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2020年10月

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.65

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[74枚目]●ボニー・レイット『ギヴ・イット・アップ』<ワーナー>(72/98)

 

 

※本文を書くに当たり、小倉エージさんのライナーを大いに参考にしています。

 

 

SNSの効用のひとつは、音楽ファンとの交流から得られる未聴音楽の情報だ。ボニー・レイットの名前は知っていたし、YouTubeで検討すればおおよその事は判るものの、やはり生の意見を聞いた方が早い。ブルース好きの人が、ボニー・レイットのオススメ盤として必ずと言っていいほど上げておられたのが本盤だった。日本盤として初めてリリースされたのもこれとの事。但し、デビュー盤ではなくセカンド・アルバムとなる。小倉さんもライナーでボニー初体験と書かれているので、当初は大きな話題を呼んだというほどでもなかったのだろう。日本でのCD化は90年が最初。私が持っているのは、98年<フォーエヴァー・ミュージック>シリーズの一環。

 

 

とにかく、抵抗なくスイスイ聴ける。ブルースに精通した上で体現化出来ているのを感じる。ゆえに、ブルースにとらわれ過ぎずにブルースにリンクしている音楽を取り入れている面白味がある。ヴォーカルも無駄な力みがなく、飾らず真っ直ぐで好感が持てる。

 

 

ボニーは、カリフォルニア州バーバンクの生まれ。父親は、ミュージカル・コメディーのスター、ジョン・レイット。その為、ハリウッドとニューヨークを行き来する生活で、最終的にハリウッドに落ち着く。両親は熱心なクエーカー教徒で、父親が旅回りの一座に加わっている9歳~15歳の間、教徒の子供たちが集まるサマー・キャンプでボニーは過ごしていた。キャンプ地はニューポート近くにあり、フォーク・フェスティバルを通してフォーク・ソングの世界に触れ、更に12歳頃からは、フォークよりブルースに熱中していったとの事だ。因みにクエーカー教徒は、急進的な活動に身を投じる人が多く、ボニーにもその影響があるのか、本盤は、師と仰ぐフレッド・マクダウェルの他に、北ベトナムの人民に捧げると銘打っている。しかしながら、政治的な歌詞の曲があるわけではない。

 

 

ブルース浸りの中ケンブリッジの大学に入ったが、中退してフィラデルフィアで仕事をする一方、プロシンガーを目指しクラブでも歌っていた。一旦ケンブリッジに戻り、白人ブルースマン、ジョン・コーナーと一緒に歌うなどして徐々に頭角を現してゆく。ケンブリッジ~ボストン~ニューヨークと活動の幅を広げ、<ワーナー>との契約に至った。1stは、白人ブルースマン、ウィリー・マーフィーのプロデュースで、相棒フリーボの他に、ジュニア・ウェルズやA.C.リードも参加しているとの事。音を聴きもしないのに判断してはいけないだろうが、色々調べた結果、2ndよりブルース度が濃いようだ。逆に言うと、ボニー・レイットらしさというのは2ndで醸されたのではないだろうか。

 

 

①いきなり、時代を巻き戻すようなナショナル・スティール・ギターのスライドが流れる。しかし、ブルースの沼には向かわず、ナチュラルなサウンドに続く。途中からクラリネットやホーンが幅を利かせるのは親父さんの影響だろうか。ある種の"レビュー感覚"を感じる。もっとも、ライナーに拠れば、この時期のブルース系ロック・ミュージシャンはオールド・ジャズをサウンドに取り入れる傾向にあったらしい。いずれにしろ冒頭の一曲にふさわしい。②も自然に展開していく。キャロル・キングを想起。③ニュー・オーリンズの歌姫、バーバラ・ジョージのヒット曲。ペタペタスタスタしたドラムに、極端なメリハリはないが、ゆらゆら揺れるN.O.サウンドだ。④爽快な歌声を聴かせるボニーだが、微妙な哀切感を孕んでいる(全体的にそうだけど)。⑤アルバム全体のバランスは崩さないながらも、重量感のあるブルース。⑦ジャクソン・ブラウンの作品。ストーンズ調のルーズなロックンロールだ。⑧フレッド・マクダウェルと同じく交流のあった、ブルースウーマン、シッピー・ウォレスの作品。シッピーはテント・ショーの経験などもあるので、ボニーとは音楽的に重なる部分があったのかも知れない。⑨全ての楽器がパーカッシヴに躍動するボニー作品。サンタナぽいかな?⑩エリック・カズ作品。哀愁と温もりを感じる。

 

 

 

 

 

 

私は、この時期のアメリカン・ロックの知識がほとんど無いので、参加メンバーの名前を聞いてもピンとこない部分があるのが正直なところ。ただ、小倉エージさんの丁寧なライナーを読んで調べてみると、ここに登場しているミュージシャンが新鮮味に溢れているのに気が付く。グループ名で上げ申し訳ないが、ハングリー・チャックの1stが72年、オーリアンズの1stが73年、私がこのアルバムで名前を知り、後にアルバムを2枚買うほど気に入ったエリック・カズの1stが72年、参加はしていないが曲を取り上げているジャクソン・ブラウンの1stも72年、ハープで参加のポール・バターフィールドは、65年~71年までのブルース・バンドの活動を経て、73年にソロ作を出す直前だ。この他は、盟友フリーボを初めとする友人たちが参加している。若くして才能のあるミュージシャンが集まり創り上げたアルバムだけに、渋みを沈殿させながらもフレッシュな感覚に満たされている。それが名盤として残り続ける所以だろう。

 

 

① Give It up or Let Me Go

 

② Nothing Seems to Matter

 

③ I Know

 

④ If You Gotta Make a Fool of Somebody

 

⑤ Love Me Like a Man

 

⑥ Too Long at the Fair

 

⑦ Under the Falling Sky

 

⑧ You Got to Know How

 

⑨ You Told Me Baby

 

⑩ Love Has No Pride

 

 

 

 

 

 

 

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ボブ・ディランの収穫

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フラッと立ち寄ったブックオフ熊本渡鹿店で、ボブ・ディランの新譜『ラフ&ロウディ・ウェイズ』を捕獲しました。話題作だけに手が伸びましたね。


 


 

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ビル・ドゲット feat. エディ・デイヴィス&エディ・ヴィンソン

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●『ビル・ドゲット・フィーチャリング・エディ・デイヴィス&エディ・ヴィンソン』<ブラック&ブルー/ウルトラヴァイヴ>(78/20)

 

 

※本文を書くに当たり、田中英俊さんのライナーを大いに参考にしています。

 

 

ビル・ドゲットの強烈なオルガンに、2人の"エディ"によるサックスが絡み、極上のジャンピン・サウンドが展開されている。エディ・ロックジョウ・デイヴィスのテナーは逞しく、エディ・クリーンヘッド・ヴィンソンのアルトには艶がある。オルガン・ジャズのアルバムは、個人的にはビッグ・ジョン・パットン『レッテム・ロール』に次ぐ買い物。あちらはサックスがなく、ヴィブラフォンやギターが参加している分、ファンキーながらトロンとしたサウンドが印象に残った。ビル・ドゲットは、サックスの咆哮に触発されるようなギャンギャン弾きが目立つ。しかしながら、細かいテクニックも見事で、心奪われる職人芸を聴かせてくれる。

 

 

<ブラック&ブルー>は、ブルース・ファンにも著名なフランスのレーベルで、この再発シリーズ<ブラック&ブルー・リアル・ジャズ・クラシック>のラインナップには、クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンや、タイニー・グライムスの名前も上がっている。私のようなジャンプ系のブルース・ファンにも愉しめる内容のようだ。尚、今回の再発CDにはボーナス・トラックが4曲ある。⑦「イン・ア・メロウ・トーン(テイク2)」⑧「カミング・ホーム(テイク1)」⑨「トッツィー」(今回YouTube貼り付け)⑩「スピーディー・ビル」(この速弾きが素晴らしい。お聴かせ出来ず残念)だ。

 

 

①エリントン作品、②ドゲット作、③E.HAGAN作、④⑨ヴィンソン作、⑤ヴァン・ヒューゼン作品でシナトラで有名、⑥ガーシュウィン兄弟作との事。

 

 

① In A Mellow Tone

 

② Hey Little Doggey

 

③ Coming Home

 

④ Double Eddie

 

⑤ Here's That Rainy Day

 

⑨ Totsy

 

 

 

 

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ジャッキー・ウィルソン

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●ジャッキー・ウィルソン『ザ・ヒストリー・オブ・ジャッキー・ウィルソン』<ブランズウィック/ウルトラヴァイヴ>(14/20)

 

※本文を書くに当たり、松尾潔さん×西寺郷太さんによる対談形式ライナー及び高橋道彦さんの曲解説を大いに参考にしています。14年に<ブランズウィック>シリーズでリリースされた盤が、20年<名盤1000円シリーズ>の一枚として出された物を所有。日本で初めて編まれたベスト盤。

 

"ミスター・ダイナマイト"の称号は伊達ではない。凄い迫力である。しかも、決めどころのみでシャウトするというより、声を出す全ての部分に圧力を感じるのだ。しかも、しなやかな力強さだ。曲によっては、ストリングス盛り盛りだったり、引っかかりの無い女性コーラスだったりする曲もあるが、ジャッキーの歌声の引力が強烈なので、一向に気にならない。③「チェイン・ギャング」の"ウッ""アッ"にしろ、やけに生々しく聴こえる。一般的に、モータウン/ノーザン調の曲が多いとされ、それは確かだが、ライナーにも書かれている通り、ジャッキーが居たから<モータウン>が誕生したという考えに沿った方が肯ける。ベリー・ゴーディーが書いた曲をジャッキーが表現する事で、ゴーディーも会得したものは有ったに違いない。少なくともノーザン系ソウルを語る上で外せない重要人物である事は間違いない。

 

飛翔的快感を覚える①、裏声のタイミングもバッチリだ。ファンク・ブラザーズの快演も特筆すべき。⑤~⑨や⑰辺りがノーザン乗りか。④はジャイヴ調のエルヴィス?⑦男性コーラスやオルガンの効果か、ゴスペルを感じる。それもそのはず、ディキシー・ハミングバーズのベース・シンガー、ジミー・ジョーンズが参加している。ジャッキーはハミングバーズのアイラ・タッカーの影響を受けているとか。"ミスター・ダイナマイト"のルーツ、ここにあったか。⑩⑪は落ち着いた曲調で多彩なシャウトが愉しめる。⑫⑬⑯辺りがポップス寄り。⑬「トライ・ア・リトル・テンダネス」もオーティス版というより、オリジナル寄り⑭⑮はリズム&ブルース的醍醐味を感じる。⑮の立ち上がりはJB的。⑱はラスト・アルバム内の一曲。迫力は抑えめだが静かなるダイナミズムで、非常に新鮮味を感じる。まだまだ、新境地へ向かっていたのではないかと思うと、切なさが増す。

 

① (Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher

 

② LET'S LOVE AGAIN

 

③ Chain Gang

 

④ Reet Petite

 

⑤ That's Why (I Love You So)

 


⑥ Soul Galore

 

⑦ I Just Can't Help It

 

⑧ Whispers (Gettin' Louder)

 

⑨ Since You Showed Me How To Be Happy

 

⑩ No Pity

 

⑪ Doggin' Around

 

⑫ To Be Loved

 

⑬ Try A Little Tenderness

 

⑭ Lonely Teardrops

 

⑮ Baby Workout

 

⑯ This Love Is Real

 

⑰ I Get The Sweetest Feeling

 

⑱ It Only Happens When I Look At You

 

 

 

 

 

 

 

 

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