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2021年4月

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.68

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[77枚目]●ココモ・アーノルド『オールド・オリジナル・ココモ・ブルース』<Pヴァイン>(10)

 

 

※本文を書くに当たり、小出斉さんのライナーを大いに参考にしています。

 

 

<Pヴァイン>が戦前ブルース作品を1,500円でリリースしたシリーズの一枚。<デッカ>作品(34~38年)に、30年に<ヴィクター>に残した初録音の2曲(ギットフィドル・ジム名義)がプラスされている。「ロバート・ジョンソンに影響を与えたブルースマン」という紹介のされ方が一般的。確かに、ギターのフレーズやファルセット遣いに類似点が見られる。そういった部分に着目するのも一興だが、まずは素直に聴き込んでみたい。

 

 

ギターを膝の上に寝かせて弾くラップ・スタイルで、ナイフ・スライドではないかと小出さんは推測されている。左利きで、左手でピッキング、右手でスライドの形。時々音程の乱れもあるが、それを上回る迫力とスピード感だ。ヴォーカルも逞しい。ただ、豪快な歌と言うより、スコーンと抜けるような爽快さを強く感じる。ゴスペル的とも言える。

 

 

本名はジェイムズ・アーノルド。1901年生まれが定説だが、ウィキペディアに拠れば1896年とする研究者もいるとの事。「ココモ」というのはインディアナ州の都市。②「オールド・オリジナル・ココモ・ブルース」のオリジナルは、ピアニストのジャボ・ウィリアムスで、スクラッパー・ブラックウェル版もある「ココモ・ブルース」。アーノルドが流行らせた為「ココモ」というニックネームを得たものと思われる。因みに、ロバート・ジョンソンが舞台をシカゴに移し、「スウィート・ホーム・シカゴ」へと発展させている。「ワン・アンド・ワン・イズ・トゥー・・・」というお馴染みの歌詞も出てくる。

 

ココモ・アーノルドの出生地はジョージア州のラヴジョイ(アルバート・キングのアルバム・タイトルに取り上げられている)。1919年、ニューヨーク州バッファローの製鉄工場で働いた後、ペンシルヴァニア州ピッツバーグ、インディアナ州ゲイリーと渡り歩き、一旦ミシシッピ州に南下したところで、トミー・ジョンソンやイシュマン・ブレイシーと交流。彼らのどこか洒脱な感覚の影響も受けているのではなかろうか。時代のトレンドもあるだろうが・・・。

 

 

29年にはシカゴへ。禁酒法下でブートレッガー(酒類の密売や密造に関わる者)と釣り師を職業としていた。30年にメンフィスへ移動、<ヴィクター>のフィールド・レコーディングのスカウトを受け、前述の通りギットフィドル・ジムの名で録音する。「ギットフィドル」とは、スライド音からフィドルが連想される為、スライド・ギター・スタイルをギットフィドルと呼んだのではないかと小出さん。サム・コリンズの広告でも使われている文言だそう。

 

 

その後、シカゴに戻りブートレッガーを続けていた時、カンサス・ジョー・マッコイが<デッカ>のメイヨ・ウィリアムスを仲介。ただ、しばらくレコーディングはしなかった。禁酒法が解除になって、商売が立ち行かなくなって初めてスタジオ入りしたというマイペースぶり。しかも、デビュー盤が両面ヒットするという笑いの止まらない(であろう)好調ぶりである。それどころか、その後も高い完成度を保っているのはさすがである。㉒がラスト・セッションで38年5月22日。その後クラブでの演奏は続けていたものの、41年には音楽界から去る。59年にリサーチャーに「再発見」されたのだが、頑なに音楽活動を拒む。60年代に活動を再開したらしいが、本格的なものではなかったよう。こういうエピソードを知ると、奔放なギター・スタイルや直情型ヴォーカルに聴き取れるように、頑固で一本気な性格だったんだろうと思われる。

 

 

①はココモ・ブルースの基本形といった感じ。ロバート・ジョンソンとの共通点も把握しやすい。③はチャーリー・スパンドの曲。手数の多いギターが痛快。④では「アイ・ビリーヴ、アイ・ビリーヴ・アイル・ダスト・マイ・ブルーム」⑥では「アイ・ビリーヴ~アイル・ゴー・バック・ホーム」といった歌詞が出てくる。④~⑧辺りは、ややテンポが遅い分、スライドや下降フレーズの魅力が伝わりやすいような。ヴォーカルももちろん素晴らしい。⑨はスペックルド・レッド「ダーティ・ダズン」が原曲。ラップのような早口ヴォーカルに、高速だがメリハリもあるギターが凄まじく、思わず笑ってしまう。⑩はスロー・テンポ。甘いビスケットは女性の象徴とすると、ローラーは説明不要だろう。⑪もスローで聴き応えあり。歌声の伸びも良い。

 

 

⑫⑬のリロイ・カー曲も、濃度高めのココモ・スタイルに。⑭は、ジェイムズ"プードル・イット"ウィギンス+ボブ・コールの作品。リトル・リチャード「キープ・ア・ノッキン」に繋がる。歌もギターも軽快だ。⑮落ち着いた展開。アンノウン・ピアニストが絡む⑰は、味変曲。⑱のギターも手数が多く乗れる。⑲はギター・フレーズの外れたような合ってるような感覚が何とも。⑳は故郷ジョージアに思いを馳せた曲。㉑は、ピーティー・ウィートストローがピアノで参加。軽快に飛ばす。ラスト録音の㉒は、ヴォーカルに一段と力強さを感じる。㉓㉔が<ヴィクター>発正真正銘の初録音。㉓は淡々としているが、㉔は、ブラインド・ブレイクのラグみたいに流暢なギター・プレイが愉しめる。

 

 

① Milk Cow Blues

 

② Old Original Kokomo Blues

 

③ Back To The Woods

 

④ Sagefield Woman Blues

 

⑤ Old Black Cat Blues (Jinx Blues)

 

⑥ Sissy Man Blues

 

⑦ Front Door Blues

 

⑧ Back Door Blues

 

⑨ The Twelves (Dirty Dozens)

 

⑩ Biscuit Roller Blues

 

⑪ Chain Gang Blues

 

⑫ How Long, How Long Blues

 

⑬ Bo Weavil Blues

 

⑭ Busy Bootin'

 

⑮ Let Your Money Talk

 

⑯ Policy Wheel Blues

 

⑰ Stop, Look and Listen

 

⑱ Big Leg Mama (John Russel Blues)

 

⑲ I'll Be Up Someday

 

⑳ Red Beans and Rice

 

㉑ Set Down Gal

 

㉒ Bad Luck Blues

 

㉓ Rainy Night Blues

 

㉔ Paddlin' Madeline Blues

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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