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ミシシッピ/デルタ・ブルース

Bsr147

 

『BSR』誌147号(6月号)は、「ミシシッピ/デルタ・ブルース」の特集。表紙写真に"鎮座"するチャーリー・パットンがその代表格であるが、もっと視野を広げた特集となっている。タイトルが語る通り、ミシシッピ州のブルース系音楽全般を紹介した形だ。

 

付録CDも所謂ストリング・バンドからスタートしている。ギター主体のデルタ・ブルースと違い、フィドル、マンドリン、バンジョーなどを使った、パーティー・ソングというと語弊があるかも知れないが、愉快な感覚を持つ一派である。チャットマン・ブラザーズ(ロニー、サム、ボー、ハリー)を軸とするミシシッピ・シークスが有名どころだ(ロニーと兄弟以外のウォルター・ヴィンソンが中心との事)。因みにボー・チャットマンはボー・カーター名義も持つ。本CDにはシークスは入っていないが、チャットマン・ブラザーズは有り③。そして、各メンバーが分散している①ミシシッピ・マッド・ステッパーズ②⑤ミシシッピ・ブラックスネイクスには、名手チャーリー・マッコイの名もある。まぁ、細かく分類するのも良かろうが、総合的に把握しておけば良いのではなかろうか。

 

⑥ジョー・キャリコットはメンフィスへの出稼ぎ組のひとり。ミシシッピのミュージシャンには多いパターンらしい。同地のフランク・ストークスの影響を受け、ミシシッピ・ジョン・ハートの端正さにも繋がると解説には書いてある。確かに毒気はない。⑦ガーフィールド・エイカーズもメンフィス録音。ジョー・キャリコットとの共演もあるとの事。ギターのフレーズが滑らかでない所に味わいがある。

 

⑧でいよいよ、チャーリー・パットンの登場。またしても解説からの転用だが、パットンやサン・ハウス、ウィリー・ブラウン、トミー・ジョンソンら所謂デルタ・ブルースのスターたちに共通するのは、アメリカ最初の綿花農園ドッケリー・ファームに集っていたという点。同地がデルタ・ブルース発祥の地とされるのも当然だ。彼らは、ドッケリー・ファームがあったサンフラワー郡の街ドルーにちなんで「ドルー派」と呼ばれる。つまりデルタ・ブルースの正統派はドルー派という事だ。ドルー派の特徴はポリリズミックでつっかかるようなビートや、ベース弦の下降フレーズに見られるとの事で、それを念頭に聴くと面白い。特に⑨サン・ハウスはパットンを増幅したような趣で、ドルー派の特徴が掴みやすい。

 

⑩トミー・ジョンソン曲にはチャーリー・マッコイが参加。マンドリンのような音を奏でているがギターだと。土臭さより美しさが先に立つ名演。⑪イシュマン・ブレイシーのギターも独特で、尚かつ愁いがありディープである。⑥⑦⑩⑪は録音場所はメンフィスとなる。地域に着目するなら、ブレイシーは州都ジャクソン近郊の出身で、トミー・ジョンソンが居住していたクリスタル・スプリングスで共演していたとの事。いずれもデルタ地域外となる。しかしながら、トミー・ジョンソンはドルー派だし、あまりこの辺りは拘らなくても良いのだろう。イシュマン・ブレイシーの師匠を自認する⑫ルーブ・レイシーもジャクソン東方の出身。サン・ハウスも影響を受けたと語っているレイシーは、年代的にはチャーリー・パットンと同世代になる(聴けばピンとくる)。強烈なモーンは音楽以前の感情の迸りである。それを最も感じ取ったのは彼自身だったのか、やがてブルースをやめ聖職に就く。

 

ロバート・ジョンソンへの影響も云々される⑬スキップ・ジェイムス。手数は多いが淀みがないギターにややハイトーンのヴォーカルが切なさを増す。⑭ミシシッピ・ブレイシーは詳細不明の人物。スライドも歌声も力強い。レパートリーは宗教歌とブルースが半々との事。⑮ビッグ・ジョー・ウィリアムスは35年の録音で、次世代に繋がる感覚もある。CDのラストはミシシッピへの郷愁を歌った⑯チャーリー・マッコイとボー・カーターの曲で締めている。

 

私は、日頃ミシシッピだ、メンフィスだ、シカゴだ、と意識せず聴いているので何となく判っていても正確には把握できていない部分が多い。今回の特集&付録CDは、そんな面倒臭がりの興味を引き付け、愉しませてくれた。

 

①Mississippi Mud Steppers Vicksburg Stomp

 

②It Still Ain't No Good (New It Ain't No Good) Mississippi Blacksnakes

 

③If You Don't Want Me Please Don't Dog Me 'Round Chatman Brothers

 

④Bo Carter - Good Old Turnip Greens

 

⑤It's so Nice and Warm Mississippi Blacksnakes

 

⑥Joe Callicot - Fare Thee Well Blues

 

⑦Garfield Akers - Dough Roller Blues

 

⑧Charlie Patton "Screamin' and Hollerin' the Blues"

 

⑨Son House - Jinx Blues Part 1

 

⑩Maggie Campbell Blues' TOMMY JOHNSON,

 

⑪'The Four Day Blues' ISHMAN BRACEY

 

⑫Mississippi Jail House Groan Rube Lacy

 

⑬Skip James - Cypress Grove Blues

 

⑭Mississippi Bracy/I'll overcome someday

 

⑮'49 Highway Blues' BIG JOE WILLIAMS

 

⑯Papa Charlie McCoy & Bo Carter Mississippi I'm Longing For You

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