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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.87

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[96枚目]●エルモア・ジェイムズ『ザ・スカイ・イズ・クライング : ザ・ヒストリー・オブ・エルモア・ジェイムズ』

 

 

※本文を書くに当たり、『ブルース&ソウル・レコーズ』誌 No.150 (19年12月号)のエルモア・ジェイムズ特集記事を大いに参考にしています。

 

編集盤も数多く組まれているエルモアだが、本盤は、<ライノ>が93年にリリースしたもの。一番の目玉は<トランペット>に録音された、最初の「ダスト・マイ・ブルーム」が収録されている点だろうか。全体的には51年~61年に発表された曲を集めている。

 

エルモアの録音デビューは、51年サニーボーイ・ウィリアムソンⅡの作品に参加した所からだ。33歳の時だが、それまで10年間ほど演奏活動は行っていた。サニーボーイとのセッションの3回目に、エルモアのリーダー録音が持たれた。それが本盤①となる。一般的にイメージされる豪快な「ダスト・マイ・ブルーム」とは感触が違う。ギターのフレーズは、サニーボーイのいなたいハープに合わせるような、訥々とした印象さえ受ける。但し、ヴォーカルの迫力は十分にある。51年11月に発売され、52年1月には南部で火が点き、4月には全国R&Bチャートに上っている。最高位は9位。

 

因みに、①のB面はエルモアではなく、ボボ・トーマスの「キャットフィッシュ・ブルース」だ。それでいながら両面とも名義は Elmo James となっている。

 

②は60年<チェス>のシングル盤。ホームシック・ジェイムズのギター、ジョニー・ジョーンズのピアノ、J.T. ブラウンのテナーサックスなどがサポートしている。緩やかなギターだが、ヴォーカルの熱量は相変わらず凄いものがある。聴く方も力が入る。③は53年<フレアー>発シングル。ジョニー、J.T.の他、ランサム・ノウリングのベースとオディー・ペインのドラム。強烈なスライド・プレイが堪能出来る。④は54年の<フレアー>シングル。アイク・ターナーとキングズ・オブ・リズムが参加している。ジョニーとオディーの名も。「ダスト・マイ・ブルーム」にヒットの芽が出始めた頃、<モダン>へ移籍し、アイクとの縁が出来ている。リズム&ブルースの感覚も残したブルースで、ギターとヴォーカルがよく絡んでいる。⑤は53年<フレアー>シングル。アイクがピアノで参加している。お決まりのブルーム調だ。というか、この年のセッションから新生エルモアが誕生したようだ。「ダスト・マイ・ブルーム」も録音されたそうだが、マスターが消失したらしい。ピアノも活きが良い。⑥はジョー・ターナー&ブルース・キングス名義で、当然ジョーが歌っている。全体のサウンドは完全にエルモア・ワールド。53年の<アトランティック>シングル。R&Bチャート6位。ジョニーも参加。⑦は53年録音だが、69年<チェス>のアルバム『フーズ・マディ・シューズ』に収録。ジョニー、ランサム、オディー、J.T.の鉄壁の布陣。ストレートなブルースで、サックスやピアノも良い味を出している。ブルーム調以外のエルモアのギターも良い。⑧も『フーズ・マディ・シューズ』に収録。メンバーは②と同じ。同アルバムは私も持っていて、この曲は特に好きだった。⑨57年<チーフ>シングル。<モダン>時代とは味わいが違う。モダンを辞めたのにサウンドはモダンになっている。エルモアはヴォーカルのみのようで、若きシル・ジョンソン(ウィリー・ジョンソン名義)がギター、エディ・テイラーがベース・ギター表記、ウィリー・ディクソンがベース、フレッド・ビロウがドラムだ。ソリッドなギターがめくるめく。⑩60年<ファイア>シングル。ジョニー、オディー、J.T.にホームシック・ジェイムズがベースで参加。エルモア・ブルースのひとつの完成形だ。聴き応え十分。⑪54年<フレアー>シングル。メンバーが特異。大人しめな曲だ。

 

⑫は②のフリップ・サイド。ブルーム調ではあるが、ややゆったりと展開している。⑬は61年<ファイア>シングル。ニューオーリンズ録音だ。ビッグ・ムース・ウォーカーのピアノ、サム・マイヤーズのハーモニカなど。エルモアは違反行為を頻発し、音楽家組合から資格停止処分を受けていた為、ニューオーリンズに赴き秘密裏に録音したという何ともなエピソードだ。ハープも入り、ギターも素朴に爪弾き、<トランペット>に先祖返りしたようなテイストがある。⑭61年<スフィア>シングル。ジミー・スプルーイルがギター、ホームシックがベースなど。スライドの間合いが絶妙だ。⑮60年<ファイア>シングル。⑭と同メンバー。爆発的な曲ではないが、ギターは聴き応えある。⑯は⑬のフリップ・サイド。メンバーも変わらず。ロックンロール的な疾走感が痛快だ。⑰57年<チーフ>シングル。ウェイン・ベネット、エディ・テイラーという豪華さ。後は、ホームシック、ジョニー、オディー、J.T.というお馴染みの連中。純黒ブルース。漂うサックスに絡むギターが光る。⑱は⑰と同年のシングルだが、番号は違う。ウェイン・ベネット参加。⑰と似たような展開だ。ゆったりとしたギター・リフも決まっている。⑲は⑭などと同メンバー。60年<ファイア>シングル。見事なダンス・サウンド。⑳も⑲と同じ。番号は違う。スローではあるが、変化のあるギター・プレイは流石。㉑は60年<フラッシュバック>シングル。ポール・ウィリアムズがバリトン・サックスで参加。スタートがやや変則的なブルーム調。メンバーのせいか一体感は乏しい。

 

エルモアというと、サウンドのイメージからか太く短く生きたような感じがするが、ブルームダスターズというメンバーに恵まれた一方、色々なミュージシャンとも関わりを持った事に気付かされた。それでいて、芯は変わり続けない。それが多くの人に愛されている所以だろう。

 

① DUST MY BROOM [TRUMPET 146]

 

 

 

② The Sun Is Shining

 

 

 

③ Hawaiian Boogie

 

 

 

④ Sho' Nuff I Do

 

 

 

⑤ Please Find My Baby

 

 

 

⑥ Big Joe Turner - T.V. Mama [feat. Elmore James] 

 

 

 

⑦ My Best Friend

 

 

 

⑧ Madison Blues

 

 

 

⑨ Cry For Me Baby

 

 

 

⑩ The Sky Is Crying

 

 

 

⑪ Sunnyland

 

 

 

⑫ I Can't Hold Out

 

 

 

⑬ Look On Yonder Wall

 

 

 

⑭ I Need You Baby

 

 

⑮ Done Somebody Wrong

 

 

 

⑯ Shake Your Money Maker

 

 

 

⑰ The 12 Year Old Boy

 

 

 

⑱ It Hurts Me Too

 

 

 

⑲ rollin & tumblin

 

 

 

⑳ SOMETHING INSIDE ME

 

 

 

㉑ Standing At The Crossroads

 

 

 

 

 

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