報を得る作業に近くないだろうか。

本書も「量から質への転換」から話は始まる。さらに面白いのはそれから先で、深く読み込む為の留意点が何点か。助詞や助動詞に着目するとか、疑問を持ちながら読む、傍線を活用するなど。

最後には、小説の一部を掲載し、筆者の言わんとする所を読み取る方法(書く側からすれば表現方法)が述べられている。色んなタイプを上げてあるので目先も変わる。

スローリーディングという言葉は「速読」に対比するものだろう。しかし、本書の趣旨からすればディープリーディングという言葉の方が合うように思えた。

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ミシシッピ/デルタ・ブルース

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『BSR』誌147号(6月号)は、「ミシシッピ/デルタ・ブルース」の特集。表紙写真に"鎮座"するチャーリー・パットンがその代表格であるが、もっと視野を広げた特集となっている。タイトルが語る通り、ミシシッピ州のブルース系音楽全般を紹介した形だ。

 

付録CDも所謂ストリング・バンドからスタートしている。ギター主体のデルタ・ブルースと違い、フィドル、マンドリン、バンジョーなどを使った、パーティー・ソングというと語弊があるかも知れないが、愉快な感覚を持つ一派である。チャットマン・ブラザーズ(ロニー、サム、ボー、ハリー)を軸とするミシシッピ・シークスが有名どころだ(ロニーと兄弟以外のウォルター・ヴィンソンが中心との事)。因みにボー・チャットマンはボー・カーター名義も持つ。本CDにはシークスは入っていないが、チャットマン・ブラザーズは有り③。そして、各メンバーが分散している①ミシシッピ・マッド・ステッパーズ②⑤ミシシッピ・ブラックスネイクスには、名手チャーリー・マッコイの名もある。まぁ、細かく分類するのも良かろうが、総合的に把握しておけば良いのではなかろうか。

 

⑥ジョー・キャリコットはメンフィスへの出稼ぎ組のひとり。ミシシッピのミュージシャンには多いパターンらしい。同地のフランク・ストークスの影響を受け、ミシシッピ・ジョン・ハートの端正さにも繋がると解説には書いてある。確かに毒気はない。⑦ガーフィールド・エイカーズもメンフィス録音。ジョー・キャリコットとの共演もあるとの事。ギターのフレーズが滑らかでない所に味わいがある。

 

⑧でいよいよ、チャーリー・パットンの登場。またしても解説からの転用だが、パットンやサン・ハウス、ウィリー・ブラウン、トミー・ジョンソンら所謂デルタ・ブルースのスターたちに共通するのは、アメリカ最初の綿花農園ドッケリー・ファームに集っていたという点。同地がデルタ・ブルース発祥の地とされるのも当然だ。彼らは、ドッケリー・ファームがあったサンフラワー郡の街ドルーにちなんで「ドルー派」と呼ばれる。つまりデルタ・ブルースの正統派はドルー派という事だ。ドルー派の特徴はポリリズミックでつっかかるようなビートや、ベース弦の下降フレーズに見られるとの事で、それを念頭に聴くと面白い。特に⑨サン・ハウスはパットンを増幅したような趣で、ドルー派の特徴が掴みやすい。

 

⑩トミー・ジョンソン曲にはチャーリー・マッコイが参加。マンドリンのような音を奏でているがギターだと。土臭さより美しさが先に立つ名演。⑪イシュマン・ブレイシーのギターも独特で、尚かつ愁いがありディープである。⑥⑦⑩⑪は録音場所はメンフィスとなる。地域に着目するなら、ブレイシーは州都ジャクソン近郊の出身で、トミー・ジョンソンが居住していたクリスタル・スプリングスで共演していたとの事。いずれもデルタ地域外となる。しかしながら、トミー・ジョンソンはドルー派だし、あまりこの辺りは拘らなくても良いのだろう。イシュマン・ブレイシーの師匠を自認する⑫ルーブ・レイシーもジャクソン東方の出身。サン・ハウスも影響を受けたと語っているレイシーは、年代的にはチャーリー・パットンと同世代になる(聴けばピンとくる)。強烈なモーンは音楽以前の感情の迸りである。それを最も感じ取ったのは彼自身だったのか、やがてブルースをやめ聖職に就く。

 

ロバート・ジョンソンへの影響も云々される⑬スキップ・ジェイムス。手数は多いが淀みがないギターにややハイトーンのヴォーカルが切なさを増す。⑭ミシシッピ・ブレイシーは詳細不明の人物。スライドも歌声も力強い。レパートリーは宗教歌とブルースが半々との事。⑮ビッグ・ジョー・ウィリアムスは35年の録音で、次世代に繋がる感覚もある。CDのラストはミシシッピへの郷愁を歌った⑯チャーリー・マッコイとボー・カーターの曲で締めている。

 

私は、日頃ミシシッピだ、メンフィスだ、シカゴだ、と意識せず聴いているので何となく判っていても正確には把握できていない部分が多い。今回の特集&付録CDは、そんな面倒臭がりの興味を引き付け、愉しませてくれた。

 

①Mississippi Mud Steppers Vicksburg Stomp

 

②It Still Ain't No Good (New It Ain't No Good) Mississippi Blacksnakes

 

③If You Don't Want Me Please Don't Dog Me 'Round Chatman Brothers

 

④Bo Carter - Good Old Turnip Greens

 

⑤It's so Nice and Warm Mississippi Blacksnakes

 

⑥Joe Callicot - Fare Thee Well Blues

 

⑦Garfield Akers - Dough Roller Blues

 

⑧Charlie Patton "Screamin' and Hollerin' the Blues"

 

⑨Son House - Jinx Blues Part 1

 

⑩Maggie Campbell Blues' TOMMY JOHNSON,

 

⑪'The Four Day Blues' ISHMAN BRACEY

 

⑫Mississippi Jail House Groan Rube Lacy

 

⑬Skip James - Cypress Grove Blues

 

⑭Mississippi Bracy/I'll overcome someday

 

⑮'49 Highway Blues' BIG JOE WILLIAMS

 

⑯Papa Charlie McCoy & Bo Carter Mississippi I'm Longing For You

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秋・博多の収穫

久しぶりにCDを買おうと博多まで。

 

10時頃到着で、まずはジュンク堂書店の地下で開催されている古書市へ。1時間近く見て回ったが結局収穫はなし。メインのCD購入に向かう。

いつもはタワーレコードからスタートするが、中古店のグルーヴィンレコードが開いている時間となったのでそちらから。

グルーヴィンでは3枚。まず、14年<Pヴァィン>発のブルーズ・ザ・ブッチャー『イン・ザ・ベースメント』。

 

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オリー・ナイチンゲール、97年の<エコー>盤『メイク・イット・スウィート』。

 

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ステイプル・シンガーズの55年~84年の2枚組。手持ち盤と重複もありそうだが<ケント・ソウル>らしい編集(トニー・ラウンチ)。

 

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続いてタワーレコードへ。相変わらず<オールデイズ>ぐらいしか触手が伸びない。それ以外では以前から興味があったカウント・ベイシーを1

枚。ボーナス4曲をプラスした<ジャズ百貨店>シリーズの『ベイシー・イン・ロンドン+4』。

 

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<オールデイズ>盤2枚は、メンフィス・スリム『ザ・フォアモースト・ブルース・シンガー』とボビー・ブランドの『コール・ミー』。

 

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カツ丼セットを食べた後は、ジュークレコードへ。ここではコンピ盤を選ぶのがひとつの愉しみ。今回は2枚購入。<ウェストバウンド>のソウル集『グッド・オール・オーバー』(これまたトニー・ラウンチ)と<モダン><ケント>のコンピ『スロウ・ン・ムーディー・ブラック&ブルージー&モア』。

 

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他は、クラレンス・カーターの88年<イチバン>作『タッチ・オブ・ブルース』。

 

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ジュークレコードは<ドキュメント>盤も揃っているので今回はメンフィス・ミニー&カンサス・ジョーを購入。

 

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以上となります。

 

 

 

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