レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.55
[64枚目]●ニュー・バース『ラブ・ポーション』<ワーナー>(76)
※本文を書くに当たり、鈴木啓志さんのライナーを大いに参考にしています。
ニュー・バースと言えば、77年の『ビホールド・ザ・マイティ・アーミー』が有名。本盤は、その一年前<ワーナー>移籍後の初アルバムとなる。私が持っているのは、14年"1000R&Bベスト・コレクション"シリーズの1枚。彼らのアルバム・デビューは、70年<RCAヴィクター>の『ザ・ニュー・バース』。編集盤を除くと本作は通算9枚目となる。因みにシングルは69年が初。アルバムとしては82年までリリースしている。ケンタッキー州ルイヴィル~デトロイトが活動拠点。ライナーによれば、結成にはハーヴィ・フークアとフィリップ・ミッチェルが関与。更に、ウィキペディアやdiscogsには、フークアと同じ元<モータウン>のヴァーノン・ブロックとメンバーのトニー・チャーチルも設立時の主な人物として名前が上げられている。
ライナーでも強調されているように、テナーのレズリー・ウィルソン(兄)とファルセットのメルヴィン・ウィルソン(弟)、紅一点のロンディ・ウィギンスのヴォーカル力が素晴らしく、併せて、演奏だけでなくコーラスワークも大したものである。グループの変遷をかいつまむと、ヴォーカル3人が所属していたナイト・ライターズから、ウィルソン兄弟は、アン・ボーガンとのトリオ、ラブ、ピース&ハピネスを経由してのニュー・バース結成となる。解散後の動きとしては、レズリーは87年に12インチを発表しているようだ。メルヴィンはギタリストとしての仕事が多かったようで、ロンディもゲスト・ヴォーカルとしてちらほらという感じだ。しかし、あれこれ調べてみると79年には、ロンディの代わりに別の女性シンガーが加わるものの、82年にカムバック。ただ、その後の動きは判らない。さらに、どの辺からか不明だが、レズリーとメルヴィンを中心に(正に新生)ニュー・バースが誕生。04年に『ライフタイム』なるアルバムをリリースしている。活動は現在も続いているようで、HPによると今年のツアーの告知もなされている。HPには女性シンガーも写っているのだが、それがロンディかどうかまでは判らず。『ライフタイム』のクレジットにはロンディの名前は無い。
アルバムの内容。レズリーの歌声は少年の様にも聴こえ、独特のメリスマ唱法とここぞと言う時の切迫感が魅力。メルヴィンのファルセットはよく抑制が効いていて、曲の流れに入る時など心地よい。これはサウンド創りの上手さでもあるのだろうけど。ロンディは、レズリーの影響か?コロコロこぶしが回る。キュートなハイトーンで、メルヴィンとスッと入れ替わる所などごく自然でソウルフルだ。1曲目の「フォーリン・イン・ラブ」からレズリーの世界全開。アルバム全体に言えるが現代R&Bに直結するような感覚もある。レズリーの歌い方自体現代的に思える。断言はできないが、サンプリング使用も結構あるのではないか。聴かせる歌は2曲目も続く。「ウィー・アー・オール・ゴッズ・チルドレン」。コーラスがゴスペルクワイヤー的でもある。「アイ・ネヴァー・フェルト・ジス・ウェイ・ビフォー」や「スロー・ドライヴィング」はミディアム~スローのファンクで、さりげないグルーヴ感覚に溢れている。「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は原曲のイメージに囚われるせいか、当初は大仰な歌い方にさえ聴こえたが、慣れればレズリーの丁寧な歌い込みに引き込まれる。ラストの「シュア・シング」は、前述したが、ロンディとメルヴィンの絶妙な繋ぎに聴き惚れる。コーラスも温かい。
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