レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.99
[108枚目]●ジョン・リー・フッカー『ドント・ターン・ミー・フロム・ユア・ドア』<ワーナ・ミュージック・ジャパン>(12)
※本文を書くに当たり、今澤俊夫さんのライナーノーツを大いに参考にしています。
オリジナル盤は、63年<アトコ>から唯一リリースされている一枚。私が持っているのは『アトランティック・R&B・ベスト・コレクション1000』シリーズで出されたもの。オリジナル盤より4曲多いし、曲順も一部変更されている。元々2曲目に入っていた「Wobbling Baby」が、本盤では(7)に収録されている。その地(2)(8)(15)(16)がオリジナル盤には入っていない。尚、(1)(3)(4)(7)(12)(13)は、53年<デラックス>で録音した曲(オハイオ州シンシナティ)。(3)(5)(6)(9)(11)(14)は、61年フロリダ州マイアミで録音された曲である。(2)は(1)と併せて53年<デラックス>から10インチSP(ジョン・リー・ブッカー名義)盤で出て、ヘンリー・ストーンの<ロッキン>からEP/SP両方で出ている。(8)は(7)と共にヘンリー・ストーンの<チャート>でSP化されている(55年)。尚、(8)のコンポーザー名義はエド・クックとなっている。(15)は(13)と同じ曲かと思うが、ジョン・リー・ブッカー名義で<デラックス>からシングル化されている。(18)は53年の曲としか判らず。(2)(13)(15)にはエディ・カークランドが参加しており、(13)ではヴォーカルも取っている。また、(5)と(9)にはアール・フッカーが加わっている。尚、プロデューサーは全曲ヘンリー・ストーンとなっている。
ジョン・リー・フッカーは若い頃から吃音症であった。「吃音ブルース」と訳される本曲も、時に吃音を強調して語り口調で終始する。素の自分を表現したかったのだろうか。
どしゃぶりの雨を表現しているようなノイズ強めのギターがリズムを刻む。
重低音の波状攻撃が強烈である。
ギターの調べに合わせてハミングする部分など、ジョン・リー節が息づいている。
<チャート>より(11)と共にシングル化。ディスク面に記載されているコンポーザはロッキー・グロース、同じく(11)はエディ・キャッスルベリーとなっている。調子っ外れにも思えるギターの音色が悲嘆の思いを倍加する。
チャールズ・ブラウン(スリー・ブレイザーズ)のカバー曲。浮遊というより深く暗い海に沈んでいくような曲調である。
パンク・ロックのような勢いでスタートし、ノイズ混じりのストロークが気分を上げる。(8)と共にシングル化。
自在なギター・フレーズの中、語るように歌われる。
(9) Don't Turn Me From Your Door
低音部の響きが、何者かが近づいてくるような緊張感を生み出している。
感情の浮き沈みを表すかのようなギターがここでも聴ける。
深い闇の中で鈍い光を放つようなインスト。
ギターをかき鳴らした後の余韻まで味がある。
ジョン・リーの呼びかけに応じて歌い出すエディも雰囲気十分。
お得意のブギパターンがゆったりと心地良く進行する。
朝起きたら彼女がいなくなった、もう俺の周りには誰もいないという、ブルースならではの世界に染みついたやるせない感情を、ギターがよく表現している。
唸りからのギター・フレーズがジョン・リーらしい。
バンド・サウンドの中に居たとしても“弾き語り”の感覚があるジョン・リー・フッカーは、ヴォーカル、ギター共に強烈な存在感を放つ証左だろう。気取りや見栄とは無縁の武骨な演奏ぶりや歌唱は、ストレートに聴く者に伝わってゆく。ブルースマン、ブルースウーマンは存在感が魅力ではあるのだが、中でも突き抜けた存在感である。
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