レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.61
[70枚目]●マディ・ウォーターズ『アット・ニューポート1960』<チェス/MCA>(60/91)
※本文を書くに当たり、メアリー・キャサリン・アルディンのライナー及びオリジナル盤のジャック・トレイシーのライナーを大いに参考にしています。
私が持っているのは91年発売の日本盤で、モノラル音源のシングル等4曲がボーナス・トラックとして収録されている。因みに、今年リリースされた76年のボストンでのライブ盤に本盤がそっくり合体されている(ボーナス・トラック分はなし)。
世界的に有名な音楽フェスティバルは数々あれど、1954年にスタートしたニューポート・ジャズ・フェスティバルは、アメリカで開催された初めての「野外音楽フェスティバル」だと言う。マディ親分が登場したのは、タイトル通り1960年の7月で、5ヶ月後にはアルバムとなってリリースされている。ブルースのライブ盤としても初めてと言われている。しかし、このステージの後フェスティバルは2年間休止の憂き目に遭う。マディ達ブルースマンが登場したのは日曜の午後。前日のレイ・チャールズのステージで飲んで騒ぐ一部の観衆が暴動化、当局の判断で、翌日の演奏は許可されたがフェスティバル中止の断が下された。ブルース部門のMCを務めた詩人のラングストン・ヒューズは、フェスティバルの終焉を覚悟し即興の詩を作成、オーティス・スパンが作曲し、本盤に「グッバイ・ニューポート・ブルース」として収録されている。
ステージの模様はTV番組で放映されており、今回YouTubeで見つけた動画もその時のものかと思う。ただ、CDと内容はだいぶ違う。さらにライナーではCD未収録の「キャットフィッシュ・ブルース(ローリン・ストーン)」がオープニングとなっているがYouTube動画は途中に入っている。さらに動画にはベティ・ジェネットとサミー・プライス、御大ジミー・ラッシング入りの「ミーン・ミストリーター~ゴーイン・トゥ・シカゴ」が入っている。ギターとフィドルは当日の出演者ブッチ・ケイジ&ウィリー・トーマスと思われる。「アイ・ガット・マイ・ブランド・オン・ユー」「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」「アイ・フィール・ソー・グッド」そして全員参加と言われる「グッバイ・ニューポート・ブルース」が動画には含まれていない。
ボーナス・トラックの4曲はステージの1ヶ月前に録音。「タイガー・イン・ユア・タンク」と「ミーネスト・ウーマン」が合わせシングルである。メンバーは、ボーナス・トラックも含め、ジェイムス・コットン(ハープ)、パット・ヘア(ギター)、オーティス・スパン(ピアノ)、アンドリュー・スティーブンソン(ベース)、フランシス・クレイ(ドラム)の面々。
『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』のリリースがステージの2年前。ブルース・ファンには知られた存在であるのは言うまでもない。しかし、ニューポートという土地柄で「ジャズ・フェスティバル」と冠されている中、ブルースの認知度、マディ・ウォーターズの認知度がどの程度のものか推測するしかないが、動画を観れば白人観衆が目立つ中、次第次第に盛り上がっていく様は、CDからでも十分伝わってくる。マディの声は張りがあり、サウンド全体の推進力は抜群だ。これから、ブルース界のボスにのし上がっていく勢いを感じる。
ボーナス・トラックのスタジオ録音は、より楽器の絡みが感じ取れ、完成度の高さはため息が出るほどだ。ジェイムス・コットンのハープなどもライブでは空気のように漂う感があるが、こちらはより味わい深い。「アイ・ガット・マイ・ブランド・オン・ユー」は、ライブでは乗りを表に出しているが、スタジオ版はテンポ緩めでよりブルース度が高い。
こぼれ話をひとつ。ジャケット写真ではセミアコギターを抱えているマディ。しかし、ステージはテレキャスターで務めた。実は撮影の段階で、ジョン・リー・フッカーのギターを借りたとの事。そっちが絵になると思ったのかな?(ウィキペディアより)。裏ジャケはテレキャス。
I Got My Brand On You Bonus Track
hoochie coochie man Newport 1960
Soon Forgotten (Mono Studio Version)
Tiger in Your Tank(Bonus Track)
Got My Mojo Workin' (Newport 1960)
にほんブログ村
| 固定リンク
「Muddy Waters」カテゴリの記事
- 2024年8月7日(水)立秋ですって(2024.08.07)
- 2024年8月6日(火)マディ、ふたたび(2024.08.06)
- 2024年8月3日(土)ラリーの果てに(2024.08.03)
- 2024年2月6日(火)明日はおそらく腕が痛む(2024.02.06)
- 2024年2月5日(月)お手伝いスタート(2024.02.05)
「My Collection」カテゴリの記事
- レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.100(1)(2024.08.24)
- レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.99(2024.07.22)
- レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.98(2024.05.08)
- レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.97(2024.04.22)
コメント