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2021年9月

【映画】サマー・オブ・ソウル

6

 

評判通り凄かった。終始エネルギッシュでリズミカルな空気に包まれた映画だ。それはライブ演奏の場面だけでなく、当時の社会情勢が語られる場面でも、要点が勢いよく投げ出される感じで心に食い込んでくる。図抜けた歌唱、熱い演奏、キレの良いダンスなどと同じテンポで迫ってくるのだ。つまり、社会への怒り、生活の苦しさ、強く生きる姿、1969年の黒人が置かれた立場が、音楽と社会情勢が組み合わさった様相で観る者に伝わる。

 

 

 

関係者のインタビューが挟まれるが、観客として参加していた人物たちの思い出話が特に面白かった。映画で何度も映される黒人だらけの大観衆だけ観ていると"風景"に近い感覚になるが、その中の人物にスポットを当てる事でフェスティバルを生々しく感じる事ができた。

 

 

各ミュージシャンも変化の時を迎えていた。スティーヴィー・ワンダーは新境地を目指していた。スライ・ストーンももしかしたらそうだったかも知れない。マヘリア・ジャクソンは晩年の域に達していて、若きメイヴィス・ステイプルズの力を借りて懸命に歌った。デヴィッド・ラフィンは68年テンプスを脱退したばかり。グラディス・ナイト&ザ・ピップスは最初のヒットを放ったところ。エドウィン・ホーキンス・シンガーズ「オー・ハッピー・デイ」は正に69年のヒット曲。フィフス・ディメンション「アクエリアス」も69年発。彼らはミュージカル曲を取り上げた事で、白人だと思われていたと。それが悔しかったとの事だが、映画でのステージを観る限りソウルフルだ。因みに「アクエリアス」は私が小学生の頃だったか、洋楽の魅力に引き込んでくれた一曲である。

 

 

とにもかくにも、このフェスティバルの存在自体が知られる事がなく、40時間ものフィルムが眠り続けた事に茫然自失となる。と同時に復活させてくれた事にひたすら感謝である。

 

 

 

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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.75

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[84枚目]●TQ『ザ・セカンド・カミング』<エピック>(00)

 

 

ヒップホップ系の音楽は、ノリが身上である。私の場合どうしても歌物に惹かれるので、ラップオンリーより、ラップと歌の混在状態がより好きだし、テンポはゆったりめの方が乗れる。TQもその範疇にいる。

 

 

TQは本名Terrance Quaites。  1976年アラバマ州モビールで生まれ、カリフォルニア州コンプトンに引っ越した後16歳でジョージア州アトランタに居住。93年~95年R&Bグループ、カミング・オブ・エイジで活動。ソロに転じて98年「ウェストサイド」のヒットを生み、同年1stアルバムを発表。本作はタイトルで推察される通り、2ndだが、なぜかアメリカでのリリースはなく(縮小版はある)EU発。3rdはUKから出たが、その後はUSリリースのようだ。discogsでは2019年のアルバムまで確認できた。

 

 

冒頭触れたように、終始乗りの良さが目立つ。借りものにしろオリジナルにしろキャッチーなフレーズも度々。②「G.H.E.T.T.O」では、「ゲットー」を一文字ずつ発音する事でリズミカルさが生み出されている。日本語だと一文字ずつ発音しても、ぶつ切り状態になるだけで新味はない(使い方次第ではあるが)が、英語は言葉がアルファベット化する面白味がある。強調されたベース音と良い対比を成している。③リサ・スタンスフィールド「オール・アラウンド・ザ・ワールド」のフレーズをサンプリング。ヴォーカルの重ね具合もソツ無し。④はヒット・シングルらしくフレーズが耳に残る。ビズ・マーキー「ジャスト・ア・フレンド」の借りものではあるが。⑤はPVがどぎつい。本盤は全般的に落ち着いてソフトでしなやかなサウンドなのだが、この曲だけは過激に迫っている。⑦ジャ・ルールのスパイシーなラップが先導。60年代イギリスのテレビドラマ『ザ・セイント(邦題・天国野郎)』のテーマ曲を使用。⑧⑩は特にリズムにタメがあり、好きなタイプ。⑩はラップのような歌のような絶妙な按配。一時期よく聞かれたアコースティック・ギターの爪弾きも。⑪ベースがよく弾んでいる。⑮ウォーレンG参加でエディ・マネー「トゥー・チケッツ・トゥー・パラダイス」使い。終盤の⑯⑰は歌で勝負。熱唱型ではないが温かみは感じる。⑱は隠しトラックで明るくダンサブルな一曲。ゲストが集結している。ゲストと言えば、ジャ・ルールとウォーレンG以外のゲストを羅列しておこう。③ホーミー、⑧ヴァンダルZ、⑪レイジー・ボーン、⑬P-NUT、⑭GIGI'Sとなっている。

 

 

① come again interlude

 

② G.H.E.T.T.O

 

③ Internationally Yours

 

④ Daily

 

⑤ Super Bitches

 

⑥ Caught (Interlude)

 

⑦ How can i be down

 

⑧ Hold It Down

 

⑨ What The Fuck? (Interlude)

 

⑩ Best Friend

 

⑪ One Day

 

⑫ Mama (Interlude)

 

⑬ Lite Skinned Freckle Face

 

⑭ Hard Life

 

⑮ The Grind F

 

⑯ The one

 

⑰ Been a long time

 

⑱ Ooh La La La

 

 

 

 

 

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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.74

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[83枚目]●ジョージ・クリントン&ザ・Pファンク・オール・スターズ『プラッシュ・ファンク』<Pヴァイン>(92)

 

 

※本文を書くに当たり、河内幸一さんのライナーノーツ及び山辺容子さん訳のジョージ・クリントンインタビューを大いに参考にしました。

 

 

最初に整理しておくと、いわゆる「Pファンク一派」は、パーラメント、ファンカデリックを二本柱とする他、Pファンク・オール・スターズ名義で『アーヴァン・ダンス・フロア・ゲリラズ』やライブ盤も出している。本盤も「Pファンク・オール・スターズ」名義だが、ここでは幅広くメンバー名義の曲なども含めているという意味での「オール・スターズ」である。そして未発表作品集。<Pヴァイン>発で、ジョージ・クリントンの助力を得て92~93年の間5作品がリリースされている。本盤はその2作目だ。discogsによれば「ジョージ・クリントン・ファミリー・シリーズ」として計7枚US盤が出ている。因みに『プラッシュ・ファンク』という同タイトル・同内容の一枚があるが、US盤ではVol.3と銘打たれている。

 

 

①まずはファンカデリックでスタート。ヴォーカルやコーラスも含め各々のパートが放つグルーヴが組み合わさり、「グルーヴの輻輳状態」を呈している。これはもちろんファンカデリックに限らず、Pファンク全般に感じられる魅力である。これで全ての曲の解説となると言っても過言ではないかも。81年作。②ロン・ダンバーは2018年に亡くなっているが、クリントンより2歳上の39年生まれ。<モータウン>のライターとしてスタート(クリントンの弁によればかなり有名な曲のゴースト・ライターもやってたとか)。その繋がりだろうH=D=Hに協力してチェアメン・オブ・ザ・ボード「ギブ・ミー・ジャスト・ア・リトル・モア・タイム」「パッチズ」(クラレンス・カーター版も著名)、フリーダ・ペイン「バンド・オブ・ゴールド」のコンポーズに関わっている。Pファンク一派では、パーレットのプロデューサー兼ライターとしての功績が大きい。82年作。引き摺るようなリズムが効果的な中、気勢を上げるロンだ。③ドラム、ベース、ヴォーカルにクレジットされているダニー・スターリングを中心とするユニット。80年作。そもそもは、パーレットのバンド・リーダーでベーシスト。ギターのカッティングも冴えている(トニー・トーマス、ロドニー・クラッチャー)。④クリントン総帥のお気に入りシンガー、ジェシカ・クリーヴス。クセのある歌い方だがイヤミが無い。ホーニー・ホーンズ&ブレッカー・ブラザーズのホーン陣もカッコ良く、デヴィッド・スプラッドリーのジャズ的ピアノも効果的。80年作。ジェシカはEW&Fに在籍していた事も。2014年65歳の若さで亡くなっている。⑤フレッド・ウェズリー率いるホーニー・ホーンズ。メイシオ・パーカーも参加し、キレの良いサウンドを聴かせている。ブーツィーのベースも流石。79年作。⑥フロウはフローレンスという名前で元アイケッツのメンバーでもある。ほど良いハスキー・ヴォイスで力感も十分。72年の録音という事は、ブーツィーが正式加入する前にハウス・ゲスツと共に録音しているのが貴重とライナーに。

 

 

⑦軍団一の才人、ジュニー・モリソン。クリントンのインタビューによれば、少しのヒントから、テーマにピッタリはまる曲を作りあげるそうだ。ヴォーカル、演奏ともジュニーがプレイしている。78年作。オハイオ・プレイヤーズの初期メンバーでPファンクでの活躍の後は、90年ソウルⅡソウルのプロデュースも手掛けている。97年にはPファンク絡みでロックの殿堂入り。2017年に亡くなっている。⑧ライナーによればロン・ダンバーによる<インヴィクタス>感覚が感じ取れるとの事。確かにファンクというよりはソウル。良い意味での耳休め。80年作。ブライズの経歴を改めて書いておくと、ファミリーストーンのメンバーだったドーン・シルバとリン・メイブリーでスタート。リンが抜けた後はシーラ・ホーンとジーネット・マグルーダーの2名が参加。リンは79年に抜けたとの事なので本曲は3人体制のものかと。⑨ジョージ・クリントンの息子トレイ・ルイスとウェディング・ドレスのギタリスト、アンドレ・フォックスのコラボ。キレキレのファンクを聴かせる。ブライズの合いの手もノリノリ。81年作。⑩ロン・フォードは、パーレットやブーツィー『ウルトラ・ウェイヴ』のバック・ヴォーカリストがスタート。ショックというファンク・バンドの感覚ありとライナーに。カオス的というよりシャープだ。80年作。2015年67歳で他界。⑪マイケル・ハンプトンの独壇場!80年作。⑫がクリントンのインタビューとなる。

 

 

ボブ・ディランが80歳を迎えたというのが話題となっていたが、ジョージ・クリントンも同い年の80歳である。本盤のインタビューでは各メンバーの素晴らしい面を褒め称えているが、クリントン自身も言うまでもなく素晴らしいファンカーであり、プロデューサーである。ディランが彼らしさを失わずに一途に音楽道を突き進んでいるのと同じく、クリントンも「変わりゆく変わらぬ人」である。

 

 

 

 

① Funcadelic May Day(S.O.S.)

 

② RON DUNBAR- these feet are made for dancin

 

③ Sterling Silver Starship - Booty body ready for the plush Funk

 

④ I Really Envy the Sunshine - Jessica Cleaves

 

⑤ HORNY HORNS- lickety split

 

⑥ Flo - Common Law Wife

 

⑦ Junie Morrison / Super Spirit

 

⑧ Brides Of Funkenstein - Love Don't Come Easy

 

⑨ Tracey Lewis & Andre Foxxe with Flastic Brain Flam-I Can't Stand It

 

⑩ Ron Ford– Monster Dance

 

⑪ Michael Hampton–We're Just Funkers

 

 

 

 

 

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