レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.79
[88枚目]●ジャネイ『サタデイ・ナイト』<イルタウン/モータウン>(97)
※本文を書くに当たり、出田圭さんのライナーを大いに参考にしています。
94年発売の1stアルバムが話題を読んだ後の2ndが本盤。1stの充実度は高い評価を受け、現代R&Bの名盤をリストアップする際には、必ずと言って良いほど登場する。本盤も彼女たちの実力が十分発揮された一枚であり、アルバムの発表が本盤で途絶えているのは、不思議でもありそれなりの理由があったのではと勝手に推察してしまう。
レネー・ヌーフヴィルとジーン・ノリスが出会ったのは、フィラデルフィアのテンプル大学。DJジャジーF&ザ・フレッシュ・プリンスの「サマータイム」などに参加した後、ザ・45キングを中心に立ち上げられ、後にクイーン・ラティファが中心となったユニット「フレイヴァー・ユニット」の一員に。ノーティー・バイ・ネイチャーも参加していた同ユニットは、所謂「ソウル・ルネッサンス」という黒人音楽の新しい動きを促進した一団でもある。そういった背景を考えると、ジャネイの音楽にトレンディーでありながら確固たるポリシーを感じるのも肯ける。
1stでも全面的にプロデュースしたノーティー・バイ・ネイチャーのケイジーが、本盤でも協力している。余談だが、私はケイジーのプロデュース作品が好きで、知らないミュージシャンでもケイジー関連作だから買ってしまうという事が何度か有った。特にタメの効いたリズムを中心に展開する部分が気に入っている。本盤でも十分味わえる。
ジャネイはスタイリッシュでクールなイメージで捉えられがちだが、しなやかな力強さがあり、ハーモニーの美しさが絶品で、繰り返し聴きたくなる良い意味での麻薬性がある。更に2人とも作詞作曲が出来る為、サウンド・プロデュース能力にも長けている。本盤だと、①~⑦と⑰がレネーの作詞、⑪⑫がレネーの作詞作曲、⑩⑬⑮がジーンの作詞作曲、⑭が共作の作詞にジーンの作曲。関わっていない⑧⑨がカバー曲となる。
①アシュフォード&シンプソン「イット・シームス・トゥ・ハング・オン」をさりげなく使った曲。②力強さと美しさのジャネイの魅力が存分に味わえる。ファンキーなタッチも潜んでいる。③ベースのメリハリが効いている。ギターとピアノの"装飾"も良い。⑤端正なハーモニーで始まり、乾いたドラムと弾むベースの中を低音から高音まで歌声が舞う。⑥アンタッチャブルズのエディF.の作曲&プロデュース。親しみやすいメロディーだ。⑦ヒューバート・ロウズ「ホワット・ア・ナイト」をサンプリング。声の張り具合が心地好い。⑧シック「グッド・タイムズ」をカバー。シックとジャネイには共通したものを感じるが、良い意味で裏切っている。重めのリズムを基本にヴォーカルも元気に跳ねている。⑨ビリー・ジョエル曲のカバー。ビリーの作る曲に込められた、独特の愁いを上手くR&B化している。
⑩静かなバラード。ここでもヴォーカルとハーモニーの魅力は発揮され、ありきたりの曲では終わっていない。⑪ジャズ的トランペットに始まり、ささやくような声の交歓が曲のベースとなる。⑫⑬とゆったりした曲が続く。⑬は、解説でベイビーフェイスやブライアン・マクナイトもたじろぐと書かれているが、確かに美メロ。⑭は静かな盛り上がりを見せる。⑮も美メロ曲と言えるだろう。ハーモニーも美しい。⑯ウィル・ダウニングとナジェー(フルート)が参加。ボーナストラックの⑰は、バラードの連続から目を覚ますようなダンス・チューン。イージー・モー・ビーがプロデュースでラップも彼ではないかとの事。
オリジナル・アルバムが途絶えても客演は多かったようで、なるほどこのハーモニーなら誰しも惚れ込み使いたくなるだろう。
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